「知」が交差し、未来の種が芽吹く〜オーネット研が担う、次世代モビリティの「神経網」開発~
ワイヤーハーネスから「次世代モビリティ」への進化
住友電工グループの自動車事業の研究開発を担うオーネット研は、2025年に設立30周年の節目を迎えた。ワイヤーハーネスを中心とした自動車用電装部品の専門研究機関として設立された同所は、今、その役割を劇的に進化させている。
「研究対象は車両全体のインフラ、さらにはモビリティそのものへと広がっている」
自動車事業本部副本部長兼オーネット研社長を務める平井宏樹は、これまでの歩みをそう振り返る。今やオーネット研は、住友電工と住友電装が持つ材料、機電、情報通信といった多岐にわたる技術を融合させ、グループのシナジーを技術価値へと変換する「知の交差点」となっている。
2030年への「刈り取り」と、その先へ向けた「種まき」
CASEの進展による激しい競争を勝ち抜くためには、開発成果の市場投入と次の一手への取り組みのスピードが重要となる。
「現在、2つの重要なフェーズを同時に進めています。1つは住友電工グループの『2030VISION』に向けた技術の社会実装、すなわち「刈り取り」です。電気を効率よく供給するバスバーモジュールやEV一体型駆動ユニットe-Axle用コネクタ、高速通信用ハーネスなどは、目標通り市場投入が進んでいます。そしてもう一つが、さらにその先を見据えた「種まき」です。配線としてのワイヤーハーネスを、自動車というシステムに情報を巡らせる「神経網」と捉え、センサー機能やセキュリティ機能を備えた次世代の「車載インフラ」へと進化させていく。これこそが私たちの持続的な生存戦略です。」(平井)
「L字プロセス」が支える、実りの刈り取りと未来への種まき
この戦略を製品へと落とし込むために、平井が導入したのが「L字プロセス」だ。これは、ニーズを的確に捉えてプロジェクトを推進する「縦軸」と、技術を深掘り実装する「横軸」がL字型に交差する開発体制である。この2軸を同時に走らせることで、「知能を持つ車載インフラ」の構築が進められている。
「L字プロセス」を動かすのは、「人」の力だ。平井がとりわけ注力しているのが、顧客も気づいていない「潜在ニーズ」を掘り起こせる人材の育成だ。その象徴的な取り組みが、若手エンジニアたちによる「EV(電動)バイク」の試作プロジェクトだ。
「かつて手掛けた自動車の電動化プロジェクトは、いわば『メーカー視点』での開発を学ぶ実践の場でした。今回のEVバイク開発は、エンドユーザーが求める真の価値を見つけ出すための挑戦です。単に高性能な乗り物を作るのではなく、スペックだけでは見落としてしまう、乗る人が感じる『面白さ』、『楽しさ』、そして『心地よさ』を具現化することを目指しました」(平井)
プロジェクトでは、オートバイ本来の醍醐味であるエンジンの「加速感」をモーターの巻き線を切り替えることで再現した。
「完成したEVバイクを前にカーメーカーの技術者と議論を交わした際、若手エンジニアたちの目付きが変わりました。自分たちが見出した価値にお客様が共感してくれる。まさに『開発の原点』を体感できたのです」(平井)
「車載インフラ」としての価値創造ハードとデータが融合する未来
ソフトウェアが自動車を定義するSDVの時代、オーネット研ならではの戦略に迫る。
「私たちの役割は、電気や信号をつなぐだけではなく、それらを『健やかに』機能させることにあります。通信量や電力量が増大すれば、車内はノイズや熱の影響が深刻化します。この複雑な課題を解決し、システムが正常に動作する環境を整えることが我々の使命です。加えて、ワイヤーハーネスから得られるデータを、安全性や信頼性の向上のための価値に変える挑戦も始めています。
自動車、空飛ぶクルマ、ロボットなど、『動くもの』で悩んだら、まずはオーネット研へ。そう言っていただけるような、住友電工グループシナジーの『交差点』としての役割を全うしていく決意です」(平井)
緒方が掲げた「シナジー戦略」を受け、オーネット研で「未来の種」を生み出していく。