トップメッセージ
住友電工グループの業績につきまして、社長より概況をご報告いたします。

平素は格別のご支援を賜わり、ありがたく厚く御礼申し上げます。
当社グループの当期(2022年度)の業績につきまして概況をご報告いたします。
当期の業績
当上半期(第2四半期連結累計期間)の世界経済は、概ね緩やかな景気持ち直しの動きが続きましたが、中国では新型コロナウイルス感染症の拡大で都市封鎖を行ったことにより景気に減速感が見られたほか、世界的な物価上昇や資源・部品の供給不足、ウクライナ情勢の長期化などにより、先行きの不透明感が高まりました。
当社グループを取り巻く事業環境につきましては、中国での都市封鎖や半導体等の部品供給不足などによる自動車生産の減産のほか、資材価格・物流費・エネルギー価格の高騰もあり、厳しいものとなりました。このような環境のもと、当上半期の連結決算は、売上高は、ワイヤーハーネス、電力ケーブル、超硬工具などの拡販に加え、銅価格上昇や円安もあり、1,891,076百万円(前年同期1,570,413百万円、20.4%増)と前年同期に比べ増収となりました。利益面では、徹底したコスト低減と売値改善に努めたほか、円安の効果もあり、営業利益は49,739百万円(前年同期46,125百万円、7.8%増)、経常利益は60,874百万円(前年同期60,283百万円、1.0%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は35,068百万円(前年同期32,390百万円、8.3%増)と、それぞれ前年同期を上回る結果となりました。
対処すべき課題
今後の経済情勢は、新型コロナウイルスの新たな変異株の感染拡大リスクが残るほか、ウクライナ情勢など急速に高まる政治的・地政学的リスクや、半導体の供給不足等による自動車生産の減産、資材価格高騰・物流混乱の長期化なども憂慮材料であり、引き続き不透明な展開が続くものと予想されます。
このような情勢のもと、当社グループは、「グロリアス エクセレント カンパニー」を目指して、社員の健康と安全、サプライチェーンの維持確保を引き続き最優先としつつ、製造業の基本であるS(安全)、E(環境)、Q(品質)、C(コスト)、D(物流・納期)、D(研究開発)のレベルアップに努めてまいります。資本効率向上の取り組みにおいては、重要指標としているROICの改善に向けて、棚卸資産残高や営業債権・債務残高の最適化、設備投資案件の厳選実施に努めるとともに、高採算品へのシフトや資材価格・物流費の売値への転嫁などの取り組みを一層強化してまいります。これらにより、中期経営計画「22VISION」の最終年度である2022年度を、中期目標の仕上げの年として、各事業において次の施策を進めてまいります。
自動車関連事業では、世界的な半導体等の部品供給不足などの影響で自動車生産動向が不透明な状況下、一層のコスト低減と生産の効率化に取り組み、需要変動に耐えうる筋肉質な事業体質の構築をさらに進めてまいります。併せて、客先への提案型マーケティングの強化により、電動車向けの高電圧ハーネス、高速通信用のコネクタといったいわゆるCASE関連の新製品創出・拡販、軽量化のニーズに対応したハーネスのアルミ化の加速、海外系顧客の一層のシェア拡大に取り組むとともに、サプライチェーンを強化するため、主要品種を複数拠点で生産できる体制の整備にも取り組んでまいります。住友理工㈱では、自動車用防振ゴム・ホースなどにおいて、グローバル対応の深化や国内外事業拠点の統合・集約、コスト削減によって収益力の回復を図ることに加え、次世代自動車に向けた新製品開発にも注力してまいります。
情報通信関連事業では、クラウドサービス市場の拡大や第5世代移動通信システム(5G)の普及などによる通信データ量の増大と、それに伴う消費電力の増大が進む中、光ケーブルや光配線機器、光デバイス等のデータセンター関連製品、海底ケーブル用の極低損失・大容量光ファイバ、5G基地局用の高効率な電子デバイス、高速大容量通信を可能とするアクセス系ネットワーク機器など、高速大容量・低消費電力等の市場ニーズを満たす高機能製品の開発・拡販を加速してまいります。また、徹底したコスト削減にも取り組み、収益性の改善に努めてまいります。
