2025年7月号 No.207
BEV/PHEV/HEVの生産台数の増加に伴い、モータ、ギア、インバータを一体化したeAxleの開発が活発化している。eAxleモータの電源配線はバスバーが主流であるが、耐振動性に優れ、設計の自由度も高まる電線にニーズがあると考え、油冷方式のeAxleモータの電源配線をターゲットに、配策しやすい柔軟な電線の開発に取り組んだ。柔軟な絶縁被覆材のベース材料として、冷媒兼潤滑油であるATFへの耐性と、耐熱性に優れるフッ素ゴムを選定した。しかし、柔軟性と背反する、耐摩耗性、絶縁被覆材同士の耐互着性の改善が課題であった。そこで、耐摩耗性は結晶成分の微分散で、耐互着性は架橋による分子の運動性のコントロールで課題を解決した。本検討により、ISO200℃定格適合、耐ATF性、柔軟性、を兼ね備えた電線を開発でき、上市した。
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NTTが提唱した次世代情報通信基盤の構想であるIOWN(アイオン)構想は、IOWN Global Forum(IOWN GF)の活動を通じて、世界規模で異業種の企業が参画し、社会実装に向けて技術とユースケースが議論されており標準化団体への提言として展開されている。IOWN構想は、オールフォトニクス・ネットワーク(APN: All-Photonics Network)をベースとした低遅延(1/200)・大容量化(伝送容量125倍)・低消費電力(電力効率100倍)を特徴としている。特に従来の1/200という低遅延性は、データセンターの配置や金融システム高度化への貢献に加え、今まで不可能であった新たな映像サービスの創出が期待でき、当社ブロードネットワ-クス(BNS)事業部の映像機器部門では新たな市場開拓に向けた基盤技術と商品開発に取り組んでいる。今回その一環としてIOWN構想のAPNの特徴を活かした超低遅延メディアコンバータ(LLMC)を開発した。本稿ではその設計思想と、IOWN GFのAI支援エンターテインメントILM(AIC-Entertainment Interactive Live Music)ユースケースにおいて定義された目標性能に対し、低遅延性能を実現した結果を報告する。
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本稿では、施工性に優れたデータセンター向け細径6912心Outdoor/Indoor兼用光ケーブル(以下、細径6912心O/Iケーブル)の構造、特性および施工性について述べる。本ケーブルは、従来の200µm光ファイバを用いた間欠12心ファイバテープに加え、AI DC等に用いられている16心パラレル伝送に適した間欠16心テープも開発し、細径6912心O/Iケーブルに適用した。そして、ケーブルの細径化を実現するために「X-treme Spacer Cable」と名付けた中心テンションメンバ型スペーサーケーブルを開発した。本構造は従来のスペーサー型の特長である曲げ方向性がなく、敷設作業性に優れた特長を活かしつつ、細径化を実現した構造である。さらに、高難燃低発煙のLow Smoke Zero Halogenの外被材料も開発し、北米の厳しい難燃規格であるULライザー規格にも合格した。当該ケーブルを使用することでDC光配線の大幅な施工時間短縮、施工コスト削減が見込まれる。
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電子線照射技術は、電線被覆の耐熱性やタイヤ用ゴムシートの流動性の改善などの多くの工業的プロセスで利用されている。 ㈱NHVコーポレーションはこれまでに、広範なエネルギー領域(100kV~5MV)の電子線照射装置(Electron Beam Processing System:EPS)を国内外の顧客に多数納入してきた。近年、持続可能な開発目標の達成に向けた取り組みにより、EPSに対して環境への配慮や作業者の安全確保、装置小型化の要求が高まっている。これらの要求に対応するため、我々は環境負荷の高い鉛材の使用量を大幅に削減し、保守作業の安全性を向上させた省スペースな新型のEPS(EB-XW)について報告する。
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レーザ溶接は様々な産業で利用され、特に自動車産業では車体の軽量化や電動化といった需要の高まりを受けて利用が拡大している。レーザ溶接ではセンタービームとリングビームを組み合わせたデュアルビームを金属材料に照射することでスパッタ低減等の加工品質向上が図れることが知られている。その実現方法としてはデュアルビームを出力可能な発振器を導入するかビーム分岐DOE(回折型光学素子)を使う方法があるが、それぞれ導入コストが高い、デュアルビームの強度比を調整できないといった課題があった。そこで当社では既存のシングルビームシステムに後付けするだけでデュアルビーム化を実現でき、尚且つ任意の強度比に調整できるアジャストシェイパを開発した。本稿では製品の特長と実際のレーザ加工ヘッドに搭載した評価結果を紹介する。
