住友電工テクニカルレビュー

『住友電工テクニカルレビュー』

『住友電工テクニカルレビュー』は、住友電工グループの技術内容を解説した技術論文集です。 本ページでは、論文の内容をPDF 形式のファイルにより、掲載しております。

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映像通信の進化と当社の役割

近年増加を続ける下りアクセスネットワークトラフィックの65~70%を映像配信トラフィックが占めている。放送サービスのチャンネルあたりの最大所要帯域は、映像の高画質化と映像圧縮技術の高度化が標準化とセットで進んだ結果、20年間あたり、圧縮前が約40倍、圧縮後が国内RF放送において約5倍、IPTVにおいては約20倍のペースで増加してきた。一方、今後の市場の成長は、8K化に加え、360° 3D映像やAI、デジタルツイン技術と組み合わせたXR(クロスリアリティ)映像サービスが牽引することが期待されている。この機に、映像通信技術の動向と当社の取り組みを振り返ると共に、クラウドコンピューティングと家庭や職場を結ぶ全光および無線ネットワークに求められる各種Key Indexの内、特に、没入感ある双方向性の3D, XR映像配信サービスの実現に欠かせないMotion-to-Photon遅延と呼ばれる性能に着目し、他の要件への影響について考察する。

映像通信の進化と当社の役割
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2.5 MB

高周波増幅器向け高出力GaN HEMTとその将来技術

情報通信システムは、私たちの社会を支える重要なインフラである。特に電波を用いた無線通信技術は、直近の30年あまりで著しい進歩を遂げ、地上通信では高速データ通信や低遅延を実現する第五世代(5G)サービスが2020年より開始された。一方で、その通信ネットワークは、海洋、宇宙にまで広がり始めている。当社は、この通信インフラを支える伝送デバイス(光通信向けデバイス、無線通信向けデバイス)の開発・製品化を通じて、社会に貢献してきた。無線通信基地局向けキーデバイスであるGaN HEMTは、当社が世界で初めて量産・製品化に成功し、現在では世界トップシェアカンパニーとしての地位を確立した。本論文では、GaNに代表される化合物半導体デバイスとその応用の黎明期から現在のGaN HEMT増幅器、そして将来技術として不連続な性能向上を目指した新規の結晶成長技術やデバイス技術について論述する。

GaN HEMT
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3.5 MB

交通信号制御の効果評価のためのCO2排出量算出モデル

気候変動は世界的な社会課題であり、その対策としてCO2排出量削減が求められている。主な排出源の1つである自動車交通のCO2排出量を削減するためには車両自体の排出量削減の取り組みと共に、交差点の交通信号制御の改良による渋滞削減等、車両が無駄なエネルギーを消費せずに走行できる環境を整備する取り組みも重要である。CO2排出量削減対策として交通信号制御の改良を推進していくためには、その効果の定量的な検証が必要であるが、交差点を通過する車両のCO2排出量の定量化については広く認められた手法は存在しない。そこで、交通信号制御の改良の効果検証に広く利用されることを目指し、交通信号で制御された交差点を通過する車両のCO2排出量を車種等を考慮して算出するモデルを作成した。

交通信号制御の効果評価のためのCO2排出量算出モデル
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0.8 MB

広い視野角で設置自由度を向上したミリ波レーダ

交通の安全と効率向上のため、世界各国で歩行者検知センサの需要が高まっている。交差点において歩行者検知センサで十分な検知精度を得るためには、適切な設置先を確保することが課題となる。しかしながら、センサを設置するために新しいポールを設置するには大きなコストを必要とするため「既存のポールを活用できること」が、歩行者検知センサを世界に広めるために重要となる。一方で、遠方と近傍の歩行者検知を両立させることは、センサの視野角が不足するために難しく、多くのセンサはその直下の歩行者を検知できないために設置場所が制限される。この課題への対策のため、筆者らは僅かなコストアップで広いアンテナ視野角を持つレーダセンサを開発し、設置場所の自由度を向上した。本稿では、開発した新しい技術と、それを用いて広い検知エリアを実現した検知結果を紹介する。

広い視野角で設置自由度を向上したミリ波レーダ
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3.2 MB

高い信頼性と可用性を備えた小型・高密度の高速イーサネット装置

近年、様々なサービス分野と情報通信技術が融合し私達の生活に深く浸透することで便益がもたらされる一方で、通信インフラの障害が日常生活に及ぼす影響は大きく、通信機器はより高い信頼性、可用性が求められている。当社は高品質な5G無線システムの運用に貢献する高速イーサネット装置を開発した。本稿では可用性に加えて上位通信装置の通信帯域に合わせた送信制御が可能なMC-LAG、高精度時刻同期の高信頼化の実現について述べる。

イーサネット装置
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1.3 µm帯フォトニック結晶面発光レーザ

情報通信量が増大の一途を辿る中、データセンタでは、多チャネル化により通信量の急増に対応してきた。一方、現状のシステムでは、1チャネルにつき1つの半導体レーザを使用するため、消費電力の増大や、部品点数の増加による高コスト化が問題となっている。高光出力の単体レーザ素子から多チャネルに光を分岐する構成が提案されており、その要求を満たす高出力かつ単一モードの通信用レーザが求められている。しかし、既存の通信用レーザで、単一モードかつ高出力を得ることは、原理的な限界を迎えつつある。我々は、単一モードと高出力動作を両立する次世代の半導体レーザとして、1.3 µm帯のInP系フォトニック結晶レーザを検討している。ドライエッチングと再成長技術を用いて作製したInP材料系PCSELにおいて、室温連続駆動において200 mWを超える単一モード発振を実証した。さらに、短パルス駆動においては、4.6 Wの高出力を達成し、通信だけでなくセンシング用途にも応用可能である結果を見出した。

フォトニック結晶
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2.5 MB

膜蒸留法に適した高耐水圧PTFE多孔質中空糸膜

当社はフッ素樹脂ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の延伸加工による多孔質化技術を世界に先駆けて開発し、2000年代初頭には、中空糸膜状の水処理膜モジュールを上市し、PTFEの耐薬品性、高強度を強みに国内外の様々な地域で、上下水処理用途や産業排水処理用途に納入してきた。一方で、近年増加している海水淡水化やかん水中のレアアース回収といった塩成分の分離ニーズの増加に対して、PTFEの有する疎水性を活かし、かつ海水中の塩成分や水資源中のレアアースといった溶質を分離できる膜蒸留法に着目し、膜蒸留法に必要である耐水圧と気体透過性を両立したPTFE中空糸膜を開発したので報告する。

膜蒸留モジュール
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2.3 MB

Ar+イオン注入されたアモルファスIGZOの特性

Ar+イオン注入されたガラス基板上アモルファスInGaZnO(a-IGZO)膜の電子輸送特性を調査した。電子密度とHall移動度の深さ方向プロファイルの測定結果から、Arプラズマ照射と比較して、Ar+イオン注入によりa-IGZO膜の表面から深い領域まで高密度の電子が生成されることが明らかになった。さらに、a-IGZOのArに対する阻止能および伝導帯下端から0.05-0.1 eV下のドナー準位を推定した。これらの知見は、a-IGZOデバイスプロセスのための抵抗値制御技術において有用である。

Ar+イオン注入されたアモルファスIGZOの特性
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レドックスフロー電池のマルチユース実証

米国カリフォルニア州において、2MW/8MWhのレドックスフロー電池(RF電池)設備を用いてマルチユース実証を行った。配電網ではピークシェービングと電圧制御を組み合わせた運用を行い、カリフォルニア州電力卸売市場においてエネルギー市場とアンシラリーサービス市場に同時に参画した。さらに、平常時と非常時のマルチユースを想定したマイクログリッド運用を行い、ブラックスタート、シームレス移行の両方について、系統接続からマイクログリッドへ安定的に移行し、実際の需要家に電力供給することに成功した。

レドックスフロー電池
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洋上風力発電向け非遮水海底ケーブルの水トリー特性(長期水トリー試験法の考察)

近年、世界各国で温室効果ガスの削減に対する取り組みが行われており、洋上風力発電に注目が集まっている。発電した電力を送電する海底ケーブルは、風車の大型化と出力増加の影響による高電圧化、大容量化に伴い大型化が進んでおり、製造性、コスト、施工性等が課題となっている。当社はこれらの課題を解決するため、遮水構造の無い海底ケーブルの開発を進めてきた。海底ケーブルの運転寿命は未解明な点が多く、特に浸水状態ではケーブル絶縁体中で水トリーと呼ばれる劣化が進行するため、ケーブル寿命を推定することは難しい。当社は非遮水構造のケーブル寿命を評価するため、ケーブル絶縁体中の過飽和水分量の継時変化を解析することで、現実的な試験期間で実線路30年の長期運用を模擬可能な長期水トリー試験法を検討した。今後、検討した試験法を用いて実線路での長期運用や更なる高圧化に対応可能な耐水トリー性を有するケーブルの開発を進める。

浸水課電試験
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1.8 MB

最近の高調波問題と対策について〜再エネ主力電源化を迎えて〜

電力系統における電力品質は、供給される電圧の振幅・周波数が一定であること、三相電圧の各振幅が等しく位相差が120度であること、基本波周波数(50Hz/60Hz)のみで表される正弦波であること、そして電力供給が瞬時も途切れないことが理想であり、それぞれ規格で決められた指標で評価される。日新電機㈱は、電力品質改善に寄与する対策技術・機器の専門メーカとして、各種電力機器・システムを開発・製品化してきた。本稿では、電力品質の中でも「高調波問題と対策」に焦点をあて、再エネ主力電源化の進⾏によって懸念される、新たな高調波問題と対策について報告する。

最近の高調波問題と対策について
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化合物半導体デバイス開発における放射光分析の活用

化合物半導体は高機能デバイス実現に有用な材料的特長を有している。デバイス性能への影響が大きい半導体表面あるいは界面の状態を高精度で分析するため、本研究では放射光分析の一種であるX線光電子分光法(XPS)を活用した。まず無線通信用のGaN系高電子移動度トランジスタでは、O2アッシャ処理の影響について調べた。この目的のためXPS励起エネルギーを600 eVまで下げ、分析深さを約2 nmに限定。フォトルミネセンス分析も併用し、不適切な処理条件では表面からのN抜けと酸化物の増加、及び、GaN結晶中の欠陥残留をもたらすことを見出した。また、光通信の受光素子に用いられるInP系フォトダイオードでは、絶縁膜に被覆されたInPの表面電位シフトを7940 eV励起の硬X線光電子分光で評価し、受光感度劣化をもたらす界面リーク電流を低減できる製膜条件の探索に成功した。放射光分析のタイムリーな活用は、製品開発期間の短縮に非常に有効と言える。

住友電工ビームライン
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車載X- バイワイヤ用統合バックアップ電源

近年、脱炭素社会の実現に向け電動車両へのシフト、並びに自動車機器の電動化が進んでいる。機器の電動化は制御対象を電気信号で制御するバイワイヤ制御の採用が拡大している。しかし、バイワイヤ制御は鉛バッテリなどの車両電源が異常となった場合に、制御ができなくなる課題がある。住友電工グループの住友電装㈱、㈱オートネットワーク技術研究所は、車両電源異常時にも複数のバイワイヤ制御を継続するための統合バックアップ電源を開発した。本製品は、2023年に発売されたトヨタ自動車㈱のプリウスに採用頂いた。

国内データセンタ向け超多心高密度スロットケーブル販売開始

近年クラウドコンピューティングや動画配信、5G 対応等の進展により、通信トラフィックは急増し、大規模データセンタ(以下、DC)の建設が進んでいる。DC 間を結ぶ光ファイバケーブルは主に屋外ダクト内に配線されるため、限られたダクトスペースに光ファイバを高密度に詰め込む技術が重要となる。当社は2017年に当時、世界最高心数である6912心光ファイバケーブルを開発、商用化し、さらに配線ソリューションも開発することで、DC 全体での配線高密度化および施工性向上に貢献してきた。本稿では国内向けダクトサイズに適合した超多心高密度光ファイバケーブルとして、200μm 心線適用の3168心型、250μm 心線適用の2016心型を開発し、販売を開始した。

S 帯レーダ用800W 高出力・高効率GaN HEMTパワーアンプ

近年船舶・気象用増幅器としてマグネトロンに代わり半導体デバイスが高出力化したことで固体化が進んでいる。固体化のメリットとして長寿命が挙げられ、定期的に交換が必要であったマグネトロンに対し、半導体は交換不要であり維持費削減が可能となる。またマグネトロンレーダは周波数変動が大きく小さな物標を観測することが困難であったが、固体化レーダはその周波数安定性からこれまで観測が困難であった物標も観測できるようになり探知性能が向上するメリットが挙げられる。しかしながら固体化レーダがマグネトロンレーダと同等の探知距離を実現するには半導体デバイスを複数並べる必要があり、合成数を減らすにはさらなる高出力化が求められている。今回我々は業界最高出力であるS 帯(3GHz)800W GaN HEMTを開発したので報告する。

SiCウェハ加工用研削工具ナノメイト マスパワー

カーボンニュートラルの実現に向けた再生可能エネルギーやEV の急速な普及に伴い、次世代パワー半導体の需要が拡大している。特にSiCはSiに比べて高耐圧、省電力化を実現する新素材として一部で使用され始めているが、広く普及するには製造コスト面で課題がある。SiC ウェハ及びデバイスの製造工程では高能率にウェハ厚みを加工できる研削加工が用いられているが、硬脆材料であるSiCの加工において①工具の消費量が高い②加工抵抗が高いことが課題として挙げられており、耐摩耗性を有し低抵抗で加工できる工具の開発が望まれている。そこで㈱アライドマテリアルでは独自に開発した超微細組織の高精度分散制御技術を用いることで、工具寿命と加工抵抗を両立したビトリファイドボンドホイールを開発し、2022年度からナノメイト マスパワーの商品名で発売を開始した。

巻頭言: 情報通信技術の進化と当社の役割

1990年台初頭のインターネットの普及以降、人々はほぼ時間遅れなしに世界中の情報を入手することが可能となり、データ伝送容量は年々増加している。送られる情報は、初期は音声や文字であったが、その後、写真や動画が加わり、近年は例えば自動運転に必要なデータや人工知能(AI)、メタバースといった人々の生活を変える技術に活用されつつある。また、通信の主体も人からモノへと広がり、大量のデータが常時飛び交っている。

信号補償と低帯域光受信器を用いた光集線装置

5Gモバイルフロントホール(5G-MFH: 5G Mobile Fronthaul)では、多数の張出局を少ない光ファイバで効率的に接続するために光集線装置が用いられる。5G-MFH向け光集線装置には、長距離伝送やマルチレート動作などの技術要求を安価に達成することが求められる。本稿では、10 Gbps用の光受信器を搭載したWDM光トランシーバと信号補償回路を用いて、10/25 Gbpsマルチレート動作に対応した光集線装置を原理実証したので、その内容を報告する。

信号補償と低帯域光受信器を用いた光集線装置
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導波路APD搭載25Gbps光受信器

高機能モバイル端末の普及や、提供されるサービスの多様化に伴う通信トラフィックの増加に対応するため、5Gへの移行が進みつつある。5Gのモバイルフロントホールには25Gbpsの光トランシーバが用いられており、伝送容量拡大のため、波長分割多重方式が広く用いられている。当社は、これまでに開発したCAN型光受信デバイスと、C-Band用端面入射型導波路アバランシェフォトダイオード (Avalanche Photodiode : APD) を組み合わせて、25Gbps DWDMトランシーバ (SFP28) に搭載可能な光受信デバイスの開発を行ったので、その結果を報告する。

導波路APD搭載25Gbps光受信器
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3.1 MB

異種材料集積を用いた低消費電力波長可変レーザ

IoT技術を用いた様々なアプリケーションの進展により通信量が増大し、2030年にはデータレートが10 Tb/sを超えると予想されている。一方、光通信を支えてきた単一材料光デバイスにおいては10 Tb/s級のデータ伝送に向けた広帯域化と低消費電力化の両立に限界が見え始めており、技術的なブレークスルーが求められている。高速・高効率動作に優れたIII-V族化合物半導体と素子の小型化による高密度集積が可能なシリコン(Si)フォトニクスのそれぞれの利点を組み合わせた異種材料集積光デバイスは、その有望なアプローチの一つとして期待されている。本稿では異種材料集積を利用した波長可変レーザについて報告する。

異種材料集積を用いた低消費電力波長可変レーザ
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データセンタ向け53GBaud変調器集積レーザ

情報通信量の急増に対応するため、データセンタでは400Gbit/s光トランシーバの導入が始まっており、高性能な電界吸収型変調器集積レーザ(Electro-absorption Modulator integrated Laser: EML)が求められている。今回我々は、53GBaud-PAM4動作可能な1271/1291/1311/1331nm帯のEMLを開発し、4波長帯全てで400Gbit/s光トランシーバの要求仕様を満たすことを確認した。本稿では、今回開発したEMLの構造や諸特性について報告する。

データセンタ向け53GBaud変調器集積レーザ
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次世代データセンタスイッチ向け90度曲げ2次元光ファイバアレイ

データセンタ内の消費電力増加に対し、電気と光機能を一体集積することで消費電力を削減可能なCo-Packaged Optics(CPO)スイッチが注目を集めている。CPOスイッチには、低背・高密度・低損失・高信頼性な光接続部品が新たに必要とされる。そのため、90°に小径曲げ加工を施した光ファイバと、2次元配列の精密孔あきガラスプレートを組み合わせた、90°曲げ2次元光ファイバアレイ(2D-FBGE(FlexBeamGuidE))を開発した。2D-FBGEは、高さ5.5mmの低背性、24心/mmの高密度性、0.5dB以下の低挿入損失、20dB以上の高い偏波保持特性を示し、CPO向け光接続部品に必要な性能を有していることを確認した。

次世代データセンタスイッチ向け90度曲げ2次元光ファイバアレイ
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多心海底ケーブルシステムに適した光ファイバ

国際通信のデータトラフィック需要は年率30~40%で増加を続けており、それに追随するよう海底ケーブルの伝送容量も増加を強く要求されている。近年では、低伝送損失化など光ファイバの性能改善に加え、海底ケーブルに収納される光ファイバの多心化によって伝送容量の増加を実現している。本稿では、この多心海底ケーブルシステムに適した光ファイバについて、システムの性能やトータルコストの観点から議論する。さらに将来の技術として期待される海底細径ファイバ、海底マルチコアファイバについてもあわせて述べる。

多心海底ケーブルシステムに適した光ファイバ
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陸上光伝送システム用超低損失ITU-T G.654.Eファイバ “PureAdvance”

当社のPureAdvanceは、0.17 dB/km以下の低伝送損失、および、実効断面積110~125 µm2の拡大されたコアを有し、陸上幹線光伝送システムに適したITU-T G.654.Eに準拠する光ファイバである。今回、その伝送損失の0.16 dB/km以下(典型値0.156 dB/km)への低減に成功し、商用出荷を開始した。この超低損失化により、陸上幹線光伝送路における伝送特性をさらに改善し、400 Gb/s超といった高速光伝送も可能となる。本光ファイバは、陸上幹線系通信網における大容量光通信の実現に貢献すると期待される。

陸上光伝送システム用超低損失ITU-T G.654.Eファイバ “PureAdvance”
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間欠テープ心線を用いた多心マイクロダクト光ケーブル

データセンタなど光ファイバネットワークの拡張が世界的に進められる中、光ケーブルの柔軟かつ効率的な布設を可能とするテープ心線型マイクロダクト光ケーブルが開発され、実用化され始めている。この度、ケーブルの実装心数を96心から864心まで幅広く開発すると共に、施工時間の削減を目的として屋内外兼用の難燃外被構造も開発したので本稿にて報告する。開発したケーブル構造としては、間欠12心テープ心線を用いて一括融着接続性と自身の柔軟性を活かした高密度収納を両立させ、細径かつ軽量なケーブル構造を実現できた。また、空気圧送特性を向上させるために、低摩擦外被を採用した。これらの新開発マイクロダクト光ケーブルは、顧客のネットワーク配線方式を考慮した様々な布設環境に適用でき、従来と比較し効率的で柔軟なネットワークの構築が実現できる。

間欠テープ心線を用いた多心マイクロダクト光ケーブル
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施工性に優れた多心コネクタ付細径3456心ケーブル

大規模データセンタの施工時間削減を目的として、超多心ケーブルの端末に予め工場で多心コネクタを取り付けた成端ケーブルを開発、販売開始した。ケーブル構造としては、細径200µm光ファイバを用いた間欠12心光ファイバテープ心線とスロット構造から構成される細径3456心光ファイバケーブルを用いた。ケーブル先端に24心MPOコネクタを取り付け、牽引保護管で保護する構造としたが、保護管に関しては牽引特性、機械強度等を加味した構造の選定を行った。開発したケーブルを用いて、実布設を模擬した牽引実験を行い、従来の非成端ケーブルと同等のダクト収納心数を達成できることを確認。本ケーブルを用いることで、従来時間を要していた多心融着作業をコネクタ接続により、接続時間を削減することができ、従来ケーブル対比で約40%のケーブル施工時間削減が見込まれる。

施工性に優れた多心コネクタ付細径3456心ケーブル
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OTDRを用いたマルチコア光ファイバのクロストーク測定

