2026年1月号 No.208
近年の地球温暖化に起因すると考えられる異常気象の増加を機に、脱炭素化への取り組みが活発になってきている。日本政府は2020年に「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、経済と環境の好循環を目指す産業政策をまとめた実行計画「グリーン成長戦略」を公表した。2021年に策定された第6次エネルギー基本計画では、日本のエネルギー政策の基本方針を示し、安全性を大前提とした上で、エネルギーの安定供給、環境への適合、経済効率性の同時達成を目指していた。この時点では人口減少や省エネルギーの進展により、電力需要量は減少すると見込まれていた。しかし、その後、電力を多く消費するデータセンターや半導体工場の新増設に伴い、一転して電力需要の増加が見込まれるようになった。
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地球温暖化対策および再生可能エネルギー導入の拡大に伴い、電力系統の安定化と長期運用可能なエネルギー貯蔵システムへのニーズが高まっている。本論文では、電力品質の安定化に効果的な電力貯蔵技術として注目されるレドックスフロー電池の性能向上と最新の開発状況と設計について報告する。特に、セルスタックの出力向上やエネルギー密度の向上に焦点を当て、多様な運用要求に対応可能な蓄電システムの実現を目指した。さらに、30年にわたる長期運用に耐える高い信頼性を確保し、ライフサイクルコストの低減に寄与する技術開発も行った。本開発の成果により、再生可能エネルギーの効果的な蓄電と長期的な安定運用の実現に貢献していきたい。
2.5 MB
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脱炭素社会の実現に向け、世界では2050年までのカーボンニュートラルを目指し2030年までに温室効果ガス排出量を半減、日本では2050年に実質排出量ゼロ、2030年までに46%削減(2013年度比)を掲げている。再生可能エネルギーの普及が欠かせない一方で、このような変動性を有する電源の有効活用には大型の電力貯蔵装置が必要不可欠となる。特に、季節や昼夜による電力需給の差を吸収できる長時間エネルギー貯蔵(LDES:Long Duration Energy Storage)のニーズが高まっている。当社製レドックスフロー電(RF電池)は、安全性に優れ、充放電サイクルによる寿命低下が極めて小さく、大容量かつ長時間のエネルギー貯蔵が可能な定置用蓄電池である。日本をはじめ、世界各国でRF電池の導入が進んでおり、再生可能エネルギーの有効利用や地産地消型エネルギーシステムの構築、電力レジリエンス強化に大きく貢献している。本稿では、RF電池が、よりクリーンで安定したエネルギー社会の実現にどのように貢献しているか、具体的な事例を紹介する。
3.2 MB
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データセンターの新増設等に伴う電力需要の増加、世界情勢の影響による化石燃料調達リスクの高まり、2050年のカーボンニュートラルの実現等により、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーへの投資と活用の重要性が増している。他方で、再生可能エネルギーは天候の影響で出力が変動するため、その大量導入により電力系統が不安定化するという課題を伴う。この課題への対策の一つが調整力の確保であり、調整力を捻出できる蓄電池の活用が注目されている。日新電機㈱は、蓄電池から受変電設備までのシステムを一括導入するソリューションを提供している。昨今、蓄電池の活用についてさまざまなニーズが登場していることを踏まえ、本稿では、日新電機㈱のソリューションに、住友電気工業㈱のエネルギーマネジメントシステムであるsEMSA(Sumitomo Energy Management System Architecture)を組み合わせた蓄電池活用ソリューションを紹介する。
2.2 MB
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カーボンニュートラルの実現に向けて再生可能エネルギーの普及が拡大しており、発電機設備と組合せてエネルギーの安定供給に寄与する定置用蓄電池システム(Battery Energy Storage Systems : BESS)のニーズが高まっている。BESSの蓄電池の大部分はリチウムイオン電池(LiB)であるが、BESSの導入が先行している海外だけではなく、最近では国内でもLiBの異常による火災事故が増加しており、海外および国内で安全基準が規定された。国内ではJIS C4441:2021規格がそれに該当するが、この規格に準拠するためには、要求事項の一つであるBESSの異常発生時(LiB等の熱暴走異常時など)に発生するガスや火災を検知し、外部へ警報を発するシステムを備えることが必要である。日新電機㈱は、BESSのコンポーネントとして、LiB異常時に発生するガスを検知するセンサを開発した。本機の特徴とフィールド事例について紹介する。
2.9 MB
