04 December 2024
車載光ハーネスの国際標準ISO発行に寄与
住友電気工業株式会社(本社:大阪市中央区、社長:井上 治、以下「当社」)は、経済産業省の「省エネルギー等に関する国際標準の獲得・普及促進事業委託」のもと、「車載イーサネットのシステム完全性に関する国際標準化」のプロジェクト(令和2年度~令和4年度)の一環として、 車載光ハーネスの国際標準発行に向けたISO文書開発プロジェクトを主導しました。その結果、2024年9月24日にISO 24581:2024*1 (以下 ISO 24581)が正式に発行されました。
自動車業界は、CASE*2の急速な進展や異業種からの参入などにより、100年に一度の変革期を迎えています。自動運転では高精度センサーからのデータ通信が必要となり、車内外の通信容量が急激に増加しますが、従来の銅やアルミを材料とした車載用電気ハーネスでは、必要とされる伝送速度に対応できないと予想されています。
この対策として光ファイバーの活用が注目されています。このたび発行された国際標準ISO 24581は、過酷な環境下においても、安定した超高速通信を維持するための光ファイバーを使った光ハーネス部品(マルチモードガラス光ファイバーケーブル、光コネクタなど)の規格と試験(振動試験、曲げ試験、高温/低温試験、他)について定めたものです。
これにより、既存の車載イーサネット通信や自動運転に求められる画像伝送などの通信規格に依存しない、新たな車載通信システムの設計が可能となり、開発の選択肢が広がります。自動車用通信部品の開発が促進され、自動車業界全体の発展に寄与する環境が整いました。
* LVDS
Low Voltage Differential Signalingの略で、低電圧差動信号のこと。
*SerDes
Serializer(並直列変換:パラレル・バスの信号を1本の伝送線路などに送り出すためにシリアル化する)とDe-serializer(直並列変換:1本の伝送線路を経由して送られてきたシリアル信号をパラレル信号に変換する)の頭文字を取った略称。
* MIPI
Mobile Industry Processor Interfaceの略で、スマートフォンや、産業機器、車載用途など主にカメラ周りの製品で使われる高速インターフェース規格の1つ。
光ハーネスの採用により、最大100Gb/sの超高速通信や、連接バスやトレーラーのような全長の長い車両への適用が可能となります。低損失で高いノイズ耐性、長い通信距離、細く軽量で配線の取り回しが容易、などの特徴により、ECUの配置場所を意識せずにシステムを構築することができます。
*ECU
電子制御ユニットを意味するElectronic Control Unit。ECU は自動車に数多く搭載されており、様々な機能を電子的に制御する。
*SW
多くのECUが個々に双方向或いは単方向通信を行う際、必要な情報を適切に切り替えることで車載ネットワークの最適化を担うSwitching unit。ECUが集中するエリアに配置 される。
当社は、自動車向けワイヤーハーネスのリーディングカンパニーであるとともに、光ファイバー、ケーブルなどにより情報通信インフラを支える事業を展開しており、今回の成果はこれら2つの事業領域が連携した結果です。
今後も異なる事業間のシナジー効果を最大限に活用し、ISO 24581に基づく車載用光ハーネスの開発、自動車への光通信の適用を実現し、さらには将来のCASE社会の発展に貢献していきます。
*1 ISO 24581:2024
Road vehicles — General requirements and test methods of in-vehicle optical harnesses for up to 100Gbit/s communication
https://www.iso.org/standard/78993.html
*2 CASE
自動車業界のトレンドを表す言葉で、Connected(つながる)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリングとサービス)、Electric(電動化)の頭文字をとったもの。
(ご参考)
2023年4月20日プレスリリース:「2026年に車載光ハーネス実用化へ 開発加速」
https://sumitomoelectric.com/jp/press/2023/04/prs047