マルチコア光ファイバ(MCF)を用いた光通信においてはコア間のクロストーク(XT)を抑えることが信号品質を維持するために重要である。本研究では、マルチチャネルOTDRを用いることでボビン巻き状態のMCFのファイバ長手方向での曲げ半径変化によるXTの変化を測定できることを明らかにした。また、MCFを用いた双方向伝送時に考慮が必要となる後方散乱XTを、マルチチャネルOTDRを用いて測定する手法を開発し、後方散乱XTのファイバ長依存性の理論予測を検証し、ファンアウトの後方散乱XTへの影響も明らかにした。本研究成果により、マルチチャネルOTDRによるXTの長手依存測定の有用性を示すとともに、MCFにおける対向伝搬の優位性を示した。

OTDRを用いたマルチコア光ファイバのクロストーク測定
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4コアマルチコアファイバ用バンドル型ファンイン・ファンアウトデバイス

データセンター用途を想定したマルチコアファイバ(MCF)を使った次世代伝送システムには、低挿入損失(IL)と高反射減衰量(RL)を両立するファンイン・ファンアウト(FIFO)が求められている。当社はファイババンドル(以下、バンドル)型構造を選択し、バンドルの高精度コア偏心制御と高RLが期待できるMCFとバンドルの物理接触方式によりこれらの同時実現を目指した。当FIFOはMCFとの接続時に回転調心のみ行える設計であるが、試作したFIFOの光学特性はIL0.3 dB以下、RL50 dB以上を達成した。

4コアマルチコアファイバ用バンドル型ファンイン・ファンアウトデバイス
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光通信ケーブルの常温/低温形状評価

光通信ケーブルの低温環境における伝送ロス増大は長年の課題であるが、そのメカニズムはいまだ未知の部分が多い。我々はメカニズム解明に向けた最大の障害のひとつであった、光ケーブル実試料の低温環境における形状評価技術を開発し、分析・データ解析・CAEの三位一体の体制でこの課題に取り組んでいる。具体的には、既存の一般的なX線CT装置に対する簡便な後付け機構で低温観察を実施する独自技術、および不明瞭なCT像から正確にファイバ1本1本の形状を抽出し3次元的に定量化する独自技術を開発した。特に後者の技術は光ケーブルのみならず幅広いケーブル製品に適用可能で、ビックデータを活用したケーブル製品設計のDX推進に多方面で貢献している。本論文では多心光ケーブルの低温環境での形状評価を例に、実測とCAEの両面からケーブル評価を実施する取り組みを紹介する。

光通信ケーブルの常温/低温形状評価
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深層学習を適用したミリ波GaN HEMTのシミュレーションモデル

無線通信の大容量化においてミリ波GaN高電子移動度トランジスタ(HEMT)が期待されているが、ショートチャネル効果等の非線形成分が大きく、増幅器の作製に必須な大信号モデルの作成には課題があった。そこで我々は、コンパクトモデルの電流源にのみ人工ニューラルネットワーク(ANN)を適用し、ANNの過学習の問題を回避した画期的なモデルを開発した。DC特性と120GHzまでのSパラメータのデータからANNモデルを作成し、71GHzでの大信号特性を高精度に再現できることを世界で初めて実証した。

深層学習を適用したミリ波GaN HEMTのシミュレーションモデル
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GaN HEMTを用いたアウトフェージング増幅器

高い電力効率を持つ増幅器は、発生する熱が少なく軽微な放熱機能で動作が可能となるため、通信装置の小型化、軽量化、低コスト化に対して有効である。特にMassive Multiple Input Multiple Output(MIMO)では、多数の増幅器を使用するため、より高効率な増幅器が必要とされており、窒化ガリウム高電子移動度トランジスタ(GaN HEMT)による増幅器の普及が携帯電話基地局用途で進んでいる。一方変調波効率の向上を目的とした増幅器技術として負荷変調が注目されており、中でも、アウトフェージング増幅器は、従来のドハティ増幅器よりも、変調波効率が高効率に実現できることが知られている。今回、当社GaN HEMTを用いアウトフェージング増幅器の設計試作評価を行った。その結果、増幅器の高効率化により従来のドハティ増幅器の構成と比較し1増幅器あたり1.1W消費電力を削減でき64送信のMassive MIMO基地局で70.4Wの消費電力を削減でき基地局の小型化に貢献できることを確認できた。

GaN HEMTを用いたアウトフェージング増幅器
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衛星搭載用C帯100W高出力・高効率GaN HEMTパワーアンプ

GaN HEMTを用いた衛星搭載用高出力・高効率内部整合型増幅器パワーアンプを開発した。今日の無線通信技技術は、インターネット、携帯電話のコミュニケーションに加えて、電子マネー決済にも利用されており、日常生活に欠かせないものとなっている。世界的な情報網の拡大と、自然災害の影響を受けにくい衛星通信の必要性が高まっている。 今回開発したパワーアンプは、衛星通信の主力周波数であるC帯(f=3.7~4.2GHz)において、CW動作条件下で出力電力100W、電力付加効率60%を達成した。開発に使用したGaN HEMTは長期信頼性の実績があり、性能および信頼性の両面において、業界トップクラスの製品である。

衛星搭載用C帯100W高出力・高効率GaN HEMTパワーアンプ
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3.1 MB

AIを利用した映像圧縮と無線伝送への応用

近年AIによるヒト・モノ・コトなどの映像解析が幅広い分野で進んでいる。同時に、より広範囲に、より高精細に見たいニーズから、4Kや8Kなど、カメラ映像の高解像度化が進んでいる。それに伴い、映像データの伝送量や保存コスト、AI分析の処理負荷の増大が課題となっている。今回、データ量を大幅に削減でき、且つ圧縮伝送後のAI処理負荷を低減できるAI応用映像処理技術(AVP: AI-based Video Processing)を試作した。その有効性を検証するために行った工場実証実験では、従来圧縮技術と比較して平均ビットレートを92.2%削減できたと同時に、クラウド側AI処理負荷の低減により限られた計算リソースでより高解像度映像の解析ができ業務改善に繋がった。

AIを利用した映像圧縮と無線伝送への応用
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4.9 MB

在宅高齢者向け支援システムを活用した地域の包括ケアソリューション

㈱日新システムズは、“誰でも簡単に地域とつながることができる”をコンセプトに、在宅高齢者向け支援システム「L1m-net」を開発し、高齢者の在宅支援ソリューション展開を進めている。「L1m-net」の実証を進める中で、在宅支援に加えて孤立・孤独からコミュニケーションを生む仕組みとして、被災地、障がい者支援施設、高齢者向け賃貸住宅などの分野への展開も可能であることが分かってきた。 近年増加している局地的な豪雨による水害・土砂災害の発生により被災した地域では、長年住んでいた家を失い仮設住宅に移った高齢者が孤立し、孤独死につながる課題が生じている。本稿では、この課題に対応すべく、「L1m-net」を活用した被災地での導入事例について報告する。

在宅高齢者向け支援システムを活用した地域の包括ケアソリューション
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量子コンピューティングによる配送計画の最適化

複雑な組合せ最適化問題を高速に解く技術として量子コンピューティングが注目されている。当社では物流事業者に向けた業務支援ツールの一つである配送計画システムを20年前から販売しており、継続的に研究開発を行っている。配送計画システムは輸配送コストが少なく効率的な配送経路を計算する機能を有するが、この機能の実現には複雑な最適化計算が不可欠である。我々は、この最適化計算に量子コンピューティングを適用することを目指し、この実現に必要となる定式化と実装・性能評価を行っているが、実用化に向けては解の精度の検証が不可欠である。本論文では、イジングマシンと古典コンピュータを用いた結果を比較評価することで定式化の妥当性が確認できたため、その成果を報告する。

量子コンピューティングによる配送計画の最適化
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V溝型SiCトレンチMOSFET搭載パワーモジュール

近年、省エネルギー化への注目度に更なる高まりが見られる中、電力制御に使用されるパワーデバイスの高効率化の重要性がますます高まっている。現在、パワーデバイスにはシリコン(Si)が主に用いられているが、より高効率な炭化ケイ素(SiC)の実用化が始まっている。当社では、低抵抗化に有利なV溝型のゲート構造を採用した金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を搭載したパワーモジュールの開発を進めてきた。今回、市場に流通するシリコン搭載モジュールと形状互換であり、シリコン搭載モジュールよりも低オン抵抗で高速スイッチングが可能な1,200V-400A定格のパワーモジュールを開発した。本報告では、このモジュールの特徴や電気的特性を紹介するとともに、量産化に向けた信頼性試験の結果も報告する。

V溝型SiCトレンチMOSFET搭載パワーモジュール
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炭素系フィラーを用いたプリンタ用高熱伝導定着ローラ

当社は、レーザービームプリンター(LBP)の重要部品であるポリイミド定着ローラを1993年から製造している。近年では、高速印刷に適用可能な高熱伝導定着ローラを開発しており、強靱なポリイミド樹脂と熱伝導性の高いカーボンナノファイバーとを複合化した複合材料を使用している。カーボンナノファイバーは熱伝導性に優れた材料である一方で、ナノマテリアルにカテゴライズされており、規制等のリスクが高まっている。今回は、このカーボンナノファイバーを代替できる材料として、同じく炭素系のフィラーである黒鉛フィラーについて適用検討を行い、新しい高熱伝導定着ローラを開発したので、その詳細について報告する。

炭素系フィラーを用いたプリンタ用高熱伝導定着ローラ
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ファインピッチ・高アスペクト比めっき技術

近年のエレクトロニクス機器の小型化に伴い、フレキシブルプリント回路(FPC)に対して高密度配線化の要求が高まっている。当社と住友電工プリントサーキット㈱ではファインピッチ・高アスペクト比なめっき技術により、従来のエッチングによる回路形成プロセスでは実現できないファインピッチFPCの製法を確立した。この技術を高性能なスマートフォンカメラの手振れ補正用アクチュエーターコイルに適用し、量産化を実現している。本稿ではセミアディティブ法を用いた回路形成技術と、アクチュエーターコイルへの適用事例を報告するとともに、最新の開発状況についても紹介する。

ファインピッチ・高アスペクト比めっき技術
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再生可能エネルギーの大量導入に向けた架空送電線監視装置

カーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギーの主力電源化の取り組みが進められている。しかし、再生可能エネルギーの増加に伴って電力系統が混雑し、新規電源の接続が困難になるという課題が生じている。この課題に対して、系統の混雑に対応するために従来の運用方法を見直す日本版コネクト&マネージの検討、新たな運用技術で送電容量の拡大を図るダイナミックレーティングの導入検討が行われている。これらを実現する上で、送電線の状態と鉄塔周辺の環境をリアルタイムに監視する装置が必要であり、将来再生可能エネルギーが大量導入されていく中で、このようなシステムが重要な役割を担うことになると考えられる。当社は、再生可能エネルギーの大量導入に向けた架空送電線監視システムの開発を行っており、本稿では、開発したシステムと装置の特徴について紹介する。

再生可能エネルギーの大量導入に向けた架空送電線監視装置
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金属多孔体を集電体に適用した固体酸化物形燃料電池の性能

固体酸化物形燃料電池(SOFC)用の集電体として、富山住友電工㈱の製品である三次元網目構造を有した多孔質金属体「セルメット」の適用を目指している。中でも開発中のNiCoセルメットは、高温酸化雰囲気で導電性酸化物を形成することから空気極集電体への適用が可能であり、更に多孔体としての高いガス拡散性を発揮することから、インターコネクタに形成されるガスの流路となる溝加工をなくしても高出力が得られることを報告している。今回、そのメカニズム解明の一環として、セルメット適用による直流抵抗への影響について検討した。セルメットは柔軟性のある金属体であるため、セルの反りにも追従して変形することで、接触性が向上することを明らかにし、更にNiCoの酸化膨張によりスタック内部から圧力をかけることができ、良好な接触性が維持可能であるとの結果を得たのでその内容を記載する。

金属多孔体を集電体に適用した固体酸化物形燃料電池の性能
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1500MPa級高強度ばね用オイルテンパー線新鋼種の疲労特性と特性向上メカニズム

カーボンニュートラル、省資源化への要求の高まりから、自動車のエンジン、クラッチ等の主要な駆動部品に用いられるばね製品も小型・軽量化が求められており、特に要求特性とされる疲労強度に関連してばね材料の高強度化が必要となっている。従来、高疲労強度化≒高強度化(高引張強さ)という方針で材料開発が進められてきたが、あらゆる金属材料の中でも最も高い疲労強度を求められるばね材料では頭打ちになってきており、材料の使用環境などを考慮した新たなアプローチが必要となりつつある。本稿では、成分設計から製造条件確立まで新規に実施した、高強度オイルテンパー線新鋼種の性能と、その特性向上メカニズムについて報告する。

1500MPa級高強度ばね用オイルテンパー線新鋼種の疲労特性と特性向上メカニズム
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ポリエチレンの電子線架橋に関する考察

ポリエチレン(PE)は幅広く工業利用されている高分子の一つであり、電子線照射にて架橋しやすく、耐熱性の向上などが見込めるため、電子線照射による加工素材として頻繁に用いられている。本稿ではPEへの電子線架橋に影響を与える要因とその影響度合いについて紹介する。また、電子線架橋したPEの特性変化についても紹介する。

ポリエチレンの電子線架橋に関する考察
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自給自足型住宅用ハイブリッド蓄電システム POWER DEPO H

昨今、脱炭素社会の実現に向けた効率的なエネルギー利用の観点から、太陽光発電の余剰電力を蓄えて夜間に利用できる家庭用蓄電システムへの関心が高まっている。太陽光発電と蓄電池を組み合わせたシステムは災害等で長時間停電した場合でも住宅への電力供給を維持できるなど、住宅のレジリエンス確保にも効果的である。当社は蓄電システムの普及促進のために小型軽量で施工性が良い住宅用リチウムイオン蓄電システム、POWER DEPO シリーズを2015年より販売している。この度、電力の自給自足を促進するべく、蓄電容量を従来製品の4倍とし、太陽光パネルで発電した直流電力を家庭用の交流電力に変換する太陽光発電用パワーコンディショナーを内蔵するハイブリッド蓄電システム「POWER DEPO H」を開発した。

車載多芯複合ケーブルの屈曲負荷解析

自動車の足廻りに配策される多芯複合ケーブルの曲げ形状、屈曲負荷を精度良く算定する解析技術を開発した。多芯複合ケーブルは、複数本の電線(コア線)を束ねて一体化したもので、ホイール内に配置される電動パーキングブレーキ、車輪速センサー等と車体側の電子制御ユニットを繋ぎ、給電と信号伝送を担う。自動車の電動化、先進運転支援システム(ADAS)の技術開発が進展し、需要が拡大している。ケーブルの訴求点は、走行時にホイールの上下動に伴う繰り返し屈曲を受けても導体が断線しない耐屈曲性である。従来、CADで実車配策形状を決め、ケーブル設計を行っていたが、屈曲負荷の算定精度が低く、ケーブル設計決めのために試作/評価での合わせ込みが必要で、開発期間が長引く原因となっていた。今回開発した解析技術により、ケーブル両端を所定の位置・角度で固定した際の曲げ形状、屈曲負荷を精度良く算定でき、開発を効率化できた。

車載多芯複合ケーブルの屈曲負荷解析
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3次元ポリマー光導波路の形成

慶應義塾大学の石榑教授が発明されたポリマー光導波路の製法の一つであるモスキート法は、市販のマイクロディスペンサーと多軸シリンジ走査ロボットを用いたコアパターンを3次元的に形成可能な技術である 。本作製方法を用いることでマルチコアファイバ(MCF)の導入に不可欠なファンイン・ファンアウト(FIFO)デバイスの実現などが期待できる。一方で、先行研究は主にマルチモードの導波路の検討であり、シングルモード化にはいくつかの課題を有している。特に、クラッド中のニードル走査によるモノマー流動のため、コア形状が円形から悪化する傾向があり、光ファイバとの接続損失を増加させる要因となっている。本論文では、モスキート法によるシングルモード導波路の作製およびシングルモード光ファイバとの接続損失を低減するために、モスキート法を用いて円形コアを形成する方法を理論的および実験的に検討した内容について紹介する。

3次元ポリマー光導波路の形成
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25Gbps対応光Repeater装置

5G(第5世代移動通信システム)の構築において、モバイルフロントホール(MFH)区間の伝送速度が従来システムの約2.5倍になっている。信号の高速化に伴い、シングルモードファイバの波長分散の影響で光伝送可能距離が短くなる課題がある。光伝送距離を延伸化する方策として、波長分散の影響が極小となる1.3μm帯に波長を変換し、伝送特性を補償するため電気回路による波形生成処理を組合せ、30kmの伝送路まで適用可能なメディアコンバータ型の光Repeater装置を開発した。本稿ではこの25Gbps対応光Repeater装置について説明する。

25Gbps対応光Repeater装置
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800Gbit/s対応高光出力・高受光感度IC-TROSA

デジタルコヒーレント光通信技術は、幹線系・メトロ系の長距離伝送システムだけでなく、データセンタネットワークにも展開されようとしている。そのため小型光トランシーバに搭載可能で、高速・大容量伝送を実現するコヒーレントモジュールへの要求が高まっており、2019年8月に業界標準化団体OIFにて送受一体型の小型コヒーレントモジュールであるIC-TROSA規格が制定された。我々は、本規格に準拠した波長可変光源内蔵の800Gbit/s伝送用IC-TROSA type2モジュールの開発を行ったので、その成果を報告する。

800Gbit/s対応高光出力・高受光感度IC-TROSA
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衛星通信の地球局向けGaN MMIC電力増幅器

現代の必須無線通信手段のひとつとして衛星通信が挙げられる。その小型地球局に搭載される電力増幅器には、消費電力やコスト削減などの理由から、高出力化・高効率化・小型化・低歪み化の要求が高まっている。当社は、これらの要求に最適な窒化ガリウム(以下、GaN)の高電子移動度トランジスタ(以下、HEMT)テクノロジーを新規に開発し、衛星通信の地球局向けKu帯48W GaN MMIC 電力増幅器を開発した。小信号利得は32.5dB、最大出力電力は46.9dBm(49W)、電力付加効率は32.8%、3次相互変調歪は-25.6dBcと、業界トップクラスの性能を達成した。

衛星通信の地球局向けGaN MMIC電力増幅器
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酸化物半導体IGZOデバイスプロセスへのホウ素イオン注入技術の応用検討

酸化物半導体であるIn-Ga-Zn-O(IGZO)を用いた電子デバイスは、次世代フラットパネルディスプレイへの応用が期待されている。日新イオン機器㈱および日新電機㈱はIGZO薄膜へのイオン注入技術の応用を目的とし、イオン注入において一般的に用いられるホウ素イオンB+をIGZO薄膜へ注入し、光学的・電気的特性を分析・評価した。その結果、B+の注入技術がIGZO電子デバイス、特に薄膜トランジスタ(TFT)のソース・ドレイン領域の抵抗値低減において有効であることを示した。

酸化物半導体IGZOデバイスプロセスへのホウ素イオン注入技術の応用検討
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多孔質金属体セルメットの触媒担体への応用

より環境負荷の低い化学プロセスの構築に向け、日進月歩の触媒開発が続いている。セルメットは三次元網目構造を有する気孔率90%以上の金属多孔体であり、担体として用いることで低い圧力損失と高い変形性を有する触媒への応用が期待される。また、セルメット担体は通電加熱によって触媒を直接加熱できる利点もある。本報告ではRu微粒子を担持したCeO2粉をNiセルメットにコートした触媒が市販の球状Ru触媒に匹敵する優れたプロパン水蒸気改質性能を示し、実用的なポテンシャルを有していることを明らかにした。さらに500℃に通電加熱したNiCrセルメットが良好な長期耐久性を有していることを抵抗変化量の経時変化から予測し、エネルギー消費量が少ない小型の反応器を構築できることを提案した。

多孔質金属体セルメットの触媒担体への応用
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耐へたり・耐屈曲性に優れた高強度導電線

電子部品の配線やコネクタの接圧保持用のばね線には、その使用中において接触圧力の維持や繰返し屈曲に耐えるために高強度化が求められる。しかし、汎用的に使用される銅合金線は高強度化に伴い導電性が低下する課題が生じる。本背景を踏まえ、我々は伸線・熱処理技術を活用し、外周にステンレス鋼、中心側に銅を備えた強度と導電性を両立する複合線を開発した。開発材は、銅合金の中で最高強度を有するベリリウム銅に対して、更に高い強度と導電率を有すると共に、曲げや捻りに対しても強いことを実証した。本報では本開発材料の各種特性並びに、接圧保持用導電ばね、繰り返し屈曲負荷される電線用途での耐へたり性評価、耐屈曲評価を行った結果について詳述する。

耐へたり・耐屈曲性に優れた高強度導電線
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難削材転削加工用材種「ACS2500/ACS3000」

近年、航空機、石油ガス、医療、自動車産業等において、その機器や部品には耐熱性や耐食性に優れるNi(ニッケル)基、Co(コバルト)基、Ti(チタン)合金等の材料が多く使用され、その使用量は今後大幅に増加すると見られている。一方、これらの材料を切削加工する場合、被削材自体の高温強度が高いことや工具の刃先に溶着しやすいことなどから、工具の寿命が著しく低下する問題がある。そこで当社ではこのような難削材の転削加工において、安定長寿命かつ高能率加工を実現する新しい工具材種「ACS2500」および「ACS3000」を開発した。このACSシリーズは難削材転削加工において当社従来材種と比較して2倍以上の長寿命または高能率加工を実現し、加工コストを大幅に低減させることが可能となった。

難削材転削加工用材種「ACS2500/ACS3000」
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製品開発・モノづくりを支えるCAE技術