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近年の環境志向の高まりを受け、欧州を中心に再生エネルギー導入が進み、直流ケーブルの需要が増加している。当社では、架橋工程を省略することで製造時の省エネ化を達成でき、乾燥工程も不要となりリードタイムを短縮できることから、従来DC-XLPEより環境に優しい直流用非架橋材料の開発に取り組んだ。これまでの研究により、各種機械特性、および電気特性は従来DC-XLPEと同等の性能を有し、直流寿命も十分な直流用非架橋材料の開発に成功した。モデルケーブルを作製し、ケーブルにおける基礎特性も問題無いことが確認できた。更に、架橋剤分解残渣が存在しないため、ケーブル作製直後から厚み方向で体積抵抗率が安定しており、架橋剤分解残渣量によって体積抵抗率が変動し得る従来DC-XLPEよりも品質が安定するメリットがある。今後、更なるケーブル試作、評価を進め、従来DC-XLPEと同様の高信頼性のケーブルを開発する。
1.2 MB
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近年のグローバルなカーボンニュートラル化の潮流に伴い、大規模な再生可能エネルギーの開発が進むとともに、その電力を需要地に届けるための長距離送電網の構築が急速に進められている。我が国においても、北日本から首都圏に直流海底送電を行うなど、長期・大規模な送電網構築のマスタープランが示されている。この潮流を見越し、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)では2015年度から直流海底送電に関する技術開発が継続して行われ当社も参画してきた。国内での直流海底送電計画が具体化した現在、これまでの開発の経緯と意義を振り返るとともに、今後の実プロジェクト適用や将来に向けた開発の展望について考察する。
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近年、世界各国で温室効果ガス削減の取り組みが強化され、洋上風力発電の導入が進んでいる。風車で発電した電気を送電する海底ケーブルの製造性、コスト、施工性の課題を解決すべく、これまで当社は、遮水層を省略した構造の海底ケーブルの開発を進めてきた。ケーブル絶縁体に水分が浸入すると、水トリー劣化が起こるため、遮水層省略には耐水トリー(TR)絶縁体の使用が必須だが、その適切な評価法もなかった。前回、ヒートサイクルにより絶縁体に生じる過飽和水分量に着目した浸水課電試験を検討した。今回、同試験と各種試験の結果を比較し、同試験では現実的な期間で水トリー劣化が生じ、実線路30年の長期TR性評価が可能なことを確認した。加えて、TR絶縁体開発にも同試験を用いて30年TR性を評価し、将来の高電圧化に対応可能な高いTR性と低い誘電正接を持つ材料を見出している。引き続きケーブルの開発を進めており、洋上風力発電の拡大に貢献できると考える。
1.7 MB
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カーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギーの主力電源化の取り組みが進められている。しかし、架空送電線において送電容量不足により再生可能エネルギーが接続できないという課題がある。この課題解決のために2022年より既存設備を最大限活用するN-1電制の適用が開始されている。N-1電制とは、送電線の事故などによって送電できなくなった電流が、他の健全回線へ流れることで過負荷となった場合に、一部電源の出力を抑制し過負荷を解消するものである。そこで、リアルタイムで電流を計測できる当社製送電線センサを活用したセンサ伝送型OLRシステムを開発・実用化したので紹介する。
2.4 MB
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新興国においては、未だ配電網が脆弱な地域が数多く存在し、安定した電力供給が課題となっている。そこで、そうした地域においても送電線が存在するエリアが少なくないことに着目し、送電線から電源供給用に大容量化した電源用計器用変圧器(Power Voltage Transformer(PVT))を用いて直接低圧電力を供給可能なマイクロ変電所を有効な対策として開発を進めてきた。2025年6月、PVTを用いたマイクロ変電所をインドに導入し、実証試験を開始したので紹介する。なお、本活動は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の国際実証事業(JPNP 93050)として実施したものである。
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1~2.5µmの波長域で動作する近赤外センサ(SWIRセンサ)は農業、医療、工業から宇宙までの様々な分野での応用が期待されている。当社はこれまで受光層にInGaAs/GaAsSb量子井戸構造を採用することで2.5µmまで動作する低暗電流の近赤外センサを開発してきた。量子井戸構造に関する理論計算からInGaAsをInAsとGaAsからなるデジタルアロイに置き換えた(InAs)(GaAs)/GaAsSb量子井戸構造を用いることにより量子効率が向上することが示唆された。本報告では、実際にデジタルアロイ型量子井戸構造を受光層に持つセンサを試作した結果およびバリア層を追加することによって暗電流の一層の低減に成功したことについて述べる。
