Thunderbolt™開発秘話。Intel社の課題に対応した住友電工の総合力
高速伝送を可能にする電子回路を搭載したThunderbolt™4ケーブル
真のニーズは光化ではなく高速I/Fの実現
Thunderbolt™開発に住友電工グループが初めて関わったのは、2009年に遡る。田村充章は、当時、光通信研究所のメンバーとして、シリコンバレーを中心とした企業に向け、自社の機器内光ファイバ接続技術のプロモーション活動を展開。その中で、Intel社にプレゼンテーションする機会を得た。
「当時、機器内の高速信号配線をメタルから光へ移行する機運がありました。我々は、Intel社に自社の光配線技術のプレゼンを実施。まさにIntel社はPCの次世代通信規格として光I/Fを検討しており、大いに興味を示されました。こうして当社がThunderbolt™の前身であるLight Peakの開発に着手することになったのです」(田村)
当初は光I/Fが採用される計画だったが、検討を続けていく中で、状況は変わっていく。
「光ファイバ接続は塵埃に弱く、民生用で使うには信頼性が不安視されました。また、メタルに比べてコストが高くなる。そして決定的だったのは、Intel社の真のニーズは光化ではなく、高速I/Fの実現にあることを把握したことでした。当社には、携帯電話やノートPCの折り畳み部分に採用されている世界トップクラスの極細同軸ハーネス技術がある。また、メタル及び光、ともに提案できる能力がある。こうした中でThunderbolt™ケーブルに極細同軸ケーブルの採用を提案し高い評価を獲得、Intel社と強固な関係を構築したのです」(田村)
Thunderbolt™を巡って築いた関係性
こうして高速I/Fの実現を目指したThunderbolt™ケーブルの開発は始まった。重要なテーマの一つが「対内SKEW(スキュー)」といわれるペアケーブルの2心間に発生する信号伝搬の遅延時間差の改善だった。この時間差を限りなくゼロにすること。また、特定周波数において、急激に信号が減衰する現象の改善も大きなテーマだった。これらの課題を一つひとつクリアすることで、周波数帯域・10Gbpsの高速I/Fを実現。2011年、Thunderbolt™ケーブルは市場に投入された。
現在、Intel社・マーケティング部門のGMであるJason Ziller氏は、Thunderbolt™の開発当初、マーケティングリーダーを務め、住友電工グループとは様々な局面で深い交流を持ってきた一人だ。
「光かメタルかを検討していた時、住友電工が提案してきた極細同軸ケーブルには驚嘆しました。メタルで高速I/Fが実現できると。以来Thunderbolt™ビジネスの最良のパートナーとして、その高い技術力だけでなく、勤勉さやコミットメントなどを、高く評価しています。住友電工はIntel社と本当に良い関係を築いてくれました。これからもこの関係を持続させていきたい」(Ziller氏)
Ziller氏は、Thunderbolt™市場の中心的ユーザーである、eスポーツなどのゲームプレイヤー、デジタルクリエイターのニーズは今後さらに拡大していくと予測している。
「Thunderbolt™はシンプルながら高い技術が投入され、なおかつ信頼性があります。これらを必要とする人は確実に増えていくでしょう。PCがあるところにThunderbolt™――そんな世界を目指しています」(Ziller氏)
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