
ブロードバンドの最前線を行く~OLTの省電力化、STBの需要拡大、CATVに新たなネットワークを~
低消費電力化に向けた取り組み ――ネットワーク機器部

ネットワーク機器部が、現在注力しているのは、カーボンニュートラルの実現に資する機器の省電力化だ。ブロードバンドサービスは各家庭まで光でつなぐFTTHが既に主流となっているが、設置される機器の台数が多いうえに常に電源が入っていることから、省電力化により大きな電力削減の効果を得られる可能性がある。対象となるのは主力製品である「10G-EPON OLT」。第一ハードウエア開発グループ長である吉谷直樹は、ブロードバンドネットワークの進化とともに、OLTのハードウエア技術者として機器開発に取り組んできた。
「省電力化に向けた新たなOLTの開発では主に都市部大規模局向けのOLTを半分以下にダウンサイズし、小規模局へのサービス展開を容易にする取り組みを進めています。省電力化に向けて重要なのが、半導体チップの微細化です。微細化により内部トランジスタの印加電圧を下げることが可能となり、結果、消費電力を減らすという効果が生まれます。私たちは先進のチップ採用に向け、ベンダーと協力した取り組みを進めています」(吉谷)
さらに、装置構造の刷新、運用や冷却の方法などを工夫することでさらなる省電力を実現するほか、自由に回路を組み替えて、様々な機能を実現できるIC(FPGA*1)も基幹部品として活用する等、省電力OLTリリースに向け様々なチャレンジが行われている。
「省電力化に継続的に取り組み、顧客のカーボンニュートラルや当社グループが掲げるグリーン社会の実現に貢献していきます」(吉谷)
自分たちで生み出したエントリーSTB ――映像機器部

第二ソフトウエア開発グループ長である井関肇は、入社以来、一貫してSTBのソフトウエア開発を担当してきた。独自開発の共通プラットフォーム「stbcore®」は、システムやサービスの互換性を高めることで、放送受信機能、録画・再生機能、モバイル端末へのコンテンツ配信機能などSTBに求められる機能を実現するミドルウエアで、STB開発期間の短縮と品質の確保を両立させている。
「stbcore®の成果が、2023年12月に提供開始したBS4K対応エントリーSTBです。現行機と比べ、番組視聴・録画に特化し、低コストを実現しました。チューナを2個搭載し、録画しながら別の番組を視聴できます。私が担当したのは直接ユーザの操作性を左右するユーザインターフェース(UI)。シンプルで使い勝手が良くレスポンスが早い、STBを初めて使う人でもストレスを感じないUIを目指しました」(井関)

「自分たちがつくった製品」を強調するのが、第二システム技術グループの小西広晃だ。小西は営業技術担当として、顧客である通信キャリアと折衝を重ね、製品化していく役割を担っている。
「顧客の要望も反映していますが、基本は私たちが主体となってつくり出したモデルです。特にUIの部分は、私たちのアイデアによるもの。高い品質を保ちつつ使いやすさと低コストへの挑戦でした。今後は、これまで販売してきたモデル含め約200万台がエンドユーザ宅に設置されているメリットを活かし、生活スタイルに応じた新しいサービスを模索していきたいと考えています」(小西)
同モデルは、テレビに挿入するB-CAS(C-CAS)カードからテレビやSTBに直接組み込むACASチップへの移行を踏まえた設計が施されており、ACAS対応STBとして大きな更改需要が期待される。
分散型ネットワークへの転換 ――CATVシステム部

CATV事業者が提供するインターネットサービスには、局の施設内(センター)に設置する装置「CMTS*2」と加入者宅に設置する端末「ケーブルモデム」を用いてHFC上で通信を行うシステムがある。高速通信サービス需要の高まりに対し、CATV事業者は高価なCMTSの増設費とメンテナンスコスト、設置スペースや消費電力の増大への対応を迫られている。こうした課題に対するソリューションを提供するのが、CATVシステム部のミッションの一つである。通信システム開発グループ長である伊藤誠は、課題解決のカギとなるのは「CMTS」からの脱却と指摘する。
「Harmonic社と協業しDAAと呼ばれる分散型のネットワーク構成への転換を提案しています。DAAは、CMTSの機能の一部を柱上の伝送装置にR-PHYユニットとして搭載することでセンター設備の負荷を軽減し、省スペース化、省電力化も実現できます」(伊藤)
さらに、CMTSを仮想化しサーバで管理することで、大幅なコスト削減や省エネ効果が期待できることも特長の一つだ。また、サービス高速化需要に応じてR-PHYユニットをR-OLTユニットに交換するだけで、ネットワークの光化ができる。DAAは、集合住宅への展開やFTTH化の移行ステージに合わせた段階的な光化が可能だ。「分散化・仮想化及び光化することによりCATV事業者の課題を解決し、ケーブルネットワークの進化に寄与していきたいと考えています」(伊藤)
*1:Field-Programmable Gate Arrayの略。論理回路を集積したプログラマブルなICで、用途により内部の回路構成を変更し様々な機能を実現できる。
*2:Cable Modem Termination Systemの略。CATV回線でインターネットサービスを提供するため、CATVセンターに設置される装置。