トップメッセージ

住友電工グループの業績につきまして、社長より概況をご報告いたします。

社長 井上 治

平素は格別のご支援を賜わり、ありがたく厚く御礼申し上げます。
当社グループの当期(2022年度)の業績につきまして概況をご報告いたします。

当期の業績

当期の世界経済は、米国では物価上昇や金融引締めの影響があったものの底堅い個人消費と良好な雇用環境に支えられて緩やかな景気持ち直しの動きが続きましたが、中国では新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う都市封鎖と行動制限が景気を下押しし、欧州ではウクライナ情勢の影響によるエネルギー価格をはじめとした物価の上昇と金融引締め政策により期末に向けて次第に景気が減速する展開となりました。日本経済は、徐々に社会経済活動の正常化が進み、景気は緩やかに持ち直しましたが、為替相場の急変動や物価上昇もあり、力強さを欠く状況が続きました。

当社グループを取り巻く事業環境につきましては、中国での都市封鎖や半導体等の部品供給不足などによる自動車生産の減産のほか、資材価格・エネルギー価格の高騰もあり、厳しいものとなりました。このような環境のもと、当期の連結決算は、売上高は、ワイヤーハーネス、電力ケーブル、超硬工具などの拡販に努め、また円安の影響もあり、4,005,561百万円(前期3,367,863百万円、18.9%増)と前期に比べ増収となり、初めて4兆円を上回りました。利益面では、徹底したコスト低減と売値改善に努め、営業利益は177,443百万円(前期122,195百万円、45.2%増)、経常利益は173,348百万円(前期138,160百万円、25.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は112,654百万円(前期96,306百万円、17.0%増)と、それぞれ前期を上回る結果となりました。

対処すべき課題

今後の経済情勢は、米中対立・ウクライナ情勢などの政治的・地政学的リスク、世界的な物価上昇や金融引締めによる景気の下振れなどが懸念され、当社を取り巻く事業環境は予断を許さない状況が続くものと予想されます。

このような情勢のもと、当社グループは、長期ビジョン「住友電工グループ2030ビジョン」で掲げた「グリーンな地球と安心・快適な暮らし」の実現に向けて、ステークホルダーの皆様との共栄を図りながら、グループが一体となり企業価値向上に取り組み、「グロリアス エクセレント カンパニー」を目指して、製造業の基本であるS(安全)、E(環境)、Q(品質)、C(コスト)、D(物流・納期)、D(研究開発)のレベルアップに努めてまいります。資本効率向上の取り組みにおいては、重要指標としているROICの改善に向けて、棚卸資産残高や営業債権・債務残高の適正化、設備投資案件の厳選実施に努めるとともに、高採算品へのシフトや資材価格上昇の売値への反映などの取り組みを一層強化してまいります。そして、長期ビジョンの実現に向けたマイルストーンとして本年度からスタートする新中期経営計画の達成に向け、各事業においては次の施策を進めてまいります。

自動車関連事業では、半導体等の部品供給不足が徐々に解消に向かい自動車生産の回復が見込まれる中、一層のコスト低減と資産効率化の徹底に取り組み、事業体質の強化を進めてまいります。併せて、軽量化ニーズに対応したアルミハーネスのさらなる拡販、生産自動化やコスト低減に繋がる新設計・新工法の拡充など従来ハーネスの進化に加え、グループ内連携や顧客とのパートナー関係の強化・協業により、電動車向けの高電圧ハーネス、高速通信用のコネクタなど急速に拡大するCASE市場をとらえた新製品創出・拡販に取り組んでまいります。住友理工㈱では、自動車用防振ゴム・ホースなどにおいて、グローバル対応の深化や国内外事業拠点の統合・集約、コスト削減によって収益力の回復を図ることに加え、次世代自動車に向けた新製品開発にも注力してまいります。