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基地局無線通信用の高周波デバイスなどで、取り扱う情報量が増大し、発熱が課題となり、より高放熱性デバイス構造が望まれている。高熱伝導率のダイヤモンドをヒートシンクとすることはその有効な解決策として取り組まれてきているが、従来の接着方法では数µmのデバイスからヒートシンクまでの熱抵抗が無視できなくなっている。より効率的な放熱方法として、GaN半導体デバイスとダイヤモンドヒートシンクを接着剤・はんだ材料なしで直接接合した、GaN-on-多結晶ダイヤモンド構造を、2インチサイズの大口径で作製することに成功し、GaN-HEMTのデバイスの試作とその高放熱特性を確認した。
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本稿では、産業ロボット、医療・介護、車載などの分野で応用が期待され、物理的な微小検知ができる製品として開発している細径圧電センサワイヤについて報告する。本開発品は、従来の画像認識や静電容量式センサでは検知が困難な、微小変位や接触力の検出ニーズに注目し、加えて柔軟で複雑な変形への追従性を備えたワイヤ状センサである。当社の金属・樹脂複合線を製造するワイヤ製造技術を活用することで、縫製糸程度の細線を実現し、設備などの構造体や衣服、機械部品への組込みを可能とした。また、高い信号出力と高速応答性を示すことも特徴である。現在、触覚センシングや構造健全性モニタリングへの有効性を見出しており、今後の社会ニーズである高密度センサネットワークやスマートマテリアル技術への展開が期待される。
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近年の電子機器の高機能化に伴い、薄膜配線の膜厚と均一性の精密な制御が重要となっている。特に無電解銅めっきは絶縁基板上の成膜に必須であるが、銅の析出に関わる反応の複雑さから、製造条件の最適化は経験知に頼ることもある。本研究では、無電解銅めっき反応における銅の析出挙動を定量的かつ空間的に可視化するため、放射光を用いたその場測定技術を開発した。X線吸収微細構造(XAFS)により、液中のCu2+イオンが金属銅に還元される銅価数変化をリアルタイムに解析することを可能とした。また、X線イメージング手法により、銅膜厚の面内分布を測定して析出の面内分布の可視化を可能にし、さらに、気泡吸着が局所的な析出阻害の原因であると明らかにした。本技術により、無電解銅めっきの析出挙動の理解が進むことで将来的には無電解めっきプロセスに関する生産技術の発展が期待される。
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脱炭素社会の実現に向けて、出力不安定な再生可能エネルギーを普及するには、蓄電池とデマンドレスポンスによる調整力の活用が必要である。一般家庭においては、蓄電システムを活用することで、太陽光発電の余剰電力を蓄えて夜間・朝方に利用でき、また、災害等で長時間停電した場合でも住宅への電力供給が可能となる。当社は蓄電システムの普及促進に向け、施工性が良い住宅用蓄電システムPOWER DEPO(パワーデポ)シリーズを2012年より販売している。この度、従来製品で市場の評価が高い、ハイスペック・一体型コンセプトを継承しつつ、課題であった配送、設置面積を改善するPOWER DEPO Rを開発した。
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近年クラウドコンピューティングや動画配信、生成AI等の進展により、大規模データセンタ(DC)の建設が進んでいる。DC 棟間を結ぶ光ケーブルは、主に地下ダクト内に敷設され、高圧空気と共にケーブルを押し込む敷設方法に対応したマイクロダクト光ケーブルが普及しつつある。既存の地下ダクトの寸法は固定されているため、ケーブルの細径化の需要が高まっている。今回、従来の200μm光ファイバより細径の190μm光ファイバを開発し、更にそれを使用した間欠リボンおよび従来ケーブル径から20%以上細径化した864心マイクロダクト光ケーブルを開発し販売を開始した。
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超硬合金製高精度極薄カッター(以下、超硬刃)は高硬度で優れた耐摩耗や耐食性を持ち、焼成前のセラミック材料、フィルム、箔、繊維などの精密切断に使用される。㈱アライドマテリアルでは超硬合金の素材製作から刃付け・刃先加工までの一貫生産体制を構築、顧客要望に応じ最小厚み0.05mmまでの極薄切断刃を製造している。また切断対象物に適した仕様設計(刃先角度、刃先先端形状等)や切断評価も可能で、切れ味や耐久性など、用途に応じ最適な切断刃を提案、提供している。本稿ではこの、超硬刃についてその特長と切断性能を紹介する。
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近年、電動車両シフトや自動車機器の電動化加速に伴い、制御対象を電気信号で操作するバイワイヤ制御の採用が拡大している。しかし、バイワイヤ制御は車両電源(鉛バッテリ等)が異常をきたした場合に制御不能となる課題がある。住友電工グループの住友電装㈱は、車両電源異常時に複数のバイワイヤ制御を継続可能とする統合バックアップ電源を開発し、2023年発売のプリウスに採用され、順次展開されている。今回、GEN3の保有エネルギーを維持し、小型・軽量化を実現した統合バックアップ電源(GEN4)の量産を開始し、2025年発売されたトヨタ自動車㈱のアクアに採用頂いた。新製品は従来品に比べ体積約▲30%、重量約▲50%の低減を達成し、車両搭載性の向上と省資源化に貢献している。
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