2014年1月号 No.184
特集「新しいステージに入ったITS(高度道路交通システム)技術」
わが国では、1960年代後半からの、信号制御機をはじめとした交通管制システムの導入や、1990年代からのETCの普及などにより、渋滞の緩和に成果を上げてきた。今日の新興国では、過去の我が国に見られたような急速な経済成長に伴い、渋滞や交通事故の問題が深刻化し、ITSへの期待は切実となっている。一方、欧米や日本では、インフラと車両、あるいは車両同士を無線通信などで繋ぐ技術により、さらなる渋滞緩和や交通事故の削減に向けた取り組みが行われている。このような無線通信技術は、新興国においても安価で高度な信号制御システムに活用することが期待されている。さらに日本においては、高度化光ビーコンが実用化され、新たなITSの幕開けを迎えつつある。住友電工は、広範囲に渡る実績と新技術の開発により、グローバルなITSへのニーズへの高まりに応える。
5.7 MB

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私達は、安全な交通社会の実現を目指し、ドライバーに安全運転支援情報を提供することで事故の削減を図るDSSS(Driving Safety Support Systems)の開発を実施してきた。これまでは、光ビーコンを活用したDSSSの実用化に注力し、2011年7月より運用開始された。現在は、光ビーコンでは対応できない動的情報の提供に対応可能な、電波を利用したDSSSの実用化に注力している。本稿では、電波を活用したDSSSが必要とする通信エリアやセンサー検出エリア等のシステム定義の検討状況や、それを踏まえた検証実験システムの構築、その検証実験結果について報告する。
13.2 MB

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安全運転支援システムに使用される通信メディア「700MHz帯高度道路交通システム」では、インフラ設備(路側に設置される無線基地局、以下路側機)と車両に搭載された車載機が通信する路車間通信と車載機相互間で通信を行う車車間通信の両方を時分割制御によって共用する通信方式が採用されている。この方式によると路側機は周囲の車載機に自身の送信期間情報(送信時刻や期間等)を通知し、それを基に車載機は自身の送信タイミングを決める。効率的で安定した時分割制御を行うため、路側機は送信タイミングを正確に合わせ、近隣の路側機との送信タイミングの時刻誤差を少なくする技術(基地局間同期技術)が重要である。本稿では、路側機の同期精度が悪化した場合の通信への影響、原因について調査し、それらへの対策をシミュレーション及びフィールド試験により有効性を確認したので報告する。
12.9 MB

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世界的な燃料規制の強化が進む中で、電気自動車(以下EVと記載)の需要は爆発的に増加すると予測される。しかしながらEVはガソリン車と比較して航続距離が短いという課題を抱えており、バッテリ性能向上以外でも様々な方法で課題解決を図ろうとしている。例えばEVに対して、車両が消費する正確な電力量を推定するエンジンや、走行中の電力消費量や途中の充電ステーションでの充電を考慮した走行経路を提供するためのEV経路探索プラットフォーム等が望まれている。本論文では、分散処理基盤上で動作する消費電力量推定エンジン、具体的には道路リンク固有の特性を考慮したモデル式を使い、消費電力量を推定するエンジンを開発したので報告する。またEVに対して種々の機能を提供することでEVの普及を推進し、温室効果ガス排出を削減することで持続可能な社会の実現に貢献できる「EV経路探索プラットフォーム」を開発したので合わせて報告する。
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車両側に特別なデバイスを装着することなく車両の特定が可能なナンバープレート認識システム(LPR)は旅行時間計測など交通管制のための重要な情報収集手段である。急速なモータリゼーションの進展が進むタイでは慢性的な道路渋滞が深刻な問題となっており、LPRの導入は一つの解決策になりうるが、独自のタイ文字の使用など技術的なハードルが高い。本論文で提案するのは、HOGベースのBag of Featuresに基づくプレート検出方式とHOG特徴に基づく文字認識方式であり、これらの問題解決にきわめて有効である。タイで収集した画像による実験の結果、ナンバープレートの検出率は94.6%、検出できたナンバープレートに対する認識正解率は92.0%であった。これらの結果により提案手法はタイ国のナンバープレートの検出・認識に有効であることが示されたが、交通管制への適用のためにはさらなる性能向上が必要である。
13.5 MB

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従来、安全、快適な交通流の実現を目指して交通信号制御(以降、信号制御)が行われてきた。近年、これらに加えて地球温暖化防止を目的としたCO2排出量削減も新たな課題となっている。これらを実現する交通状況に応じた信号制御には、多くの感知器が必要で、高額な設置コストが課題となっている。この問題の解決を検討するに当たり、我々は走行車両がGPS等により自ら収集した走行軌跡情報であるプローブ情報に注目した。プローブ情報を活用して渋滞長のような連続的な空間交通情報(空間データ)を取得し信号制御を行うシステムを開発し、一般社団法人UTMS協会※1におけるシミュレーション実験により信号制御効果の検証実験を行い、感知器削減の可能性を示した。
6.6 MB

