11 March 2025

2インチ多結晶ダイヤモンド基板上のGaN-HEMTの作製に成功 通信用基幹デバイスの大容量化と低消費電力化に貢献

  • 住友電気工業株式会社

  • 大阪公立大学

住友電気工業株式会社(本社:大阪市中央区、社長:井上 治、以下「住友電工」)と、大阪公立大学(所在地:大阪府、学長:辰巳砂 昌弘、以下「大阪公大」)は、国立研究開発法人科学技術振興機構(以下「JST」)の共同研究プロジェクト*において、2インチの多結晶ダイヤモンド(PCD)基板上で窒化ガリウムトランジスタ(以下「GaN-HEMT」)の作製に成功しました。本技術は移動体通信・衛星通信分野での基幹デバイスの大容量化、および低消費電力化を実現する重要なステップとなります。また、この成果は「第72回応用物理学会」(3月14日~17日)にて発表予定です。

大口径2インチサイズでの多結晶ダイヤモンド基板上に 高周波デバイスのGaN-HEMT構造を実現
大口径2インチサイズでの多結晶ダイヤモンド基板上に 高周波デバイスのGaN-HEMT構造を実現
大口径2インチサイズでの多結晶ダイヤモンド基板上に高周波デバイスのGaN-HEMT構造を実現
放熱性比較
Si、SiC、ダイヤモンド上に作製したGaN HEMTの放熱性の比較(同じ印加電力に対して温度上昇が小さいほど、放熱性に優れている)

近年、無線通信の情報量が増大する中、高周波デバイスであるGaN HEMTのさらなる高周波化、高  出力化が求められています。しかし、動作時の自己発熱によりデバイスの出力が制限されることで、 信号が送れなくなるなど、通信の性能や信頼性が 低下してしまう課題があります。これらに対処するため、大阪公大はこれまで、熱伝導率が極めて高いダイヤモンドをGaN HEMTの基板として活用し、放熱特性の向上に成功しました。
一般的にGaN HEMTの基板には、シリコン(Si)や炭化ケイ素(SiC)が使用されますが、ダイヤモンドの熱伝導率はSiと比べ約12倍、SiCと比べ約4~6倍と優れた特性を持つため、基板として  利用することで熱抵抗をそれぞれ1/4、1/2に低減できます。

GaN層移し替えプロセスについて

これまでは多結晶ダイヤモンドの粒径が大きく、表面粗さ(5~6nm)も悪いため、ハンダや接合材を使用しないGaN層への直接接合が困難でした。しかし、今回住友電工のダイヤモンド基板研磨技術によって、表面粗さを従来の1/2に抑え、Si基板から多結晶ダイヤモンド上にGaN層を移行させる大阪公大の技術を統合することで、2インチの多結晶ダイヤモンド上にGaN層を直接接合することに成功しました。
これにより、多結晶ダイヤモンド上へのGaN-構造の実現と放熱特性の均一性を実証いたしました。なお、今回使用したGaN層は、Si基板上のGaN/SiCエピタキシャル層としてエア・ウォーター社の協力により提供いただいたものです。  

今後は、量産化に向けた4インチ基板で、デバイス性能や接合状態の調整などの開発を加速してまいります。


■各機関の保有技術
大阪公大

Si基板上で作製されたGaN/SiCエピタキシャル層をダイヤモンド基板に移しGaN-HEMT素子を作製する技術を有しています。

住友電工
ヒートシンクやボンディングツール等の放熱材や工具製品に使用されてきた大型多結晶ダイヤモンド基板の作製技術と研磨技術を有しています。



■応用物理学会 概要
 

会期 2025年3月14日(金)~3月17日(月)
会場 東京理科大学野田キャンパス
本実証の発表 17p-K301-14
日時:3/17(月)午後
発表分野・場所:K301
発表順:K301で14番目
公式サイト https://meeting.jsap.or.jp/program


*本研究は、JST 研究成果最適支援プログラムA-STEP 産学共同 JPMJTR222Bの支援を受けたものです。

プレスリリース

2インチ多結晶ダイヤモンド基板上のGaN-HEMTの作製に成功通信用基幹デバイスの大容量化と低消費電力化に貢献

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