近年、製造業において、製品開発やプロセス条件の最適化といったモノづくりの要素技術として、シミュレーション技術―CAEーはなくてはならないツールとなっている。CAEは物理法則に裏付けされたモノづくり、製品の機能発現を導き、さらには目に見えない現象である電磁波、熱、応力などを可視化することで設計者や生産技術者の想像力をかき立て新製品開発、新プロセスの改善へと結びつけている。また、新製品拡販のための説明やプロセスの変更申請において、実測結果に加えてCAE解析結果を求められるケースも増加している。このような状況下、有用で正確なCAE解析結果を導出するためには、現実と合致する高度なCAE技術と、その解析を高速に処理する計算機サーバーが必要である。今回、計算機サーバーにおいて計算の効率化と機能の高性能化を進めることで、これまで対応できなかったCAE解析を可能とした。その内容を各解析分野で紹介する。

製品開発・モノづくりを支えるCAE技術
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2.4 MB

産業用5G 端末

第5世代移動通信システム(以下、5G)を活用し、工場や都市内のあらゆる情報を、高速かつ低遅延でクラウドに伝送し、AIによる情報分析などにより、生産性や安全性を向上させる産業用ソリューション市場が急速に立ち上がろうとしている。当社では、モバイルキャリアが展開するパブリック5Gと、企業や自治体が限定されたエリア内で5G ネットワークを構築するローカル5Gの両者で利用可能な産業用5G端末を開発した。本5G端末はエッジ処理機能を有し、ユーザが必要とするアプリケーションの実装が容易なことを特徴としている。本5G 端末でのエッジ処理とクラウドサーバーでのクラウド処理を組み合わせることで、ユーザ要件に合わせた最適なソリューションの実現が可能となる。

介護ヘルパー情報連携システム

住電通信エンジニアリング㈱は約20年に亘り、ヘルパーの活動実績に基づく対価を計算して請求先に請求するための介護システム(請求システム)“ケアタイム”を通じて介護事業者の業務に携わってきた。今回、管理者とヘルパーの業務の効率化を図り、更に、両者の相互情報伝達をオンタイム化して心のつながりを密にし、質の高いサービスを利用者に提供する介護事業者の想いを実現するシステムとして、介護システムとデータ連携可能なWEB システムを開発し、介護事業者にサブスクリプションサービスとして提供を開始した。

とう道用小型LED 照明灯

とう道(通信ケーブル布設用トンネル)において蛍光灯からLED照明への置き換えが進んでおり、当社は2013年より保護等級IP67(耐塵・防浸)性能を持つ防浸型LED照明をリリースし販売してきた。しかし外形寸法の制約から狭小部への適用が限定的であった。今回、従来品の優れた部分は継承しつつ狭小部への適用が可能な小型で取り付けやすい製品にするとともに、バッテリの自動点検機能搭載による保守の作業性向上と漏えい電流の特性を改善した。

環境にやさしい非架橋絶縁電力ケーブル

現在、電力ケーブルは、架橋ポリエチレン(XLPE)を絶縁体に用いた、XLPE ケーブルが主流製品となっている。XLPEは架橋しているため、耐熱性に優れるものの、加熱しても流動性を示さず、マテリアルリサイクルが難しいというデメリットを有している。また、ケーブル加工時には、網目構造に結合させる架橋反応と、その反応に伴う副生成ガスを脱気するための乾燥工程が必要で、製造長が長いほど、リードタイムが長くなる場合がある。このような状況から、環境にやさしく、生産性の向上に貢献できる、非架橋絶縁電力ケーブルの開発を進めた。

寿命向上 硬質ホイール用ロータリードレッサ

産業界における人手不足解消や、生産性向上のため産業用ロボット市場は急速に拡大し、精密軸受け(リニアガイド・ボールねじ)需要が高まっている。特に転動面の加工は高い生産性が求められることから総形研削加工が採用されており、その輪郭精度は総形砥石を成形・目立てするダイヤモンドロータリードレッサ(RD)が担っている。研削砥石は更なる高能率化のため、従来の一般砥石から高速研削が可能な硬質ホイールに置き換わり、これに伴って高い耐摩耗性を有する総形RDの開発が望まれてきた。この度、軸受け業界の要望に対し、独自のめっき技術を用いて、ビトCBNなどの硬質ホイール用の新しいRDを開発。発売を開始した。

高送りカッタ SEC-スミデュアルミル DMSW 型

フライス工具は外周、端面もしくは側面に工具切れ刃を備えた切削工具であり、これが回転運動することで、様々な部品の加工が行われる。現在ではその切れ刃となるインサートを交換する工具が一般的に広く使用されており、様々な加工に用いられている。近年の工作機械の性能向上により、自動車や航空機、造船、産業機械、金型などの分野では、生産性向上のため、高能率加工に特化した工具への要求が強まっている。また、脱炭素社会の実現に向けたCO2排出量削減活動の一環として、機械加工の省エネルギー化も注目されている。今回開発した「SEC- スミデュアルミルDMSW型」はこれまで以上の高能率加工を可能にすることで、生産性の向上や省エネに貢献する。

巻頭言:技術開発を通じた脱炭素社会への貢献

地球温暖化抑制に向けた脱炭素社会への取り組みは、世界的に大きな流れとなっている。国内においても、一昨年10月の「2050年カーボンニュートラル宣言」に基づく「グリーン成長戦略」にて、再生可能エネルギーや水素エネルギーなどに総力を挙げて取り組む方針が打ち出され、脱炭素イノベーションを日本の産業界の競争力強化につなげるねらいで、「グリーンイノベーション基金」も創設された。 とりわけ大きな期待がかけられている洋上風力発電は、官民協議会の「洋上風力産業ビジョン」にて2040年までに30~45GWとの意欲的な目標が示されている。一方、再生可能エネルギー資源の偏在の問題や、洋上風力発電においては台風等過酷な気象条件への対応などの課題がある。

脱炭素化社会の実現に向けたエネルギー管理システム(sEMSA)

脱炭素社会の実現に向け、欧米先進諸国や日本では化石燃料を中心としたエネルギー構成から太陽光発電などの再生可能エネルギーを主力とした構成に組み換えが行われようとしている。しかし再生可能エネルギーは天候の影響で出力が変動するため安定した電力を供給することが難しいという課題がある。この課題解決の一つとして、再生可能エネルギーの出力変動を平準化するために需要家側に中小規模太陽光発電装置や蓄電池などの分散型電源を導入する取り組みが進められている。将来再生可能エネルギーが大量導入されていく中で、エリア内に分散配置された電源を統合し、安定的にかつ効率よく運用するエネルギー管理システムが重要な役割を担うことになる。本稿では、分散配置された電源を有機的に結び付け統合的に制御する自律分散+階層型の次世代エネルギー管理システムについて論じる。まず、分散電源を統合管理することの技術的な課題について述べ、次にその解決に向けた先行技術動向を整理する。最後に当社エネルギー管理システム「s EMSA-μGrid」について、その特徴と適用領域について説明する。

脱炭素化社会の実現に向けたエネルギー管理システム(sEMSA)
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持続的な成長を支えるスマート電力供給システム(SPSS)

カーボンニュートラル、持続可能な社会の実現に向けた取組みが世界規模で加速する中、日新電機㈱(以下、日新電機)は、新中長期計画「VISION2025」の6つの成長戦略で「持続可能な地球環境とあらゆる人々が活躍する社会の実現」に貢献することを目指している。その中で「SPSS(Smart Power Supply Systems:スマート電力供給システム)」は、環境・エネルギー分野の成長戦略を支えるソリューションビジネスとなる。本稿では、近年のSPSSの取組みを紹介する。

持続的な成長を支えるスマート電力供給システム(SPSS)
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エリアアグリゲーションシステムSPSS-H(Home)技術

再生可能エネルギーである太陽光発電の普及や電力の自由化などを背景に、種々の社会問題を解決するため、エネルギーの地産地消や蓄電池、EVによる蓄電などについて、IoTを活用した高度なエネルギーマネジメントの実現に注目が集まっている。㈱日新システムズ(以下、NSS)は、IoT技術を通じてエネルギー分野における課題を解決するため、主に一般需要家向けのビジネス展開に必要となるゲートウェイ装置および、クラウドシステムによるソフトウェアやサービスを提供している。 本稿では、沖縄県宮古島市における「島嶼型スマートコミュニティ実証事業」にて構築したエリアアグリゲーションシステム(以降SPSS-Hと記載)の技術内容について紹介する。

エリアアグリゲーションシステムSPSS-H(Home)技術
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13.5 MB

架橋ポリエチレンの空間電荷・伝導挙動のQ(t)法による理解と解析

高分子材料に電圧を印加した時に流れる微小電流は材料内で起こっている物理現象を反映しており、材料の誘電・絶縁現象を理解する上で非常に重要である。その解析手法として、我々は電流積分電荷法(Q(t) 法)を用い、電流を積分して電荷量として計測する手法を検討している。ここでは、矩形波電圧印加直後の瞬時充電電荷量(Q(0))と時間tm 後の電荷量(Q(tm))の比である電荷量比(Rc = Q(tm)/Q(0))を新たなパラメータとして導入し、交流および直流ケーブル用の架橋ポリエチレン(AC-XLPE およびDC-XLPE)を試料とし、数十時間の課電を行ってその空間電荷および伝導挙動について解析を行った結果を紹介する。

架橋ポリエチレンの空間電荷・伝導挙動のQ(t)法による理解と解析
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洋上風力発電向け非遮水海底ケーブルの水トリー特性

温室効果ガスの削減が世界的に急務となり、洋上風力発電の導入が進んでいる。発電した電力を送電する海底ケーブルに関し、近年、風車の出力増加に伴う高電圧化(66kV級)や大容量化と、製造性、コスト、施工性を改善するために遮水層を省略するケーブル構造(非遮水海底ケーブル)が期待されている。遮水層の省略は、水トリーと呼ばれる絶縁体の劣化による事故リスクを高めるため、当社は耐水トリー性の絶縁体の検討を進め、2018年に制定された遮水層の省略可否を判定する規格(CIGRE TB722)を満たすことを確認できた。また、長期運用や将来の更なる風車の出力増加を見据え、66kV級を超える高電圧下でも使用できる高い耐水トリー性を有する絶縁体の検討にも取り組んでおり、今後の洋上風力発電の導入促進に貢献できるものと考える。

洋上風力発電向け非遮水海底ケーブルの水トリー特性
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再生エネルギー普及に向けた直流XLPEケーブルの高電圧化と適用拡大

近年、再生エネルギーの導入拡大に伴い、直流送電線の建設や計画が増加している。直流ケーブルには、MI ケーブルやOF ケーブルといった油浸紙絶縁ケーブルが用いられてきたが、交流ケーブルと同様に環境面への配慮から、XLPEケーブルの採用が拡大している。当社は長年に亘って直流XLPE ケーブルの研究開発を行い、優れた特性の直流XLPE を実用化、電源開発㈱に納入した直流250kV XLPEケーブルが2012年に運転を開始した。これは直流XLPEケーブル線路としては世界最高電圧(当時)であり、かつ極性反転を行う線路への納入は世界初であった。その後、NEMO Link Limited社の直流400kV連系線(直流XLPEケーブルの世界最高電圧を更新)や北海道電力㈱の直流250kV連系線等を完工、現在も新たなプロジェクトに取り組んでいる。当社の直流XLPEケーブルは、常時導体許容温度が交流用と同じ90℃で、かつ極性反転が可能といった特長を有しており、今後の再生エネルギーの普及に伴い、ますます増えていくであろう直流送電線のさまざまなニーズに応えることができるものと考える。

再生エネルギー普及に向けた直流XLPEケーブルの高電圧化と適用拡大
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3.3 MB

架空線/地中線 事故判別システムの本格納入

現代社会において電力の安定供給の重要性は益々高まっているが、落雷等による送電線事故は皆無という状況に至っておらず、万一、送電線事故が発生した場合、迅速かつ効率的に事故発生箇所を特定して復旧対応を行う必要がある。特に、架空線と地中線が混在する送電線路においては、事故復旧の対応方法がそれぞれ異なることから、事故発生箇所が架空線か地中線かを判定することは、早期復旧する上で重要とされている。架空地線及び地中線に電流センサを設置して、その電流情報から架空線と地中線の事故を判定する「架空線/地中線事故判別システム」を開発し、電力会社に本格的に導入されたことから、その概要について報告する。

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既設電力ケーブルを伝送路とした地中線設備の保守監視システム

地中送電線路の点検保守は、従来人手によって定期的に巡視等を行うTBMから、IoTやAIを活用したデジタルトランスフォーメーションを促進し、必要な時に効率的に保守を行う、より高度なCBM への転換を図るといったスマート保安の推進が要望されている。IoTを実現する課題として、地中送電設備の多くを占める管路布設ケーブル設備の保守情報を取得するための安価で安全かつ信頼性の高い通信方式の確保が困難であったことが挙げられる。本論文では、マンホール内から66kV の既設の電力ケーブル(XLPE)の金属遮蔽層を伝送路として利用して、保守に使用するセンサ情報やカメラ画像を収集する保守監視システムを東京電力パワーグリッド㈱と共同で開発を行ったので紹介する。

既設電力ケーブルを伝送路とした地中線設備の保守監視システム
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2.3 MB

導電率を向上させた高力耐熱アルミ合金と電線設計

海峡横断部に使用する架空送電線の径間長は1000mを超えるケースがあり、電線の弛みを抑制するために、陸上部の電線よりも高張力の電線が求められる。このような径間に架線する電線の導体部には導電率55%IACSの高力耐熱アルミ合金線が使用される場合があるが、通常の60%IACSの耐熱アルミ合金線よりも導電率が低いことから、陸上部で使用される電線に対して送電容量が制限される。今回、電源開発送変電ネットワーク㈱との共同研究で、導電率を58%IACSに向上させた新規高力耐熱アルミ合金線を開発した。本稿では、開発技術および電線設計事例を報告する。

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1.4 MB

AIを活用した下水処理場の放流水質予測技術

日新電機㈱は、下水処理場内の監視制御装置に保存されている過去の計測データを基に、AIにより2時間後の放流水質(化学的酸素要求量(COD)、全窒素含有量(TN)、全りん含有量(TP))を予測する技術を開発した。これにより、維持管理者は放流水質の悪化前に運転変更などの対応ができ、その結果、労力を掛けずに水質悪化を未然に防止することが可能となる。

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コネクティッドカー向け車両管理システム

世界中の多くの自動車メーカは、車両販売ビジネスからモビリティサービスビジネスへとシフトしており、当社もコネクティッドビジネス領域への参入を進めている。情報ネットワーク研究開発センターでは自動車事業本部のシステム事業部、CAS-EV開発推進部、及び㈱オートネットワーク技術研究所と共に車載機及び車載ソフトウェアや車載データの管理と分析を行うソリューションを試作開発している。当社では新たに、本技術を活用したコネクティッドカー向け車両管理システムの製品化を目指しており、その取り組みを紹介する。

コネクティッドカー向け車両管理システム
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車両プローブ情報の活用による渋滞交差点検出技術

道路上に車両センサが設置されず、時間帯などに応じてあらかじめ設定された固定の交通信号制御が行われる交差点で発生する渋滞が問題となっている。この一因として、交通需要の経年変化により、実交通に対して交通信号制御が最適でなくなることが挙げられる。そこで我々は、車両プローブ情報を活用して、交通信号制御の見直しで渋滞の改善が見込める交差点を一括検出、分析する技術を開発した。そして、本技術を用いて車両センサが未設置である渋滞交差点の検出と渋滞状況の分析が可能であることを確認した。

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冗長機能を備えた200Gbit/s光伝送装置(OTN)

5Gの普及やAI活用などを背景に、ネットワークで伝送されるトラフィック量が増加している。光伝送装置にも高帯域化が求められている一方で、都市部の局舎などでは設置スペースに制約があるため、小型化・高密度化も同時に求められている。そこで当社では高収容効率を実現するために小型の200G OTN光伝送装置を開発した。本光伝送装置ではDCOを採用することで波長多重によるさらなる高密度化と長距離伝送を実現する。本稿では冗長構成時における受信特性および冗長切替え性能を実測した結果を報告する。

冗長機能を備えた200Gbit/s光伝送装置(OTN)
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細径高密度6912心光ファイバケーブル

本稿では、従来の200μm光ファイバを用いた間欠12心光ファイバテープ心線(以下、200μm間欠12心テープ心線)を実装したデータセンター向6912心ケーブルを細径・軽量化した細径高密度6912心光ファイバケーブル(以下、細径6912心ケーブル)の構造、特性および施工性について報告する。使用した200μm間欠12心テープ心線は、長手方向に間欠的にスリットが入った構造による柔軟性を持ち、さらに従来の250μm テープ心線や200μm 間欠テープ心線同士の一括融着接続性も持ち合わせている。今回はさらなる細径高密度化を実現するため、光ファイバの耐側圧性(以下、マイクロベンド耐性)向上およびスロット構造最適化、高強度シース材の適用等を行い、従来比約34%のケーブル断面積低減を実現した。本構造は細径化を実現しつつ、従来のスロット型の特長である曲げ方向性がなく、布設作業性に優れる構造とした。布設作業性に関して、従来の2インチダクトよりも細い1.5インチダクトに牽引しても通線の問題がなく、さらに押し込み、圧送工法も対応可能であることを確認した。本ケーブルを用いることで管路内での光ファイバ心線密度の向上と施工性の両立、さらには細径化、長尺化による材料使用量減による耐環境性の向上も見込まれる。

細径高密度6912心光ファイバケーブル
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マルチコア・エルビウム添加ファイバを用いた光増幅器

コア間結合の強さが異なる3種のコア励起マルチコア・エルビウム添加光ファイバ増幅器を試作し、結合4コア光ファイバ増幅器で電力効率が24%と、コア励起方式が電力効率において優れていることを確認した。クロストークは非結合マルチコア光ファイバ伝送において重要なパラメータであり、非結合4コア光ファイバ増幅器において-43 dBと最高水準の結果を得た。結合マルチコア光ファイバ伝送において重要なパラメータであるモード依存損失は、非結合マルチコア光ファイバ増幅器や弱結合マルチコア光ファイバ増幅器のコア依存利得に対応し、弱結合7コア光ファイバ増幅器で0.52 dBと最高水準の結果を得た。

マルチコア・エルビウム添加ファイバを用いた光増幅器
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100Gbit/s超 40km伝送用光増幅器搭載4ch集積光受信器

スマートフォンなどの高機能な端末の普及やインターネットサービスの多様化に伴う、データ通信量の急増に対応するため、データセンター内の光通信では伝送速度100Gbit/s 超の小型光トランシーバが導入されている。さらに、データセンター間の接続など長距離伝送のため、伝送距離の長延化も求められている。当社は、半導体光増幅器(SOA)を搭載することで、40km/80kmの長距離伝送に対応し、小型光トランシーバに搭載可能な4ch集積光受信モジュールを開発した。本稿では、その構造と諸特性について紹介する。

100Gbit/s超 40km伝送用光増幅器搭載4ch集積光受信器
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次世代データセンター向け100GBaud導波路型受光素子

次世代(800Gbit/s)データセンターネットワークを構成する強度変調- 直接検波用受信器では、変調速度が50GBaud から100GBaud級への超高速化の期待が高まっている。 本報告では、偏波無依存型スポットサイズ変換器を一体集積したInP系導波路型受光素子による広帯域・高感度化の成果について報告するとともに、APDへの応用についても述べる。

次世代データセンター向け100GBaud導波路型受光素子
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難削材旋削加工用材種「AC5005S」

近年、航空機、石油ガス、医療、自動車産業等において、その機器や部品に耐熱性や耐食性に優れるNi(ニッケル)基、Co(コバルト)基、Ti(チタン)合金等の材料が多く使用され、その使用量が今後大幅に増加することが見込まれている。当社は、これら難削材の連続加工から断続加工まで幅広い加工領域で安定長寿命を実現する工具材種として、新PVD コーティングを適用したAC5015S/AC5025S を発売している。一方、難削材の切削加工においてはさらなる加工能率の向上が求められており、当社ではAC5000S シリーズに新たに高能率加工用材種「AC5005S」を追加した。AC5005S は難削材旋削加工において、高い耐摩耗性・耐塑性変形性と耐欠損性を両立させた材種であり、AC5015S/AC5025Sと併せて幅広い難削材加工における加工コストの低減を実現する。

難削材旋削加工用材種「AC5005S」
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非破壊XPS深さ分析を実現する最大平滑性法

製品の開発や品質向上には構成する材料の構造、組成等の分析が不可欠である。中でも、例えば半導体基板、めっき、樹脂の表面処理など、製品表面の状態、具体的には表面近傍の化学種の深さ分布(プロファイル)が製品特性に影響するものが多く存在する。未知試料の表面近傍における化学種ごとの深さプロファイルを非破壊で評価したいという、従来の分析手法では実現困難であったニーズに応えるため、X 線光電子分光(XPS)分析データに対する新たなデータ解析技術「MSM」を新たに開発した。当社は情報深さの異なる3種類のXPS装置を利用することができ、それぞれMSM解析と組み合わせることで、深さレンジの異なるプロファイル評価が可能である。本論文では実際に3種類のXPS装置による分析データに対してMSM解析を適用することで、多様な製品に対して非破壊での化学種深さプロファイル評価が可能であることを示す。

非破壊XPS深さ分析を実現する最大平滑性法
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車載 X-バイワイヤ用統合バックアップ電源

近年、脱炭素社会の実現に向け電気自動車へのシフトを目的として各自動車部品の電動化が進んでいる。しかし、電動化は制御対象を電気信号で制御するバイワイヤ制御の採用が拡大するが、バイワイヤ制御は鉛バッテリなどの車両電源が異常となった場合に、制御ができなくなる課題がある。住友電工グループの住友電装㈱、㈱オートネットワーク技術研究所は、車両電源異常時にも複数のバイワイヤ制御を継続するための統合バックアップ電源を開発した。

