28 September 2022

疑似不良データの活用により不良判定AI開発期間を8割短縮

住友電気工業株式会社(本社:大阪市中央区、社長:井上 治、以下「住友電工」)と株式会社データグリッド(本社:京都大学吉田キャンパス構内、代表取締役CEO:岡田 侑貴、以下「データグリッド」)は、住友電工が持つ不良判定技術とデータグリッドが開発する疑似不良生成技術*1の組合せにより、不良判定AI開発に必要な不良データ量を1/5に低減することに成功しました。これにより、不良判定AIの開発期間を8割短縮できるため、高い有用性が期待できます。
両社は引き続き人手による外観検査工程を自動化するなど、製造現場の幅広い工程を自動化する取り組みの加速・拡大に取り組んでいきます。



■取り組みの主な成果
2021年12月に開始した共同技術開発で、住友電工で製造する2種の工業製品について、データグリッドが持つ疑似不良生成技術を用いることで、ごく少ない不良画像から疑似不良画像を大量に作成することに成功しました。今回生成した疑似不良画像のほとんどが技術者の目で見ても本物の不良画像に見える質の高さを確保できています。
さらに、両社で共同開発した住友電工で製造する2種の工業製品に対する苦手克服学習技術(弱点トレーニング・ループ)*2が不良判定AI開発高速化に有効であることを検証しました。その結果、疑似不良画像を不良判定AIの学習に利用することにより、必要な不良画像数を1/5に低減することに成功し、それに伴って不良判定AIの開発期間を8割短縮することが可能となりました。

図1
図2

■取り組みの背景と今後の展望
住友電工では、IoT研究開発センターを中心に、製造現場でのデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に向け、IoT/AI技術を活用した生産性向上や安全性向上等に取り組んでまいりました。その1つとして、熟練作業員が外観検査で行っているような、多様な不良判定を自動化する不良判定AIの開発を行っておりました。
一方、データグリッドは、不良品が十分にない製造初期段階においても、外観検査を始めとする検査工程で使用可能な高精度な不良判定AIを構築したいという製造業各社のニー ズに応えた、疑似的な不良データを生成する“疑似不良生成AI”を開発してきました。
そこで、住友電工が得意とする不良判定技術とデータグリッドが得意とする生成技術を組み合わせ、ごく僅かな学習データから不良判定AIを開発することを目指し、共同で技術開発を進めてきました。具体的には、熟練作業員に匹敵する不良検知AIの開発に必要な実不良画像500枚程度が、製造現場の不良発生頻度が低いために収集には年単位の長時間を要するという課題を、両社による共同技術開発で解決する本取り組みです。
住友電工とデータグリッドは、今後もAI技術を活用し、様々な工程の自動化や生産性の向上に取り組んでまいります。

【両社のコメント】
■住友電工 IoT研究開発センター長 岡田 洋侍:
住友電工ではAI、IoTといった先進デジタル技術を活用し、モノづくり力の強化に取り組んでいます。AIによる不良判定も多くの実績を積み重ねてきました。それを更に加速かつ高度化するための取組みが、データグリッドとの共同開発です。今回、現場実データを用いた検証において非常に有用な結果を得たことは、実現に向けた重要な一歩と言えます。 今後も両社で力を合わせ、本開発の実用化により、モノづくり力を強化するDXの推進を加速してまいります。

■データグリッド 代表取締役CEO 岡田 侑貴:
データグリッドは、生成AIを活用したトレーニングデータ生成は、リアル産業におけるAI活用の制約となっているデータ不足問題を解決する鍵になると考えています。そして、トレーニングデータ生成技術の一つとしての長年研究開発を重ねてきた疑似不良生成技術により、パートナーである住友電工の製造現場においても高い有効性を検証することができました。両社の力を合わせることで、製造プロセスのDXを推進し、本格展開に向けた取り組みをさらに加速させてまいります。

【用語説明】
*1 疑似不良生成技術
GAN(Generative Adversarial Networks、敵対的生成ネットワーク)と呼ばれるAIを活用し、実在する不良データを学習することで不良データの特徴を捉え、実在する不良データそっくりの疑似不良データを生成する技術。この技術を使った疑似不良生成AIを用いて、不良データを大量に生成することにより、実在する不良データがごく僅かしかない状況でも不良の学習が可能となる。

*2  苦手克服学習技術(弱点トレーニング・ループ)
疑似不良生成AI が作り出した不良データをもとに、不良判定AIが学習を繰り返す技術。 不良判定AIの苦手パターンを克服させ、ごく僅かな学習データから熟練作業員に匹敵する不良判定AIの開発が可能になる。


<ご参考>
2022年9月28日 株式会社データグリッド発表
データグリッドが開発する疑似不良生成技術により、不良判定AIを作成するために必要な実在する不良データ量を8割削減することに成功
https://datagrid.co.jp/news/2041/

2021年12月8日発表
製造現場での不良判定AIに関する共同技術開発を開始 -生成AIとの組合せによる、製造現場自動化の加速・拡大を目指す-
https://sumitomoelectric.com/jp/press/2021/12/prs106


▼本件に関する報道関係者からの問い合わせ先
■住友電気工業株式会社 広報部 広報グループ
TEL:06-6220-4119(大阪)/03-6406-2701(東京)
E-mail:web@info.sei.co.jp

■株式会社データグリッド
TEL:075-286-4470
E-mail:info@datagrid.co.jp

▼両社について
■住友電気工業株式会社
「住友事業精神」と「住友電工グループ経営理念」のもと、公正な事業活動を通じて、社会に貢献することを不変の基本方針としています。AIをはじめとする社会変革をもたらす⾰新技術へのチャレンジを通じて、地球環境に優しく、安全・安心かつ、快適で成長する社会の実現につながる価値を提供することにより、産業や人々の暮らしを支える存在であり続けたいと考えています。
URL:https://sumitomoelectric.com/jp/

■株式会社データグリッド
「すべてのデータ、に命を与える。」をミッションに掲げ、AIにより合成・生成された動画像や音声といったデジタルデータ(=シンセティックデータ)の産業活用を進めています。デジタル社会におけるデータの量と質を高め、あらゆるものにAIを深く、自然に浸透させた未来社会の実現を目指します。
URL:https://datagrid.co.jp/

疑似不良データの活用により不良判定AI開発期間を8割短縮

PDF Download

他の最新情報も見る

ニュース&プレスリリース