情報通信関連事業では、顧客の在庫調整等による一時的な需要停滞がみられるものの、クラウドサービス市場の拡大や第5世代移動通信システム(5G)の普及などによる通信データ量の増加と、それに伴う消費電力の増大が進む中、光ケーブルや光配線機器、光デバイス等のデータセンター関連製品、海底ケーブル用の極低損失・大容量光ファイバ、5G基地局用の高効率な電子デバイス、高速大容量通信を可能とするアクセス系ネットワーク機器など、高速大容量・低消費電力等の市場ニーズを満たす高機能製品の開発・拡販を加速してまいります。また、徹底したコスト削減にも取り組み、収益性の改善に努めてまいります。

エレクトロニクス関連事業では、FPC(フレキシブルプリント回路)においては、微細回路形成技術を活かした高機能品の拡販や、徹底したコスト低減、さらなる高機能化に取り組むとともに、車載・医療用途の拡販、高周波化に対応した新製品の開発を加速してまいります。照射架橋技術を活かした電動車の電池端子用リード線(タブリード)、電動パーキングブレーキ用電線、熱収縮チューブ、さらにはフッ素樹脂加工技術を活かした多孔質水処理膜製品についても、多様な客先ニーズを捕捉して事業の拡大を図ってまいります。また、本年5月に完全子会社化した㈱テクノアソシエとのさらなるシナジー創出にも取り組んでまいります。

環境エネルギー関連事業では、電力ケーブルにおいては、国内の設備更新需要の捕捉に加え、脱炭素社会の実現に向けてグローバルに需要が拡大する国家・地域間連系線や再生可能エネルギー関連の受注に努めるとともに、生産能力増強、コスト低減、品質向上、新製品開発、プロジェクトマネジメント強化にも注力してまいります。電動車向けのモーター用平角巻線については、コスト低減による収益力の向上と、電動車の高電圧化に対応する次世代品の開発を進めてまいります。さらに、本年5月に完全子会社化した日新電機㈱とのさらなるシナジー創出に取り組むとともに、住友電設㈱も含めたグループ総合力を活かして、一層の受注拡大に努めてまいります。

産業素材関連事業では、超硬工具においては、グローバルな営業力強化により、主力の自動車分野に加えて、建設機械、農業機械、エレクトロニクス分野等での需要を確実に捕捉するとともに、電動車、航空機、再生可能エネルギー関連などの新規開拓も進め、市場シェアの拡大に努めてまいります。焼結部品は、電動車向けの新製品開発・拡販とコスト競争力の一段の強化を図ってまいります。PC鋼材やばね用鋼線は、グローバルな製造販売体制の強化と新製品開発による収益力の向上に取り組んでまいります。

研究開発では、オリジナリティがありかつ収益力に優れた新事業・新製品の創出に努めてまいります。具体的には、レドックスフロー電池、高温超電導製品、SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体デバイスなどの新事業に注力するほか、5つの現事業セグメントを支える次世代の製品として、ポスト5G及び次世代移動通信システム、データセンター、光海底通信用途などの伝送機器、デバイス、光ファイバやエレクトロニクス製品、また環境負荷低減に寄与する電力ケーブル材料や車載・産業用の材料など、社会ニーズを踏まえた新製品の開発にも産官学の連携による社外の知見も積極的に活用して注力してまいります。また、製造現場でのAIやIoT活用による生産革新にも取り組むとともに、事業部門や営業部門との連携を一層強化し、研究開発活動のさらなる活性化とスピードアップを進めます。

最後に、法令遵守や企業倫理の維持は、当社経営の根幹をなすものであり、企業として存続・発展するための絶対的な基盤と考えております。今後とも、住友事業精神の「萬事入精」「信用確実」「不趨浮利」という理念のもと、社会から信頼される公正な企業活動の実践に真摯に取り組んでまいります。また、住友事業精神と住友電工グループ経営理念の基本的な価値軸はSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)にも相通ずるものであると考えており、サステナブルな社会の実現に向けて取り組んでまいります。

皆様におかれましては、今後とも一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

2023年5月

社長  井上 治

社長 井上治はブログでも日常のさまざまな出来事を発信しております。

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