一気通貫の送電ソリューションを提供

真山さん

再生可能エネルギー大量導入に向けた電力ケーブル系統設計技術

電力プロジェクト事業部
技師長  真山 修二

 本論文では、再生可能エネルギーの発電サイトと電力会社の既設電力系統とをつなぐ交流地中送電ケーブルについて、そしてその技術的課題と解決方法を示しています。また、発電サイトから需要地へ大電力を直接届ける手段として期待されている直流海底送電ケーブルのシステム設計技術や最適化分析についても報告しています。

 近年、風力や太陽光など自然エネルギーを利用した発電施設の建設が次々に計画されていますが、こうした発電サイトが増えれば、それだけで再生可能エネルギーの導入が進むというわけではありません。発電した電力をいかに効率よく需要地に届けるかを考えることがとても重要なのです。

課題解決に導いた グループの総合力と設計の妙

 再生可能エネルギーを発電サイトから電力会社へ届けるケーブルや受変電機器は、基本的には通常の送電に使われるものと同じです。ただし、その組合せがポイントで、電力会社側の既設設備と発電サイト側の新規設備との電気的なマッチングの慎重な解析、ケーブル・受変電機器・交流波形を整える調相設備の統合設計、そしてそれらを一貫して製造・据付できる総合プロジェクト遂行能力がカギとなります。

 2019年に完工した青森県沖ウインドファームつがるの陸上風力発電プロジェクトでは、日新電機と当社とが力を合わせることでこれらを一気通貫のソリューションとして提供し、高い評価をいただきました。また、住友電設とは送電ルート設計を行っています。こうした統合的なソリューションの提供は、他社にはなかなかマネのできない、住友電工グループの大きな強みだと言えます。

  風力発電の送電システム例        

日本の広域系統実現を前進させる システム設計技術とルート最適化分析

 今、再生可能エネルギーの急激な普及によって国内送電網は電力の受け入れが制限され、送電に渋滞が発生している状況です。日本の再生可能エネルギーのポテンシャルは数10GWとも言われており、欧米のように直流海底送電を大規模に取り入れた広域連系が実現すれば、カーボンニュートラルの実現も大きく前進するはずです。  

 2011年の東日本大震災以降、私は再生可能エネルギーの導入拡大を予想し、日本国内の直流海底送電の重要性について各方面に粘り強く訴えてきました。しかし、整理された海底情報がなければ送電事業者様は海底送電計画を描けず、また、計画がなければ我々もケーブル設計や工事計画を具体化することはできないため、大きな壁に直面していました。この課題を突破したいと、糸口を探し続けていました。  

 そんな中、2015年に参画したNEDO次世代直流送電システム開発事業において、東京大学の馬場旬平教授がルート最適化アルゴリズムの基礎研究をされていることがわかり、東京大学の研究と当社の技術を融合させて、コストミニマムでケーブル敷設に最も適したルートを自動計算できるソフトウェアを完成させました。海底ケーブルは、水深や海底地質に加え、漁業などの社会要因も考慮する必要があります。これらの膨大な海洋情報を多層データベース化して開発アルゴリズムを適用することで、ケーブル敷設の最適ルートを自動計算できるようになったのです。各方面から反響をいただき、海底送電を活用した日本の系統計画にもお役に立てそうでワクワクしています。

  真山さん  

社会課題の解決に向けて 私に課せられたミッション

 私は入社以来、研究所→地中線工事現場→自動車ワイヤーハーネス→海外海底線プロジェクト→再生可能エネルギー送電と、領域の異なる大きな異動を何度も経験し、そのたびに積み上げた技術や人脈がリセットされ一から学び直しになりました。そしてその都度、どうしたら役に立てるか課題を見つけ、新しい解決方法や技術を考え抜いてきました。しかし今振り返ると、この連続性のない異動によって得られた技術の一つ一つが結びついて、今日の研究開発に活きていることに気づかされます。    

 常に10年先の世の中の流れを予測し、時に方向を修正しながら、エンジニアとして社会に求められているものを提供するための最短ルートを模索してきた過程は、海底ケーブルの最適ルート算出と同じ気がします。こうして積み上げてきた技術の集積が世の中のお役に立てる時が来たのかと思うと、エンジニア冥利に尽きます。 当社は電線・ケーブルをコアビジネスとしている一方、センサー、システムや電池、エネルギーマネージメントといった新領域でも大きなポテンシャルを秘めています。これらを融合した当社グループ独自の新しいエネルギービジネスの世界観を実現することは、社会のためにも、当社のビジネスの発展においても、非常に重要なテーマであると思います。時間のかかることではありますが、最後の務めとして、これに力を尽くすつもりです。

関連リンク

・[プレスリリース] 日本最大の風力発電所「ウィンドファームつがる」建設工事完工

・[製品] 直流海底ケーブル

・[製品] 交流地中ケーブル

・[プロジェクト id] 再生可能エネルギー普及への挑戦

・[CSR] 『CSR報告書2020』社会貢献

・[受賞] CIGRE2020 最優秀論文「Total System Development on Innovative and Large Scaled HVDC Cable System towards Expanded Installation of Large Offshore Wind Farms」(共著)

・[執筆] 『電力・エネルギー産業を変革する50の技術』ダイナミックレーティング(オーム社)

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