ブロードバンドがもたらす家族の団らん(イメージ)

ブロードバンドの進化を牽引~社会インフラとして情報通信ネットワークは欠かせない存在~

ブロードバンドがもたらす家族の団らん(イメージ)

インターネット普及の起爆材となった「ADSL」

BNS事業の源流は、1978年に運用開始した双方向光CATVシステム「Hi-OVIS*1」に遡る。一般家庭と公共施設を光ファイバでつなげ映像の双方向通信を行う世界初の試みだった。このプロジェクトの知見が、後にネットワーク機器事業、映像機器事業、CATVシステム事業へ展開されていく。1990年代後半、インターネットが家庭に普及する中、アクセス網のブロードバンド化が社会ニーズとなった。日本ではISDN*2の整備が行われていたが、ISDNはリッチ化するコンテンツに対応していけるものではなかった。また、FTTH*3化の試みも進んでいたが、この整備には時間がかかる。住友電工は、ブロードバンド化が進むことで新しいサービスやコンテンツが生まれ、そこからより高速なFTTHの需要が高まるという信念のもと、ISDNとFTTHのギャップを埋める技術を探索。ADSL*4技術に着目し、1997年にADSL装置を製品化。日本のブロードバンド化が世界に先駆けて進んだ。

「FTTH」の本命であった「GE-PON」の開発

ブロードネットワークス事業部長 貴田 渉
ブロードネットワークス事業部長 貴田 渉

当時ADSL装置をはじめブロードバンド機器の営業を担当していたのが、現在、BNS事業部長を務める貴田渉である。

「ADSL装置の開発を先行してきた強みをもってアクセス網に参入しましたが、大手通信機器メーカーが席巻する市場において、通信業界で電線メーカーと見られていた当社は異端児でした。そこから大きな転機となったのは、当時FTTHの本命であったGE-PON*5装置の開発において、光LANで蓄積した技術、ADSLでの実績に加え、光部品メーカーとしての技術力を結集し、大手通信機器メーカーとの競争を勝ち抜き、トップシェアを奪取出来たことです。さらにその10倍の伝送容量を持つ10G-EPON装置を開発。高精細映像(4K)サービスにも対応したプラットフォームとして市場投入し、当社はトップシェアを獲得しています」(貴田)

通信と放送の融合、オールIP化に向けて

BNS事業部が発足したのは2014年。ブロードバンド機器事業を展開する住友電工ネットワークス(株)と、CATV向けシステムインテグレーション事業の(株)ブロードネットマックスが統合し誕生した。通信キャリア向けネットワーク機器、映像機器の開発・製造・販売と、CATV向けシステムの設計・施工・保守をトータルに行う事業を通じて、「通信と放送の融合領域での事業拡大」を目指している。近年の成果が通信・放送のオールIP*6化。FTTH環境でIPマルチキャスト放送システムを構築し、電波を利用したRF方式と同一の放送サービスを安定的に提供できることを実証した。高精細な4K/8K映像の伝送、放送サービスの高機能化と多様化、さらにはネットワークの強靭化、省電力化に向けて、RFからIPへの移行が期待される。

「IP化の象徴として、2008年に世界初のフルハイビジョン地デジ放送のIP再送信に対応したIP-STB*7を、2014年に世界初の商用4Kサービスに対応したIPSTBを開発し、通信キャリアに提供したことです。放送サービスIP化の先駆けとなるものでした」(貴田)

社会インフラとして進化するネットワークを支え続ける

今後、ブロードバンドネットワークは、一層の進化が期待されている。たとえば、現実世界と仮想世界を融合させるXR(クロスリアリティ)映像配信サービス。ヘッドマウントディスプレイやXRグラス等の開発も進んでおり、これまで体験したことのない新しい世界が創出されるといわれている。

「3DやXR、メタバースなどは、エンターテインメントだけでなく、社会に貢献していくと思います。自動運転、遠隔医療、見守りサービス、IoTや生成AIでも、ブロードバンドネットワークは社会・生活の利便性や快適性を向上させていくことが可能です。ネットワークは社会インフラとして欠かせない存在であり、私たちはそれを支える社会的責任を担っています。今後も高速・大容量、低遅延、低消費電力のネットワークを実現することで、社会課題の解決に貢献していきたいと考えています」(貴田)

BNS事業部が発足して、2024年で10周年を迎えた。そして着実に「通信と放送の融合」は進んできた。それを支えてきたBNS事業の3事業領域の強みを、次章でひも解く。

*1:Highly-interactive Optical Visual Information System。1978年から1986年まで実施された通産省の未来志向のプロジェクト。
*2:Integrated Services Digital Networkの略。電話線を利用してデジタル信号で電話やデータ通信を行う通信方式。
*3:Fiber To The Homeの略。基地局から各家庭まで光ファイバでつなぐ配線方式。
*4:Asymmetric Digital Subscriber Line(非対称デジタル加入者線)の略。一般のアナログ電話回線を用いて、高速なインターネット通信を可能にするデジタルデータ通信技術。
*5:Gigabit Ethernet Passive Optical Networkの略。光ファイバを利用した高速光アクセス方式の一つ。
*6:Internet Protocolの略。インターネット上においてデータのやり取りを定めた通信規約。
*7:Set Top Boxの略。放送信号を受信し、家庭のテレビへ映像コンテンツを提供する端末。

ブロードネットワークを支える住友電工の技術
ブロードネットワークを支える住友電工の技術
ブロードネットワークを支える住友電工の技術

NEXT

通信と放送の融合を支える3つの事業領域
~その強みと戦略、そして展望~

(3)