住友電工テクニカルレビュー

『住友電工テクニカルレビュー』

『住友電工テクニカルレビュー』は、住友電工グループの技術内容を解説した技術論文集です。 本ページでは、論文の内容をPDF 形式のファイルにより、掲載しております。

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2024年1月号 No.204

特集「住友電工グループ「2030ビジョン」へ向けた自動車ビジネス」

巻頭言: 住友電工グループ「2030ビジョン」へ向けた自動車ビジネス

当社の自動車事業は、ワイヤーハーネスを中核として長期的な成長を遂げてきた。一方で近年、自動車業界には100年に一度と言われる“CASE”の変革の波が押し寄せている。この変革は単にクルマに「コネクティッド」、「自動化」、「シェアリング/サービス」、「電動化」といった要素を導入するにとどまらず、クルマの社会的な位置付けをも変えてしまう可能性を秘めており、将来的に自動車の産業構造が大きく変わっていくことが予見される。

モビリティとエネルギーをつなぐEMS事業の展開

自動車業界は100年に一度と言われる変革期を迎え、とりわけ地球温暖化の一因であるCO2排出ガス削減に向けて電気自動車(EV)の世界的な普及が進みつつある。一方、再生可能エネルギーの普及に伴う電力系統の受給バランスの乱れに対応する電力調整力も必要になると考えられている。これまで住友電工グループは、モビリティサービス関連製品としてEVの快適な走行を支援するTraffic Vision Green、エネルギーサービス関連製品として分散電源の最適な運用計画を立案するsEMSAなどの提供を通じて社会に貢献してきた。今後、モビリティとエネルギーをつなぐシステムを一括して提供することで、EV稼働状況を考慮した有効かつ経済的なエネルギーマネジメントシステム(EMS)の提供が可能と考えている。本稿では、住友電工グループのモビリティとエネルギーを融合させたEMSに対する過去実績及び将来に向けた取り組みについて報告する。

モビリティとエネルギーをつなぐEMS事業の展開の口絵
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2.1 MB

モビリティ電動化に向けた当社グループ技術/製品の全体像

環境対応/カーボンニュートラルにむけて、モビリティの電動化が飛躍的に進んでいる。当社グループでも「繋げる材料/技術」をコアに、電動化に関連する広範囲に渡る主要技術/製品を開発/提供している。それら当社グループの技術/製品全体像を「電池周辺」「モーターインバータ周辺」「高圧接続配線/コネクタ」「充電/インフラ」の4分類で紹介する。

口絵
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3.1 MB

BEV電池パック内接続部品

各国でのCO2排出抑制に向けた燃費・排ガス規制の政策により、今後も電動車(HEV、PHEV、BEV等)は増加し、特にBEVの普及が加速すると予測される。当社は電動化車両向けの電池パック内接続部品(電池配線モジュール、高圧ジャンクションボックス、ワイヤーハーネス等)の開発・量産を行っており、今後増加するBEVの進化に応じた開発を推進している。電池パック内接続部品は、電池パックの性能向上に大きく影響し、小型・省スペース化、大電流化の対応、安全性の向上が求められている。本稿では、接続部品の内、電池配線モジュール、高圧ジャンクションボックスの製品概要、要素技術の特徴について紹介する。

BEV電池パック内接続部品の口絵
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3.1 MB

HEV/EV用モータ向け平角巻線

近年、モータのインバータ駆動に伴うサージ電圧で発生する部分放電が巻線の絶縁劣化を引き起こし、モータの耐電圧寿命が低下することが問題となっている。寿命を向上させるためには部分放電の抑制が必要であり、低誘電率皮膜を適用した高い部分放電開始電圧(PDIV)を有する巻線の開発が求められている。当社は、絶縁皮膜の内部に独立気泡を均一に形成する新規技術を開発することで、画期的な低誘電率巻線の開発に成功した。

HEV/EV用モータ向け平角巻線の口絵
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1.5 MB

デジタル技術を活用したアーキテクチャ検証

自動車産業はCASEにおける技術革新により、自動車の知能化が進み、車載システムの開発期間は増加の傾向にある。その一方で、製品を早く市場に投入することで競争力の向上が求められている。㈱オートネットワーク技術研究所では、最適なアーキテクチャを短期間に導出するため、アーキテクチャ検証にデジタル技術を活用する取り組みを行っている。本稿では、ゾーンECUの搭載数、バリエーション数を設計パラメータとしたときのアーキテクチャ検証フローへの数理最適化の適用を行い、さらに導出した結果から設計パラメータの最適条件の予測を行う応答曲面法を組み合わせることで、従来と比較して検証時間を短縮することができたので、その取組みについて紹介する。