高信頼性PCBドリル用超硬丸棒素材 AF905

近年、高性能PC、自動運転システムの普及、またスマートフォンなどによる高画質動画データの通信など、データの処理能力向上が進んでいる。そのため、これらに用いられるプリント回路基板(PCB)には、これまで以上に高い耐熱性、耐久性が求められている。耐熱性、耐久性の向上にあたり、耐熱・放熱フィラーの改良・含有率の増大、基板の超多層化、基板の板厚増大が進んでいるが、これらは基板の穴開け加工にとっては難削化の方向となる。具体的にはドリル摩耗量の増大、それに伴う穴位置精度の劣化を引き起こし、加工穴精度、加工穴内壁品位悪化による基板信頼性の低下に繋がる。そのため、難削化するプリント回路基板の穴開け加工に対して、高精度・高品位を達成する新しいドリル材質の開発が望まれてきた。この度、市場の要望に対して新材質AF905を開発し、発売を開始した。

『住友電工テクニカルレビュー』創刊200号を迎えて~引き継がれる技術創造のDNA~

『住友電工テクニカルレビュー』は、当社の技術研究誌として1933年(昭和8年)10月に創刊され、2022年1月の発行を持ちまして200号を迎えることができました。これもひとえに、皆様方のご支援とご愛顧の賜物と深く感謝しております。

井上社長
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高速道路本線上における逆走検知システム

近年、高速道路上での逆走車両による重大事故が問題となっており、高速道路管理者は逆走車が発生しやすい出入口部等で逆走車対策を行ってきたが、本線上での有効な対策は打てていなかった。当社は高速道路本線上に既に整備されているループ式車両検知器を活用して逆走車両を検知できるソフトウェアを開発することで、本線上を走行する逆走車両の検出を実現した。さらに、道路管制センターへの通知内容を考慮した逆走検知システムを開発した。本稿では、当社が開発した逆走検知システムに関し、フィールド検証を通して精度を向上させた逆走誤検知抑止技術と検知精度の評価結果について報告する。

高速道路本線上における逆走検知システム
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800Gbit/sコヒーレント通信向けInP 系光ミキサ集積受光素子

インターネットトラフィックの急激な増大に伴って光コヒーレント通信の伝送容量は800Gbit/sに達しようとしている。コヒーレントレシーバに搭載する受光素子に対しても、100GBaudに対応可能な広帯域、局発光の消費電力を低減するための高受光感度、実装部品・工数削減のための多機能集積が求められている。我々は、800Gbit/sコヒーレントレシーバへ搭載可能な広帯域・高感度InP系光ミキサ集積受光素子と、コヒーレントレシーバの小型・低コスト化を可能とする多機能集積受光素子を開発したので、その成果を報告する。

800Gbit/sコヒーレント通信向けInP 系光ミキサ集積受光素子
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低損失LC 型マルチコア光ファイバコネクタ

動画配信サービス等のネットワークサービスの情報処理を担うデータセンタにおいて、光配線の高密度接続技術の需要が増大している。今後の更なる高密度接続技術の要求に対応すべく、我々はマルチコア光ファイバを実装したLC型の単心コネクタを開発した。当コネクタは、汎用光ファイバコネクタと同じ部品数のシンプルな構造で、Telcordia GR-326-CORE規格に準拠した信頼性とIEC61753-1 Grade B相当の低接続損失を得られることを確認したので、これを紹介する。

低損失LC 型マルチコア光ファイバコネクタ
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陸上幹線ネットワーク向け低損失光ファイバ

陸上幹線ネットワークにおける大容量伝送を支えるため、ITU-T G.654.E勧告に準拠する低損失・低非線形光ファイバPureAdvanceを開発し、供給を行っている。PureAdvanceは、陸上伝送路で実運用可能なケーブル化が可能、接続損失が低い、ラマン増幅を適用可能といった、実際に陸上伝送路として敷設する際に要求される実用的な性能を有する。また、PureAdvanceを用いた伝送システムは、従来の光ファイバを用いた伝送システムに比べて高い伝送性能を有することから、PureAdvanceは、幹線伝送網を始め、データセンタ間伝送や、海底システム陸揚局~データセンタ間伝送などの陸上伝送路に最適な光ファイバである。

陸上幹線ネットワーク向け低損失光ファイバ
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架空線の脱炭素に貢献する高導電率耐熱アルミ合金電線

近年、環境負荷低減に向けた要求が益々高まっており、送電時の電力損失低減が可能な架空送電線が求められている。この要求に応えるため、当社は架空送電線の導体材料である耐熱アルミ合金線の高導電率化に取り組んできた。今回、合金成分、加工プロセスの改良により、連続許容温度150℃の耐熱性と61%IACS以上の高い導電率を両立した新規耐熱アルミ合金線を開発した。本稿では、アルミ合金線の開発技術、本開発合金を利用した架空送電線の特長を紹介する。

架空線の脱炭素に貢献する高導電率耐熱アルミ合金電線
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再生可能エネルギー大量導入に向けた電力ケーブル系統設計技術

脱炭素化のため近年拡大が進む再生可能エネルギーは、ポテンシャルが偏在する需要地に届けるために、再エネ発電所から既存系統に接続する長距離自営送電線はもちろん、基幹系統ネットワークの拡充も必要不可欠である。本論文では、再生可能エネルギーの送電で多用される長距離交流ケーブルに伴う高調波共振をはじめとする固有の課題と解決の系統設計手法を示すとともに、需要地に大電力を届けるため期待される直流海底送電ケーブルの海底ルート選定や異社間接続などのケーブル系統設計技術について報告する。

再生可能エネルギー大量導入に向けた電力ケーブル系統設計技術
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耐熱衝撃タングステン材~核融合炉部材への適用~

脱炭素を実現できる有力候補の一つである核融合エネルギーの科学的および技術的実現性を実証することを目的としたITER※1計画が国際的プロジェクトとして進められている。ITERの構成機器のうち、2000℃を超える超高温に晒されるダイバータにはタングステンが使用される。ITERの安定した運転を可能とするために、高温加熱および冷却のサイクルを受けるタングステンには優れた耐熱衝撃性が要求されている。そこで我々は、高温加熱による再結晶粒の成長を抑制した耐熱衝撃タングステン材を開発した。この開発材からダイバータ小型試験体およびプロトタイプ用のモノブロックを作製し、核融合炉を模擬した熱負荷試験にて性能を評価した。その結果、過酷な条件下においても開発材は割れなかった。とくに、プロトタイプの評価結果はITER要求を大きく上回り、当社の開発材が世界に先駆けて“割れないタングステン”として評価された。

耐熱衝撃タングステン材~核融合炉部材への適用~
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プリント基板加工用全ZnSe 製Fθレンズ

プリント基板加工用CO2(炭酸ガス)レーザドリルマシンには、高速・高精度・高スループットの微小穴あけを実現するために高性能Fθレンズが用いられる。セレン化亜鉛(ZnSe)とゲルマニウム(Ge)はFθレンズのレンズ素材として優れているが、GeはZnSeに比べてCO2レーザに対する吸収率が高く、温度変化に伴う屈折率変化が大きい。そのため、穴加工の高密度化やレーザ高出力化によるFθレンズへの入力パワー増大に伴って、加工の不安定や品質低下を招きやすい。そこで、当社はZnSe素材から完成品までを一貫生産する光学部品メーカとしての強みを活かし、全ての構成レンズとDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コートカバーウィンドウにZnSeを用いた新しいFθレンズを開発した。ここでは、その技術概要を紹介する。

プリント基板加工用全ZnSe 製Fθレンズ
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鋼旋削用CVD 新材種 AC8020P

自動車部品等で用いられる鋼の切削加工においては、環境負荷の低減や資源の効率的な活用を目的とした様々な取り組みが進められている。当社は連続加工から断続加工まで幅広い加工環境での安定加工を実現する工具として2016年に新CVDコーティング技術「Absotech Platinum」を適用した鋼旋削用材種AC8000Pシリーズを発売し、順次製品ラインナップを拡大している。他方、切削工具には加工工程の自動化・無人化のための安定長寿命に加えて、近年では加工条件の高能率化に耐えうる、さらなる性能向上が強く要求されている。当社はこのニーズに応えるべく、高能率加工で特に優れた性能を発揮する新材種「AC8020P」を開発した。「AC8020P」は従来トレードオフの関係にあった高能率加工における耐摩耗性と耐チッピング性を高いレベルで両立させた材種で、AC8000Pシリーズの既存材種と併せて幅広い鋼旋削加工における加工コストの低減を実現する。

鋼旋削用CVD 新材種 AC8020P
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アドバンスドコーティングシステムiDS-720

当社では2012年から、それまでのコーティング装置を、基礎的な項目から抜本的に見直し、生産性や膜性能を高めたiDSシリーズの開発を進めてきた。iDSシリーズのチャンバサイズのラインアップ化を進め、様々な用途への適用性を拡げた。この度、工具などの量産や、大型の金型処理に適したサイズであるiDS-720を開発し、販売を開始したので報告する。

アドバンスドコーティングシステムiDS-720
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新規成長法による超高強度カーボンナノチューブ線材

銅やアルミより軽量・高導電性の次期電線用素材としてカーボンナノチューブ(CNT)に着目している。CNT単繊維は銅を超える導電性を持ち、既知の材料で最も高い引張強度を持つと言われている。CNT電線実用化を目指し当社独自の手法を開発する中で、鉄触媒からの炭素成長時における引張応力付与の有効性を発見した。また、共同研究先の筑波大学において、高速気流中でセンチメートル級での単繊維の成長を発見、成長時の応力付与がCNT長尺化に寄与していることを示唆している。この原理を基にした成長方法で本長尺CNT単繊維を集合したメートル級の集合線を作成、従来のCNT集合線の数倍の強度を持ち、市販の炭素繊維の引張強度も超える結果が得られたので報告する。これにより炭素繊維用途を置き換えるだけでなく、これまでにない新用途にも展開できる。

新規成長法による超高強度カーボンナノチューブ線材
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高熱伝導性マグネシウム合金板材SMJ140

マグネシウム合金は実用金属中最軽量であり、その一つである当社製AZ91板は、軽量性に加えて、高い強度・耐食性を示し、近年需要が高い薄型ノートPC筐体での実用化が進んでいる。一方で、情報機器業界では、IoTやAI等を活用するため、5Gの電子媒体への実装が進められているが、ハード面では電子機器の発熱が予想されており、これまで以上に電子機器の冷却が求められている。この対策として、材料面からは、材料の放熱性・熱伝導率の向上が挙げられる。今回開発したマグネシウム合金SMJ140の熱伝導率は120~140 W/(m・K)を示しており、この数値は、AZ91板の61 W/(m・K)に対して、2倍以上であり、汎用Al合金板材A5052に相当する。本論文では、軽量放熱板材として期待される高熱伝導性マグネシウム合金板材SMJ140を紹介する。

高熱伝導性マグネシウム合金板材SMJ140
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高齢者にも易しいICT 機器高齢者支援サービス

2030年わが国は3人に1人が65歳以上の超高齢化社会を迎える。急速なデジタル化に伴い、あらゆるサービスが変化する社会環境において、IT(情報技術)リテラシーが低い高齢者の社会からの孤立、地域で高齢者見守りを行う支援者の高齢化・担い手不足が大きな社会課題となっている。それに加え長期化する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大において、直接対面できず見守り対象者が孤立する新たな課題も生まれている。人が人を支える福祉分野において、ITを活用した非接触で見守る仕組みのニーズは今後更に拡大すると期待される。本稿は、2019年度より富山県の社会福祉法人黒部市社会福祉協議会(以下、黒部市社協と記す)と共同で推進してきた実証実験を通じ、㈱日新システムズ(以下、NSSと記す)が“誰でも簡単に地域とつながることができる”をコンセプトに開発を行った在宅高齢者向けICT(情報通信技術)端末と、本端末を利用したサービスの内容について記載する。

高齢者にも易しいICT 機器高齢者支援サービス
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放射光を用いた金属材料熱処理過程のその場解析

電線用の銅線やアルミ線等では、熱処理の温度や時間等の製造条件が特性に大きな影響を与える。当社ではこのような製造条件最適化の強力なツールとして、高い透過能を持つ高強度な放射光X線を用いたその場測定技術を開発してきた。本技術は高効率な製造条件最適化への活用が期待されるが、限られた測定機会や、膨大なデータ処理の点で課題があり、実際の活用は限定的であった。そこで本報告では、当社が保有する住友電工ビームラインに複数の環境制御ステージを導入して測定までの時間を短縮すると共に、大量のデータを測定と並行して自動解析する新たなプログラムを作成することで、解析時間の短縮を実現した結果について述べる。これらの設備、プログラムを用いて銅及び銅合金の熱処理工程を模擬したその場測定を行い、温度変化に伴う軟化挙動の違いを短時間で解析できることを確認した。

放射光を用いた金属材料熱処理過程のその場解析
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車載LED ランプ用低アウトガス電線IRRAX B(K)

自動車のヘッドランプやリアランプには従来ハロゲンランプが使用されてきたが、長寿命や省電力、最大光量までの点灯速度が速いという理由で、近年LED ランプが採用されるようになってきた。車載LEDランプの内部構造は、図1のように筐体内部にLEDランプやドライバモジュールが搭載されており、その配線には自動車用低圧電線が用いられている。LEDランプ内部に使用される電線には、長期間使用してもガラスが曇らない防曇特性が要求されるが、電線被覆は長期間経過するとアウトガスが発生してガラスを曇らせてしまう問題がある。したがって、LEDランプ内配線に使用される電線被覆には低アウトガス性が要求されている。今回、当社独自の配合技術で低アウトガス性を持つ絶縁材料を開発したので紹介する。

車載LED ランプ用低アウトガス電線IRRAX B(K)
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EV 充電器用コネクタ付ケーブルの大出力充電対応(ブーストモード運用)

脱炭素化社会実現に向け、電気自動車(以下、EV)と急速充電器が世界規模で普及している。当社は、EV と急速充電器を接続するCHAdeMO仕様EV充電器用コネクタ付ケーブル(以下、コネクタ付ケーブル)を全世界市場に供給している。近年、EVの車載電池大容量化に伴い、大出力充電のニーズが強まっている。本稿では、冷却を伴わず、大出力充電が実現可能な、ブーストモードの運用方法を紹介する。

車載LED ランプ用低アウトガス電線IRRAX B(K)
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巻頭言:今後も多様化・高機能化する産業用素材の研究開発への期待

昨年1月以降の新型コロナヴィールスによる新型肺炎の蔓延により、100年前に流行したスペイン風邪との比較が何かと話題になった。スペイン風邪では、当時20億人だった世界人口の2%に相当する40百万人以上の人命が失われたという。名前はスペイン風邪だが、第一次世界大戦に参戦したアメリカ兵が米国から欧州に持ち込んだのが感染の淵源だったと言われている。史上初の世界大戦で、グローバルに兵士をはじめとする多くの人々が移動・接触したことで、感染があっという間に拡散したのであろう。第一次世界大戦での死者は軍民併せて15百万人と言われているので、スペイン風邪での犠牲者の方がはるかに多かったことになる。まさに世界中が大変な時代だった。

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航空機部品加工用超硬工具の最新材質

近年、航空機市場では長期的な需要増加が見込まれており、航空機部品製造の高能率化が求められている。航空機のエンジンや構造部品に使用される耐熱合金やチタン合金は難削材に分類され製造コストに占める加工費の割合が高いため、切削工具には高能率化と長寿命化が強く要求される。当社ではこれらのニーズを実現するため、耐熱合金およびチタン合金加工に特化した超硬工具材質を開発した。耐熱合金加工には高温下での圧縮歪量を75%低減した耐熱バインダー超硬合金を開発し、高速・高送り加工での塑性変形と摩耗を抑制し、高能率加工を可能とした。チタン合金加工には耐反応性に優れた新コーティングを開発し、工具への凝着を抑制することにより背分力を30%低減し、工具の長寿命化を実現した。

航空機部品加工用超硬工具の最新材質
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焼結合金・鋳鉄仕上げ加工用スミボロンBN7115

スミボロンCBN工具は、ダイヤモンドに次ぐ硬度及び熱伝導率に加えて鉄に対する低親和性を兼ね備えるcBN粒子を主成分とし、鉄系難削材料の仕上げ加工でコスト低減や加工能率向上に貢献してきた。一方、近年の自動車産業においてHEV、EV化の促進とともに、鉄系焼結合金加工では高い寸法精度とさらなる難削化への対応が、鋳鉄超高速加工では工具の安定長寿命化が要請されている。これらの切削加工における工具損傷解析に基づき、当社は新たな高cBN含有率材種「スミボロンBN7115」を開発した。BN7115は高純度cBN原料およびCo-Al-Cr-WC新結合材を適用することで、cBN粒子間結合力を飛躍的に向上させ、耐摩耗性と耐欠損性を高次元で両立した。これにより、焼結合金加工における加工品位低下や鋳鉄加工における熱衝撃欠損を抑制し、工具の長寿命化に貢献できるものと期待される。

焼結合金・鋳鉄仕上げ加工用スミボロンBN7115
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難削材仕上げ加工用スミボロンバインダレス工具

立方晶窒化ホウ素焼結体(CBN)は、ダイヤモンドに次ぐ硬度と鉄との親和性の低さを特長とするcBNを利用した工具材料であり、主に自動車産業での焼入鋼、鋳鉄や焼結合金の高速仕上げ加工で用いられる。航空機や金型産業などでも使用されているが、製品の軽量化、高出力化のため難削材の使用が増加する傾向にある。また加工精度の向上など高付加価値化が課題となっており、CBN工具に対する長寿命化や高精度化の要望が強くなっている。スミボロンバインダレスは、ナノ~サブミクロンサイズのcBN粒子が直接強固に結合した、従来CBN材種で用いる結合材を一切含まない焼結体である。従来CBN材種より硬度あるいは熱伝導率が高く、航空機、金型や医療産業などで用いられるコバルトクロム合金、チタン合金、ニッケル基耐熱合金等の難削材加工における高能率化、長寿命化を実現する。

難削材仕上げ加工用スミボロンバインダレス工具
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切削加工を見える化するセンサ搭載切削工具

近年、デジタル化の進展に伴い切削加工の自動化や無人化のニーズが高まっている。切削工具にセンサを搭載したセンサ搭載切削工具は加工状態を監視するツールとして期待されている。これは、従来の測定機よりも加工点に近い位置で測定が可能となることから、高感度な測定が実現できる可能性があるためである。当社では、センサ搭載切削工具として、センサ、無線通信装置および電源を搭載した旋削工具と転削工具の開発を進めてきた。本稿では、旋削加工と転削加工におけるセンサ搭載切削工具による加工状態監視について報告する。

切削加工を見える化するセンサ搭載切削工具
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次世代コーティング ナノ積層CVD-AlTiN

切削工具に用いられるセラミックスコーティングには主としてCVDコーティングとPVDコーティングがある。CVDコーティングは耐摩耗性、耐熱性に優れる反面、PVDコーティングに比し靭性で劣る。CVD法を用いたナノメートルオーダーの組織制御により、従来CVDコーティングの耐摩耗性、耐熱性とPVDコーティングの靭性を兼備する次世代CVDコーティング技術を確立し、量産展開を可能とした。本稿ではその特異な組織形態と優れた物性、切削性能を報告する。

次世代コーティング ナノ積層CVD-AlTiN
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アルミニウム合金加工用高能率カッタ アルネックス ANX型

近年、自動車関連の産業では、地球環境保護のため、自動車の燃費性能改善が求められており、部品の軽量化やHV、EV、FCV車の拡大に伴いアルミニウム合金などの非鉄金属材料の使用割合が増加している。これらの部品加工においては、生産性を向上させるため、加工時間の短縮を目的とした高能率加工や、非切削時間短縮のため、取り扱いが容易な工具、切りくず処理性に優れた工具が求められている。さらに、単位面積あたりの生産性向上を目的とした小型加工設備に対応できる軽量工具も、近年では求められている。これらに対応するため、当社はアルミニウム合金加工用高能率PCD※1カッタ アルネックスANX型を開発した。本報ではアルネックスANX型の特長について述べる。

アルミニウム合金加工用高能率カッタ アルネックス ANX型
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耐熱合金加工用研削工具

航空機ジェットエンジンや火力発電用ガスタービンの構造部材であるNi(ニッケル)基耐熱合金は、研削加工において工具の消耗の激しい難削材料である。市場ニーズである工具寿命伸長や高能率加工を達成すべく、当社は専用のCBN電着ホイール「CB Master」を開発し、ジェットエンジン用部品加工時の寿命を既存工具比の5倍に、また、ガスタービン部品加工の能率を1.5倍にした。本稿では、その開発経緯と社内の評価部門であるカスタマーソリューションセンターを通じた本工具の拡販活動について報告する。

耐熱合金加工用研削工具
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高性能なアキシャルギャップモータ実現に貢献する圧粉磁心の高機能化

移動体の電動化や家電・産業機器の高効率化が進み、モータ需要とその高性能化ニーズが高まっている。現在一般的に用いられているラジアルギャップモータに対し、アキシャルギャップモータは薄型で高トルクが得られるため、これらニーズを満たすものとして注目されている。当社ではこれまでに、圧粉磁心を搭載したアキシャルギャップモータが高トルク・高効率であることを実証し、今年度よりアキシャルコアの量産を開始した。アキシャルギャップモータの更なる普及拡大に貢献するため、より低損失な圧粉磁心や生産性に優れる一体ツバ付コア、モータ温度上昇抑制に貢献する薄膜絶縁塗装を開発したので報告する。

