研究開発本部長メッセージ

研究開発本部長メッセージ

私たちは、社会に資する研究開発に熱い想いで挑戦します

研究開発本部長 西村 陽

住友電工は、銅線、硅銅線の製造からスタートした企業です。19世紀の終わり、国内の電気産業が急激に発展する中、それまで輸入に頼っていた電力ケーブルの国産化を目指し、住友電線製造所が開設されました。電線事業の拡大に伴い、導体や絶縁体など、材料技術の研究開発において大きな成果を上げて国内産業の発展に寄与したことが当社の礎となっています。「技術重視」の姿勢はその当時から今も変わらず住友の精神として受け継がれています。

材料技術で磨き上げた研究開発力はやがて大きな幹となって枝葉を伸ばし、環境エネルギー、情報通信、自動車、エレクトロニクス、産業素材の5つの領域に跨るまでになりました。国内外の電力供給の基盤となる電力ケーブル、インターネット社会を支える光ファイバ、自動車に欠かせないワイヤーハーネスなど、「つなぐ、ささえる」製品で社会や人々の暮らしに貢献しています。この研究領域の広さと、キーとなる技術を各種事業に応用する力が我々住友電工グループの研究開発の大きな特長であり、強みであると自負しています。

既存事業の延長線上にはない、新たな事業領域の創造へ

これらの研究開発は、将来あるべき社会への明確なビジョンに沿って行われています。住友電工グループは、グリーンな地球環境安心・快適な暮らしの実現に向け、長期ビジョン2030VISION」を策定しました。研究開発部門では、このビジョンの実現に向け、「エネルギー」「情報通信」「モビリティ」事業を注力分野と位置づけ、さらなるイノベーション創出のために邁進しています。

例えば、エネルギー分野では、脱炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギー導入を後押しする次世代のケーブルやシステムソリューションの開発を推進しています。大容量・低損失な送電系統の開発により、効率的な長距離送電網の実現を目指します。

また、情報通信分野においては、2030年には移動通信システムが5Gから6Gへ移行し、データ速度が100倍にもなる見通しですが、こうした時代の動きに呼応し、光ファイバやデバイス・機器の各分野で高速大容量化と小型低消費電力化を両立させる技術の開発を進めます。

さらに、モビリティ分野では、電動化や自動運転、MaaSに代表される外部サービスとの連携が加速すると予測されます。自動車の高機能化が進み、まるで情報機器のように進化する中、当社グループの主力製品であるワイヤーハーネスはもちろん、電動化やコネクティッド製品・サービスの開発にも注力し、モビリティ社会に新たな価値を創造していきます。

これらと並行し、我々は2030VISIONから時間軸をさらに先へと進め、実現していきたい未来の社会像を描く活動も行ってきました。量的な経済成長に主眼が置かれる現在に対し、2050年は持続可能な方法で多様な価値観に応える質的な社会発展が求められるのではないでしょうか。そうした2050年からのバックキャストによって、エネルギー、情報通信、モビリティから発展させた技術を進化・融合させたテーマにも取り組み、新たな事業領域の創造を目指します。こういった取り組みにより「地球」「ヒト」「暮らし」をキーワードに、来たる水素社会のインフラや二酸化炭素の分離回収利用、人間の能力を拡張する技術、バーチャル空間を活用する暮らしなどさまざまな未来のカタチが見えてくることを楽しみにしています。

研究開発本部長 西村 陽

研究開発の本質は、社会に資すること

研究開発も企業活動の一部ですから事業の発展に貢献するものであること、言い換えれば、しっかりと利益につながることが重要です。事業を通じて社会に資することこそが住友電工グループの研究開発の本質です。そして、もう一つ大切なことは、研究者一人ひとりがその結果に対して充実感や達成感を感じられる組織であるということです。

こうした観点から、2030VISIONや2050年に向けた目標を達成するためには、研究開発そのものに加え、事業化へのプロセスが重要になります。研究開発で得た知見や技術をいかに事業に結びつけていくのか。価値観が大きく変わり、課題が多様化し、変化していく未来に対し、それが研究者にも組織にもますます求められることになります。研究者は自らの開発した技術や製品で社会の課題を解決する、という気概を持って進まなければならないと考えています。

人材、戦略、モチベーションを大切にする組織づくり

技術を事業につなげる組織づくりには、3つの要素が必要だと考えております。

1つ目は、開発をやり遂げる実行力です。そのためには、研究者の技術レベルをさらに向上させていくとともに、MI(material informatics)やPI (process informatics)など新しい手法を研究開発に積極的に活用していくことが重要です。AIの活用においては新しい技術の進化が目覚ましく、若い技術者もベテランと対等に活躍できる分野だと思います。若い人にもどんどん参加してもらうべく、教育を徹底するなど、組織としてサポートを強化しています。

2つ目は、戦略です。開発の方向が間違っていては、せっかくの新技術が事業に結びつきません。お客様やマーケットが何を求めているのか、ライバルの動きはどうか、外部状況を的確に判断して需要を見極め、自らの強みを明確化してプランニングしていくことが成果の確率を上げていきます。そのための確かな戦略を立案し、実行していくことが大切です。

3つ目は、研究者のモチベーションです。一つの開発を事業化までやり遂げるには退路を断つような強い想いが必要です。もちろん、現在行っている研究のすべてが事業につながるとは限りません。しかし、失敗しても、そこから学ぶことは多いはずです。何よりも大切なのは、研究開発にかける熱い想い強い気持ちです。それを持つかどうかで、結果が変わると言っても過言ではありません。

そして研究開発はチームで行いますので、いま手がけている研究開発の将来の姿を思い描き、メンバー全員のベクトルをひとつに合わせられる組織であること、それが研究者のモチベーションにつながると考えています。これからも、一人ひとりの適性を見極め、自らが希望する分野で思う存分研究開発に打ち込める環境をつくれるように体制を整えていきます。

住友電工グループの研究開発領域は広く、多士済々さまざまな分野の研究者が集まっていることが強みであり、誇りです。すべての研究者が社会の課題解決への熱い想いを抱き、失敗を恐れず挑戦する、そして学んだことをしっかりと次に活かしていく組織でありたいと私は考えています。そして、これからも時代の要請に応え、人々の暮らしを支え、未来の社会に貢献する技術の開発を続けていきます。

研究開発本部長

研究パンフレット

各分野における開発体制や関連技術をご紹介しています。

PDFダウンロード(5.7MB)

研究開発ビジョン

「エネルギー」「情報通信」「モビリティ」領域を伸長し、 新たに「地球」「ヒト」「暮らし」の3つの価値領域に挑戦します。

詳細はこちら

『住友電工テクニカルレビュー』

『住友電工テクニカルレビュー』は、住友電工グループの技術内容を解説した技術論文集です。

詳細はこちら