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GaN HEMTの歪み特性の改善は、ポイントtoポイントシステムといったマイクロ波帯通信用デバイス市場への浸透を深める上で重要な技術課題である。この論文は、無線通信用GaN HEMTの歪み特性改善に向け、非線形要素を取り込んだ大信号モデルを構築し、このモデルを活用したGaN HEMTの歪み特性改善の検討をまとめたものである。構築した大信号モデルを用いた解析により、10 dB以上のバックオフ領域の歪み特性はドレイン電流立ち上がり領域の相互コンダクタンス(gm)プロファイルが大きく影響することを解明した。これを踏まえて薄いn型層を挿入したバッファ層(ini層)を有するGaN HEMTを試作し、8 dB以上ものバックオフ領域の歪み特性を実現した。
8.6 MB

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中赤外センサの受光材料として注目を集めているtype-II InAs/GaSb超格子は、結晶成長には通常GaSb基板が使用される。しかし、GaSb基板は赤外領域での透過率が低く、2次元センサアレイのような基板裏面から受光するセンサの作製にはGaSb基板の除去という困難な工程が必要になる。そこで我々は、透過率が高くGaSbとの格子不整合が比較的小さいInP基板に着目した。InP基板上にGaSbバッファ層を厚く成長した後、InAs/GaSb超格子を成長することで、格子不整合に起因する貫通転位が低減し、結晶学的および光学的特性の優れた超格子が得られることを見出した。さらに、InP基板上InAs/GaSb超格子を用いて初めてカットオフ波長約6.5 µmのセンサを作製した。
17 MB

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高温超電導線材を用いた電力ケーブルやモータ等の電力・産業機器は、コンパクトな形状で大容量送電や大出力・高トルクを可能にし、既存の電力ケーブルや産業機器に比べて損失を低減することが可能であることから、省エネルギー、地球温暖化対策に貢献することが期待されている。当社は、2008年4月から2013年2月にかけて実施された国家プロジェクトに参画し、イットリウム系薄膜超電導線材※1を用いた66 kV/5 kA級の三心一括構造を有する超電導電力ケーブルの開発を行った。まず、短尺ケーブルの試作により超電導電力ケーブルに必要な線材特性を決定し、要求性能を満たす線材を開発した。その後、線材を総長6 km作製し、既設の150 mm管路に収納可能な世界最大の送電密度を有する三心一括型超電導電力ケーブルシステムを構築した。冷却効率を考慮した上で送電損失が従来の電力ケーブルの1/3以下の低損失であることを検証し、長期課通電試験によりその実用性を確認した。
11.5 MB

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"近年、製造業界において加工コスト低減を目的とした高速・高能率加工が急速に広がっている。そのため、鋼を初めとした鉄系材料との親和性が低く高品位な加工面が得られることから主に仕上げ加工に用いられるサーメット工具に対しても、さらなる長寿命化と安定加工への要求が高まっている。 今回、旋削加工用の高耐摩耗性サーメット材種であるT1000Aを開発した。T1000Aは組成を最適化することで、耐摩耗性・耐欠損性を両立させ、焼結条件を工夫し組織を制御することで加工面品位を向上させた。また、鋼の切削に加え鋳鉄、焼結合金の切削にも対応させた。本稿では、開発したT1000Aの特徴と切削性能を報告する。
13.9 MB

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近年、希少金属材料の使用量増加や価格高騰の影響により、タングステン使用量の少ないサーメット工具が脚光を浴びている。中でも粗加工から仕上げ加工までを通して様々な用途で利用されるコーテッドサーメットには、長寿命かつ加工初期から安定して良好な仕上げ面品位を実現することが要求される。当社ではこれらのニーズを実現するため、当社独自のPVDプロセスを用いたBrilliant Coat®を開発し、それを採用したT1500Zを製品化した。Brilliant Coat®は、鋼に対する摺動性と低い反応性を兼ね備えた特殊な被膜であり、従来材種に比べて30%低い切削抵抗を達成した。T1500Zは、従来のコーテッドサーメットより幅広い用途に適応することができ、顧客での加工コスト削減を可能とした。
19.7 MB

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医療介護の現場で課題となっている床ずれ(褥瘡)防止や、利用者のQOL(Quality of Life)向上、自立支援、体位交換頻度の低減、看護・介護者の負担低減などを目的として、柔軟なSR(スマートラバー®)体圧測定センサーシート(東海ゴム工業㈱製)と、首振り2段エアセルの制御による新規なマットレスを開発している。従来のエアマットレスの構造、機能にとらわれず、医療介護現場が求めるマットレスの開発に医療専門職と共同で取り組んだ。SRセンサー技術により体圧分布センサシートを内蔵し、多数のエアセルが独自に駆動することで、マットレス面が臥床者の体型に合わせて変形する。また、体圧分散性と寝心地の良さ、離床のし易さの両立も図った。
13.6 MB

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