高性能なアキシャルギャップモータ実現に貢献する圧粉磁心の高機能化
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高生産性を実現したVVTスプロケット成形体加工技術

近年可変バルブタイミング機構(以下VVT)の高性能化により、VVT構成部品を生産する焼結メーカはより複雑な形状の造形が求められている。その一方で、需要増の要求に答えられる高生産性も求められている。当社はこれらの要求を満たす高い造形性と生産性を併せ持った技術として、粉末を押し固めた成形体を“焼結する前に”機械加工を施す成形体加工技術を適用、量産化した。これにより従来焼結後に機械加工していた箇所を約9倍の速度で加工することができ、大量生産を可能にした。

高生産性を実現したVVTスプロケット成形体加工技術
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厚銅被覆鋼線による高強度電線

IoT化、ドローンの普及に代表される高度情報化社会、少子高齢化に伴うマルチタスクロボットが活躍する近未来社会において、通信電線の高強度化、軽量化ニーズは現在以上に高まることが確実視されている。特殊線事業部では高強度鋼線に厚銅被覆をした導体複合材料であるTCC(Thick Copper Covered)ワイヤーを開発した。TCCワイヤーは他の銅合金や複合材料と比べ高い強度を有し、特に屈曲性に高い優位性を示す。本稿ではTCCワイヤーの特性について報告する。

厚銅被覆鋼線による高強度電線
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張力モニタリングが可能なSmARTストランド

「SmART ストランド」(スマートストランド)は鋼材本体に作用する張力を測定するためのセンサを備えたPC鋼より線である。SmART ストランドは張力測定用センサとして光ファイバが内蔵されており、光ファイバを用いたひずみ計測技術を用いることによりその全長にわたる張力の分布を計測することが可能である。プレストレストコンクリートやグラウンドアンカーにおいては、構造物にプレストレスを与えるPC鋼材の張力を正確に管理、モニタリングできることが構造物の品質向上や維持管理において非常に重要である一方、従来技術では張力計測が可能な箇所が限定されており、ケーブル全体の長期的なモニタリングが困難であるという課題があった。SmART ストランドはPC鋼より線の全長における張力を把握し、施工完了後も計測可能な技術を提供する。本稿ではSmART ストランドを用いた張力計測技術ならびにSmART ストランドの構造、その適用例について報告する。

張力モニタリングが可能なSmARTストランド
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高い電気伝導性・熱伝導性を有する耐熱アルミニウム

カーボンニュートラル、CO2排出削減といった国際的な環境規制強化への変化が加速しており、電源機器や通信機器などの半導体デバイスにおける熱マネージメントが重視されている。軽量で電気伝導、熱伝導が良好なアルミニウム材料は、従来使用されている銅系材料に対する代替ソリューションとして期待されるが、150℃以上の温度域での強度低下するために適用範囲が限られている。当社では、急冷凝固法で得られる粉末アルミニウムを原料として採用することによって、250℃付近の高温まで強度が低下することを抑え、且つ、電気伝導および熱伝導を純アルミニウムに近い水準を維持した新たなアルミニウム材料を開発した。本アルミニウム材料は、導電部品、放熱部品などの軽量化ニーズに対して貢献できると考えている。

高い電気伝導性・熱伝導性を有する耐熱アルミニウム
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NVセンサ用ダイヤモンド素子とその応用の可能性

合成ダイヤモンドは天然ダイヤモンドと比べ、不純物や結晶欠陥が少ないことから、幅広い工業用途で利用されている。また異元素を添加(ドープ)することで電気・磁気的特性も付与できるため、センシングや計測等様々な分野での応用が期待されている。当社は独自の超高圧合成技術を通して、世界最高レベルの高純度・低欠陥ダイヤモンドを製作し、更に日新電機㈱にて電子線照射やイオン注入処理を行い、高感度のNVセンサの製作に成功した。今回、高品質ダイヤモンドの合成方法、更にそれを利用したNVセンサと、その応用可能性について紹介する。

NVセンサ用ダイヤモンド素子とその応用の可能性
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物流MaaS向けオンデマンド対応型配車計画システム

物流事業者に向けた業務支援ツールの一つとして輸配送管理システムがある。従来の輸配送管理システムでは、配車後に計画を変更するためには車両の現在位置や客先への訪問時間帯などを考慮して人手で作業しなければならないという課題がある。そこで、我々は配車後であっても新たな作業の追加などの計画変更がリアルタイムで可能な配車計画エンジンおよびAPIを開発した。さらに、過去の配車実績や現在の作業進捗状況を確認できる動態管理Webアプリを開発した。本稿では、これらの機能と性能について紹介する。

物流MaaS向けオンデマンド対応型配車計画システム
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複数のミリ波レーダによる車両追跡機能の実装と評価

路上事故の削減や、渋滞の緩和のため、道路上の車両を検知するインフラセンサの需要が世界的に高まっている。インフラセンサとしては、広域にわたる道路を走行する車両を検知し、追跡を行うために、複数のセンサを設置し、それらが連携することが求められる。当社はこのようなニーズに対応するため、複数のインフラミリ波レーダを連携させるための機能を開発し、実道路に設置して実験を行い評価した。本稿では、開発した機能と評価結果について報告する。

複数のミリ波レーダによる車両追跡機能の実装と評価
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独自のナノ構造SiGe熱電材料を用いた非冷却赤外線センサ評価

熱電材料を応用した赤外線センサであるサーモパイルは、非冷却、検出における消費電力フリーという特長がある。我々は、このサーモパイルの性能を向上させるため、赤外線検出部に用いられる熱電材料の開発に取り組んできた。感度の向上には、熱電材料の熱伝導率の低減、ゼーベック係数の向上が重要である。我々が開発したナノ構造Si-Ge熱電材料は、独自のナノ構造と共添加技術により、熱伝導率1Wm-1W-1、ゼーベック係数330µVK-1を有する。この新材料を用いてサーモパイルを作製し、赤外線の検出を実証するとともに、本サーモパイルと赤外線レーザを用いたガス検知システムにおいて、大気中のメタンの検出にも成功した。

独自のナノ構造SiGe熱電材料を用いた非冷却赤外線センサ評価
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パイプタイプケーブル引替用トリプレックスケーブルの実線路適用

米国の送電網では、1940年代から鋼管入り電力ケーブル(HPFF又はHPGF)が使われてきた。鋼管には絶縁油やガスが充填されており、老朽化に伴い、鋼管の腐食や漏油が問題化している。HPFF/HPGFケーブル※1は既に製造企業がいない上、都市部の線路では地中に水道・ガス管、通信ケーブルなどが混在することから、鋼管路の除去、新規布設が非常に困難であるため、既設の鋼管路をそのまま活用し、新たに設計されたケーブルシステムに置き換えないといけないという課題があった。本報では米国の既存送電網において、既設HPGFケーブルを撤去し、当社が米国・日本で特許を取得しているトリプレックス形架橋ポリエチレン絶縁ポリエチレンシースケーブル(CETケーブル)の開発・設計を行い、リプレースを完工した成果について報告する。

パイプタイプケーブル引替用トリプレックスケーブルの実線路適用
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枚葉式半導体成膜装置向け高精度温度分布制御システム SumiTune

当社は、5G次世代通信、人工知能自動運転技術、データセンタ用大容量ストレージ等に不可欠な各種半導体の製造工程で使用される枚葉式成膜装置向けに半導体ウエハを加熱するヒータを供給している。半導体回路配線の微細化要求から均質な成膜分布のために、ウエハ面内温度分布の均一化の要求が日々厳しくなっている。これまでのヒータは、同心円状のゾーンに区分けして制御されていたが、均一化を妨げる様々な装置環境因子による周方向の微妙な温度分布ムラをカバーすることができず、均一化に対して限界を迎えていた。この限界を乗り越えるために、マルチゾーン化したヒータとそのヒータを高精度に制御するコントローラを開発したので、報告する。

枚葉式半導体成膜装置向け高精度温度分布制御システム SumiTune
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下水処理場向けアンモニア計による送気量フィードフォワード制御技術

硝化促進の活性汚泥法を対象とした、アンモニア計による送気量の自動制御技術が、地方共同法人日本下水道事業団(以下、JS)の新技術に選定された。本技術により、DO一定制御に比べて概ね10%以上の送気量の低減と、処理水質(アンモニア性窒素濃度)の安定化が期待できる。

下水処理場向けアンモニア計による送気量フィードフォワード制御技術
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間欠テープ心線を用いた高密度マイクロダクト光ケーブル販売開始

近年クラウドコンピューティングや動画配信、5G対応等の進展により、通信トラフィックは急増している。一方、ダクト内スペースの物理的な制約もあり、光ファイバを高密度に収納した細径高密度光ファイバケーブルの需要が増している。欧州、北米等のFTTHでは、一度管路(マイクロダクト)を布設すれば、追加の道路工事等なく追い張り布設でき、経済的なネットワーク構築が可能となる空気圧送用光ケーブルが普及している。この空気圧送用に用いられる細径ダクトがマイクロダクトであり、近年の伝送容量増やFTTH等の進展でマイクロダクト光ケーブルの多心高密度化のニーズが高まっている。当社は従来の外径250μmの光ファイバよりも細径な200μm光ファイバを用いた間欠12心光ファイバテープ心線(以下、200μm間欠12心テープ)を実装した432心以下の空気圧送用光ファイバケーブルを開発し、販売を開始した。

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超小型光ファイバ融着接続機 TYPE-201+

近年のテレワークの定着化、遠隔医療やクラウドサービスの発展に伴い、データ通信量が急増している状況にある。これに対応するため、光ファイバを使用した高速・大容量・低遅延な通信ネットワーク網構築が求められている。一方で増加した工事を効率よくこなすため、ネットワーク構築を担う工事業者から作業の抜本的効率化に対する期待が大きくなっていた。この期待に応えるため、当社は従来機TYPE-201eの特徴であった小型・軽量はそのままに、究極の作業性を徹底追及した新機種、超小型光ファイバ融着接続機 TYPE-201+を開発した。

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住宅用蓄電システムPOWER DEPO Ⅳ

太陽光発電の余剰電力の買取価格は低下が著しく、電気料金を下回っている。このため、太陽光により発電された余剰電力を売るよりも自家消費に利用することが検討されている。夜間の電気料金が安い時に電気を蓄電池に蓄え、昼間の電気料金が高い時に電気を使うことにより、電気料金を節約することができる。また、近年、風水害による大規模停電があり、家で使用できる非常用電源が必要とされている。これらの要求に応えることができる住宅用蓄電システムが注目されている。当社では2017年に住宅用蓄電システム「POWER DEPOIII」の販売を開始し、2020年に「POWER DEPO IV」を開発した。

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直流XLPE ケーブル誕生秘話ほか 矢作吉之助先生の教え ~真実を求めよ~

筆者は、2019年に電気学会 誘電・絶縁材料技術委員会の技術貢献賞である「矢作賞」を受賞した。筆者は、賞の名を戴く故矢作吉之助 教授の教え子であり、ここではいくつかの矢作先生の思い出を紹介するとともに、先生の「真実を求めよ」という教えに従って取り組んだ電力ケーブルの研究開発について記載した。特に、この教えに従い真実を追求した結果、世界最高電圧を誇る架橋ポリエチレン絶縁超高圧直流ケーブルが誕生したともいえる。

直流XLPE ケーブル誕生秘話ほか 矢作吉之助先生の教え ~真実を求めよ~
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光ファイバ50年史

損失20 dB/kmの光ファイバと半導体レーザの室温連続発振が実現し、光ファイバ通信が実用化に向けて歩みだした1970年から、丁度半世紀が経過した。この機会に光ファイバの進化の過程と当社での光ファイバ開発への取組みを振り返る。当社は、黎明期から光ファイバの開発と事業化に積極的に取り組んできた。光ファイバ製造方法として今日世界的に普及したVAD法を基盤技術とし、極低損失光ファイバや超多心光ケーブルをはじめとする高品質光ファイバ・ケーブルを世に送り出し、社会のライフラインとして欠かせない光ファイバ通信網の普及を支え続けている。

光ファイバ50年史
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GaNを用いた車載DC/DCコンバータの小型化

近年、電気自動車やハイブリッド車の普及が進んでおり、これらの車両には高圧バッテリから鉛バッテリを充電するためのDC/DCコンバータが搭載されている。DC/DCコンバータは車両への搭載容易性という観点から小型化が強く要望されている。当社では、GaNデバイスを用いてスイッチング周波数を高周波化(100kHz→500kHz)することにより、DC/DCコンバータを既存品と比べて1/2に小型化した。

GaNを用いた車載DC/DCコンバータの小型化
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船舶用レーダー向けX帯300W GaN HEMT

従来船舶レーダーの送信デバイスとしてマグネトロンが使われてきたが、長寿命化、高性能化および電波法令への対応等のため、GaN HEMT※1を用いた固体素子の使用が本格的に始まろうとしている。プレジャーボート向け小出力レーダーから大型商船向け高出力レーダーまでの各種船舶レーダーをターゲットに開発した、業界最高出力の300Wを筆頭とする、内部整合型※2X帯※3 GaN HEMT製品群について報告する。また、これらの製品ラインナップのデモンストレーションを目的とした小型固体化増幅器も試作したので、併せて報告する。

船舶用レーダー向けX帯300W GaN HEMT
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携帯電話基地局向けGaN HEMTの設計指針の検討

近年、携帯電話基地局の小型・低消費電力化への要求の高まりに伴い、効率特性に優れたGaN HEMT増幅器の採用が進んでいる。今後サービスが本格化する5Gの市場においては、データ通信における容量・速度のさらなる向上が求められることから、増幅器の広帯域化に有利なGaN HEMTの存在感がこれまで以上に増していくことが予想される。本報告では、携帯電話基地局向けGaN HEMT増幅器の開発を目的として当社が取り組んでいる、GaN HEMTの電流源に関する評価・解析手法について述べる。従来のI-V測定に代わり、実際のRF動作に近い評価が可能である低周波ロードプル測定を新たに採用し、GaN HEMTの設計指針を探った。また、大信号モデルを用いて、増幅器の高効率化の手法として知られるF級および逆F級動作におけるゲート電圧クリッピングの影響を解析し、効率の制約要因について明らかにした。

携帯電話基地局向けGaN HEMTの設計指針の検討
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50G-EPON 局側装置用受信器

インターネット環境のさらなる向上に対する社会要請にこたえるため、アクセス系光通信網の伝送速度は現在主流の10G級から50G級に向上させる新たな段階にきている。当社はその高速化要求に応えるべく、25.78Gbit/sバースト受信可能なTIAを新たに開発した。このTIAとAPDを内蔵した一波長当たり25.78Gbit/s バースト受信器を世界で初めて開発し、50G-EPON局側装置の光受信部に適用可能であることを確認したので、その特性をここに報告する。

50G-EPON 局側装置用受信器
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世界初のマルチコア光ファイバケーブルの実市街地への敷設と評価

マルチコア光ファイバのコア間の結合特性はファイバの曲げに大きく依存するため、実使用環境での特性評価が重要である。我々はイタリア市街にマルチコア光ファイバケーブルを常設のテストベッドとして開設し、敷設後も良好な光学特性でマルチコア光ファイバが機能することを確認したので、これを紹介する。

世界初のマルチコア光ファイバケーブルの実市街地への敷設と評価
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40km 伝送を実現する5G 無線アクセスネットワーク用波長多重伝送方式

当社では第5世代移動通信システム(5G)の展開に伴って増加する無線基地局を少ない光ファイバで効率的に接続するための波長多重集線装置を開発している。5G無線アクセスネットワークでは、安価に25Gイーサネット信号を波長多重で40km伝送できる技術が望まれる。本稿では実現技術として、伝送レートが25.8Gbit/sの25Gイーサネット信号を2チャネルの12.9Gbit/sハーフレート信号に分割して伝送するハーフレート伝送方式を紹介する。

40km 伝送を実現する5G 無線アクセスネットワーク用波長多重伝送方式
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大電流高信頼性パワーデバイスを実現する高品質SiC エピタキシャル基板EpiEra

SiCパワーデバイスはSiに代わる次世代デバイスとして市場拡大が進んでおり、大電流かつ高信頼性が要求される車載用などの用途においては、SiCエピタキシャル層の高品質化が特に重要である。SiC基板に含まれるBPD(Basal Plane Dislocation: 基底面転位)はバイポーラデバイスにおける順方向通電動作時に積層欠陥拡張を引き起こし、デバイス信頼性の致命的な劣化原因となるが、近年、再結合促進層と呼ばれる高窒素濃度のエピタキシャル層の導入による積層欠陥抑制技術が提案されている。本稿では、PL(Photoluminescence: フォトルミネッセンス)イメージング測定法による受光フィルターの検討を通して、再結合促進層中のBPD評価手法を新たに確立するとともに、BPDの極めて少ない再結合促進層を備えた6インチSiCエピタキシャル基板を新規開発した成果について報告する。加えてドリフト層のBPD品質、表面欠陥品質との両立も確認しており、開発したエピタキシャル基板は大面積素子における安定したデバイス特性を実現するものである。

大電流高信頼性パワーデバイスを実現する高品質SiC エピタキシャル基板EpiEra
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AIを用いたメガソーラー異常診断システム

メガソーラー発電所を長期に亘って安定稼働するために、保守点検の高度化、特に目視点検が主流である直流電圧部分の保守効率化が望まれている。当社は、複数枚の太陽電池モジュールが直列して構成されるストリング毎の発電データを、AIを用いた独自の手法で解析し異常判定するシステムを開発した。検出された異常は発電所管理者に日々のメールで異常の種類と緊急度とともに通知され、効率的な保守に活用される。さらに、このシステムを活用し異常に対する点検方法や対策なども提示する診断サービスも提供しており、その事例も紹介する。

AIを用いたメガソーラー異常診断システム
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再エネ導入促進、電力レジリエンス強化を実現する直流配電システム

再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入拡大や半導体・蓄電池性能の進歩を背景として、再エネと蓄電池を組み合わせた『直流配電システム』が経済的かつ環境指向の次世代電力供給システムとして注目されている。また近年、地球温暖化の影響が指摘されている中で、台風や大雨などの自然災害による停電への対策として、直流技術を活用した電力レジリエンス強化、BCP※1対策への期待も大きい。 本稿では、直流技術の研究開発に着手した背景、ならびに日新アカデミー研修センター(日新電機㈱の研修施設)に構築した直流配電実証システムの構成および実証試験について紹介する。

再エネ導入促進、電力レジリエンス強化を実現する直流配電システム
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軟質金属との摺動に最適な自動車エンジン部品用DLC 膜「HC-DLC」

当社では、アークイオンプレーティング法により作製されるDLC※1膜に、水素を含有させた新膜「HC-DLC」を開発した。適切な量の水素を含有させたことで、MoDTC※2を含有したエンジンオイル中においても耐摩耗性と耐焼き付き性が非常に高く、さらに軟質金属に対する相手攻撃性が極めて低いという、これまでにない特徴を持たせることに成功した。軟質金属と摺動する部品であるピストンピンにHC-DLCを適用することで高い性能が得られることから、2019年秋に量産が開始され、さらに次世代高効率エンジンへの適用検討が進んでいる。

軟質金属との摺動に最適な自動車エンジン部品用DLC 膜「HC-DLC」
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ビスマス系高温超電導線材と応用製品の実用化

1986年末に高温超電導体が発見されて以来、当社ではパワー応用を目指した高温超電導線材の高性能・長尺化に取り組み、特に、ビスマス系2223線材(Bi2223線材)開発では、開発初期より長尺化、高性能化で世界をリードしてきた。また、線材開発と並行して各種応用製品の開発にも取り組み、マグネット、電力ケーブルなどで実用レベルの応用機器が開発されるに至っている。電流リード応用においてはMRI用を始め、商業化された応用機器に組み込まれる例も増えてきた。本稿では、最近のBi2223線材の開発・製品化状況及び線材の周辺技術として今後の用途拡大に重要な接続技術、大電流導体化技術、並びにBi2223線材を用いた各種応用機器の開発・製品化状況を紹介する。

ビスマス系高温超電導線材と応用製品の実用化
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2段階多変量スペクトル分解法を用いた4次元ビッグデータ解析

材料の研究開発においては化学種の3次元的な分布の把握が多くの場合で重要であり、その情報を豊富に含む分析4次元ビッグデータの有効活用が今後重要な鍵となる。我々は「2段階多変量スペクトル分解法」という新しいデータ解析手法を開発し、4次元構造のデータを直感的に理解できる形で表現することに成功した。本手法は、2回の多変量スペクトル分解およびその間の「2値化」処理を行うことが特徴である。薄膜サンプルの飛行時間型二次イオン質量分析法によって得られたデータに本解析手法を適用し、複雑な3次元的微細構造を理解することができた。従来のデータ表現法と比べ、2段階多変量スペクトル分解法を用いることで4次元の分析データが明瞭に、かつ理解しやすくなることがわかった。

2段階多変量スペクトル分解法を用いた4次元ビッグデータ解析
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粉末冶金への粉体シミュレーションの適用