デジタル技術を活用したアーキテクチャ検証の口絵
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1.6 MB

車載イーサネットのセキュリティ拡張プロトコルの提案

近年、自動車の電子制御システムにもイーサネットの搭載が進んでおり、自動車の電子制御システムに適したサービス指向プロトコルとしてSOME/IP(Scalable service-Oriented MiddlewarE over IP)プロトコルが採用されてきている。SOME/IPプロトコルではサービスを探索するためのプロトコルであるSOME/IP-SD(Service Discovery)プロトコルを実行した後、サービスを受信することが可能となる。しかしながらその一方で、SOME/IP-SDプロトコルの保護が十分でなくセキュリティリスクがあることが課題となっている。このため、本稿ではSOME/IP-SDプロトコルに対する保護を実施するための拡張プロトコルについて提案する。さらに、提案プロトコルを評価し、他のプロトコルよりも優位であることを示す。

車載イーサネットのセキュリティ拡張プロトコルの提案の口絵
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1.1 MB

高速通信部品の車載100M-Ethernetへの取組

近年、車両のCASE進化による車載ネットワークの高速化ニーズが高まり、次世代通信として車載イーサネットが注目されている。本通信用部品は、標準化団体Open Allianceが定める厳しい通信規格に適合する必要があるため、100Mイーサ適合検討をおこなった。まず、既存のCAN用部品による特性評価においては、電線、コネクタ共に伝送特性、クロストーク特性共に適合しなかった。そのため、新規電線、コネクタを開発すると共に、高速通信部品開発に必要な端末加工技術開発、CAE解析技術開発、通信特性評価技術開発を実施した結果、通信規格に適合することができた。当社は高速通信部品をワイヤハーネスの重要部品と考えており、今後も開発を推進する。

高速通信部品の車載100M-Ethernetへの取組の口絵
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4 MB

自動運転等に向けた高速伝送Sub-harness

CASEの実現に向け車両に搭載される機器の性能が向上する中、特に自動運転に関してはLiDAR等の大容量情報処理を必要とする機器の増加に伴い、車内データ通信に高速化が要求されている。この大容量データ通信の実現に向け住友電工電子ワイヤー㈱では、新規に設定される通信規格の逐次把握を行い、これに準拠する情報伝送サブハーネスの開発・製造を進めてきた。またサブハーネス加工においては、複数存在するデファクトスタンダードコネクタを効率的に生産できる自動加工設備の開発も行ってきた。本稿では、車載機器及び関連の通信規格の技術動向と機器間を接続する高速通信用サブハーネスの主要特性を占める 電線及び端末加工技術の開発・評価について概説する。

自動運転等に向けた高速伝送Sub-harnessの口絵
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2.4 MB

5Gミリ波通信向けメタマテリアル技術を用いた車載アンテナ

自動運転の実現に向けて、高速・大容量や低遅延といった特徴を持つ5Gの活用が期待されている。センシング情報など大量のデータ通信を行うためには、5Gにおいて数百MHzの帯域幅を確保できるミリ波帯の利用が望ましい。ミリ波帯での5Gアンテナは、送受信する電波の方向を制御するビームフォーミングに対応するため、複数のパッチアンテナ素子からなるアレーアンテナを用いる。しかしながら、このアレーアンテナを自動車のルーフ上に搭載する場合、放射特性が乱れてしまうという課題がある。本稿では、Electromagnetic Band Gap(EBG:電磁バンドギャップ)、Artificial Magnetic Conductor(AMC:人工磁気導体)といったメタマテリアル技術の応用によりこれらの課題を解決した、5Gミリ波通信に適したアンテナについて報告する。

