
ブロードバンドの未来を拓く新技術開発~「オール光」で、高速・大容量、低遅延、低消費電力~
オール光化が進む未来(イメージ)
次世代の通信基盤「IOWN®構想」

ブロードバンドネットワークの研究開発の拠点が、情報ネットワーク研究開発センターだ。「光システム領域」における、最大のテーマが次世代のネットワークインフラ構想「IOWN®構想」。Innovative Optical and Wireless Networkの頭文字で、革新的な光とワイヤレスのネットワークの実現を目指す。大手の通信キャリアや電機メーカー、IT企業を中心に国際フォーラム(IOWN Global Forum)が結成されており、住友電工は早期に参画、主導的に取り組みを進めてきた。IOWN®構想の核心部分は、オール光ネットワーク(All Photonics Network以下:APN)の実現にある。これは、従来の電気信号による通信ではなく、光信号だけで結ばれた通信網のことだ。20年以上通信システムに関わってきた、同センター長の河本一貴は次のように指摘する。
「APNの利点は省電力、大容量、低遅延の実現です。電力効率では従来の100倍、伝送容量は125倍を達成、送信から受信までの遅延を200分の1にまで短縮。APNは、社会課題の解決や今までにない新しいサービス・ビジネスの創出を促進し、私たちの生活の安全性、利便性、快適性を飛躍的に向上させることが期待されています」(河本)
仮想現実がよりリアルになる

APNの実現に向けて、同センターが研究開発を進めているのが、光信号を送受信する光モジュール「APNトランシーバ」と「APN終端装置」だ。「APNトランシーバ」は光伝送距離を延ばすことでネットワーク装置を減らすことができるとともに、従来ラックマウント型装置で行っていた遠隔制御等の機能を小型トランシーバに搭載することで省電力化を実現する。また「APN終端装置」は既存の通信機器とAPNネットワークをシームレスに接続させる役割を果たし、あらゆるネットワークのオール光化を実現する。
「超省電力・超大容量・超低遅延なネットワークインフラをAPNが実現することで、例えばメタバース(仮想空間)がよりリアルなものになり、将来的にはリアルハプティクス(触覚・力覚伝送)やホログラム等の技術を使えるようになります。時空を超えて人と人、人と世界など、あらゆるものをつなぐことで、安全・安心・快適な社会を実現することが可能になります。そのために我々研究部門が革新的な技術開発にチャレンジし続けていくことが必要だと考えています」(河本)
IOWN Global Forum
IOWN Global Forumは、IOWNテクノロジーとユースケースを開発するための民間組織として2020年に設立されました。2024年10月現在、約160の組織で構成されています。IOWN Global Forumの目的は、フォトニクスR & D、分散コンピューティング、ユースケース、ベストプラクティスなどの分野で新しいテクノロジー、フレームワーク、仕様、リファレンスデザインを開発することにより、将来のデータとコンピューティングの要件を満たす新しい通信インフラストラクチャのイノベーションと採用を加速することです。
「IOWN®」は、日本電信電話株式会社の商標又は登録商標です。