粉末冶金製品に求められる高い寸法精度への要求に応えるべく、製造プロセスの設計支援として粉体シミュレーション技術の開発に取り組んできた。粉体シミュレーションは、粉体を構成している個々の粒子の運動を計算することにより、粉体の挙動をマクロに解釈するためのものである。本報告では原料粉末の粉砕工程、金属粉末の給粉工程に対して適用した事例を紹介する。粉砕効率はボールミルに投入されるボール同士の衝突エネルギーから予測できるが、衝突エネルギーを精度良く予測するには個々のボールについて複雑な衝突過程を伴う運動を正確に再現する必要があるため、スーパーコンピュータを利用することで膨大な数が投入されるボールの運動を解析できるようにした。今回、粉砕性の改善を目指して、粉砕条件を変更したときの衝突エネルギーの変化を予測する解析技術を開発した。また、給粉工程の課題である金型内の充填ばらつきが発生するメカニズムの解明を目指して、給粉過程の粉末挙動を可視化する解析技術も開発した。

粉末冶金への粉体シミュレーションの適用
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車載X-バイワイヤ用バックアップ電源

近年、安全性・利便性向上を目的として、バイワイヤ技術の需要が拡大している。普及が進んでいるブレーキ、シフト等のバイワイヤ化は将来の自動運転車にも不可欠な技術であり、今後も市場が拡大していくとみられている。しかし、バイワイヤ技術は制御対象を電気信号で制御することから、鉛バッテリなどの車両電源が異常となった場合に、制御ができなくなる課題がある。住友電工グループの住友電装(株)、(株)オートネットワーク技術研究所は、車両電源異常時にもバイワイヤ制御を継続するためのX-バイワイヤ用バックアップ電源を開発した。本製品は、2020年に発売されたトヨタ自動車(株)のLEXUS UX300eに採用頂いた。

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巻頭言:住友電工の導電材料と機能製品の開発状況

当社グループは、住友の銅事業に端を発する銅線の製造技術および、その応用製品としての電線・ケーブルを礎として、新技術・新製品の開発を継続的に行ってきた。電線・ケーブル技術は、主に「導体技術」と電線の被覆材料に必要な「絶縁技術」から構成されており、これらの技術発展と共に、当社製品の多様化の歴史を紐解くことができる。図1は、両技術をもとに生み出されてきた製品群の中から、本号で取り上げた技術およびその周辺技術の展開の歴史をまとめたものである。「導体技術」に関しては、1897年に当社の前身となる住友伸銅場が開設され、銅電線の製造を開始した。その後、この技術を元に、銅線にワニスの絶縁層を形成した巻線、銅電線と他の金属を層状に積層するクラッド法やめっき法などで複合化した電子部品及び自動車エンジン用導電材料、アルミ電線などが生まれてきた。また、めっき技術からは、金属多孔体が開発された。

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インド高速貨物専用鉄道向けトロリ線

トロリ線鉄道ビジネスの海外輸出案件の中で、インド政府が進めている高速貨物専用鉄道建設プロジェクトを受注し生産納入している。インドのトロリ線市場参入にあたっては、海外規格をベースとした高導電率、かつ高強度といった顧客要求の仕様を満足する必要があった。本要求に対応するため、これまでに培った錫入り銅合金トロリ線の開発経験から、素材鋳造での錫含有量と酸素濃度の制御管理、トロリ線伸線工程の伸線条件変更により開発目標の特性を満たすトロリ線を開発した。本稿ではこれらの技術開発に関して報告する。

インド高速貨物専用鉄道向けトロリ線
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鉄道車両用空気バネのシミュレーション技術

空気バネは鉄道車両の乗り心地を向上させ、安全な高速走行を実現するには必須の部品である。都市人口の増加や環境問題への関心の高まりを背景に、自動車や航空機と比較して輸送効率が高くCO2排出量やエネルギー消費量を抑制できる鉄道に注目が集まっており、世界各国で鉄道網の整備が進められている。世界中に鉄道網が普及する中、路線や環境に応じて多種多様な空気バネ特性が要求されている。そのため、当社ではより迅速な設計を行うことで、より多様なニーズに応えた提案をするべく、革新的な設計手法としてシミュレーションによる設計技術を開発している。今回、空気バネの静的特性と動的特性をシミュレーションで精度良く予測する技術を開発した。

鉄道車両用空気バネのシミュレーション技術
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電動車向けモータの巻線

環境負荷低減に向けた自動車の電動化が急速に進んでいる。電動車用モータのベンチマークを通じてモータ設計技術の変遷と今後の開発の方向性について概括する。さらに、モータ性能の向上に寄与する平角線開発に関して当社の取組状況を報告する。モータ性能向上のために、巻線の皮膜絶縁性の向上、寸法バラツキの抑制に取り組んできた。

電動車向けモータの巻線
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電動車用巻線の品質向上に向けた解析技術

巻線は導体とエナメル皮膜から構成される製品であり、巻線の品質や性能の向上を図る上で、金属(導体)、樹脂(エナメル皮膜)、および、それらで形成される異種材料界面が解析技術の対象である。解析の目的に応じ、新規解析技術の開発、また、最先端の解析技術の活用が必要となってきており、本報では、巻線を構成する導体やエナメル皮膜、および、導体とエナメル皮膜の界面に対する独自の解析技術を報告する。

電動車用巻線の品質向上に向けた解析技術
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モバイル機器スピーカー用銅被覆アルミ線DCCA

モバイル機器の普及に伴い小型スピーカー類に対する音質向上のニーズが高まっている。小型スピーカーのボイスコイルに用いられる自己融着エナメル線には、振動で破断しないための長寿命性と、高音側再生周波数帯域での応答性を高めるための適度な軽量性が求められる。当社が開発した銅被覆アルミニウム線では、アルミニウムの合金化により耐振動疲労断線性を付与した上で、銅とアルミニウム合金の構成比の違いにより導体密度と導電性に対する選択肢の提供を実現した。小型スピーカーの音質に貢献するべく、ニーズを両立しコイル設計の自由度を高めることができた本製品の開発についてまとめる。

モバイル機器スピーカー用銅被覆アルミ線DCCA
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クラッド・めっき技術を応用した複合材料線材

複合材料線材は複数の金属相を有することで異なる機能を比較的安価に合わせ持つことが可能である。当社はクラッドまたはめっき技術を応用した複合材料線材製品群を擁しており、本稿ではその技術と応用例を紹介する。

クラッド・めっき技術を応用した複合材料線材
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高耐熱性金属多孔体の応用展開

富山住友電工㈱の製品であるセルメットは、三次元網目構造を有した金属多孔体であり、高いガス拡散性と高い導電性を有している。固体酸化物形燃料電池(SOFC)の集電体には、ガスの均一拡散性や集電性が要求されるため、セルメットの適用により性能向上が期待できる。これまで量産品ニッケル(Ni)セルメットを空気極用集電体として適用検討してきたが、700~800℃もの高温域では、酸化による不導体化が起こるため、高い出力性能は得られていなかった。今回、新開発したニッケルコバルト(NiCo)セルメットは高温酸化雰囲気中で導電性酸化物を形成することから、空気極集電体に適用しても高い導電性を示す。本報告では、SOFC作動に要求される各種物性を評価し、更に空気極用集電体にNiCoセルメットを適用したSOFCの性能評価を行うことで、NiCoセルメットが高温域作動SOFCの空気極用集電体として有望であることを明らかにしたので、その内容を記載する。

高耐熱性金属多孔体の応用展開
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自動車アルミ電線防食用ホットメルト付き熱収縮チューブ

熱収縮チューブは、収縮加工時の熱で被覆物に収縮して、絶縁、機械的保護などを発現し、エレクトロニクス・航空機等の分野で使用されている。内側にホットメルト接着剤を有する二層構造の熱収縮チューブは、自動車に搭載される電線・ハーネスのジョイント個所での防水用途で広く使用されている。近年、CO2削減のための更なる低燃費化、軽量化が求められる中で、従来の銅電線に代わるアルミ電線が注目されている。アルミ電線の端末部での防食保護用途で新規の二層熱収縮チューブを開発した。

自動車アルミ電線防食用ホットメルト付き熱収縮チューブ
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架橋フッ素樹脂の分子構造と接着状態の解明

PTFE(polytetrafluoroethylene)に代表されるフッ素樹脂は、固体中最小レベルの摩擦性、樹脂中最高レベルの耐熱性・耐薬品性・耐候性・電気特性を持つ優れたポリマーであるが、耐摩耗性が悪いこと、複合材料として用いる場合には基材と接着が難しいことが弱点である。特殊条件下で電子線照射を行うことでフッ素樹脂の架橋反応を促進させ、耐摩耗性を1,000倍近く向上、基材との接着も可能とした製品を開発した。今回、固体NMR(Nuclear Magnetic Resonance)にてその架橋状態を調査すると同時に、SPring-8の硬X線を活用して、基材との接着状態を解明したので、その内容を報告する。

架橋フッ素樹脂の分子構造と接着状態の解明
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電子線架橋技術を応用した高耐久性樹脂ギア

電子線を照射することでプラスチックを架橋させ、特性を向上させる技術を活かし、疲労強度を向上させたエンジニアリングプラスチック部品「テラリンク」について、ポリアミド66での性能向上例を報告する。引張強度などの基礎物性も向上するが、ギアでの疲労強度で比較すると、架橋により3倍以上の荷重に耐えられるところまで改質される。汎用的なギア材料のコンパクト化や、軽量化の観点で進んでいる金属部品からプラスチック部品への代替に対する貢献が期待される。

電子線架橋技術を応用した高耐久性樹脂ギア
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ガス分離に有用なPTFE 製超微小孔径膜 「ポアフロンナノ」

当社が世界に先駆けて開発した延伸ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製多孔質体「ポアフロン」は耐薬品性で高耐熱性の精密ろ過膜として広範な産業分野で利用されている。その中でPTFE膜の更なる微細孔径化が可能となれば、固/液の高精度分離の他に、従来は不可能であった過酷環境・条件下での脱気やガス分離プロセスでの実用化が期待される。当社独自開発のナノサイズ孔径PTFE膜 「ポアフロンナノ」及びそのモジュールは、更なる技術の進展によって高い脱気性能とガス分離性能を獲得した。

ガス分離に有用なPTFE 製超微小孔径膜 「ポアフロンナノ」
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省エネ・省スペース水処理用中空糸膜モジュール・ユニット

従来品に対し、ろ過膜面積あたりの設置面積が小さく、かつ省エネ化した水処理用ポアフロン膜モジュール・ユニットを開発・上市した。成功のポイントは、ポアフロン中空糸膜が有する耐汚染性・耐閉塞性および高強度・耐屈曲性等の特長に加え、膜モジュール構造をカセット型とし、膜モジュールの膜有効長・充填率アップ、汚れ付着を防止する散気気泡の大径化を実現する新たな散気装置の開発である。日本下水道事業団他との都市下水処理での共同実証試験で、膜分離の普及ポイントと言われる電力使用量原単位目標の処理水1m3あたり0.4kWh以下を達成する試算結果を得、さらにその後、複数の現場での実証を経て商品化した。本稿では、開発実証の経緯、製品仕様、適用事例等について紹介する。

省エネ・省スペース水処理用中空糸膜モジュール・ユニット
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運用コスト低減に貢献する法人向けイーサネットアクセス装置

当社で新たに開発した、通信事業者の運用コスト低減に貢献する、法人向けイーサネットアクセス装置を紹介する。従来は異なる装置で実現していたメディアコンバータ機能と集約機能を1装置に備えることで、省電力化と省スペース化を実現した上で、ヒットレスファームウェア更新に対応した。さらに、ゼロタッチプロビジョニングやNETCONF、警報通知、回線監視を備えることで運用管理業務の削減を実現している。本稿では、加えて、障害予兆検知手段として期待されるStreaming Telemetryの実験結果を報告する。

運用コスト低減に貢献する法人向けイーサネットアクセス装置
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データセンタ向け次世代(400 Gbit/s)光通信用VCSEL アレイ

世界的なIPトラフィックの急増に対応すべく、データセンタでは伝送速度400 Gbit/sの短距離光通信の導入が始まっており、そこでは多値変調方式PAM-4に対応したVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)アレイ製品が求められている。筆者らはPAM-4用VCSELを850 nm/900 nmの2波長のラインナップで開発した。本稿では変調帯域向上とノイズ低減に着目したデバイス設計の最適化、開発したPAM-4用VCSELの特性、およびアレイ製品に高く求められる特性均一性の改善について報告する。

データセンタ向け次世代(400 Gbit/s)光通信用VCSEL アレイ
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2.5 MB

USB Type-Cコネクタ対応アクティブ光ケーブル

コンシューマエレクトロニクス市場において、4K・8K等の高精細ディスプレイや没入体験型ヘッドマウントディスプレイが登場してきている。この分野ではコネクタプラグの小型化及び広帯域・長距離伝送に対応したケーブルが必要とされるため、長距離伝送に優れた光ケーブルのニーズが高まっている。しかしながら、光ケーブルはメタルケーブルよりコネクタプラグのサイズが大きくなるという課題がある。今回当社は、汎用小型高速インタフェースであるUSB Type-Cコネクタに対応し、コネクタプラグがメタルケーブルと同等のアクティブ光ケーブルを開発した。本稿では、今回開発したケーブルの設計概要、伝送特性評価結果、信頼性評価結果について報告する。

USB Type-Cコネクタ対応アクティブ光ケーブル
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画像解析処理による自動水流監視システム

貯水施設の運用に関するトンネルや河川の水流変化を自動で監視する手段として、ITV※1監視カメラの映像を取込み、複数の画像解析アルゴリズムを最適な組み合わせで処理する仕組みにより、様々な水流の変化(流入や越流、放流等)を精度よく検知し、自動的に通知することを可能にする自動水流監視システムを開発した。本稿ではそのシステムの概要を紹介する。

画像解析処理による自動水流監視システム
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2.6 MB

ミリング用新材種 汎用ACU2500、鋼用ACP2000/ACP3000、鋳鉄用ACK2000/ACK3000

自動車産業をはじめとする切削加工の現場では、工具寿命向上によるコスト低減、高能率加工による生産性向上、突発的なトラブル抑制による設備の自動化などが求められている。さらに、近年では加工設備集約などの取り組みが進み、1台の加工設備で様々な被削材を加工する現場が増えている。このようなニーズに応えるため、当社では鋼、鋳鉄問わず幅広い被削材のミリング加工で安定長寿命を実現する汎用材種「ACU2500」を開発した。さらに、鋼ミリング加工で高能率加工、安定長寿命を実現する専用材種「ACP2000/ACP3000」を、鋳鉄ミリング加工で高能率加工、安定長寿命を実現する専用材種「ACK2000/ACK3000」を開発した。これら5材種は幅広い被削材に対応するだけではなく、従来材種比1.5倍以上の安定長寿命または2倍以上の高能率加工を実現し、加工コストの大幅低減および生産性向上を可能にした。

ミリング用新材種 汎用ACU2500、鋼用ACP2000/ACP3000、鋳鉄用ACK2000/ACK3000
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4.9 MB

鋼旋削用コーテッドサーメット材種T2500Z

自動車・産業機械に代表される製造業の鋼切削加工の分野では、地球環境への負荷低減および加工コストの低減を目的として、加工条件の高能率化が年々進んでいる。また、切削工具に用いられるサーメット材料は、鋼との親和性が低いことから高い加工面品質が得られる特長があり、特に仕上げ加工に多用されている。一方、高能率化による加工条件の過酷化に対応するため、サーメット工具に対する長寿命化と良好な加工面品質の両立が強く要求されている。そこで当社では、このような市場ニーズを背景として、長寿命かつ優れた加工面品質を実現する新たなサーメット工具材種「T2500Z」を開発し、製品化した。T2500Zは鋼旋削加工において、当社従来品比で2倍の寿命を達成しており、ユーザーの高能率化ニーズに応えることが可能となった。

鋼旋削用コーテッドサーメット材種T2500Z
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2.5 MB

独自共添加法によるナノ構造SiGe 熱電材料の性能向上の実証

熱電材料を用いた発電技術は、排熱から直接電力に変換することが可能であり、持続可能なエネルギー源となり得るため、低炭素社会に向けたエネルギー材料技術として期待されている。しかし、熱電変換効率に直結する熱電性能指数ZTの目標値が自動車排熱発電で4以上であり、現状、到達することは極めて困難であると見られている。我々はこの大きな課題を、ナノ構造の精密制御、および材料の電子構造の変調により打破すべく、研究開発を行っている。これまで我々は、Si-Ge熱電材料にナノ構造制御を適用し、従来比1/7倍となる低熱伝導率を実現し、材料性能を向上させてきた。今回、更に性能を向上させるべく、電子構造を有効に機能させる独自技術として、共添加法、即ち①Au添加による電子構造の制御に加え、②B添加によるフェルミ準位の制御を共に行う手法を提唱し、同型従来材料対比で世界最高となる材料性能指数ZT=1.38(従来0.9)を実証したので報告する。

独自共添加法によるナノ構造SiGe 熱電材料の性能向上の実証
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1 MB

高温(200℃)動作が可能な中赤外量子カスケードレーザ

量子カスケードレーザ(QCL)は、小型、高速、狭線幅等の優れた特長を持つことから中赤外ガスセンシング光源として期待されている。ガスセンシングへの実用化には、高感度センシングや複数ガス成分を一括で検知するために単一モード性やモードホップフリーな広帯域の波長可変幅がQCLに求められる。QCLの波長可変幅拡大には、動作温度を向上させることが有効である。そこで今回我々は独自の歪補償コアを設計し、さらに埋込ヘテロ(BH)構造を導入することで、高温で動作する分布帰還型(DFB)-QCLを開発した。その結果、パルス駆動において-40℃から200℃の範囲でモードホップのない単一モード発振が得られ、単一導波路のみで波長可変幅123 nmを実現することに成功した。今後、本QCLを光源に用いたガスセンシング手法の開発に取り組む。

高温(200℃)動作が可能な中赤外量子カスケードレーザ
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1.6 MB

高強度外被を有する超多心光ファイバケーブル

近年クラウド・コンピューティングの普及に伴い、基盤となるデータセンターネットワークで通信されるデータ量が増大してきており、より超多芯で高密度なケーブルの需要が高まっている。当社は世界で初めて3456心以上のケーブルの製品化に成功し、多数の顧客へ納入している。一方、海外テレコム市場においても管路の制約等から光ファイバケーブルの多心高密度化が進んでおり、2000心相当の光ファイバケーブルのニーズが出てきている。海外テレコム用途では既存線路との接続性を重視する顧客も居り、現行超多心ケーブルで用いているMFD(Mode Field Diameterの略、光学的なコア径の意味)の中心値が8.6umの曲げ強化型シングルモードファイバ(ITU-T G.657.A1, G.652.D準拠)よりも汎用ファイバとして用いられているMFD9.2um中心のITU-T G.652.Dファイバの要望がある。さらにアジア等の屋外配線ではネズミ等の齧歯類対策のため、鋼テープ外装付光ファイバケーブルのニーズが高い。そこで今回は、MFD9.2umの汎用ファイバを用い、高密度性を実現するため、間欠8心リボン構造を採用した鼠

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新型多心光ファイバ融着接続機 TYPE-72M12

近年、クラウドサービスの発展により、世界各国でデータセンタ構築が急務となっている。データセンタで採用される光ファイバケーブルには、数千心の光ファイバが実装されており、その心線数も1728心から3456心に増加するなど、高密度化のトレンドが顕著である。このような心線数の増加に伴い、工事業者からは多心ファイバの一括融着による効率的な作業への期待が高まっている。この新たなユーザ課題に応えるために、接続・補強時間の削減、作業負荷の軽減機能を特長とした新機種、多心光ファイバ融着接続機 TYPE-72M12を開発した。

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0.5 MB

レドックスフロー電池 最近の開発動向

地球温暖化の進展に伴い、太陽光・風力を初めとする再生可能エネルギーの導入が推進され、電力系統安定化対策として大容量蓄電池の導入が重要になっている。レドックスフロー(RF)電池は、こうした蓄電池の1種であり、活物質※1を含む水溶液中のイオンの酸化還元(レドックス)反応※2によって充電および放電を行う蓄電池である。大容量化に適し、長寿命で安全性が高いことなどの優れた特長を有している。当社では、1985年からRF電池の開発に着手し、これまでに約30件の納入実績がある。世界的な動きとして、特に2010年頃から米国、欧州、中国等で開発が活発に進められるようになり、最近では、有機化合物を使う新規な電解液などの報告も多く見られる。本稿では、RF電池の開発経緯、大容量システムの実証状況、最近の開発動向を紹介する。

レドックスフロー電池 最近の開発動向
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シリコンフォトニクスチップ接続用90度曲げ光ファイバアレイ

近年、データセンタ向けのシリコンフォトニクス(SiPh)型光トランシーバの市場が急速に拡大している。我々は、SiPh型光トランシーバに必要不可欠な光接続部品として、90度曲げ光ファイバアレイ(FlexBeamGuidE、以下FBGEと略する)を開発した。FBGEは、曲げファイバに応力緩和プロセスを適用することで、高さ3.8mm以下のトランシーバモジュール内に収容可能な省スペース性と、0.5dB以下の低損失性を両立したものであり、高い信頼性を有するSiPhチップ向け光接続部品であることを確認したので紹介する。

シリコンフォトニクスチップ接続用90度曲げ光ファイバアレイ
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間欠テープ心線を用いた空気圧送用高密度マイクロダクト光ケーブル

