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解析技術がもたらすソリューションの世界~構造解析、電磁界解析など、ミクロの世界を見極める~

求められる原子レベルでの構造解析

 それでは、解析研が持つ解析技術にはどのようなものがあるのか。まずは「構造解析」。たとえば、製品の製造工程での“品質”課題が浮上した際、それを受けて解析研は何が原因であるか、その本質解明に取り組むことになる。「見えないものを見る」ために行われる作業の一つが原子サイズ(ナノ)レベルでの構造解析だ。界面(原子間)がどのように結合しているか、原子レベルで結晶構造を観察していく。その結果、界面で歪みが生じていることを解明すれば、その結果が開発・製造現場へもたらされ、最適な界面結合の検討、あるいは新たな材料などの検討が進められることになる。この原子観察技術・結晶方位解析技術は、計算科学との連携も踏まえた各種材料、デバイスなどの開発設計における原理確認、プロセス最適化に必須とされる技術であり、原子レベル評価は競合他社と差別化する重要な要素の一つとなっている。

「5G」時代に対応した高周波・電磁界解析

 「見えないものを見る」という点では、電磁界解析はその象徴ともいえる。昨今の情報通信業界で大きなトレンドである「第5世代(5G)」は、「高周波化」により高速・大容量の情報通信を可能とする。ここでも可視化が重要なポイントだ。放射電磁界や電磁波誘起表面電流などのCAE解析によって、送信される信号の電界分布(高周波伝播)を可視化。「5G」通信には複数の周波帯が存在するが、周波数ごとのモデル適正化を進め、高周波信号を送り届ける際の信号漏洩、それによるノイズ発生という課題を明らかにした。今後、28GHz帯などの高周波伝送の登場により、ノイズ性能評価が本格化することは自明であり、それに伴い計算の大規模化は避けられない。高い計算能力を備えた設備導入に加え、大規模対応のCAE手法開発を進めていく考えだ。

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走査型透過電子顕微鏡による工具材料結晶界面の原子観察像。界面での歪みの様子を捉えている
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アルミ材の結晶方位解析像(EBSD/電子線後方散乱回折法)。加工プロセスによる結晶の配向を可視化し材料設計に活用

「謎を解明する」、「名探偵」にも似た解析の探究

 解析技術は、絶縁被覆材料の「架橋度・添加剤分析」 、電子デバイスの放熱設計解析などの「熱流体解析」、切削工具などの高機能化を実現する「結晶構造・材料解析」、各種光学機器・部品の「光学解析」など多岐に及ぶ。さらに特筆すべきは、電線・ケーブルメーカーである住友電工グループだからこそ、長年にわたって培ってきた電線の「寿命予測技術」だ。自動車のドア、携帯電話のヒンジ部、ロボットアームなど、可動部に採用される電線ケーブルの捻曲による断線寿命をCAEで予測する技術を開発してきた。
 「かつて、コナン・ドイルの推理小説の舞台になった英国、ベーカー街の近くに駐在経験がある当社・会長の松本は、こうした解析研の多彩な取り組みの報告を受け、『シャーロック・ホームズのようだ』とコメントしました。事実、我々の行っている作業は、ある前提に基づいて推論し、それをひとつひとつ実証していくものです。それはたとえて言えば、難事件に向き合い、突き詰めて真相を明らかにする名探偵と似ている部分が少なくありません。それを支えているのは、解析研各メンバーの『今、わからないことを理解したい』『謎を解明したい』という学究的な好奇心とサイエンティストとしての矜持。そうした想いや意識を持つ人材が多いのも、住友電工の強みです」(前出・木村)
 次ページからは、解析技術による課題解決事例を具体的に見ていきたい。

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