5Gミリ波通信向けメタマテリアル技術を用いた車載アンテナの口絵
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3 MB

e-STEALTH W/Hに関する構造と技術

自動車は自動運転化等のCASEに伴い、高機能化による搭載機器及び回路数の増加が進んでいるが、車室空間は快適性向上に向けて拡大ニーズがあるため、ワイヤーハーネス※2を省スペースで配索できる形態の変革が求められている。一方で従来のワイヤーハーネス製造はその複雑な作業故に自動化が難しく、現在も世界の各拠点で、多くの人員を雇用して製造を行っている。そのため、各製造拠点からの長距離輸送に伴うコスト、CO2排出という問題を解決できる形態を研究開発する必要があった。我々は自動車の商品力向上に向けた室内空間の拡大、且つ労働集約型から脱却し、地産地消※3を実現できる自動化に向けたワイヤーハーネスを開発し、大手自動車メーカーでの採用を実現した。本稿ではワイヤーハーネスの新規形態となるe-STEALTH W/Hに関する構造と技術を紹介する。

e-STEALTH W/Hに関する構造と技術の口絵
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2.3 MB

自動車部品の軽量化に貢献する高強度、高耐熱アルミニウム合金線

自動車業界では、燃費向上によるCO2排出量削減のため、自動車部品の軽量化に貢献する高性能なアルミニウム素材が求められている。この要求に応えるため、当社は自動車向け鍛造部品の素材であるアルミニウム合金線の高強度化、高耐熱化に取り組んできた。今回、合金成分、加工プロセスの改良により、汎用6000系アルミニウム合金に対して高強度な合金線と、高耐熱な合金線の2種類を開発した。本稿では、アルミニウム合金線の開発技術、ならびに開発材の特長を紹介する。

自動車部品の軽量化に貢献する高強度、高耐熱アルミニウム合金線
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2.4 MB

トラクションモータの性能向上を目的としたステータアーキテクチャ

近年、e-mobilityでは「地球温暖化防止対策」が重要な焦点となっている。そのため、自動車業界におけるトラクションモータでは、より高速で、高トルク、高効率なモータが求められる。㈱オートネットワーク技術研究所はステータの巻線とスロットの冷却性能について新規技術を組み合わせることで、トラクションモータの最大トルクを維持しつつ、大幅な小型化を実現するステータアーキテクチャの開発に成功した。また本開発ステータの生産工程では、従来ステータと比較して約30%のCO2排出削減を可能にする。

トラクションモータの性能向上を目的としたステータアーキテクチャの口絵
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1.8 MB

転がり滑り環境下における水素フリーDLCの摺動特性

自動車の電動化の進展に伴い、モーターや減速機などに用いられる歯車や軸受といった転がり滑り環境下で使用される部品の耐久性向上や摩擦損失低減が重要になってくると考えられる。日本アイ・ティ・エフ㈱では用途に応じて様々なタイプのDLCをコーティングおり、その中でも水素フリーDLCは潤滑油中での摩擦低減効果が高いことが確認されている。この研究では、水素フリーDLCを歯車に適用した際の耐久性の変化や転がり滑り環境下における水素フリーDLCの摩擦低減効果の調査を行った。その結果、水素フリーDLCを歯車にコーティングすることで歯車の耐久性が向上することが確認された。また、『低粘度』、『高回転』、『高い滑り率』の環境下ほど、水素フリーDLCの摩擦低減効果が高いことが確認された。

転がり滑り環境下における水素フリーDLCの摺動特性の口絵
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1.7 MB

エッジAIを用いたフォークリフト安全支援システム

当社では工場で広く使用されているフォークリフトと作業者の接触事故を防ぐため、作業者がフォークリフトに接近したことを検知するフォークリフト安全支援システムを開発している。検知から発報まではリアルタイム性が要求されるため、現場での即時応答が可能なエッジコンピューティング方式での実現が望まれている。本稿では、小型のエッジコンピュータに搭載したエッジAIを用いたフォークリフト安全支援システムについて提案する。また、精度と速度の両立を図るためのエッジAI評価、効率よく精度を向上させる手法の検討結果についても報告する。

エッジAIを用いたフォークリフト安全支援システムの口絵
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2.7 MB

銅合金板材の端子成形における曲げ割れ予測技術

車載コネクタ用端子は小型化が進み、端子用銅合金は薄肉、高強度化している。端子は主に曲げ加工によって成形され、銅合金の高強度化によって曲げ割れが起きやすくなっている。従来は経験に基づいたトライアンドエラーにより対策されていたが、近年の短い開発期間に対応するためCAEによる曲げ割れの予測技術が求められている。過去に曲げ割れの予測技術としては金属の結晶性を反映した特殊な弾塑性解析が報告されているが、実際の端子用銅合金への適用は困難であった。そこで、我々は曲げ割れの発生メカニズムから板厚方向のせん断に対する変形抵抗が曲げ割れ発生に大きく影響すると考え、薄板材の板厚方向のせん断試験方法を開発した。その測定結果を用いることで一般的な弾塑性解析で曲げ割れをシミュレーションで予測することが可能となったので紹介する。