本稿では、従来の外径250µmの光ファイバよりも細径な200µm光ファイバを用いた間欠12心光ファイバテープ心線(以下、200µm間欠12心テープ心線)を実装した432心以下の空気圧送用光ファイバケーブルの設計、製品ラインナップおよび施工上のメリットについて報告する。200µm間欠12心テープは柔軟性と一括融着接続性を両立するため、長手方向、幅方向に間欠的にスリットが入った構造を採用しており、スリット部と非スリット部の比率およびピッチを最適化することにより、両特性を満たすテープ心線を開発した。同テープ心線は200µm間欠テープ同士だけではなく、従来の250µmテープ心線との一括接続も可能である。尚、ケーブル構造は欧州等で主流のマイクロダクト用途に用いるため、細径、軽量かつ低摩擦な構造を採用した。今回は開発したケーブルの空気圧送特性を評価するため、ケーブル圧送試験を行ったので、その結果も報告する。

間欠テープ心線を用いた空気圧送用高密度マイクロダクト光ケーブル
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1.2 MB

400Gbit/s伝送用小型4ch集積光受信モジュール

高機能な携帯端末の普及やインターネットを利用したサービスの多様化に伴うデータ通信量の急増に対応するため、光通信網では伝送速度100Gbit/sの光トランシーバが導入されている。更なる伝送容量の拡大に向けて、伝送速度400Gbit/sの光通信規格の標準化が進められており、対応する光トランシーバの開発も活発に行われている。当社は、100Gbit/s用4ch集積光受信モジュールをベースに、400Gbit/s小型光トランシーバに搭載可能な4ch集積光受信モジュールを開発した。本稿では、その構造と諸特性について紹介する。

400Gbit/s伝送用小型4ch集積光受信モジュール
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2.2 MB

GaN HEMTを用いた携帯電話基地局向け広帯域・高出力・高効率アンプ

GaN HEMTは高出力・高効率かつ広帯域という特長があり、近年は携帯電話基地局向けにシェアを伸ばしている。LDMOSと比べ、GaN HEMTは広帯域化により適しているため、市場要求であるマルチバンド対応高出力基地局への貢献が期待される。本報告では、当社のGaN HEMT技術を用いて開発した内部整合回路付きGaN HEMT、およびそれを用いた高出力・広帯域・非対称ドハティアンプの開発結果を報告する。180Wチップを2個搭載したトランジスタの内部回路は、広帯域特性を満たしつつ小型パッケージ内に実装できるよう、高誘電体基板を用いて構成した。このトランジスタを3個用い、LTEのB1、B3バンドで動作するように回路を工夫した非対称ドハティアンプを設計、試作し、1.8-2.2GHzの広帯域において、最大出力電力59.2dBm、8dBバックオフ時の効率50%以上を実現した。

GaN HEMTを用いた携帯電話基地局向け広帯域・高出力・高効率アンプ
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2.3 MB

クラウド型サーバによる分散型エネルギーリソースの最適制御

次世代の電力システムとして、分散型エネルギーリソースを束ねて遠隔・統合制御することで、仮想的な発電所のように機能させるバーチャルパワープラント(VPP)と呼ばれる仕組みが期待されている。当社はこの仕組みの中核となるリソースアグリゲーションサーバ(sEMSAサーバ)を開発し、2020年以降に創設される新たな電力市場への参入を目指し、システム構築とエネルギーリソース拡大を推進している。本稿では当社が開発したsEMSAサーバの特徴と、VPP及び太陽光発電の出力制御に関する実証事業への導入事例について紹介する。

クラウド型サーバによる分散型エネルギーリソースの最適制御
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表面形状を溝型としたアルミ導体低風圧絶縁電線

電柱に架設される架空配電線として、銅導体に架橋ポリエチレンを被覆した絶縁電線が広く用いられているが、銅に比べ軽量で地金相場が低位安定しているアルミに導体を置換える動きがある。単純な置換えでは、銅とアルミの導電率の差があることから、同一の電流容量を確保するためには太径化が必要となるが、太径化に伴い電線に架かる風圧荷重が増大し、電柱など支持物の建替えも必要となる場合がある。当社では、電線の表面被覆に溝を設けることにより、銅導体品に比べて太径化しても風圧荷重が同等以下のアルミ導体低風圧絶縁電線を開発した。この低風圧電線は、都市部の風を想定した28m/sおよび沿岸部の台風を想定した40m/sの2つの風速に対し低風圧効果を有することに最大の特徴がある。当該品は、電気的特性や、コネクタなどの付属品との適合性・架線作業性も確認し、既に実線路で適用されている。

表面形状を溝型としたアルミ導体低風圧絶縁電線
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需要家側の電力資源をピークカットとBCPに活用する「システムUPS」

「システムUPS」とは、需要家の電力震源である非常用発電機に蓄電池システムを組み合わせて、ピークカットとBCP(瞬低・停電対策)の両方を実現するエネルギーソリューションシステムである。SPSS(Smart Power Supply Systems)事業の一つとして新たな顧客価値を提供するソリューションシステムを目指し、日新電機㈱の前橋製作所にて実証検証中である。本稿にて開発・実証状況について報告する。

需要家側の電力資源をピークカットとBCPに活用する「システムUPS」
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1.7 MB

次世代半導体材料Geの浅接合形成を可能にするイオン注入技術

シリコンに変わる次世代半導体材料としてゲルマニウム(Ge)半導体が注目されている。Ge半導体は高速動作が実現できる一方、プロセス技術については多くの課題がある。課題の一つが接合形成技術であり、本稿では、Ge基板中にドーパントと錫(Sn)を共イオン注入することで拡散を制御し浅接合を形成できることを報告する。

次世代半導体材料Geの浅接合形成を可能にするイオン注入技術
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2.3 MB

難削材旋削加工用材種「AC5000S」

近年、航空機、石油ガス、医療、自動車産業等において、その機器や部品には耐熱性や耐食性に優れるNi(ニッケル)基、Co(コバルト)基、Ti(チタン)合金等の材料が多く使用され、その使用量は今後大幅に増加することが見込まれている。一方、これらの材料を切削加工する場合、被削材自体の高温強度が高いことや工具の刃先に溶着しやすいことなどから、工具の寿命が著しく低下する問題がある。そこで当社ではこのような難削材の旋削加工において、安定長寿命かつ高能率加工を実現する新しい工具材種「AC5015S」および「AC5025S」を開発した。このAC5000Sシリーズは難削材旋削加工において当社従来材種と比較して2倍以上の長寿命または高能率加工を実現し、加工コストを大幅に低減させることが可能となった。

難削材旋削加工用材種「AC5000S」
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ナノ多結晶ダイヤモンドの耐摩工具への応用

近年半導体向けボンディングワイヤ、医療線等の線材の高精度化に伴いダイヤモンドダイスに求められる品質レベルが高まっており、「高い耐摩耗性」、「真円度維持性」、「線表面粗度維持性」等の特性向上への要求が増々厳しくなっている。それらを達成すべく住友電気工業㈱にて開発されたナノ多結晶ダイヤモンド(スミダイヤバインダレス)をダイスのコア素材として用いた新たなダイス、「BLPCDダイス」を開発した。その性能評価結果を報告する。

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2.1 MB

熱間押出ダイス用モリブデン合金“MSBシリーズ”

高融点金属であるモリブデン(Mo)あるいはタングステン材料の使用環境が近年過酷になっており、さまざまな形状や寸法の材料における機械的特性の向上ならびに製品における寿命および信頼性の向上の要求がますます強くなっている。そこで我々は、Moに硬質粒子を添加することによって、熱間押出ダイスを含む塑性加工工具用に新しいMo合金である“MSB”を開発した。このMSBは従来のMo合金に比べ1000℃以下において優れた機械的特性を示した。さらに、MSBにチタン合金を添加することによって、より高温域で優れた機械的特性を示す合金“T-MSB”を開発した。 本研究で開発した“MSBシリーズ”を黄銅の熱間押出ダイスとして使用した結果、従来Mo合金ダイスの2.5倍以上の寿命を示した。

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2.7 MB

STEMスループット向上のためのFIB自動化機能活用

化合物半導体デバイスの開発・製造では、その出来栄えや特性評価に原子レベルでの構造解析が求められる。この評価手法には走査透過電子顕微鏡(STEM)の活用が欠かせない。ところが、STEMの試料作製では集束イオンビーム(FIB)加工装置により試料厚を100 nm前後に薄くする必要があり、熟練の技術者が作業しても迅速に必要な試料数を作製できないという課題があった。これに対し我々はFIBの自動化機能を用いたスキルレス化、無人運転化による処理能力の向上を目指した。当社では多品種のデバイスを開発・製造しており、各デバイスの解析目的に応じた試料作製が必要だが、それぞれの試料作製工程で自動化条件を選定し、確立した自動化機能を組み合わせることで、迅速に多くの試料作製が可能な体制を構築した。これによりSTEMのスループットを向上し、迅速に試作と評価のサイクルを回すことで、開発加速、品質向上を進めている内容を報告する。

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1.2 MB

レーザ溶接対応 電池配線モジュール

2019年 7 月・SEI テクニカルレビュー・第 195 号 631. 概 要近年、燃費・排ガス規制、ZEV規制等の強化により電動化車両(EV、PHV、HEV)の普及が加速している。これら電動化車両は、モータ駆動用の電池パックを搭載しており、多数の電池モジュールを接続して高電圧、高容量を達成している。電池モジュールは、積層された複数の電池セルの電極間を電池配線モジュールのバスバーによって直列、並列に電気接続され、また各電池セルの電圧を監視するため、電池配線モジュールの電線を介して制御ユニットに接続される(図1)。住友電工グループの住友電装(株)、(株)オートネットワーク技術研究所は、電池モジュールの小型化を目的として、電池セル間接続をレーザ溶接に対応した電池配線モジュール(写真1)を開発した。本製品は、2019年に発売された日産自動車(株)のリーフe+に採用いただいた。

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光ファイバ温度分布計測装置FTS3500

当社は保守監視システムの要素技術の一つとして自社製品である光ファイバ温度分布計測装置「オーピサーモ(OPTHERMO)」を保有している。オーピサーモにはFTR3000(短距離・低価格)とFTR3000X(長距離・高性能・高価格)の2機種のラインナップがある。特にFTR3000は機能を抑えることで、同等製品で国内最安価を実現している。同機は市場投入から約10年が経過しているが、その後の市場環境の変化に伴い、機能向上や変更が必要となった。そこで今回、国内最安値を維持しつつ、性能を向上させたFTS3500を開発したため、本稿で紹介する。

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0.8 MB

アルミニウム合金加工用高能率カッタALNEX「ANX型」

近年、自動車産業などでは地球環境保護のため、自動車の燃費性能改善が求められており、部品の軽量化やHV、EV、FCV車の拡大に伴いアルミニウム合金などの非鉄金属材料の使用割合が増加している。これらの部品加工においては生産性を向上させるため、加工時間の短縮を目的とした高能率加工や、非切削時間短縮のため、取り扱いが容易な工具、切りくず処理性に優れる工具が求められている。さらに、単位面積あたりの生産性向上を目的とした、小型加工設備に対応できる軽量工具も、近年では求められている。これらに対応するため、当社はアルミニウム合金加工用高能率PCD(多結晶焼結ダイヤモンド)カッタALNEX「ANX型」を開発した。ここではALNEX「ANX型」の特長について紹介する。

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0.9 MB

万能・高精度隅削りカッタSEC-ウェーブミル WEZ型

フライス工具は外周、端面もしくは側面に工具切れ刃を備えた切削工具であり、これが回転運動することで、様々な部品の加工が行われる。現在ではその切れ刃となるインサートを交換する工具が一般的に広く使用されており、平面削り加工、隅削り加工、側面加工、溝加工、穴拡げ加工、傾斜加工、ヘリカル加工等の様々な加工に用いられている。一方、機械加工の分野で部品に要求される寸法精度や加工品位は年々厳しさを増しており、工具に対しても高い加工面粗さや壁面精度の性能が求められている。また、軽量化を目的とした剛性の低い薄肉部品や固定が困難な複雑形状の部品が増加しており、鋭い切れ味を持つ工具の需要が高まっている。今回開発した「SEC-ウェーブミル WEZ型」(以下WEZ型、写真1)は広範な加工用途に使用可能で加工品位と切れ味に優れ、高い加工精度と切れ味を持ち、加工面粗さや壁面精度の向上、および生産性の向上に貢献する。

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1.3 MB

22Vに向けた自動車ビジネスへの取り組み

現在、自動車業界では、CASEと言われる100年に一度の大きな変革期に入り、次世代の車社会に向けた研究開発が加速している。一方、世界の自動車販売台数は継続して増加すると共に各国の環境規制強化により環境対応車が大幅に増加すると予想される。

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1.7 MB

将来の車載電子プラットフォーム

近年、クルマ及びクルマを取り巻く環境が急激に変化し出している。これまでの「走る」「曲がる」「止まる」に「つながる」が加わることで、クルマの価値の変化、すなわち単なる移動手段から移動+社会端末へと発展し、付加価値がユーザー個人から社会全体の価値へ広がってくる可能性が出てきている。2030年代のクルマ社会に向け、新たな産業を生み出す社会端末となることで、経営資源としての価値が見いだされる可能性もある。そこで従来のクルマとしての機能価値に加え、新たな社会ニーズに対応するための基盤技術の構築が必要となってくる。本稿では当社が有する社会インフラ技術と車載技術を融合させ、コネクティッドカー社会に向けた新たな基盤技術として開発を推進している次世代の車載電子プラットフォーム(以下、電子PF)について概説する。

将来の車載電子プラットフォーム
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2.9 MB

アルミハーネス拡大に向けた開発

近年自動車のCO2削減要求が益々厳しくなり、ワイヤーハーネスの軽量化が切望されている。通常の銅電線の代わりにアルミ電線を 使うことで高い軽量化効果が得られるが、低い導電率と引張強さ、強固な絶縁性酸化被膜、腐食が懸念点としてあげられる。この懸念点を払拭するため、導電率と引張強さを両立させたアルミ合金、強固な絶縁性酸化被膜があっても低い接触抵抗と電線保持力を維持できる電線の端末接続や分岐接続用圧着端子、端子の電線かしめ部の銅露出部に新防食剤を塗布することで腐食を防ぐ(防食)技術を新たに開発した。本稿では、これらの技術開発について報告する。

アルミハーネス拡大に向けた開発
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2.4 MB

車両シミュレーションと実車検証を統合するデジタルツイン環境の構築

近年、自動運転に代表されるように自動車の制御プログラムは複雑化が進み、同時に環境規制の強化を背景にした電動化の進展によりパワートレインも多様化している。こういった中でも開発期間は短縮され、サプライヤに対しては車両目線での提案が求められている。当社では機械系と電源系を連携した車両シミュレーション技術や、乗り心地と電費のトレードオフを検証する技術を開発してきた。さらに、車両目線でのシステム設計・提案力を強化するため、車両全体を模擬したシミュレーション技術開発を進めており、今回はEV自動充電システムを題材にして実車と連動した仮想環境(バーチャル車両)を構築したので紹介する。

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1.6 MB

車載Ethernet物理層シミュレーション技術

近年、自動車には自動運転を含む高度運転支援システムの普及が進み、それに伴う通信量増大により、車載ネットワークに高速な車載Ethernetが導入されつつある。安全性確保の観点から、車載ネットワーク製品は熱やノイズ等厳しい条件下での通信信頼性が要求されるため、EMC性能が重要な指標の一つとなっている。しかし、これまでの試作によるEMC対策には、EMC性能を確保するために、多くの開発期間や、開発コストが費やされてきた。そこで、コネクタ、ワイヤーハーネス、ECU等から構成される車載Ethernet通信システムの物理層モデルを構築し、各条件下における通信システムのEMC性能を効率的に検証するシミュレーション技術を開発した。

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3.2 MB

HEV/EV用ハーネスとコネクタ~パイプハーネス パワーケーブル ダイレクトコネクタ~

この約四半世紀、CO2排出量増加による地球温暖化問題に対応するため、自動車業界ではHEV(ハイブリッド自動車)などの開発が活発に行われている。更に近年では内燃機関を使用しないEV(電気自動車)の開発が加速している。電気自動車は主に高圧バッテリ、インバータ、モータからなる電気駆動系で走行し、走行時にCO2を排出しないため環境問題の解決に大きく貢献できる。当社はこれまで電気駆動系に使用される高圧ハーネスや高圧コネクタを開発・製造しており、多数のHEVなどに採用されている。本稿では、EVにも適用可能なHEV用開発品として、高圧バッテリとインバータを接続するアルミ電線に適用したパイプハーネス、インバータとモータを接続するパワーケーブルとダイレクトコネクタを紹介する。

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2.2 MB

HEV/EV用昇圧リアクトル

近年、環境への配慮、省エネ志向、原油高騰化などからハイブリッド自動車、電気自動車など自動車の電動化が急速に進んでいる。このような電動化した自動車をさらに普及させていくためには、電動化するためのシステムの小型・軽量化が必要である。一方、ガソリン車並みの走行性能、加速性能を実現するため、システムの高電圧化も必要である。そこで、バッテリ電圧を昇圧するためのコンバータ(昇圧コンバータ)の採用事例が増えている。当社では昇圧コンバータの基幹部品の1つであるリアクトルに新しい磁性材料および新しい放熱構造を適用し、従来と比較して同等性能で10%の小型・軽量化を達成した。

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1.5 MB

HEV/EV用電池内モジュール配線

当社はこれまで電動化車両(HEV※1、PHV※2、EV※3等)向けの高圧関連製品を開発・量産してきたが、今後、中国を中心としたEV市場が急速に拡大していくと予測されており、EV向け製品開発を推進している。EVに搭載されるバッテリーパックは、航続距離確保のための大容量化、搭載セル数の増加が進んでいることから、パック内部品に対してより一層の省スペース化が求められている。またバッテリーパックの安全性についても、EV普及に伴いより高い安全性が必要となる。本稿では高圧バッテリーに搭載される電池配線モジュールに関して、EVバッテリー対応に向けた当社の取り組みを紹介する。

HEV/EV用電池内モジュール配線
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車載48V電圧コンバーター

近年、世界的に強化されていくCO2排出規制に適合するために、パワートレーンの電動化開発が各国で加速している。48VマイルドHEVはCO2削減の効果が低コストで得られるため、欧州を中心に普及していくとみられている。マイルドHEVで使用されるDC/DCコンバーターは、高出力で高品質な電源性能を求められている。当社では、このような高出力化の要求に対応するために高効率、小型化技術と高い応答性の電源制御技術を開発した。本報告では、これらの技術を導入したDC/DCコンバーターの特長について紹介する。

車載48V電圧コンバーター
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HEV/EV用駆動モータ向け平角線の開発

近年、モータのインバータ駆動に伴うサージ電圧で発生する部分放電が巻線の絶縁劣化を引き起こし、モータの耐電圧寿命が低下することが問題となっている。寿命を向上させるためには部分放電の抑制が必要であり、低誘電率皮膜を適用した高い部分放電開始電圧(PDIV)を有する巻線の開発が求められている。当社は、絶縁皮膜の内部に微細な独立気泡を均一に形成する新規技術を開発することで、画期的な低誘電率巻線の開発に成功した。本開発巻線は従来の巻線を遥かに凌駕する優れた耐電圧寿命を示した。

HEV/EV用駆動モータ向け平角線の開発
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CHAdeMO 100kW超級大出力EV直流充電コネクタ付ケーブル

電気自動車への充電は普通充電(AC)と急速充電(DC)に大別されるが、近年、車載バッテリーの大容量化等を受け急速充電方式の適用が増加している。当社は2011年度よりCHAdeMO仕様50kW級の急速充電コネクタSEVDシリーズを販売開始し、充電器の国内外、特に欧米での普及に伴い、累計27,000台を販売中であり、その操作性、及び安全性において市場より高い評価を得ている。更に当社では大出力要件を示したCHAdeMO仕様書ver.1.2の内容にいち早く対応し、大出力用SEVD-11の販売を2018年初より開始した。

CHAdeMO 100kW超級大出力EV直流充電コネクタ付ケーブル
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車載バッテリ状態推定システム

リチウムイオン電池を搭載する電動車両の増加を受け、電池を安全かつ有効に活用し、効率的に再利用するために、電池の状態を高精度に推定する技術が重要となっている。当社は、車載リチウムイオン電池向けに、電池モデルのパラメータ推定アルゴリズムを組み込んだ電池状態推定ユニットを開発した。本ユニットを実車両に搭載し、推定した電池セル毎の残容量および劣化状態を、サーバに送信するシステムにて評価を行ったので結果を報告する。

車載バッテリ状態推定システム
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車載リチウムイオン電池用タブリード

タブリードは、外装をアルミパウチフィルムとするパウチ型リチウムイオン電池(LIB)に使用される電池セル内部から電気を取り出すためのリード線である。パウチ型LIBは軽量で放熱性が高い特長があり、当社は世界に先駆けてパソコンや携帯電話等の小型電子機器用のパウチ型LIBに使用可能なタブリードを1990年代後半に上市し、高い信頼性を特長に多数の電池メーカーで採用実績がある。近年、電気自動車、ハイブリッド車の性能向上のため、大型化しても軽量にできるパウチ型LIBを搭載するニーズが高まっており、車載用に許容電流を高め、長期信頼性を向上させたタブリードを開発した。

車載リチウムイオン電池用タブリード
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車載大電流SiCトランジスタ

