住友電工テクニカルレビュー

『住友電工テクニカルレビュー』

『住友電工テクニカルレビュー』は、住友電工グループの技術内容を解説した技術論文集です。 本ページでは、論文の内容をPDF 形式のファイルにより、掲載しております。

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2022年7月号 No.201

車載多芯複合ケーブルの屈曲負荷解析

自動車の足廻りに配策される多芯複合ケーブルの曲げ形状、屈曲負荷を精度良く算定する解析技術を開発した。多芯複合ケーブルは、複数本の電線(コア線)を束ねて一体化したもので、ホイール内に配置される電動パーキングブレーキ、車輪速センサー等と車体側の電子制御ユニットを繋ぎ、給電と信号伝送を担う。自動車の電動化、先進運転支援システム(ADAS)の技術開発が進展し、需要が拡大している。ケーブルの訴求点は、走行時にホイールの上下動に伴う繰り返し屈曲を受けても導体が断線しない耐屈曲性である。従来、CADで実車配策形状を決め、ケーブル設計を行っていたが、屈曲負荷の算定精度が低く、ケーブル設計決めのために試作/評価での合わせ込みが必要で、開発期間が長引く原因となっていた。今回開発した解析技術により、ケーブル両端を所定の位置・角度で固定した際の曲げ形状、屈曲負荷を精度良く算定でき、開発を効率化できた。

車載多芯複合ケーブルの屈曲負荷解析
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1.9 MB

3次元ポリマー光導波路の形成

慶應義塾大学の石榑教授が発明されたポリマー光導波路の製法の一つであるモスキート法は、市販のマイクロディスペンサーと多軸シリンジ走査ロボットを用いたコアパターンを3次元的に形成可能な技術である 。本作製方法を用いることでマルチコアファイバ(MCF)の導入に不可欠なファンイン・ファンアウト(FIFO)デバイスの実現などが期待できる。一方で、先行研究は主にマルチモードの導波路の検討であり、シングルモード化にはいくつかの課題を有している。特に、クラッド中のニードル走査によるモノマー流動のため、コア形状が円形から悪化する傾向があり、光ファイバとの接続損失を増加させる要因となっている。本論文では、モスキート法によるシングルモード導波路の作製およびシングルモード光ファイバとの接続損失を低減するために、モスキート法を用いて円形コアを形成する方法を理論的および実験的に検討した内容について紹介する。

3次元ポリマー光導波路の形成
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8.3 MB

25Gbps対応光Repeater装置

5G(第5世代移動通信システム)の構築において、モバイルフロントホール(MFH)区間の伝送速度が従来システムの約2.5倍になっている。信号の高速化に伴い、シングルモードファイバの波長分散の影響で光伝送可能距離が短くなる課題がある。光伝送距離を延伸化する方策として、波長分散の影響が極小となる1.3μm帯に波長を変換し、伝送特性を補償するため電気回路による波形生成処理を組合せ、30kmの伝送路まで適用可能なメディアコンバータ型の光Repeater装置を開発した。本稿ではこの25Gbps対応光Repeater装置について説明する。

25Gbps対応光Repeater装置
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1.5 MB

800Gbit/s対応高光出力・高受光感度IC-TROSA

デジタルコヒーレント光通信技術は、幹線系・メトロ系の長距離伝送システムだけでなく、データセンタネットワークにも展開されようとしている。そのため小型光トランシーバに搭載可能で、高速・大容量伝送を実現するコヒーレントモジュールへの要求が高まっており、2019年8月に業界標準化団体OIFにて送受一体型の小型コヒーレントモジュールであるIC-TROSA規格が制定された。我々は、本規格に準拠した波長可変光源内蔵の800Gbit/s伝送用IC-TROSA type2モジュールの開発を行ったので、その成果を報告する。

800Gbit/s対応高光出力・高受光感度IC-TROSA
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2.6 MB

衛星通信の地球局向けGaN MMIC電力増幅器

現代の必須無線通信手段のひとつとして衛星通信が挙げられる。その小型地球局に搭載される電力増幅器には、消費電力やコスト削減などの理由から、高出力化・高効率化・小型化・低歪み化の要求が高まっている。当社は、これらの要求に最適な窒化ガリウム(以下、GaN)の高電子移動度トランジスタ(以下、HEMT)テクノロジーを新規に開発し、衛星通信の地球局向けKu帯48W GaN MMIC 電力増幅器を開発した。小信号利得は32.5dB、最大出力電力は46.9dBm(49W)、電力付加効率は32.8%、3次相互変調歪は-25.6dBcと、業界トップクラスの性能を達成した。