銅合金板材の端子成形における曲げ割れ予測技術の口絵
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2 MB

ツイストペアケーブルからの不要電磁波放射のメカニズム解明

近年、本格的な5Gのサービス利用が開始するなど、通信機器で使用する周波数の高周波化が進んでいる。通信の高周波化に伴い、従来問題とならなかった通信ケーブルからの不要電磁波放射がEMC問題に繋がる懸念があるため、筆者らは、車内通信などの配線として一般的に使用されているツイストペアケーブル(UTPケーブル)に着目して評価を行い、特定の周波数帯で不要電磁波放射が発生することを確認した。UTPケーブルからの放射は、漏洩ケーブルとの構造の類似性から、漏洩ケーブルと同一のメカニズムで説明でき、放射帯域は漏洩ケーブルの定式で記述できる。本稿では、UTPケーブルからの放射特性を紹介した後に、放射のメカニズムについて詳細を解説する。また、放射帯域の定式を基に、UTPケーブルを選定する際の指針を提案する。

ツイストペアケーブルからの不要電磁波放射のメカニズム解明の口絵
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2.8 MB

細径光ファイバに適したマイクロベンド損失解析

データセンタの光配線では光ケーブルの細径多心化が求められており、光ファイバの細径化はその有力な手段の一つである。光ファイバを細径化することに伴う主要課題の一つは、ケーブル状態のマイクロベンド損失(MB損失)の増大である。光ファイバ構造を決定する際、この損失への影響を考慮しつつ複数のパラメータを調整する必要がある。我々は、Cocchiniが被覆外径250µmの標準的光ファイバを前提に提案した手法を応用し、被覆外径165µm以下の細径光ファイバ用にMB損失を予測可能な解析式を新たに導出した。これにより、任意の光ファイバ構造でMB損失を予測することが可能となった。

細径光ファイバに適したマイクロベンド損失解析の口絵
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1.2 MB

1Tbit/s対応 低損失コヒーレント変調器モジュール

インターネット通信量増大に伴い、長距離伝送用途だけでなく、データセンター間通信でも大容量なコヒーレント光ファイバ通信の要求が高まっている。当社ではInP変調器及びドライバICの開発を進めており、今回、それらを搭載した変調器モジュールを開発し、3W以下の低消費電力での1Tbit/sのファイバ伝送を実証した。さらに、新たな技術として3Dプリント技術を活用したスポットサイズコンバーターを開発し、変調器モジュールとして9.5dBの低損失を実現するとともに、通信規格の信頼性で問題ないことを実証した。

1Tbit/s対応 低損失コヒーレント変調器モジュールの口絵
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2.5 MB

ナノ構造Si-Ge熱電材料による高感度サーモパイル赤外線センサ

本論文ではナノ構造Si-Ge熱電材料を用いたサーモパイル赤外線センサの特性について報告する。サーモパイル赤外線センサは電力消費なく動作できる特長がある。一方で、低感度であることが短所であった。私達はこの感度を向上するため、低い熱伝導率と高いゼーベック係数が期待できるナノ構造Si-Ge熱電材料の開発に取り組んだ。ナノ構造Si-Ge熱電材料は、従来のSi-Ge結晶と比較して、1/8倍の低い熱伝導率(0.8W/(m·K))と2.8倍のゼーベック係数(330µV/K)を示し、それを用いることで、サーモパイル赤外線センサの高感度化が期待できる。実際に、本材料を応用したサーモパイル赤外線センサは雰囲気圧力1×10-1Pa以下にて1200V/Wを示し、高感化を実現した。

ナノ構造Si-Ge熱電材料による高感度サーモパイル赤外線センサの口絵
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1.4 MB

スマートシティを目指したWi-SUN FAN の開発と活用

Wi-SUN FAN(Wireless Smart Utility Network for Field Area Network profile)は次世代スマートメーター向け国際無線通信規格として2012年に仕様策定が開始され、通信速度と距離の改善や低消費電力対応などが加わった新たな仕様「Wi-SUN FAN 1.1」の認証制度が2024年5月頃に始まる予定である。本稿では、Wi-SUN FANとスマートシティとの親和性の観点でWi-SUN FANの特徴を説明するとともに、㈱日新システムズの取組みについて紹介する。

