2026年7月号 No.209
IoT技術を用いた様々なアプリケーションやAI技術の進展に伴い、通信量が飛躍的に増大しており、2030年には一つのトランシーバに要求されるデータレートが10 Tb/s級に達すると予想されている。一方、光通信システムを支えてきた単一材料光デバイスにおいては、Multi-Tb/s級のデータ伝送に向けた広帯域化と低消費電力化の両立に限界が見え始めており、技術的なブレークスルーが求められている。高速・高効率動作に優れたⅢ-V族化合物半導体と素子の小型化による高密度集積が可能なシリコンフォトニクスのそれぞれの利点を組み合わせた異種材料集積光デバイスは、この特性限界を克服する有望なアプローチの一つとして期待されている。本稿では異種材料集積として導入した小片/ウェハ接合技術を紹介すると共に、異種材料集積の特長を活かした波長可変レーザ、マッハツェンダ変調器、受光器について報告する。
3.1 MB
3.1 MB
富山住友電工㈱の製品であるニッケルセルメットは、三次元網目構造を有する金属多孔体である。筆者らはセルメットをアニオン交換膜(AEM)型水電解装置の多孔質輸送層(PTL)への適用することを目指しており、過去に高い電解性能が得られることを報告している。しかし更なる検討により、セル構成次第ではセルメットよりも緻密な構造を有するPTLを適用することで、より性能を向上させられることが分かってきた。今回、そのようなセルへの適用を目的に不織布形状を有するセルメットを開発した。その結果、セルメットと不織布の両方の利点を併せ持つことが判明したため、それらの知見について本論文にて報告する。
1.9 MB
1.9 MB
近年、AI技術の急速な発展に伴い、企業や研究機関におけるAI活用が急増している。特にテキスト出力を行う大規模言語モデル(LLM; Large Language Model)の拡大が顕著である。当社では、顧客情報や、知的財産である発明アイデアなどの機密情報が社外に流出するリスクに対処するため、社内サーバ上で実行するローカルLLM統合プラットフォームの試作に取り組んでいる。この環境では、業務PCから社内のサーバへリクエストし、社内サーバ上の計算資源で推論を行うことで、完全に社内に閉じた安全なLLM活用を実現する。さらに、GPUを始めとする計算資源の共有やクライアント型ツールの構築、カスタムアプリケーション開発環境の整備により、安全性を維持しながら業務効率と研究開発サイクルの短縮に寄与できることを確認したので報告する。
1.2 MB
1.2 MB
自動運転のロボタクシーが主要都市で定着し始めているが、今後は物流を中心に、我々の身近な生活の場への拡大が期待されている。それに伴い、自動運転で重要なセンサであるToF-LiDARには、検出距離の延長とレーザ安全性の両立、そして屋外での耐環境性がより求められる。波長1550 nm帯がレーザ安全性では有利だが、これまで低雑音の受光素子がなく、検出距離の律速となっていた。そこで我々は、アンチモン(Sb)系材料を増倍層に使用した低雑音のアバランシェ光検出器(APD)を開発した。今回、検出距離と太陽光耐性について、既存の波長905 nm帯とSb-APDを用いた波長1550 nm帯をシステムのSNRの観点から比較評価した結果を報告する。
1.6 MB
1.6 MB
2050年のカーボンニュートラル実現へ貢献するべく、民生用途で広く使用されているUL規格対応125℃定格電線および80℃定格電線の絶縁材のバイオマス化に取り組んだ。125℃定格電線では、石油由来材料の使用量削減を目的に、バイオマス無機フィラーの活用を検討した。フィラー高充填時に生じる引張強さと伸びの低下を抑えるため、ベース樹脂の結晶量を調整してフィラーとの相互作用を強化し、さらに粒子形状を制御したホタテの貝殻フィラーを用いることで、UL規格値を満足させることができた。80℃定格電線では、植物油由来の可塑剤を用いることでバイオマス化を達成し、125℃、80℃の2つの定格温度でUL規格対応バイオマス電線の製品化を実現した。
2.5 MB
2.5 MB
