生産体制と万全のアフターフォロー ~人材の育成によってユーザーの期待に応える~
市場ニーズに的確に対応する生産体制の確立
神奈川県・茅ヶ崎——。ここに、融着接続機の生産拠点である住友電工オプティフロンティア(株)の湘南工場がある。主力となっている融着接続機は、先に述べた長距離かつ大容量基幹線路の接続に採用される「TYPE-72C+シリーズ」、北米のデータセンタなどで多心一括接続に使用される「TYPE-72Mシリーズ」、宅内や電柱間配線など限られた作業スペースで力を発揮する世界最小・最軽量の「TYPE-201シリーズ」がある。他にも、切断に使われ、独自の刃の自動回転機構を持つ光ファイバカッター、融着接続において被覆を除去する軽量・コンパクトなジャケットリムーバが生産されており、世界から高い評価を獲得している。この生産拠点を統括管理しているのが、工場長である伊藤謙輔である。伊藤は、融着接続機が極めて高精度製品であることを指摘する。
「光ファイバの融着接続作業がサブミクロンオーダーであることは、製品の生産そのものが高精度であることを意味します。その高精度は人の手でなければ実現しません。もちろん自動化を積極的に取り入れていますが、最後の微細な調整には熟練の技が求められる世界。そのため工場の課題の一つとして、訓練によって熟練の技を継承していく人を育てていく必要があります。もう一つ重要なことは、市場ニーズの変化が早く、また多様化していることです。需給の波も大きく、一方で中国の新興メーカーを中心に競合も厳しくなってきている。在庫生産から受注生産への転換を図ると共に、市場の要望に迅速に対応し、そしてコストメリットがある新たな生産体制の構築を進めていきたいと考えています」(伊藤)
各国の保守メンバーに向けたトレーニングの実践
融着接続機は高精度製品であるだけに、製品の開発・製造に加えて極めて重要なのが保守、すなわちメンテナンスなどのアフターフォローである。製品に不具合や故障が発生した際、いかに迅速に対応できるか。住友電工グループは世界8拠点(米国、英国、中国、インド、フィリピン、タイ、シンガポール、ドバイ)の保守を担うサービスセンターを設置、担当スタッフをトレーニングする仕組みを構築している。それらスタッフが傘下の代理店を指導するという仕組みだ。この保守強化の取り組みを長年にわたって担当してきたのが、住友電工オプティフロンティア(株)生産技術グループの貞木博志である。
「メンテナンスマニュアルを基に、故障した製品を分解して、パーツの交換や調整、検査を行い、メンテナンスのノウハウを理解するトレーニングを実施しています。主に新機種が発売されるのに合わせて、各拠点から1名ずつ参加、3日間徹底して行うもので、3段階の実技テストをクリアすることで修了証を受け取り帰国。それぞれの国において日本で得たスキルを横展開していくことになります。メンテナンスにおいて重要なのは、どのパーツが異常であるかをスピーディに判断し、故障の原因を究明することです。そのノウハウを吸収することで、発生した故障に対して、現地で即座にサポートできる人材を育成しています」(貞木)
販売拡大に貢献している確かな手応え
トレーニングに参加した一人が、中国の販売拠点でもある住亜貿易(深圳)有限公司の融着接続機保守センターでマネージャーを務める唐晨(タンチェン)だ。唐は中国全土の代理店および修理店にメンテナンス指導を行っている。
「トレーニングへの参加はすでに10回以上になりますが、いつも感じるのは非常に理解しやすいということです。故障の因果関係を論理的に指導してくれますから、理解も深くなる。中国は当初廉価版の製品が中心でしたが、近年はデータセンタも増えてきており、より高付加価値、高品質の製品へのニーズが高まっています。個人的には『SumiCloud®』搭載の融着接続機に期待しています。融着接続に関する現場のデータが蓄積できますから、それがシステムとつながれば、不具合の解析も精度が高まりますし、より高いソリューションが実現できると思っています」(唐)
欧州から参加していたのが、Sumitomo Electric Europe Ltd.(SEEL) UK Officeのサービスセンターでマネージャーを務めるヤキーン・パテル。SEELの守備範囲は広く、ヨーロッパ全域に加え、ロシア、アフリカ、中東諸国をフォローする。
「傘下にある販売代理店は約70。代理店に向けたメンテナンスの指導を担当しています。日本でトレーニングを受けるたびに感じるのは、ハイレベルでありプロフェッショナルであるということ。メンテナンスマニュアルだけでは曖昧な部分も、手を動かすことで体得できていると感じています。現在、SEEL が担当する市場で、融着接続機の販売は順調に伸びていますが、私たち保守の存在もそれに貢献している自負があります。その中で課題は二つ。SEELがフォローする国は英語圏以外も多いので、多言語化や図版を多用するなど、メンテナンスマニュアル書をわかりやすくしたいということ。また販売の伸びに応じて修理台数も増えており、人材を拡充していきたいと考えています」(パテル)
COLUMN
第45回技能五輪国際大会金メダル獲得をサポート
技能五輪国際大会は、参加各国における職業訓練の振興と青年技能者の国際交流、親善を図ることを目的に、2年に一度開催されている。住友電工グループは、過去4大会連続でネットワーク施工に不可欠な融着接続機を提供している。2019年に開催された第45回ロシア連邦・カザン大会では、「情報ネットワーク施工」の職種で、総合設備エンジニアリング企業の(株)きんでんが日本代表として見事金メダルを獲得。受賞者の同社・志水優太氏は次のように語っている。
「大会では厳しい局面が続き、常に緊張の連続でした。しかし、最後まであきらめずに取り組み、金メダルが決まった時は、言葉にできない喜び、高揚感を味わいました。住友電工グループの融着接続機T-400Sや光ファイバカッターFC-8Rは使い易く、競技中高いパフォーマンスを発揮できました。指導してくださった皆様や、サポートしてくれた会社、関係各所の皆様に感謝の気持ちでいっぱいです」(志水優太氏)