地球規模での持続可能な未来へ~日本発再生可能エネルギーの指針~

地球規模での持続可能な未来へ~日本発再生可能エネルギーの指針~

つがる市が目指す「クリーンエネルギーの街」

現在、ウィンドファームつがるは安定的に稼働、38基の風車はつがる市の新しい顔になりつつある。ウィンドファームつがるで発電された電気は東北電力ネットワークに送電され、発電収益を資源とする協力金の一部は、つがる市の名産品の一つである水耕栽培メロンの実証試験事業に活用されている。つがる市にとって、風力発電はどのような位置付けであり、今後どのような展望を描いているのか。前出のつがる市長、倉光弘昭氏に聞いた。

「今回のGPIの事業は、地域と風力発電のあるべき関係性を示していると思っています。GPIは事業者ですが地域への理解を深め、コミュニケーションを取り、つがる市にとって何が必要か、何をやるべきか、一緒に考え行動してくれるパートナーでもあります。実際、農林漁業の活性化に向けた具体的な連携・検討を進めています。すでに、洋上大型風力発電のプロジェクトの検討も進んでいますが、つがる市は、風力発電にとって日本で一番いい風を持っている自負があります。風力発電の国内拠点、クリーンなエネルギーを生み出す場所としての認知を高めていきたい。風力発電施設を契機として地域の活性化を加速し、市民と共に新しいつがる市を創造していきたいと考えています」(倉光氏)

倉光氏が言及する、風力発電を契機とした地域振興、地域活性化の取り組みに期待すると同時に、地球温暖化防止に寄与する「サステナブルな再生可能エネルギーの街」のモデルとしても注目したい。

颯爽たる風姿のウィンドファームつがる(写真提供:(株)グリーンパワーインベストメント)
颯爽たる風姿のウィンドファームつがる(写真提供:(株)グリーンパワーインベストメント)
颯爽たる風姿のウィンドファームつがる(写真提供:(株)グリーンパワーインベストメント)

再生可能エネルギー拡大普及のパートナーとして

本事業はGPIにとっても、当社の電力プロジェクト事業においても節目となるものだった。その最大のポイントは、国内初となる約34kmの高圧長距離ケーブルの地下埋設であった。

「前例のない極めてチャレンジングな試みでした。住友電工グループには初期段階から、その技術力に信頼を寄せていましたし、グループ力への期待も大きなものがありました。事実、高圧長距離ケーブルであるからこそ発生した特異な現象に対し、住友電工グループが成し遂げた課題解決によって事業は前進したと思っています。今後、地下埋設の高圧長距離ケーブルは、業界のスタンダードになるでしょう。今回の事業を契機に、すでに住友電工グループのサポートを受け、東北と北海道で新たな風力発電事業にも着手しています。今後も日本の再生可能エネルギー事業の拡大に向けて、住友電工グループとの協働・連携を進めていきたいと思っています」(前出・三橋氏)

積極的な再生可能エネルギー事業の開発を進めているGPIだが、その先にどのようなビジョンを描いているのか。

「政府が2050年にカーボンフリーを実現すると表明したことにより、国内では再生可能エネルギーを主力電源とする機運が高まっています。われわれ事業者は発電ソースを増やしていくものの、課題として考えねばならないのが、大都市など電力需要の大きなエリアに、地方で発電した再生可能エネルギーをいかにして効率良く供給するか、ということです。もちろん、電力会社との新しい提携の手法を検討していく必要もあるでしょう。それによって日本のエネルギーを取り巻く風景も、より良いものに変わっていくと思います。住友電工グループには、引き続き当社の良きパートナーであっていただきたいと思っています」(同)

完成した風車と隣接する変電所
完成した風車と隣接する変電所
住友電工が納入した管理システム
住友電工が納入した管理システム
GPIとの密なコミュニケーションが信頼関係を築いた
GPIとの密なコミュニケーションが信頼関係を築いた

送変電ソリューションの提供によって世界に貢献

ウィンドファームつがるにおける、住友電工グループの取り組みが画期的だったのは、単に電力ケーブルなどの材料供給にとどまらず、送配電ケーブルの供給、送変電設備等の系統設計を通じ、風力発電所を確実に電力系統に連系するトータルソリューションとして実現したことにある。長い歴史を持つ住友電工グループだが、過去にこのような例はほとんどなく、事業として革新的とされるゆえんでもある。今後、再生可能エネルギー事業にはどのようなスタンスで臨むのか。電力プロジェクト事業部長・原田和平は次のように語っている。

電力プロジェクト事業部長 原田 和平
電力プロジェクト事業部長 原田 和平

「今回のプロジェクトを通じ多くの経験を蓄積することで、当グループの送変電ソリューションはさらにグレードアップしました。事実、お客様からの評価は高く、次々と大型風力発電プロジェクトを受注しています。今後再生可能エネルギーに対する社会的ニーズの高まりに対し、グループが連携することで生まれるEPC的機能による総合力を発揮していきたい。一方で目を向けていく必要があるのが海外。当グループの独自技術である直流海底ケーブルは英国とベルギー間に採用されており、ドイツでは世界最長となる約300kmの地中線敷設など、再生可能エネルギープロジェクトは、欧州を中心に活発化しています。海外に当グループのソリューションをEPC的なフルパッケージで提供し、世界に貢献していきたいと考えています」(原田)

ウィンドファームつがるにおいて、住友電工グループは従来とは異なる新しいビジネスの地平を切り開いた。世界の持続可能な未来創造に必要不可欠な、再生可能エネルギーというフィールドである。わが国でも、2050年に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標が掲げられ、風力発電の拡充と風力発電用の送電線網の増強が必要となることが見込まれる。住友電工グループは、再生可能エネルギーに求められるニーズを的確に把握し、包括的な提案・解決を継続的に行っていくことが、持続可能な未来の創造につながると確信している。

地球規模での持続可能な未来へ~日本発再生可能エネルギーの指針~