スマートシティを目指したWi-SUN FAN の開発と活用の口絵
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5.7 MB

強制空冷式150kW絶縁型双方向DC-DCコンバータの小型化

強制空冷式150kW絶縁型双方向DC-DCコンバータを、水冷式と同等な電力密度2kW/Lを目指し開発した。主要コンポーネントである変圧器の冷却性能の向上を図ると同時に、パワー半導体と変圧器の冷却器の共通化を行い、さらに、パワー半導体のスイッチング損失の低減、全体損失を最小化する独自制御の開発などによって、日新電機㈱の水冷式絶縁型双方向DC-DCコンバータと同等の小型化を達成した。

強制空冷式150kW絶縁型双方向DC-DCコンバータの小型化の口絵
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2.6 MB

放熱デバイスの性能向上に寄与する高熱伝導の多孔質金属材料

カーボンニュートラル、CO2排出削減といった国際的な環境規制強化の動向に対し、年々発熱密度の増大が進む電子製品や車載電動化製品において熱マネジメントが重視されている。これまで主流であった空冷や水冷といった冷却機構だけでなく、ヒートポンプやベーパーチャンバー、蓄熱システムなど放熱能力に優れた冷却機構の利用拡大が期待される。これらのシステムの能力を決めるカギとなる放熱デバイスとして熱交換器や蓄熱器があるが、その性能向上に寄与する素材として高熱伝導率と高空隙率、微細孔径を両立させた多孔質金属材料を開発した。本材料は、冷却に必要なエネルギーの低減を実現し、CO2排出削減に貢献できると考えている。

放熱デバイスの性能向上に寄与する高熱伝導の多孔質金属材料の口絵
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2.3 MB

ダイヤモンド窒素-空孔欠陥(NV)を用いたコンパクトでポータブルな量子センサモジュール

USB3.0電源で3Wの低消費電力で動作するダイヤモンドNVセンターを用いたコンパクトでポータブルな量子センサモジュールを開発した。NVセンサは、住友電気工業㈱の独自の超高圧合成技術により製作された高品質な汎用のダイヤモンドを用い、㈱NHVコーポレーションにて電子線照射の処理を行うことで高感度のものを製作した。また、ダイヤ基板をコーナーキューブにすることにより、光電流を直方体の形状に比べて2.1倍に高めることに成功した。加えて、λ/4オープンスタブとλ/4変成器を用いたマイクロ波共振器によりNVセンターを強力に磁気駆動させ、マイクロ波の電力を20dB低減した。これら光学系とマイクロ波系の効率向上により、5×10×20mmの小さなセンサヘッドで磁界と温度を計測できるコンパクトでポータブルな量子センサモジュールを実現した。本稿では、ダイヤモンドセンサの社会実装に資するべく、これらの技術成果を報告する。

ダイヤモンド窒素-空孔欠陥(NV)を用いたコンパクトでポータブルな量子センサモジュール
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3.1 MB

自動車用電線の高機能化を支える原子レベルの先端分析技術

我々の暮らしを支えている電線製品は省資源化やCO2排出削減の観点で軽量化が求められている。特に自動車用の細径の電線では高強度かつ高導電率の導体材料として銅合金が重要度を高めている。銅合金では純銅へ微量に添加した元素を原子レベルで緻密に形態制御することにより高機能を発揮させており、製品の特性を最適化する際に最先端の解析技術を活用することが不可欠である。本報告では、電線の強度と導電率をバランスよく両立できる材料設計指針獲得に繋がる原子レベルの新規解析技術として、3D-AP、TEM、XAFSを適用することで、ナノスケールの析出物の形態からミリスケールでの析出と固溶の割合の評価が可能であることを示す。

自動車用電線の高機能化を支える原子レベルの先端分析技術の口絵
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2 MB

EDX分析による非破壊3次元元素マッピング

半導体薄膜の積層構造、めっき、樹脂の表面処理など、多くの製品において表面近傍における元素のプロファイルが製品特性に影響し、様々な事情からそれらを非破壊で評価したい需要は多い。我々は過去にX線光電子分光(XPS)のデータから非破壊で深さプロファイルを推定するMSM(Maximum Smoothness Method)という独自の解析手法を開発したが、このたびそのMSM解析をエネルギー分散型X線分光法(EDX)分析データに適用できるよう拡張した。EDX分析は分析の専門家でなくとも比較的簡便に実施でき、10 nm~1 µm程度の3桁にわたる厚みレンジに対応可能なため幅広い用途に展開できる。さらにEDX分析では試料の面内方向におけるマッピング分析が容易に実行できることから、MSM解析と組み合わせることで試料の3次元元素分布を非破壊で評価することが可能となる。本論文ではEDX分析を用いた非破壊深さプロファイル評価および非破壊3次元元素マッピング評価の事例を紹介する。

