MADE IN JAPAN 全世界に供給される 融着接続機 ~製品イノベーション、ソリューション、グローバル販売・保守網~
全世界の担当者で開催される「グローバルデザインレビュー」
融着接続機を供給する企業は、国内では住友電工グループを含め3社、海外でも新興の中国のメーカーを除けば、韓国のメーカー2社のみであり、主要5社がしのぎを削っている。住友電工グループの売上規模は世界第2位。国内の光ファイバネットワークは、ほぼ整備・構築されており、海外市場が主戦場となっている。米国、欧州には高付加価値の製品を、ボリュームゾーンの中国、インドには廉価版の製品を供給。主に、各国の通信キャリアおよび光ファイバネットワーク工事を請ける工事会社が営業の対象となる。これらの営業を推進してきたのが、Sumitomo Electric U.S.A., Inc. の中川尚と海外通信営業部の坂主好章だ。
「当社は英国、米国、中国、インド、東南アジアに販売拠点、その傘下に代理店を置く布陣で世界市場に臨んでいます。製品企画段階から深く入り込み、マーケティング戦略を立案、実行し、売れる仕組みを構築することがミッションです。市場の課題やニーズをキャッチして製品にフィードバックし、顧客に訴求するには、開発や製造、営業が国境を越えて連帯し、情報共有および協働する必要がありました」(中川)
「そのため製品開発・販売戦略の方向性を定めることを目的に、半年に一度、全世界8ヵ国の住友電工グループ各社の営業責任者、担当者を日本に招聘し、技術者との『グローバルデザインレビュー』を開催してきました。今年はリモートアクセスにて全世界同時開催を実施しました。保守の技術・サービス向上を目的としたサービス&サポートミーティングも毎年開催し、高度な修理技術の共有、顧客満足度向上のための仕組みづくりを目指しています」(坂主)
英国の世界最速農村ブロードバンド「B4RN(バーン)」を支える
「世界最速の農村ブロードバンド」といわれるネットワークをイングランドの北東部、主に農村地帯に提供している、Broadband for Rural North Ltd(以下、B4RN(バーン))に、住友電工グループの融着接続機について聞いた。
「元々、ボランティアで構成される非営利団体でスタートしました。英国では高速ネットワーク網が構築された都市部に比べ、経済的利益が見出せない農村の通信インフラは貧弱なものでした。こうした情報格差の解消、営農の情報化推進など、社会課題の解決を目指してB4RNは設立されました」(グレイ氏)
設立から2年後の2013年、B4RNは住友電工グループの欧州販売拠点であるSumitomo Electric Europe Ltd. (SEEL)と出会うことになる。この時対応したのがSEELの営業マネージャーのデビッド・ランダルだった。
「地域のコミュニティを情報インフラの構築で支えていくという画期的な考え方や想いに共感しました。当社の融着接続機を一定期間無償貸し出しするなど彼らの活動をサポートし、関係強化を図っていきました」(ランダル)
では、どういった点が評価されたのか。ネットワーク構築チームのリーダーであり、実際の光ファイバ融着の現場作業も担当しているアリステア・アダムス氏は指摘する。
「他社製品と比較して明らかなのは、住友電工製品は安定した融着作業を実現するという点です。イングランド北東部は湿度が高く温度が低いうえ雨も多い。どんな環境にも対応できる堅牢さ、密閉性があり、スムーズな融着作業を可能としている点を高く評価しています。またゴミ混入などの問題が発生しても、現場での対処・修復が可能であり、非常に助かっています」(アダムス氏)
現在、B4RNの接続数(ユーザー数)は約7,000。5~6年後は7万件の私有地にネットワークを繋げることを目指すという。その実現のためにも住友電工グループへの期待は大きい。 「B4RNはロンドンから車で5~6時間。その距離を感じさせないほど、ランダル氏をはじめSEELや住友電工グループは我々との関係作りに注力してくれました。この関係性を継続し、これからも様々な形でのサポートに期待しています」(グレイ氏)
追い続けてきたのは「夢の融着接続機の実現」
融着接続機事業を統括管理するのは、住友電工の光機器事業部である。光コネクタ、光クロージャ、光配線架線などの製品による「光ファイバをつなげる技術・製品」を提供している。その中で融着接続機は事業部の「顔」であり、技術の中核にある。光機器事業部長である末次義行は、追求してきたのは「夢の融着接続機の実現」だと言う。
「その一つのカタチとなったのが、IoT、クラウド技術を活用した『SumiCloud®』搭載型で、遠隔で工事進捗を管理することを可能としました。さらに、融着失敗ゼロという、文字通り、夢の融着接続機を市場に送り出しています。これはAI技術をベースに微細なチューニングを可能とする『NanoTune™』を搭載したもので、劣悪な環境でも、作業初心者でも、高品質な融着接続を実現しています」(末次)
では今後、融着接続機事業は、何を目指すのか。
「世界中のユーザーに当社の製品を使っていただき、その良さを実感してもらいたいと思っています。私たちは、高性能、高耐久性、使いやすさといった点で、他社製品と比較して優れている自負があります。そして、単純なハードウェアの売り切りビジネスではなく、全世界に張り巡らせた販売・サービス拠点で、様々なニーズに合った新しい運用・保守サービスを創出し、信頼できるパートナーとしてお客さまとの関係を維持、向上させていきます。競争優位である、『製品イノベーション』『顧客ニーズに応えるソリューション提供』『グローバル販売・保守網』の3 本柱を軸に、当グループのファンを少しでも増やし、今後は医療や産業分野などへの事業拡大も図っていく考えです」(末次)
世界シェアトップ達成のためには、営業および保守体制の一層の充実に加え、ユーザーニーズに応える製品を生み出すことが極めて重要なテーマとなる。「Forgiving Splicer」——いかに作業負荷を低減するかは、常に追求し続けるテーマだ。一方で、第5世代通信に向けた光ファイバや細径超多心ケーブルの開発など光ファイバ自体も進化しており、住友電工グループはあらゆる光ファイバに適応した融着接続技術の確立も進めている。それらの取り組みが結実し、住友電工グループの融着接続機が名実共にグローバルリーダーとなる日はそう遠くはない。