自動車の電動化が進む中、電力制御に使われるパワーデバイスの電力変換効率はますます重要性が増している。現在の主流はシリコン(Si)を用いたパワーデバイスであるが、より高効率なシリコンカーバイド(SiC)の実用化が進んでいる。我々は、その中でも高効率化に有利なゲートを溝(トレンチ)型とした金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を開発してきた。トレンチ構造は低オン抵抗化が可能な独自のV溝型構造を採用し、電界が集中しやすいトレンチ底部には電界緩和領域を導入することで高耐圧を実現してきた。今回、車載用途に必要とされる大電流を満たすため定格電圧1200 V、定格電流200 AのV溝型SiCトレンチMOSFET(VMOSFET)を開発したので報告する。VMOSFETは特性オン抵抗3.4 mΩ cm2、耐圧1660 Vと低オン抵抗と高耐圧を両立した。加えて、電界緩和領域により寄生容量を低減することで高速スイッチングも実現した。

車載大電流SiCトランジスタ
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コネクティッド/自動運転を見据えた交通システム

我が国では、1950年代のモータリゼーションの急速な進展に伴って深刻化した交通事故増大や渋滞問題に対して、官民一体となって対策に取り組み成果を挙げてきた。この中で当社は、東京都に導入された広域交通制御システムの開発を始め、その後の国内における信号制御の発展に主導的役割を果たしてきた。また、培った技術をベースに新興国の交通課題に対処するため、JICAプロジェクトによりカンボジア・プノンペンの交通管制システムの導入等を進めている。さらなる安全性向上に向けては、路車協調型の安全運転支援システムに関する取り組みを行っているところであり、センサや無線通信装置の開発・製品化を行ってきた。今後、コネクティッド・自動運転時代の新たなニーズに対応すべく、AI・シミュレーション技術を活用した次世代交通システムの研究開発にも取り組んでいる。本稿では、住友電工の交通システムに対する過去実績及び将来に向けた取り組みを報告する。

コネクティッド/自動運転を見据えた交通システム
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車載ネットワーク侵入検知システム

2015年に報告されたジープチェロキーに対するサイバー攻撃では、遠隔からなりすましメッセージを車載ネットワークに注入することで車両が不正制御された。コネクティッド・自動運転時代に向けて、車載ネットワークでのセキュリティ対策は重要な課題である。車両においてサイバー攻撃に対する具体的な対策を講じるためには、時々刻々と変化する攻撃をいち早く検知する必要がある。本稿では、車載ネットワークに混入されたなりすましメッセージを、セントラルゲートウェイにおいて検知するための侵入検知システムについて提案するとともに、車載ネットワークのトラフィックデータを用いて評価した検知性能について報告する。

車載ネットワーク侵入検知システム
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Controller Area Network(CAN)の不正送信防止機構の提案

車載制御ネットワークではController Area Network(CAN)が広く使用されており、現在販売される車両に搭載される電子制御ユニットにはセキュリティ上の強化策が十分に搭載されていない。しかしながら、この10年の間にCANに対する多数のセキュリティ脅威事例が報告されている。このため、本稿では、適切ではないメッセージの送信を拒否するように改造された通信コントローラを用いることにより、CANやCAN FDバス上への不正な送信を防止する手法について提案する。

Controller Area Network(CAN)の不正送信防止機構の提案
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700MHz帯ITS無線リソース割当アルゴリズム評価と路側機設置運用法の考案

700MHz帯ITS無線の普及期に向け、路側機が密に設置されるような都市部において、限られた無線リソースを干渉なくかつ効率よく割り当てることで、より多くの路側機の設置を可能とする設置運用方法の考案が必要とされている。今回はシミュレーションを活用した無線リソース割当アルゴリズムの評価結果と、それに基づき考案した設置運用方法について紹介する。

700MHz帯ITS無線リソース割当アルゴリズム評価と路側機設置運用法の考案
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安全運転支援システム向け24GHzミリ波レーダ

交通事故の低減を目指し、路(インフラ)・車協調による安全運転支援システムを開発してきた。本システムの一例として、交差点に進入して右折する車両に対して、横断歩道上の歩行者の存在情報を提供し、ドライバに注意喚起するサービスがある。このたび、当社は、インフラ側の歩行者用センサとして24GHzのミリ波レーダを製品化し、2018年3月から出荷を開始した。本稿では、優れた環境性能に加え、高い歩行者検知精度と広い検知エリアを実現したミリ波レーダについて紹介し、実交差点での評価結果について報告する。

安全運転支援システム向け24GHzミリ波レーダ
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低損失フッ素樹脂基板を用いた車載ミリ波アンテナ

完全自動運転の実現に向けて、車両や歩行者などを検知する装置として、車載ミリ波レーダの役割が今後ますます重要になる。車載ミリ波レーダでは一般的にプリント基板を用いたアンテナが採用されるが、ミリ波信号は伝送損失が大きいため、プリント基板には低損失性能が要求される。当社ではフッ素樹脂を用いた低損失プリント基板を開発しており、ミリ波伝送特性について評価を行った結果、良好な低損失性を示すことを確認した。また本基板を用いたミリ波帯アンテナの設計・試作評価の結果、既存のミリ波向けプリント基板を用いた場合と比較し、アンテナ面積を約40%小型化できることを確認した。

低損失フッ素樹脂基板を用いた車載ミリ波アンテナ
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EV/PHVを活用した仮想発電所(VPP)システム

当社は、関西電力㈱・日産自動車㈱と共同で、関西電力事業所・家庭にある電気自動車(EV/PHV)60台に対し、IoTを用いて一斉に充電制御し電力需給を調整する仮想発電所(VPP: Virtual Power Plant)実証実験を行った。この仕組みにより、今後増大する再生可能エネルギーの出力変動を吸収して再エネを安定的に有効活用するとともに、電力需給調整に電気自動車のバッテリーを活用することで、電気自動車に新たな価値を提供することを目指す。

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車載フレキシブルフラットケーブルの高耐熱化

フレキシブルフラットケーブルは、エレクトロニクス分野で電子機器の配線材として広く利用されているが、近年EV・PHEV車や先進運転支援システム(ADAS)関連装置の装着車の増加により、これらのシステムを構成する電子機器にもフレキシブルフラットケーブルの採用が進んでいる。今回、既存の105℃耐熱、125℃耐熱フラットケーブルに加え、さらに高温となる環境下でも使用できる150℃耐熱フレキシブルフラットケーブルを開発し上市した。

車載フレキシブルフラットケーブルの高耐熱化
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柔軟性を活かしたフレキの車載対応

住友電工は、国内で1960年代にフレキシブル配線板(フレキ※1)の開発を開始し、半世紀が経過した。フレキはその軽さ、薄さ、配索自由度の高さが市場に受け入れられ、1980年代から携帯端末の内部配線として、急速に需要が拡大した。住友電工は、社内の新しい材料と新技術(接続技術等)を融合し、フレキの新製品を積極的に展開してきた。本紙は、住友電工フレキの車載適用に対する取り組みについての紹介である。

柔軟性を活かしたフレキの車載対応
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ダイカスト用耐熱マグネシウム合金の特徴と車載展開

マグネシウム合金開発部では、世界で初めて高強度で耐食性の優れたAZ91合金の板材開発に成功、電子機器の筐体で製品化を推進しているが、より軽量化ニーズが高く、大きな市場が期待できる輸送機器へも展開すべく検討を開始した。しかしながら、輸送機器分野では、AZ91合金では対応できない新たな要求特性も明らかになり、それに対応すべく新合金の開発に取り組んでいる。本報告では、輸送機器分野で、マグネシウム合金を適用することにより大きな軽量効果が期待されるパワートレイン用ダイカスト部品をターゲットに、既存の耐熱マグネシウム合金の課題であった鋳造性やリサイクル性を克服する合金開発を富山大学と共同で取り組み、これらの課題をほぼ克服した新合金を開発したので紹介する。

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フルビークルを用いたNVH解析技術の構築

近年、自動車メーカー各社は、環境に配慮する低燃費車を開発し市場に投入している。燃費対策として少気筒化やロックアップ※1範囲の拡大が図られることがあるが、特に3気筒CVT※2搭載車においては、ロックアップ開始時にサスペンション共振の影響で、車体振動が悪化する。この振動の改善が図れる防振製品を提案するには、従来のエンジン懸架系に加え、駆動系、サスペンション系を含む解析評価技術が必要となるため、筆者らは車両全体を評価対象としたフルビークル解析技術を構築した。また、この解析技術を用いて、ストラットマウント※3の液封化によるロックアップ時振動の低減を検討し、実車評価においても、その効果を確認した。この取り組みを通して構築したフルビークル解析技術は、今後の弊社における製品開発の基盤技術の一つになると考えている。

フルビークルを用いたNVH解析技術の構築
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軽量化ニーズに対応した環境負荷低減フィラーネックホース

自動車用の燃料配管は北米のLEV規制を筆頭に燃料蒸散規制に対応するため、ホースの低燃料透過性の改善を進めてきた。同時に、車両開発ではCO2排出規制の強化に対して、軽量化による燃費改善を進めることでCO2排出量の低減に取り組んでいる。 当社ではフィラーネック配管で使用するゴムホースを低透過仕様へ切替えるとともに、金属フィラーパイプの軽量化として樹脂製のフィラーパイプに置き換える開発を進めてきた。樹脂化に当たっては、フィラーパイプとホースを一体化したモジュール製品の開発に取り組んできた。今回はそれらの取組みに関して報告する。

軽量化ニーズに対応した環境負荷低減フィラーネックホース
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放熱性吸音材(MIF)の車載向け性能向上

現在、自動車分野は大きな変革期を迎えている。この構造変革は「CASE」(Connected、Autonomous、Shared、Electric)と呼ばれ、EV化や自動運転をはじめとした車両のエレクトロニクス化、デジタル化が急速に進みつつある。これに対し当社では、磁場配向による吸音ポリウレタンフォームの高熱伝導率化技術(MIF)を開発し、こうした車載エレクトロニクス製品の熱対策と騒音対策を両立できる防音製品の量産化を成功させた。最近では、車載小型製品以外にも、EV駆動用モータ等の大型製品向けの放熱、静粛性ニーズが高まっている。今回、MIFの伝熱構造に着目し、放熱性を従来の2.5倍(通常ウレタンの最大100倍)まで向上させた。これを応用し、モーターケースを覆うことで防音効果に加え、空冷性能をより高める防音冷却デバイスとしての可能性を見出した。

放熱性吸音材(MIF)の車載向け性能向上
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耐湿熱性に優れたスチールコード

自動車用タイヤの補強材として用いられるスチールコードにおいて、ゴムとの接着性能及び長期耐久性は極めて重要な性能である。特に昨今当たり前となった低燃費化のみならず、EV化や自動運転時代を迎えつつある自動車の進化において、その重要性は益々増している。当社はこの長期耐久性の指標として湿熱環境下の耐久性(=耐湿熱性)に着目し、通常のスチールコードが持つブラスめっきに第3元素としてコバルト(Co)を添加した3元合金めっきを開発し、世界に先駆け量産技術を確立した。また、この開発の中で、めっき製造技術確立の他、従来ブラックボックスとなっていためっきとゴムの接着、及び接着層の劣化メカニズム解明も実現し、接着性能改善の効果を定量的かつスピーディーに確認することが可能となった。この革新的なめっき技術により、タイヤの長期耐久性は従来品と比較して大幅に向上することが確認されており、カスタマーから大きな期待が寄せられている。

耐湿熱性に優れたスチールコード
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転がり軸受部品用DLC膜及び量産技術

自動車市場は環境に配慮した製品創出の取り組みが活発化している。その取り組みに伴い自動車を構成する部品は過酷な環境下で機能を維持しなければならず、今まで以上に耐久性を必要とする課題が生じている。当社は軸受部品の課題を解決するためのDLC膜を検討し、軸受部品に必要な転がり疲労耐性に優れたDLC膜を開発した。更に量産性とコストを両立するための生産技術課題に取り組み、軸受部品へのDLC 膜コーティング量産を開始することができた。

転がり軸受部品用DLC膜及び量産技術
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データセンタ向け100Gbps差動伝送用メタルケーブル

IoT、スマートデバイス等の普及によりクラウドサーバーの需要は増え続けており、それにともない信号処理速度、つまり信号伝送速度も高速化が強く求められている。既に40Gbps差動伝送が可能なメタルケーブは量産しているが、次世代通信規格に対応した100Gbps差動伝送*1用メタルケーブルを開発した。

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スマートグリッドの中核となる国際標準規格IEC 61850電力ソリューション

(株)日新システムズは、スマートグリッド実現の中核を担う国際標準規格であるIEC 61850に基づく電力ソリューションの提供に有効なSISCO社(Systems Integration Specialists Company, Inc.)の製品を2013年5月から販売している。ここでは、その概要を紹介する。

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難削材旋削用コーティング新材質 AC5015S/AC5025S

航空機や自動車産業分野における機器・部品などには、耐熱性や耐食性に優れるNi(ニッケル)基、Co(コバルト)基、Ti(チタン)合金などの難削材が多く用いられるため、それらを加工する工具の需要は年々増加している。難削材の切削加工には、工具の刃先に被削材が溶着しやすいといった特徴があり、突発的に工具の刃先が欠損する等の問題が発生する。また、一般鋼の切削加工と比較しても工具寿命が著しく短いため、安定かつ長寿命な切削工具のニーズが高まっている。今 回 開 発 し た AC5015S/AC5025S は 新 開 発 の PVDコーティングと専用超硬母材を適用したことで耐摩耗性と耐欠損性が向上しており、長寿命化による工具交換頻度の低減と工具使用量の低減が可能となり、加工コストの削減に貢献する。

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ナノ多結晶ダイヤモンド球状圧子による微小破壊強度評価技術

ナノ多結晶ダイヤモンドから作製した球状圧子を用いた微小破壊強度評価技術を開発した。この技術により、これまで困難であったダイヤモンド関連材料の微小領域における破壊強度特性の評価が可能となった。本技術により種々の単結晶ダイヤモンドを評価した結果、天然ダイヤモンドの微小破壊強度は結晶間や結晶内の場所による違いが大きく、これに比べると合成ダイヤモンドは偏差が小さく安定していることが明らかとなった。また、ナノ多結晶ダイヤモンドの微小破壊強度は、組織の微細化とともに高くなり、耐亀裂性に優れた材料となることがわかった。

ナノ多結晶ダイヤモンド球状圧子による微小破壊強度評価技術
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車両シミュレーションを活用した、電費と乗り心地の定量評価手法

近年、環境規制の強化を背景として自動車の電動化が推進されると共に、自動運転に代表される新機能搭載による車載システムのいっそうの複雑化が見込まれている。機能の大きな変化と追加に伴って開発工数が増大する中で、開発の効率化のため、シミュレーションを活用した開発手法が広まり始めており、自動車新領域研究開発センターでもかねてよりシミュレーションによる部品性能の検証技術開発に取り組んできた。以前に開発した電費解析技術をベースとして、乗り心地を定量化するモデルを追加することで、シミュレーション上で電費と乗り心地のトレードオフを検証する技術を開発したので紹介する。

車両シミュレーションを活用した、電費と乗り心地の定量評価手法
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違和感を察知するDeep Learning 技術“Sense Learning”

目視検査では、定量的な評価基準だけでなく、「異常なきこと」のような検査員に依存した判断基準もある。このような人の主観的な判断に依存した目視検査をアルゴリズム化することは困難な課題である。Sense Learningは、このような人に依存した判断を大量の良品データから学習して不良検知を行うために当社が開発したAI(Deep Learning)技術である。 Sense Learningでは、良品のみの画像を使ってautoencoder型のネットワークを使用し、良品に含まれる特徴に特化した画像の圧縮・復元方法をAIに学習させる。この学習済みAIに不良画像を入力すると、良品に見られない=不良特徴に対する圧縮・復元方法をAIは学習していないため、不良部位の特徴の復元を失敗する。その結果、入力画像と復元画像との間に一致しない違和感が発生する。この違和感を不良として特定することで不良の判定を行う。

違和感を察知するDeep Learning 技術“Sense Learning”
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自動運転車向け準動的交通情報生成配信システム

自動運転システムが全ての運転タスクを実施するレベル3以上の自動運転を安全かつ円滑に実現するためには、車線レベルの準動的交通情報が必要である。車線レベルの準動的交通情報の生成には、車両が収集、送信するプローブ情報の利用が期待されているが、現状ではプローブ情報の車両位置精度が走行車線の特定には不足している、収集されるプローブ情報はまだ少ないといった課題がある。そこで、これらの課題を克服して車線レベルの準動的交通情報を生成するシステムを開発したので、報告する。走行車線の特定のためには近年急速に普及が進んでいる車載カメラで撮影した車両前方の画像を利用し、プローブ情報の少なさを補うためには渋滞の伝播モデルに基づいた推定を取り入れている。

自動運転車向け準動的交通情報生成配信システム
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セキュリティ設計におけるリスクの定量化

近年、制御システムにて生産プロセスの効率化・自動化を図る目的で情報系システムと通信接続し、データのやりとりを行う運用が増えつつある。その一方でStuxnet※1による発電所への攻撃等が起こり、制御システムのセキュリティ対策が喫緊の課題となり、制御機器の開発においても最初からセキュリティを考慮した設計を求める動きが生まれている。本研究では設計手順の効率化・属人性の排除を目指し、国立研究開発法人産業技術総合研究所と連携して継続研究を行っている。本論文では、複数フェーズからなるセキュリティ設計におけるリスク評価のフェーズに焦点を当て、既存の脆弱性評価システムを応用し、制御機器・システムに最適なリスク評価の定量化手法についての検討結果について、データロガーをキー要素とする制御システムのケーススタディを交えつつ報告する。

セキュリティ設計におけるリスクの定量化
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低損失/低嵌合力を特徴とする耐ダスト光多心コネクタ FlexAirConnecT

現在、一般的に用いられている光コネクタではフィジカルコンタクト(PC)接続という技術を用いて、良好な接続特性を実現している。しかし、この技術はコネクタの多心化の進展に伴う嵌合力の増加、光コネクタ特有の念入りな端面清掃、といった問題を抱えている。当社は、PC接続を行わない他の方式として、嵌合時のコネクタ間にわずかな隙間を設けるエアギャップコネクタを開発した。本コネクタはPC接続が抱える問題を解決したうえで良好な光学特性と信頼性を実現しており、その性能について報告する。

低損失/低嵌合力を特徴とする耐ダスト光多心コネクタ FlexAirConnecT
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400Gbit/s 用光トランシーバに搭載可能な8ch 集積光受信モジュール

高速・大容量通信が求められるクラウドサービスの普及に伴い、100Gbit/s用光トランシーバであるCFP4やQSFP28の普及が進んでいる。次世代通信規格として、IEEEにて400GBASE-FR8/LR8の標準規格が定められ、CFP MSAにて400Gbit/sに対応した光トランシーバとしてCFP8が新たに策定されており、市場ニーズが高まっている。当社がこれまで開発してきた4ch集積光受信モジュールの設計をベースとして、今回、8波長の分波機能を1つのパッケージ内に集積した、CFP8に搭載可能な400Gbit/s用8ch集積光受信モジュールを開発した。本稿では、モジュール構造、8波長の分波特性、4値パルス振幅変調(4-level Pulse Amplitude Modulation, PAM4)信号を用いた変調速度26.56Gbaudにおける最小受信感度等の特性を紹介する。

400Gbit/s 用光トランシーバに搭載可能な8ch 集積光受信モジュール
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次世代光トランシーバ開発に向けた電磁界解析

データ通信は、スマートフォンに代表される無線通信量の増加、クラウドの普及によるデータセンター内での通信量の増加に伴い高速化・大容量化が進んでいる。その中で電気信号と光信号のコンバーターである光トランシーバにも高速化の要望が強い。高速の電気信号を歪みなく伝送させるために、通常、特性インピーダンスなどの評価指標をもとに伝送線路の設計を行っているが、実際の基板上では、いくつかの要因が電気信号を歪ませてしまう。その要因は、それぞれが相関の関係にあるSignal Integrity(SI)・Power Integrity(PI)・Electro-Magnetic Interference(EMI)/ Electro-Magnetic Susceptibility(EMS)によって成り立っている。電磁界解析は、これらの課題解決に重要な役割を果たす。本稿では、その要因について例を挙げて説明した後、電磁界解析を使用し問題点の抽出や解決方法の事例を紹介する。

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衛星搭載用広帯域GaN HEMT マイクロ波集積回路

人工衛星搭載用途や打ち上げロケット制御向けに、L帯※1とS帯※2それぞれにおいて40 Wの広帯域GaN HEMT※3マイクロ波集積回路※4(MIC)を開発している。40 W GaN HEMT MICは前段に10 W出力、後段に40 W出力のGaN HEMTを同一パッケージ内に実装することで実現され、L帯においては1.0 – 1.7 GHzの帯域で出力45 W以上、利得30 dB以上、電力付加効率45%の特性を有し、 S帯においては2.0 – 2.7 GHzの帯域で出力47 W以上、利得30 dB以上、電力付加効率50%の特性を有している。我々はこのGaN HEMT技術に対し衛星搭載用認定試験を行い、衛星用途として要求される全ての品質と信頼性を満足していることを確認済みである。GaN HEMTを用いた固体素子増幅器(SSPA)の実現により、今後衛星の小型化や軽量化に大きく貢献することが期待される。

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L バンド波長帯コヒーレントレシーバ

光通信伝送量の急激な増大に対応するため、ディジタルコヒーレント光通信技術を用いた100Gbit/sを超える大容量伝送システムが世界中で本格的に導入されている。更なる伝送容量の増大に向けて、従来のCバンド波長帯に加え、Lバンド波長帯を利用した多重化が進められ、Lバンド波長帯に対応した各光部品を開発することが必要とされている。我々は開発済みのCバンド波長帯用コヒーレントレシーバをベースに、Lバンド波長帯で高受光感度を有する小型コヒーレントレシーバを開発したので、その成果を報告する。