17 November 2021
二酸化炭素の排出を抑制する高導電率の架空送電線を新開発、12 月に初納入
住友電気工業株式会社(本社:大阪市中央区、社長:井上 治、以下 当社)は、新開発の「耐食アルミ覆鋼心61%導電率耐熱アルミ合金より線(61TACSR/HRAC)」を国内電力会社より受注、2021年12月から納入を開始します。本製品は、耐熱アルミ合金線(以下、TAL)の製造プロセスを改良することにより、耐熱性を確保しながら導電率を向上、従来品に比べ、電気抵抗を低減させ、送電ロスの改善を実現しました。これにより、発電所における二酸化炭素排出の抑制に貢献します。
現在、脱炭素社会の実現に向け、世界中で様々な取り組みが進められており、送電分野においても、効率的に送電できる電線のニーズが高まっています。このような背景の中、当社は、世界で初めて導電率が61%*¹のTALを用いた「耐食アルミ覆鋼心61%導電率耐熱アルミ合金より線(61TACSR/HRAC)」を開発し、国内の電力送電網へ初採用されました。
架空送電線は、一般に、連続許容温度が90℃までの硬アルミ線を使用したアルミ覆鋼心アルミより線(ACSR/AC)が用いられますが、主要な発電所や変電所を結ぶ基幹系統の送電線には、連続許容温度を150℃として耐熱性を高め、より大きな電流を流すことができるTALを使用した「アルミ覆鋼心耐熱アルミ合金より線(TACSR/AC)」が多用されています。
TALは、高い耐熱性を持つ一方で、導電率が硬アルミ線よりも低く、送電線の大容量化や長距離化が進むにつれ、導電率の向上による送電ロスの改善が課題となっておりました。しかし、耐熱性と導電率向上の両立は難しく、1970年に開発された60%導電率の製品が現在まで使用されております。今回当社は、これまで難しいとされていたアルミに対する鉄の固溶*²量を増やす製造プロセスを確立しました。これにより、耐熱性を確保しながら硬アルミ線と同じ61%まで導電率を改善したTALを実用化し、実線路へ初採用されました。
本製品は従来品と同じ構造・設計となっており、線路設計・付属品の変更は不要で、施工方法も変わらないため、導入しやすくなっています。また、導電率を1%向上させたことにより、送電ロスの約2%を改善でき、発電量200万kWh相当の発電所では、年間1750万kWhの発電量と、年間約0.8万トンのCO₂排出量の削減が可能です*³。
当社は、引き続き、高導電率の架空送電線の安定供給に努めるとともに、再生可能エネルギー導入への動きが高まりつつある国内市場、および、インフラ需要の旺盛な新興国など海外市場への拡販に努め、世界の脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
受注案件の概要
納入製品 |
耐食アルミ覆鋼心61%導電率耐熱アルミ合金より線 約530km |
---|---|
納入期間 | 2021年12月~2022年12月 |
製造場所 | 茨城製作所(豊浦) |
*1 商用軟銅の導電率を100%としたときの値。
*2 母相金属中に添加元素が原子レベルで均一に溶け込んでいる状態。
*3 発電された電力の約5%が送電ロスになると仮定。2%の改善は、電力量全体の約0.1%の節約となります。CO₂排出量は、一般送配電事業者の同排出係数 0.000445t・CO₂/kWhを用い、次式により計算。
2× 10⁶ kWh × 24(h) × 365(日) × 0.1% × 0.000445 t∙ CO₂/kWh = 7,796 (t∙ CO₂ )