衛星通信の地球局向けGaN MMIC電力増幅器
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酸化物半導体IGZOデバイスプロセスへのホウ素イオン注入技術の応用検討

酸化物半導体であるIn-Ga-Zn-O(IGZO)を用いた電子デバイスは、次世代フラットパネルディスプレイへの応用が期待されている。日新イオン機器㈱および日新電機㈱はIGZO薄膜へのイオン注入技術の応用を目的とし、イオン注入において一般的に用いられるホウ素イオンB+をIGZO薄膜へ注入し、光学的・電気的特性を分析・評価した。その結果、B+の注入技術がIGZO電子デバイス、特に薄膜トランジスタ(TFT)のソース・ドレイン領域の抵抗値低減において有効であることを示した。

酸化物半導体IGZOデバイスプロセスへのホウ素イオン注入技術の応用検討
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2.2 MB

多孔質金属体セルメットの触媒担体への応用

より環境負荷の低い化学プロセスの構築に向け、日進月歩の触媒開発が続いている。セルメットは三次元網目構造を有する気孔率90%以上の金属多孔体であり、担体として用いることで低い圧力損失と高い変形性を有する触媒への応用が期待される。また、セルメット担体は通電加熱によって触媒を直接加熱できる利点もある。本報告ではRu微粒子を担持したCeO2粉をNiセルメットにコートした触媒が市販の球状Ru触媒に匹敵する優れたプロパン水蒸気改質性能を示し、実用的なポテンシャルを有していることを明らかにした。さらに500℃に通電加熱したNiCrセルメットが良好な長期耐久性を有していることを抵抗変化量の経時変化から予測し、エネルギー消費量が少ない小型の反応器を構築できることを提案した。

多孔質金属体セルメットの触媒担体への応用
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2.9 MB

耐へたり・耐屈曲性に優れた高強度導電線

電子部品の配線やコネクタの接圧保持用のばね線には、その使用中において接触圧力の維持や繰返し屈曲に耐えるために高強度化が求められる。しかし、汎用的に使用される銅合金線は高強度化に伴い導電性が低下する課題が生じる。本背景を踏まえ、我々は伸線・熱処理技術を活用し、外周にステンレス鋼、中心側に銅を備えた強度と導電性を両立する複合線を開発した。開発材は、銅合金の中で最高強度を有するベリリウム銅に対して、更に高い強度と導電率を有すると共に、曲げや捻りに対しても強いことを実証した。本報では本開発材料の各種特性並びに、接圧保持用導電ばね、繰り返し屈曲負荷される電線用途での耐へたり性評価、耐屈曲評価を行った結果について詳述する。

耐へたり・耐屈曲性に優れた高強度導電線
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1.5 MB

難削材転削加工用材種「ACS2500/ACS3000」

近年、航空機、石油ガス、医療、自動車産業等において、その機器や部品には耐熱性や耐食性に優れるNi(ニッケル)基、Co(コバルト)基、Ti(チタン)合金等の材料が多く使用され、その使用量は今後大幅に増加すると見られている。一方、これらの材料を切削加工する場合、被削材自体の高温強度が高いことや工具の刃先に溶着しやすいことなどから、工具の寿命が著しく低下する問題がある。そこで当社ではこのような難削材の転削加工において、安定長寿命かつ高能率加工を実現する新しい工具材種「ACS2500」および「ACS3000」を開発した。このACSシリーズは難削材転削加工において当社従来材種と比較して2倍以上の長寿命または高能率加工を実現し、加工コストを大幅に低減させることが可能となった。

難削材転削加工用材種「ACS2500/ACS3000」
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2.1 MB

製品開発・モノづくりを支えるCAE技術

近年、製造業において、製品開発やプロセス条件の最適化といったモノづくりの要素技術として、シミュレーション技術―CAEーはなくてはならないツールとなっている。CAEは物理法則に裏付けされたモノづくり、製品の機能発現を導き、さらには目に見えない現象である電磁波、熱、応力などを可視化することで設計者や生産技術者の想像力をかき立て新製品開発、新プロセスの改善へと結びつけている。また、新製品拡販のための説明やプロセスの変更申請において、実測結果に加えてCAE解析結果を求められるケースも増加している。このような状況下、有用で正確なCAE解析結果を導出するためには、現実と合致する高度なCAE技術と、その解析を高速に処理する計算機サーバーが必要である。今回、計算機サーバーにおいて計算の効率化と機能の高性能化を進めることで、これまで対応できなかったCAE解析を可能とした。その内容を各解析分野で紹介する。

