id_15_feature

中国発、EVなど車載製品の品質向上に向けて ~中国解析センターの取り組み~

製造現地で迅速かつ的確に対応する拠点設立

id_15_project
解析技術研究センター 横浜研究部長 大濱 理

 2012年4月、中国・蘇州市の住友電工(蘇州)電子線製品有限公司内に、住友電工管理(上海)有限公司 解析技術部(通称:中国解析センター)が設置された。その背景について、立ち上げに携わり、現在、解析研・横浜研究部の部長を務める大濱理は語る。
 「当時、懸案事項となっていたのは、中国で生産していたプリント回路の品質確保でした。日本のセンター部門の指導を受けていたものの、製品サイクルの短い携帯電話向け製品を短期間で量産化する必要があり、品質問題を現地で迅速に解決する方針・計画が決定し、解析センター発足へとつながったのです。いわゆる、Out-Out化(中国で製造した製品を海外の顧客に販売)が進展していたプリント回路事業では、電子顕微鏡が必要な故障解析などは日本に空輸して対応するケースもありました。サンプル入手なども含め、タイムラグが生じるケースが多々あったのです」(大濱)
 当初、プリント回路生産における品質向上、リードタイム短縮を目的に設立した中国解析センターであるが、蘇州を拠点としたのは、周辺に関連会社が20 社以上存在し、プリント回路事業以外にも潜在的なニーズが予想されたこと、近隣の大学や民間機関との連携も可能であったことなど、品質問題などに対して迅速かつ的確に対応できる環境が整っていたからだった。

EVなど車載向けの戦略的製品「EPB」電線の課題解決

id_15_project
住友電工管理(上海)有限公司 (蘇州)解析技術部 経理 小泉 俊幸

 プリント回路生産がベトナムへ移管されたことを契機に、中国解析センターの解析・分析の対象は自動車、特に中国市場で進展する電気自動車(EV)に向けられていく。具体的には、EV向け電池配線、モーター用巻線、電動パーキングブレーキ(EPB)電線などの生産に対して、解析技術を用いて品質向上に寄与するというものだ。それを担っているのが、大濱の後任でもある解析技術部の小泉俊幸である。
 「2017年頃からEV向け製品の解析が始まりましたが、分岐点となったのは2019年。日本の解析研と連携して、品質改善活動を強力に進めたことです。特に競争力の源泉でもある戦略的製品EPB電線では、分析技術を用いた現品解析、CAEを駆使したシミュレーション解析でプロセス設計の最適化を実現したことで、生産過程における断線などの不良を50%削減するという成果を生みました。EV向け電池用端子タブリードでも工場と一緒に導体検査工程を立ち上げるなど、課題を現地で迅速に解決することで、顧客の厳しい要望にも対応。今後も各種製品の生産プロセスにおいて、原理原則を解明し、品質確保につなげていきたいと考えています」(小泉)

 プリント回路生産がベトナムへ移管されたことを契機に、中国解析センターの解析・分析の対象は自動車、特に中国市場で進展する電気自動車(EV)に向けられていく。具体的には、EV向け電池配線、モーター用巻線、電動パーキングブレーキ(EPB)電線などの生産に対して、解析技術を用いて品質向上に寄与するというものだ。それを担っているのが、大濱の後任でもある解析技術部の小泉俊幸である。
 「2017年頃からEV向け製品の解析が始まりましたが、分岐点となったのは2019年。日本の解析研と連携して、品質改善活動を強力に進めたことです。特に競争力の源泉でもある戦略的製品EPB電線では、分析技術を用いた現品解析、CAEを駆使したシミュレーション解析でプロセス設計の最適化を実現したことで、生産過程における断線などの不良を50%削減するという成果を生みました。EV向け電池用端子タブリードでも工場と一緒に導体検査工程を立ち上げるなど、課題を現地で迅速に解決することで、顧客の厳しい要望にも対応。今後も各種製品の生産プロセスにおいて、原理原則を解明し、品質確保につなげていきたいと考えています」(小泉)

id_15_project
迅速対応に徹する現品解析
id_15_project
ハーネスに加工されたEPB電線

現地メーカーへの拡販の取り組みと高い評価

id_15_project
住友電工(蘇州)電子線製品有限公司 電子線部 経理 大根田 泉

 実際の蘇州の生産現場を管轄しているのが、住友電工(蘇州)電子線製品有限公司の大根田泉である。小泉らの解析の支援を受けて品質改善・確保を実現する役割を担っている。
 「世界最大の自動車市場である中国で競争優位性を得るために、中国解析センターと工場が同じ敷地内にあることでスピーディにやり取りできることが、大きなメリットとなっています。現在、EV向け製品の供給は日系自動車メーカーが中心ですが、すでに中国現地メーカーへの拡販にも着手しています。製品の柔軟性や耐振動性、耐油性などの独自の性能、そして中国解析センターによる現品解析などの取り組みは、現地メーカーからも高い評価をいただいています」(大根田)
 設備投資や現地大学とのコラボレーションも含め、中国解析センターの取り組みは、年々充実の度合いを増している。今後は、解析に関わるナショナルスタッフの指導・育成などを通じて、生産拠点の課題解決の取り組みをさらに加速させていく考えだ。

id_15_project
中国解析センターがある住友電工(蘇州)電子線製品有限公司

NEXT

高速・大容量の情報通信を実現する電子デバイスの解析 ~品質改善のための先進手法~

(5)