近年、製造業界において加工コスト低減および電力消費量の抑制を目的とした高速・高能率加工が急速に広がっている。また、希少金属材料の使用量増加やタングステン価格高騰の影響により、タングステン使用量の少ないサーメット工具が脚光を浴びている。特にコーテッドサーメットは仕上げ加工中心に様々な用途で利用されるが、高速・高能率加工の要求が高まり過酷な切削環境での加工が必要な中で、サーメット工具は超硬工具に対し材料強度が劣り、高速・高能率加工のような過酷な条件下では耐欠損性が不足し加工が安定しないため、適用範囲が限定されている。本稿ではこの課題を克服した最新コーテッドサーメット材種「T2100Z」について紹介する。
5.3 MB
5.3 MB
近年、車載用モータや電子部品においては、小型軽量化およびエネルギー効率向上への要求が一層高まっている。これに対応する有効な手段の一つが、巻き線の占積率向上であり、異形断面線材の活用が注目されている。異形断面線材の製造には異形ダイスが不可欠であるが、車載用途における高精度化および電子部品の微細化に対応した極小径の異形ダイスの実現は既存技術では困難な領域であった。そこで、当社ではダイヤモンド製異形ダイスの開発によって、車載用途では穴径公差±1µmの高精度化と表面粗さRa10nmのダイス内面の高品質化を達成した。電子部品用途では30µm~100µmクラスの小径異形ダイスの量産化を実現するとともに、さらにCAEと実機伸線を組み合わせた設計手法を確立した。本稿ではこれらについて報告する。
3 MB
3 MB
再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入拡大に伴い、電力系統の安定化と調整力の確保が重要な課題となっている。系統用蓄電池は、再エネ余剰時の充電と需給ひっ迫時の放電により系統の安定運用に貢献する設備として導入が進んでおり、その運用には市場との連携や複数拠点の制御を担うエネルギーマネジメントシステム(以下、EMS)が不可欠となる。住友電工のEMS であるs EMSA(Sumitomo Energy Management System Architecture)は、電力需給調整を担うVPP(バーチャルパワープラント)システムとして、これまで様々なアグリゲータ事業者に納入し、豊富な実績を重ねてきた。今回、s EMSA の新たなラインナップとして、系統用蓄電池向けs EMSA-ESS(Energy Storage Station)の提供を開始した。本システムは、電力取引市場の情報や蓄電池の状態をもとに充放電計画を立案し、複数の蓄電所を自動制御することで、系統用蓄電池の複数市場に対応した運用と多拠点管理を一体で実現する。
0.9 MB
車両の衝突防止や車間距離制御を目的としたミリ波レーダーやデータ通信に用いられる高周波帯の周波数は、安全性の向上やソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)の普及に向けて、高精度のセンシングや高速通信を担うべく、利用拡大が見込まれている。高周波信号を送受信するアンテナ基板においては、20GHz以上の周波数帯にて既存の高周波用基板材料では信号の伝送損失が大きく、新たな基板材料が求められている。当社では低誘電率材料であるフッ素樹脂を基板材料に適用した高周波基板「FLUOROCUIT」を開発した。図1はこの基板を用いたアンテナ基板の事例で、図2のように高性能な車両衝突防止センサー、高速通信用アンテナ、バイタルセンサーなどへの応用が期待される。
2.8 MB
鋳鉄は自動車産業をはじめ広く用いられており、ねずみ鋳鉄は摺動性が必要なエンジンブロックやブレーキディスクなどに、ダクタイル鋳鉄は強度が必要なデフケースやキャリアケースなどに用いられている。近年、車体の軽量化による燃費向上を目的に、部品の薄肉化・高強度化が進んでおり、鋼に近い強度を持つFCD500以上の高強度ダクタイル鋳鉄の採用比率が高まっている。このような被削材の高強度化に伴い、切削工具には従来以上の耐摩耗性が求められている。今回開発した鋳鉄旋削用新材種AC4115Kは、新開発のCVDコーティングと高硬度母材の採用により、特に高強度ダクタイル鋳鉄の連続加工において、優れた耐摩耗性を発揮する。工具寿命を延長し加工コストの低減に大きく貢献する。
1.5 MB