製品開発・モノづくりを支えるCAE技術
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産業用5G 端末

第5世代移動通信システム(以下、5G)を活用し、工場や都市内のあらゆる情報を、高速かつ低遅延でクラウドに伝送し、AIによる情報分析などにより、生産性や安全性を向上させる産業用ソリューション市場が急速に立ち上がろうとしている。当社では、モバイルキャリアが展開するパブリック5Gと、企業や自治体が限定されたエリア内で5G ネットワークを構築するローカル5Gの両者で利用可能な産業用5G端末を開発した。本5G端末はエッジ処理機能を有し、ユーザが必要とするアプリケーションの実装が容易なことを特徴としている。本5G 端末でのエッジ処理とクラウドサーバーでのクラウド処理を組み合わせることで、ユーザ要件に合わせた最適なソリューションの実現が可能となる。

介護ヘルパー情報連携システム

住電通信エンジニアリング㈱は約20年に亘り、ヘルパーの活動実績に基づく対価を計算して請求先に請求するための介護システム(請求システム)“ケアタイム”を通じて介護事業者の業務に携わってきた。今回、管理者とヘルパーの業務の効率化を図り、更に、両者の相互情報伝達をオンタイム化して心のつながりを密にし、質の高いサービスを利用者に提供する介護事業者の想いを実現するシステムとして、介護システムとデータ連携可能なWEB システムを開発し、介護事業者にサブスクリプションサービスとして提供を開始した。

とう道用小型LED 照明灯

とう道(通信ケーブル布設用トンネル)において蛍光灯からLED照明への置き換えが進んでおり、当社は2013年より保護等級IP67(耐塵・防浸)性能を持つ防浸型LED照明をリリースし販売してきた。しかし外形寸法の制約から狭小部への適用が限定的であった。今回、従来品の優れた部分は継承しつつ狭小部への適用が可能な小型で取り付けやすい製品にするとともに、バッテリの自動点検機能搭載による保守の作業性向上と漏えい電流の特性を改善した。

環境にやさしい非架橋絶縁電力ケーブル

現在、電力ケーブルは、架橋ポリエチレン(XLPE)を絶縁体に用いた、XLPE ケーブルが主流製品となっている。XLPEは架橋しているため、耐熱性に優れるものの、加熱しても流動性を示さず、マテリアルリサイクルが難しいというデメリットを有している。また、ケーブル加工時には、網目構造に結合させる架橋反応と、その反応に伴う副生成ガスを脱気するための乾燥工程が必要で、製造長が長いほど、リードタイムが長くなる場合がある。このような状況から、環境にやさしく、生産性の向上に貢献できる、非架橋絶縁電力ケーブルの開発を進めた。

寿命向上 硬質ホイール用ロータリードレッサ

産業界における人手不足解消や、生産性向上のため産業用ロボット市場は急速に拡大し、精密軸受け(リニアガイド・ボールねじ)需要が高まっている。特に転動面の加工は高い生産性が求められることから総形研削加工が採用されており、その輪郭精度は総形砥石を成形・目立てするダイヤモンドロータリードレッサ(RD)が担っている。研削砥石は更なる高能率化のため、従来の一般砥石から高速研削が可能な硬質ホイールに置き換わり、これに伴って高い耐摩耗性を有する総形RDの開発が望まれてきた。この度、軸受け業界の要望に対し、独自のめっき技術を用いて、ビトCBNなどの硬質ホイール用の新しいRDを開発。発売を開始した。

高送りカッタ SEC-スミデュアルミル DMSW 型

フライス工具は外周、端面もしくは側面に工具切れ刃を備えた切削工具であり、これが回転運動することで、様々な部品の加工が行われる。現在ではその切れ刃となるインサートを交換する工具が一般的に広く使用されており、様々な加工に用いられている。近年の工作機械の性能向上により、自動車や航空機、造船、産業機械、金型などの分野では、生産性向上のため、高能率加工に特化した工具への要求が強まっている。また、脱炭素社会の実現に向けたCO2排出量削減活動の一環として、機械加工の省エネルギー化も注目されている。今回開発した「SEC- スミデュアルミルDMSW型」はこれまで以上の高能率加工を可能にすることで、生産性の向上や省エネに貢献する。

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