1つのインターフェイスで、給電、データ転送、ビデオ表示を実現
Thunderbolt™5ケーブル
データ伝送の高速化、80Gbpsを実現
Thunderbolt™とは――。PCと外付けディスプレイやストレージなどの周辺機器を接続するために活用される、高速汎用データ伝送規格である。その特徴は、給電、データ転送、ビデオ表示の3つの機能を1つの「繋がり」、I/F(インターフェイス)で実現することだ。
2011年、最初にリリースされたThunderbolt™では最高伝送速度10Gbpsを達成。これは当時のUSB3.0と比較して、速度で2倍となる。以降、2013年リリースのThunderbolt™2で20Gbps、2015年リリースのThunderbolt™3と2020年リリースのUSB4に準拠したThunderbolt™4は40Gbps、今後発売されるThunderbolt™5では80Gbpsを実現している。この広帯域幅により、たとえば、ゲームプレイヤーは、動きが滑らかで低遅延な映像でプレイできる。映像クリエイターは、マルチディスプレイで作業しながら大容量の動画や写真ファイルをすばやくバックアップすることが可能だ。こうした機能により、Thunderbolt™はゲームや映像制作をはじめ、デジタルワークのパフォーマンス向上を強力にサポートする。
現在、1m程度の短尺では信号をそのまま伝送するパッシブメタル(電気)ケーブル、1mを超える長さでは信号の減衰を抑える回路が搭載されたアクティブメタルケーブル、3m以上最長50mまで伝送可能なアクティブ光ケーブルが適用されている。
柔軟性のあるケーブルで高速通信を実現
このThunderbolt™ケーブルの開発・製造を担っているのが、住友電工グループの住友電工電子ワイヤー(株)(以下、住友電工電子ワイヤー)である。同社は長年にわたって、電子・情報機器用電線の開発・製造を推進、特に微細加工技術は高く評価されている。仙波弘之は、Thunderbolt™ケーブル開発の初期から関わってきた。
「Thunderbolt™に求められる機能の一つは高速伝送ですが、当時、高速伝送の主流であったケーブルは電線を2本対で撚り合わせたツイストペアケーブルで、硬く使い勝手が悪いという課題がありました。当社は代替として、Intel社に極細同軸ケーブルを提案。最大の利点はケーブルに柔軟性を持たせて、かつ高速通信を可能とする点です。設計承認を得たことで、当社に開発製造が託されたという経緯があります」(仙波)
仙波が率いるCBA部には、最適な加工でケーブル特性を維持することが求められた。そこでは、培ってきた微細加工技術がフルに発揮された。
「販売開始後、海外サプライヤーもIntel社の承認を受けてThunderbolt™市場に参入してきました。その中で優位性を保つには、開発製造の基本であるQ(Quality)、C(Cost)、D(Delivery)を磨くことが大切だと考えています」(仙波)