16 March 2021

インド初の直流XLPEケーブルによる超高圧直流送電システムの商用運転開始 ~住友電工、Siemens Energy社の共同受注プロジェクト~

住友電気工業株式会社(本社:大阪市中央区、社長:井上 治、以下 当社)とドイツのシーメンスエナジー(Siemens Energy)社とのコンソーシアムは、インドで初めて直流XLPEケーブルとVSC方式*1の交直変換所からなる超高圧直流(HVDC)送電システムを建設、2021年3月に商用運転を開始しました。

本プロジェクトは、インド南部の電力供給不足の解消および送電系統の安定を目的に、同国南部のタミルナドゥ州プガルールとケララ州トリチュールの交直変換所間214kmに、地中ケーブルと架空線からなる2,000MWの送電システムを構築するものです。HVDC送電においては、XLPEケーブルと架空送電線の混成線路はケーブルへの負荷が高いために技術的難易度が高く、運転実績としては世界で2件、いずれも当社が日本で納入した案件です。今回、当社は上記2件と同様に独自に開発した直流XLPE絶縁材料*2を用いてXLPEケーブルを製造、布設し商用運転開始に至りました。

本プロジェクトのケーブル布設区間
本プロジェクトのケーブル布設区間
本プロジェクトのケーブル布設区間

当社とシーメンスエナジー社のコンソーシアムは、2017年にVSC方式での交直変換所とXLPE地中ケーブルシステム(ルート長約27㎞、ケーブル長は4本計110㎞)からなる±320kV HVDC送電システムの建設を、インド送電公社Power Grid Corporation of India Limited(パワーグリッドコーポレーション オブ インディア リミテッド 以下、PGCIL)より受注しました。

プロジェクトのケーブルの図
プロジェクトのケーブルの図

当社は土木および布設工事を含む直流XLPEケーブルシステムの設計、製造、建設を担当し、シーメンスエナジー社は、各種機器を含む交直変換所の設計、製造、建設および試運転を担当しています。

住友電工 常務取締役 白山正樹のコメント
「インドで初めてとなる超高圧直流XLPEケーブルプロジェクトが成功裏に商用運転開始した事を大変喜ばしく思っています。新型コロナウイルス感染症の拡大により、現地工事においても多くの困難がありましたが、PGCILからの力強い支援に加え、住友電工とシーメンスエナジー社の協力により商用運転開始に辿り着きました。本件のHVDC送電線路はXLPEケーブルと架空送電線の組み合わせという技術的にも難易度の高い案件でしたが無事商用運転を開始することができ、当社の高い技術力とプロジェクト遂行力を証明しました。本件がインドにおける送電システムへの貢献の基盤となること、また、PGCILと我々の継続的な協業関係の起点となることを願っています」

シーメンスエナジー社 送電部門 副社長 ビアトリクス ナッター(Beatrix Natter)氏のコメント
「PGCIL、シーメンスエナジー、住友電工3社の素晴らしい協力関係のおかげで、VSC技術を導入したインド初となる超高圧直流送電線の商業運転を開始することができました。 この実りある協業の結果が、インドで増大する電力需要に対応するため、インド電力省により主導された『24x7 Power for All(全国民に電力を)』という政策の実現に寄与することを非常に嬉しく思います。」

3月の商用運転開始を前に、2021年2月にはインドのナレンドラ モディ首相による開所式が行われました。今回竣工したHVDC送電システムにより、インド国内の送電系統の安定性と電力品質の向上、ならびに効率的かつ安全な電力供給が可能になります。

また、2022年までに175GWの再生可能エネルギーによる発電容量の達成を目標としているインドにおいて、本システムはその実現を支える重要なインフラとなるとともに、再生可能エネルギーの効率的な利用の促進に寄与します。

現在までに、当社は世界で9件のHVDCケーブルプロジェクトを完工させ、世界初となる直流525kV XLPEケーブルプロジェクトを含む2つの案件を履行中です。また、シーメンスエナジー社は世界で57件以上の超高圧直流送電案件を完工し、現在11件のプロジェクトを建設中です。
当社およびシーメンスエナジー社は、本プロジェクトをはじめ、世界各国で培った超高圧直流ケーブルシステム構築に取り組んできた経験と互いの強みを活かし、今後も高品質かつ安全な製品・技術の提供に努めるとともに、クリーンエネルギー社会の実現に貢献してまいります。

ケーブル布設の様子
ケーブル布設の様子
直流XLPEケーブル(イメージ)
直流XLPEケーブル(イメージ)
ケーブル布設用パイプ
ケーブル布設用パイプ
建設中のトリチュール交直変換所でのケーブル作業
建設中のトリチュール交直変換所でのケーブル作業

ご参考

プレスリリース(2017年3月27日):
Siemens AGとの連携協力に関する合意書締結およびインドでの高電圧直流送電システムの共同受注について

プレスリリース(2019年5月16日):
高圧直流ケーブル事業の推進

プレスリリース(2020年5月11日):
欧州向け±525kV 高圧直流ケーブルシステム受注

住友電工未来構築マガジン(2017年7月発行)
地域間の電力の安定供給に貢献

Webサイト(英語):超高圧直流送電システム関連

LinkedIn(英語):住友電工電力ケーブル関連

*1 VSC(Voltage Sourced Converter)
自励式交流直流変換器。従来型の他励式変換器(LCC=Line Communicate Converter)に比べて建設スペースが小さく、近年欧州を中心に採用が拡大している。

*2 独自に開発した直流XLPE絶縁材料
電源開発株式会社(現・電源開発送変電ネットワーク株式会社)との共同開発です。

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