エレクトロニクス関連事業では、FPC(フレキシブルプリント回路)においては、微細回路形成技術を活かした高機能品の拡販や徹底したコスト低減に引き続き取り組むとともに、車載用途への拡販、高周波化に対応した新製品の開発を加速してまいります。照射架橋技術を活かした電動車の電池端子用リード線(タブリード)、電動パーキングブレーキ用電線、熱収縮チューブ、さらにはフッ素樹脂加工技術を活かした水処理製品についても、多様な客先ニーズを捕捉して事業の拡大を図ってまいります。また、㈱テクノアソシエとの事業シナジーの拡大にも引き続き取り組んでまいります。
環境エネルギー関連事業では、電力ケーブルについて、国内の設備更新需要の捕捉に引き続き取り組むほか、脱炭素社会に向けて世界的に市場が拡大している国家・地域間連系線や風力発電など再生可能エネルギー関連の受注拡大に努めるとともに、コスト低減、品質向上、新製品開発、プロジェクトマネジメント強化に注力してまいります。また、電動車向けのモーター用平角巻線については、増加する需要を着実に取り込むためのグローバルな生産能力増強とコスト低減による収益力の向上を進めてまいります。さらに日新電機㈱や住友電設㈱を含めたグループ総合力を活かして、一層の受注拡大に努めてまいります。
産業素材関連事業では、超硬工具においては、グローバルな営業力強化により、主力の自動車分野に加えて、建設機械、農業機械、エレクトロニクス分野等での堅調な需要を確実に捕捉するとともに、電動車部品や航空機部品用工具の新規開拓も進め、市場シェアの拡大に努めてまいります。焼結部品は、今後の事業発展に向けて、電動車向けの新製品開発・拡販と、グローバルに展開する各製造拠点のコスト競争力の一段の強化に取り組んでまいります。PC鋼材やばね用鋼線については、グローバルな製造販売体制の強化と新製品の開発により収益力の向上を図ってまいります。
研究開発では、オリジナリティがありかつ収益力に優れた新事業・新製品の創出に努めてまいります。具体的には、超電導製品、SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体デバイス、レドックスフロー電池などの新事業に注力するほか、5つの現事業セグメントを支える次世代の製品として、ポスト5G及び次世代移動通信システム、データセンター、光海底通信用途などの伝送機器、デバイス、光ファイバやエレクトロニクス製品、また環境負荷低減に寄与する電力ケーブル材料や車載・産業用の材料など、社会ニーズを踏まえた新製品の開発にも産官学の連携による社外の知見も積極的に活用して注力してまいります。また、製造現場でのAIやIoT活用による生産革新にも取り組むとともに、事業部門や営業部門との連携を一層強化し、研究開発活動のさらなる活性化とスピードアップを進めます。
また、法令遵守や企業倫理の維持は、当社経営の根幹をなすものであり、企業として存続・発展するための絶対的な基盤と考えております。今後とも、住友事業精神の「萬事入精」「信用確実」「不趨浮利」という理念のもと、社会から信頼される公正な企業活動の実践に真摯に取り組んでまいります。なお、住友事業精神と住友電工グループ経営理念の基本的な価値軸はSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)にも相通ずるものであると考えており、特に環境への取り組みにおいては、2030年までにパリ協定要求レベルの温室効果ガス排出量削減を目指し、2050年カーボンニュートラルの達成に向けた対応を強化してまいります。
最後に、様々な社会変革が起こりつつある中で当社グループの目指す姿を示すため、2030年を節目とする長期ビジョン「住友電工グループ2030ビジョン」を策定し、本年5月に公表いたしました。この長期ビジョンでは、「グリーンな地球と安心・快適な暮らしの実現」に向け、当社グループが総力を結集し、さまざまな価値を提供していくための方向性について説明しております。また、この長期ビジョンのもとでの具体的な事業計画として、2023年度より3カ年を区切りとする中期計画を策定し、刻一刻と変化する事業環境に的確に対応して中長期的な企業価値向上を果たすべく経営の舵を取ってまいります。
皆様におかれましては、今後とも一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
2022年11月
社長 井上 治