通信と放送の融合を支える3つの事業領域~その強みと戦略、そして展望~

通信と放送の融合を支える3つの事業領域~その強みと戦略、そして展望~

高速・大容量「10G-EPON」の圧倒的開発力 ――ネットワーク機器部

ブロードネットワークス事業部 ネットワーク機器部長 村田 拓史
ブロードネットワークス事業部 ネットワーク機器部長 村田 拓史

ネットワーク機器事業は、基地局から各家庭まで光ファイバでつなぐFTTHに用いられる通信装置の開発をミッションとしている。顧客は大手通信キャリアや電力系通信キャリアだ。取り扱う通信機器は、通信キャリアの局舎に設置される局装置「10G-EPON OLT*1」、エンドユーザ宅に設置される端末「ONU*2」、「ホームゲートウェイ*3」等がある。主力となっているのが、10G-EPON OLTだ。この生みの親とも言えるのが、ネットワーク機器部長を務める村田拓史である。

「FTTHの1Gから10Gへの高速化の流れをいち早く予想し、10G-EPONの国際標準化にも関わり、IC、装置の開発など、知的財産権獲得を経て市場に投入しました。以来、10G-EPON OLTをはじめFTTHを支える装置でトップシェアを有しており、顧客から高い評価をいただいています」(村田)

10G-EPON OLTは市場の約7割と高いシェアを維持し続けている。その強さの要因は何か。

「強みはFTTHに関する技術力と20年以上におよぶ実績と経験です。局装置のハード、ソフトウエアいずれも自社で開発しているため、顧客の多様な要望に応えることができます。例えば、他社のONUを当社OLTにつなぐ相互接続技術。顧客はエンドユーザに端末交換の負担をかけることなく新たなOLTへの更新が可能となります」(村田)

では、課題と今後の戦略についてはどうか。「一つは、カーボンニュートラル実現のための省電力化です。また25Gや50Gへの高速化、宅内のWi-Fi高速化という課題もあります。これらの課題に取り組みつつ、オール光ネットワーク(APN*4)の実現に向けて、研究開発部門と連携して具体的な取り組みを進めていきます」(村田)

高速・大容量「10G-EPON」の圧倒的開発力――ネットワーク機器部
高速・大容量「10G-EPON」の圧倒的開発力 ――ネットワーク機器部

「STB」を活用したサービスの創出が新たな価値を生む ――映像機器部

3つの事業ポートフォリオ

映像機器部は、放送局等から送出された映像信号をテレビ信号に変換する受信端末(STB)を軸とした事業を展開している。地上波では2003年にデジタルハイビジョン放送が開始されたが、インターネットにおいては、データの一部が欠損する(欠損パケット)問題が顕在化していた。住友電工は出資先のシリコンバレーのスタートアップ企業とともに、欠損パケットを復元させる機能「FEC*5」を搭載したIP-STBを開発、当時世界最高水準の映像品質維持を実現し、低遅延・高品質な映像伝送の実証実験を成功させた。映像機器部長の上町新也は、住友電工が「先頭を切って走ってきた」ことを指摘する。

ブロードネットワークス事業部 映像機器部長 上町 新也
ブロードネットワークス事業部 映像機器部長 上町 新也

「当時世界最強のFECを搭載した多チャンネル放送対応IP-STBを商用化、2008年には、FTTHの普及に合わせて、世界初となるフルハイビジョン地デジ放送対応IP-STBを提供し、事業を確立させました。ここで培った技術を活かして、高度BS放送が開始された2018年以降、Google™ Android TV™に自社製ミドルウエア*6『stbcore®』を搭載した、BS4K対応高機能STBを商用化し、この分野ではトップシェアを獲得しています」(上町)。

続けて市場投入したBS4K対応エントリーSTBは、映像機器部にとってさらなるシェア拡大に向けたチャレンジングな取り組みとなった。しかし、若年層のTV離れが喫緊の課題だ。

「この課題に対応するには、今後STBに新たな付加価値が必要です。その新サービス創出への取り組みの一つとして、高齢者や要介護者向けのリモート観光配信サービスを提供する企業とのコラボレーションやAPNの低遅延・広帯域を活かしたXRデバイス向け次世代サービスの実証試験もスタートさせました。また、STBと連携した対話型ロボット等の構想も進めています」(上町)

開発販売から工事までワンストップで提供 ――CATVシステム部

ブロードネットワークス事業部 CATVシステム部長 畑中 一馬
ブロードネットワークス事業部 CATVシステム部長 畑中 一馬

CATVシステム部はCATV機器の設計・施工・保守をトータルに行うシステムインテグレーション事業を展開している。CATVネットワークは、2000年以降、通信高速化対応のため、同軸ケーブルと光ファイバを組み合わせたHFC*7から、建物や住居の手前まで光ファイバを敷設するFTTC*8、そして各家庭まで光でつなぐFTTHへと進展してきた。ここ数年は国の補助金を活用したFTTH化(光化)が全国で集中的に実施され、主力製品である10G-EPON OLTの拡販に成功し、トップシェアを獲得した。

「現在は面的に広がった10G-EPON製品群の利便性や保守性を向上させるシステム提供に注力しています。加入者収容数をスケールアップした10G-EPON管理装置や故障発生時に自動で予備系統に切り替わる冗長システムの他、家庭内の無線環境改善に役立つ端末等、多彩なラインナップを準備しています。また、分散型ネットワーク構成(DAA*9)を活用した段階的な光化、光化が困難な集合住宅向けソリューションなど、CATV事業者の更改計画に合わせた提案を行っています」(畑中)

さらに、特筆すべきは、オールIP化に向けた実証実験の成功だ。

「FTTHを活用したオールIP化はCATVの大きな流れであり、技術力はトップを走っている自負があります。オールIP化により設備コストの低減、設備の省スペース化、省電力化が見込まれます。放送と通信のセンター装置から端末まで自社開発していること、工事までワンストップで提供できる強みを活かし、CATV事業者と共に地域を支える情報通信インフラ整備に貢献してまいります」(畑中)

*1:Optical Line Terminalの略。局側に設置される光回線終端装置。
*2:Optical Network Unitの略。加入者宅側に設置される光回線終端装置。
*3:多機能ルーターのこと。ルーター、電話、Wi-Fi等の機能が一台に搭載されている。
*4:All-Photonics Networkの略。すべてが光で完結するネットワーク。
*5:Forward Error Correctionの略。不完全な伝送による誤りを検出して訂正する技術。
*6:オペレーティングシステム(OS)とアプリケーションの間で動作するソフトウエア。開発期間を短縮し、ユーザーに高品質で多様な機能を提供する。
*7:Hybrid fiber-coaxialの略。同軸ケーブルと光ファイバで構成されたネットワーク。
*8:Fiber to the Curbの略。基地局から建物の手前まで光ファイバでつなぐ配線方式。
*9:Distributed Access Architectureの略。分散型アーキテクチャのこと。

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