希少金属= レアメタル、「タングステン」
~安定供給、そして資源循環型社会の実現に向けて~
タングステンの露天掘りによる採掘風景(ベトナム:ヌイパオ鉱山)
地球上には数多くの鉱物資源があり、様々な用途で使用され、我々の生活に欠かせないものとなっている。「ベースメタル」と呼ばれる埋蔵量、産出量ともに多い鉄、アルミニウム、銅などの金属に対し、「レアメタル」と呼ばれる金属がある。経済産業省によれば「地球上の存在量が稀であるか、技術的・経済的な理由で抽出困難な金属のうち、安定供給の確保が政策的に重要」である希少な金属だ。その一つが、「タングステン」(元素記号=W)である。スウェーデン語で「重い石」という意味を持つこの金属は、他にはない特性を有している。
高融点金属であり溶融する温度は3,380(〜3,653)℃、粉末炭化タングステン(WC)をコバルト(Co)他のバインダ(接合剤)と混合してプレス・焼結し、超硬合金にすれば、ダイヤモンドに次ぐ高硬度となる。他にも高比重、低熱膨張率、放射線遮蔽などの特性が知られており、切削工具、機械部品、電極材、放熱材など、幅広い産業分野で使用されている。課題は、タングステンの埋蔵量には地域的に偏りがあり、その供給が不安定であることだ。
住友電工グループが製造する、ハードメタル= 超硬合金を採用した多種多様な切削工具は、タングステンがなければ成り立たない。持続的かつ安定的な事業に向け模索する中から、住友電工グループは、新たな技術と体制づくりによって「タングステンリサイクル」の事業化を成し遂げた。それは安定供給のみならず、SDGs の目標の一つ、「つくる責任 つかう責任」の中で示された「天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する」というターゲットに呼応するものである。
すなわち、資源循環型社会の実現を目指すものであり、環境負荷の低減や自然環境の保護などに寄与するものだ。住友電工グループが 推進する「タングステンリサイクル」への取り組みの軌跡を追った。
タングステン鉱石。
鉱石に含まれるタングステンの割合は、1%未満