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当社では従来、不良品の検査を人による目視で実施していたが、人手が相応に必要なうえ、担当者によって検査基準にばらつきが生じやすかった。そこで外観検査AIシステムを開発し、不良品の検査の自動化を進めているが、同システムの教師データとして利用する不良品の画像がなかなか集まらず検出精度が上がらないことが課題であった。そこで、少量の不良品画像から多量の疑似的な不良品画像を生成できる画像生成AIを導入し、さらに、同システムが誤判定しやすい画像、すなわち、弱点を分析・特定する仕組みもあわせて開発することで、その弱点を克服する画像を生成し、弱点を集中的に訓練するループ(弱点トレーニング・ループ)を繰り返し回すことができるようにした。これにより、不良品画像が十分収集できていない状況でも、外観検査AIシステムの開発期間を大幅に短縮しつつ検出精度を向上することができたので報告する。
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当社では製品の外観検査を行うAIの開発・運用を進めている。そのようなAIを製造現場に導入するうえで、課題を二点挙げることができる。まずAIの開発に必要な画像データとその注釈(教師データ)の準備に多くの人手を要すること、次にAIの検査結果の根拠が可視化されず製造現場での信頼が得にくいことである。前者については、ChatGPTに も採用されたTransformerというAIに教師データを極力必要としない自己教師あり学習を応用し、後者については、AIの注視領域を明示する技術であるアテンションを応用して人の知見をAIに反映させる機能を開発したので報告する。アテンションを活用する方法として弊社独自のシグモイドアテンションを採用したことで、より明確にAIの判断根拠を可視化しつつ性能向上にも寄与することができたため、あわせて報告する
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AOC(Active Optical Cable)は端末に光電変換素子を搭載しマルチモードファイバにて光信号の長距離高速伝送(ex. 100m, 40Gbps)を実現する光ハーネスである。近年、医療/産機分野では高速信号伝送路中の電気ノイズ抑制を目的に、メタル線から光ファイバを用いたAOCへの置き換えが注目されている。しかしながら用途によっては電源供給等に依然としてメタル線が必要となるためメタル線と光ファイバを複合したAOC が必須である。また同分野では機器の小型化や可動部の増加に伴い、配線材に対して非常に高い機械信頼性の要求がされることが増えてきたが、光ファイバとメタル線の機械信頼性の差が問題となっていた。本報では、光ファイバと比較して機械信頼性の低いメタル線を、当社技術であるTCC(Thick Copper Covered)ワイヤーに専用の樹脂被覆を施しAOC に採用可能な機械信頼性の高いメタル線を開発したため、このUnbreakableActive Optical Cable(UB-AOC)について紹介する。
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近年、加熱用途におけるマイクロ波の利用が広がりを見せており、電子レンジの食品加熱をはじめとする民生用途に加え、産業用の食品加工や木材・樹脂等の乾燥、半導体装置のプラズマ生成等にもマイクロ波の活用が進んでいる。従来、マイクロ波加熱においては安価で高出力が得られる真空管素子のマグネトロンが主流であったが、近年では長寿命、高信頼性、低雑音といった特長を持つGaN HEMTが注目されている。更にGaN HEMTには位相・周波数・出力電力の制御性が高い利点があり、均一加熱や部分加熱といった新たな加熱機能の実現が可能になる。
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船舶用レーダは航行、衝突回避、気象監視に用いるレーダとして使用され、使用周波数はX 帯やS 帯である。近年では自動航行を目指した安全性重視の高まりにより、レーダ需要の拡大が見込まれている。また、マグネトロンなどの真空管素子から窒化ガリウム高電子移動度トランジスタ(GaN HEMT)といった固体素子への置き換えが進んでいる。その背景としてマグネトロンは寿命による交換のサイクルが1年から2年と短く、運用コスト上昇の一因となることが指摘されている。一方、固体素子は10年以上の長期信頼性を持つことでマグネトロンのように定期的な交換が不要となり、運用コストの削減が期待できる。また、パルス圧縮等の技術を用いることでマグネトロンと比べ、より小さい電力で同等以上のレーダ性能を実現可能となることから今後も需要の拡大が期待される。
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