EDX分析による非破壊3次元元素マッピングの口絵
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2.5 MB

車載アーキテクチャに対する機能分割検討

車載電子機器のアーキテクチャにおいてこれまで単一のECU で実装されていた各機能は、拡張性・汎用性が求められる次世代アーキテクチャでは制御を集積した頭脳(セントラルECU)とセンサや負荷を駆動する手足(ゾーンECU)へ分割実装される傾向がある。

プローブ交通信号制御API

交通信号制御は、交差点の方向別の交通状況に応じて、青信号の長さの割り当て等の信号制御パラメータを適切に決定することで、安全性の向上、渋滞の改善、CO2排出量の削減等に寄与している。従来は交通状況の把握に車両感知器が用いられてきたが、その設置及び維持に要するコストが課題とされている。

耐キンク特性を有する難燃マイクロダクト光ケーブル販売開始

近年クラウドコンピューティングや動画配信、5G対応等の進展により、通信トラフィックが急増したことで、大規模データセンタ(以下、DC)の建設が進んでいる。DC間を結ぶ光ケーブルは主にダクト内に布設され、高圧空気と共に押し込む布設方法に対応したマイクロダクト光ケーブルが用いられる場合がある。また、DC屋内には難燃特性が求められるため、DC屋外に使用される非難燃特性の光ケーブルとの接続点が必要であった。当社は、DC 屋内外を兼用で接続点無く一続きに布設できる288心の難燃マイクロダクト光ケーブルを開発し、販売を開始した。

オールフッ素樹脂製微小孔径膜「ポアフロンナノモジュール」

当社の延伸ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製多孔質体「ポアフロン」は広範な産業分野で利用されている。その中で例えば半導体関連用途では、高集積化の進展によるプロセス薬液の高清浄度化が求められており、分離膜においては微細孔径化のニーズが高まっている。これまでに当社は超微細孔径PTFE 膜「ポアフロンナノ」を独自に開発してきた。今回は更にこの中空糸膜をオールフッ素樹脂製ハウジングに搭載した「ポアフロンナノモジュール」を開発したので、その特徴(仕様と応用)について報告する。

小型旋盤用G 級3次元チップブレーカ「SL型ブレーカ」

自動車、電子部品、医療をはじめとした産業で使用される小径かつ精密な小物部品の切削加工では、ばり・びびり・加工面不良を抑制し、加工の高品位化を実現できる工具へのニーズが高まっている。当社ではこれらニーズに応えるべく、優れた切れ味により高い加工品位を実現する小型旋盤用G級3次元チップブレーカ「SL型ブレーカ」を開発した。その特長、性能を紹介する。

8インチSiCウェハ加工用研削工具ナノメイト マスパワー ⅡB

EVや太陽光発電(PV)の急速な普及に伴い、SiCパワーデバイス市場は年々拡大しており、数年以内に生産枚数を2~5倍に引き上げるといった設備投資も拡大している。また、SiCウェハのサイズは現在6インチ(150mm)が主流であるが、8インチ(200mm)の開発及び製品化に向けた動きも見られ、SiC パワーデバイスをより安価に製造するための技術開発が活発に行われている。

高出力半導体レーザ用Cu-Diamond 放熱基板

半導体レーザは既存のレーザ光源と比べ小型・高効率・長寿命など優れた性能を有し、ヘルスケア、センシング、板金加工など多くの分野で社会実装が進んでいる。また、カーボンニュートラルの観点からも注目度が高く、最近ではレーザ核融合でも検討されている。上記を背景に今後も半導体レーザ市場は成長が期待されており、更なる高出力化、ビーム品質向上などが求められている。性能向上にはレーザダイオード(Laser Diode、以下LD)技術だけでなく、LD が発振時に発する熱を効率的に逃がし、熱による歪みが出ないようにするための放熱基板も非常に重要となっている。本報では、高放熱かつ低熱膨張などの特長を持ち、高出力な半導体レーザの放熱基板に適した銅とダイヤモンドの複合材について紹介する。

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