TCFD/TNFD提言に基づく情報開示
目次
序文
一般要件
(1)マテリアリティの適用 (2)開示範囲 (3)自然関連の課題の場所 (4)他のサステナビリティ関連開示との統合 (5)時間軸 (6)影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント
4つの柱
(1)ガバナンス (2)戦略 (3)リスクとインパクトの管理 (4)指標と目標
今後の展望
序文
住友電工グループは「住友事業精神※1」と「住友電工グループ経営理念※2」という基本思想を礎として、「公正な事業活動を通じて社会に貢献していく」という不変の経営方針のもと、中長期的な企業価値の向上に取り組み、ゴーイングコンサーンとしての成果を「五方よし」という「マルチステークホルダーキャピタリズム」の考え方に立って「お客様」「従業員」「お取引先」「地域社会」「株主・投資家」という主要な5つのステークホルダーに着実に分配・還元し、持続的な発展につとめています。
その基本思想のもと、気候変動問題をはじめとする地球環境への対応を重要な経営課題の一つとして、1997年に制定した「環境方針※3」に沿って、これまで地球的視野に立った環境保全活動や、事業活動から生じる環境負荷の低減に取り組んでまいりました。2021年5月には、金融安定理事会(FSB)により設置された「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」が提言する、気候変動がもたらすリスク及び機会に関する情報開示への賛同を表明し、2022年5月には、TCFDの提言に沿って、気候変動に関する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目とシナリオ分析について情報を開示しました。
また、自然関連課題に関しては、自然への依存・インパクトと関連するリスク・機会を評価し、その結果判明した課題に対して適切に対応していくことが、企業価値を向上させ、マルチステークホルダーとの共栄を図るために必要不可欠な要素であるとの認識に立ち、2025年4月から「TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)」が推奨するLEAPアプローチ(事前準備のScopingを含む、Locate、Evaluate、Assess、Prepareの4段階)に沿った分析に取り組んでいます。2025年10月には当社グループの5つの事業セグメントにおける自然への依存とインパクトを評価し、対応優先度が高い事業セグメントを特定し情報開示しました。今回はその結果[4つの柱.(2).②.a.分析対象範囲の決定(Scoping)]に基づき、自然への依存とインパクトが大きい原材料である銅に着目し、銅関連事業の中でも原材料としての銅の調達量が多い「環境エネルギー」セグメントの主力事業である電力ケーブル事業についての評価・分析結果を開示しています。
今後も評価範囲を広げるとともに、評価・分析を通じて把握した自然関連のリスク・機会について、経営計画や事業戦略へ反映することにつとめていきます。
※1 https://sumitomoelectric.com/jp/company/sumitomo_spirit
※2 https://sumitomoelectric.com/jp/company/vision
※3 https://sumitomoelectric.com/jp/sustainability/environment/management
一般要件
(1)マテリアリティの適用
当社グループでは、多様なステークホルダーにとっての社会・環境課題を網羅的に把握し、「住友電工グループにとっての重要度(財務的影響の観点含む)」と「ステークホルダーにとっての重要度(社会・環境へのインパクトの観点含む)」の二軸を踏まえ、社会・環境課題の重要性評価を行っています。気候・自然関連課題においても同様の軸で重要性評価を行いました。
(2)開示範囲
自然関連課題の戦略については、当社グループの「環境エネルギー」「情報通信」「自動車」「エレクトロニクス」「産業素材」の5つの事業セグメントのうち、「環境エネルギー」セグメントの主力事業である電力ケーブル事業におけるバリューチェーンの上流、直接操業、下流を分析・開示対象としました。なお、気候関連の戦略については当社グループ全体を分析・開示対象としています。
(3)自然関連の課題の場所
2025年度の分析では、電力ケーブル事業における子会社を含む直接操業拠点18箇所(製造拠点、開発拠点、オフィス拠点など)、バリューチェーン上流25箇所(銅鉱山、精錬所など)、バリューチェーン下流14箇所(送電ケーブル敷設地)を対象としています。
(4)他のサステナビリティ関連開示との統合
気候関連課題と自然関連課題は相互に関連しあうことを認識しており、事業推進においても「環境方針」のもと統合的に取組みを進めています。また、気候および自然関連のリスクは全社的なリスクマネジメントの中で一体的に管理しており、今回の分析で特定した自然関連のリスクも当社グループのリスク管理へ反映していく予定です。従って、サステナビリティ関連の開示においても、気候関連と自然関連を相互に関連付けて整理し開示しています。但し、トレードオフ等を考慮した気候・自然関連の統合的戦略の開示や、その他のサステナビリティ関連開示との統合については検討中です。
(5)時間軸
短期を2026年から3カ年の経営計画である「中期経営計画2028」と整合する2028年まで、中期を2022年からの長期ビジョンである「住友電工グループ2030ビジョン」と整合する2030年まで、長期をカーボンニュートラル(スコープ1+2)の目標年となる2050年までとしています。
(6)影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント
当社グループは「お客様」「従業員」「お取引先」「地域社会」「株主・投資家」というステークホルダーの皆様によって支えられており、「五方よし」の考え方に基づき当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るとともに、それぞれのステークホルダーの利益を考慮し、適切な協力関係の構築に努めることが必要不可欠であると考えています。
気候・自然関連課題についても、5つのステークホルダーと下記のような手段で対話を行い、いただいたご意見を事業推進や地域社会・環境の改善等の企業活動へ反映しています。
お客様…日常の営業活動、展示会、特約店会、製品カタログ、広告、Webサイト
従業員…SEIユニバーシティによる研修・教育、セミナー、社内報、イントラネット、タウンミーティング(経営幹部と従業員との懇談)
お取引先…日常の調達活動(取引先評価等)、パートナーズミーティング、CSR調達アセスメント票に沿った調査、研修会、コンプライアンス相談・申告窓口
地域社会…寄付・ボランティアによる社会貢献、NPOとの協業、事業等を通じた地域社会への貢献、地域社会との交流・協働活動(エコ活動2030)、広報誌・教育・研修等への支援、経済団体や業界団体を通じた対話
株主・投資家…株主総会、IR説明会、個別対話、IRサイト、各種報告書(統合報告書、CSRブック、有価証券報告書、コーポレートガバナンス報告書等)
4つの柱
(1)ガバナンス
①気候・自然関連課題に関するガバナンス体制
2021年2月に、社長を委員長とし幅広い関連部署から招集した委員で構成する「サステナビリティ経営推進委員会」を設置しました。「サステナビリティ経営推進委員会」ではサステナビリティを巡る取組みの基本方針※4を制定するとともに、気候・自然関連課題をはじめとする地球環境への対応について、具体的な目標や取組みの議論を行っています。
半年に1回の頻度で開催している「サステナビリティ経営推進委員会」の活動状況については開催後に取締役会へ報告するとともに、本委員会で取り扱った議題のうち、取締役会への付議が必要なものについては個別に審議・報告を行うなどサステナビリティ経営を取締役会が監督する体制を構築しています。なお、役員報酬については、各役員の役割や責任度合い、会社業績への貢献度等に加え、ESGなどの非財務指標についても総合的に勘案し、報酬諮問委員会の審議を踏まえて決定しています。
また2024年10月には「サステナビリティ経営推進委員会」の下に、社長を委員長とした「GX推進委員会」を設置し、長期ビジョン「2030ビジョン」で掲げる「グリーン社会」の実現に向け、更なる環境価値の創造・拡大、グローバル市場における制度環境の進展への迅速かつ適切な対応、そして、企画立案の一層の強化を推進しています。
さらに専門的な見地から具体的な方策を検討するため、「GX推進委員会」の下に、環境担当役員を議長とする「地球環境推進責任者会議」を設け、温室効果ガス排出量削減、サーキュラーエコノミー推進、環境汚染防止、生物多様性保全などに関する取組みを推進しています。また、GX特命担当役員を議長とする「企画・制度対応責任者会議」においては、各種GX規制への対応強化、グリーン関連ビジネスの拡大、GXに関する取組みの情報発信強化を進めています。
②人権方針とエンゲージメント
a.人権方針
当社グループでは、国連の「国際人権章典」及び「ビジネスと人権に関する指導原則」に加え、結社の自由及び団体交渉権などを規定した国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関する ILO 宣言」を基に、経営会議および取締役会で審議の上「住友電工グループ人権方針※5」を定めています。この方針のもと、自らの全ての事業活動が、人権尊重を前提に成り立っているものでなければならないと認識の上、人権尊重の取組みをグループ全体で推進しています。
※5 https://sumitomoelectric.com/jp/sites/japan/files/2021-12/download_documents/human_rights.pdf
b.調達先とのエンゲージメント
「CSR調達ガイドライン※6」及び「サプライヤー行動規範※7」を制定し、お取引先に確実に実践いただくため、これらの遵守を取引基本契約書に追記し、同意書の提出をお願いするとともに、CSR調達自己評価表を用いた調査(CSR調達アセスメント)を実施しています。また、お取引先向けにCSR調達の基本的考え方(責任ある鉱物調達、人権、労働安全性、環境への配慮等)やCO2排出量削減等について研修会を開催し、お取引先と一体となった持続可能な調達活動を推進しています。
※6 https://sumitomoelectric.com/jp/sites/japan/files/2021-07/download_documents/csr_guide.pdf
c.責任ある鉱物調達
当社グループは、経済協力開発機構デュー・ディリジェンス・ガイダンスに記載されている紛争地域及び高リスク地域(CAHRAs)における人権侵害や労働問題、環境汚染などのリスクをサプライチェーンにおける重大な社会・環境問題の一つと認識しています。調達活動における社会的責任を果たすため、これらのリスクの高い鉱物を原材料として使用しない「責任ある鉱物調達」を目指しています。「CSR調達ガイドライン」「サプライヤー行動規範」に関する取組みの中で、必要に応じてリスクの高い鉱物についてサプライチェーンを調査し、人権問題などの各種社会・環境問題を引き起こす、あるいは武装勢力の資金源になっている懸念のある場合には、使用回避に向けた取組みを実施しています。
(2)戦略
当社グループは、1997年7月に「環境方針」を制定し、その基本理念において、「『持続可能な環境負荷の少ない社会を構築していくことが重要である』との認識のもと、地球的視野に立った環境保全活動を持続的かつ着実に推進しながら、環境エネルギー、情報通信、エレクトロニクス、自動車、産業素材関連等の製品及びサービスの提供を通じて社会に貢献する」ことを掲げるとともに、活動指針においては「環境保全への取組みを経営の最重要課題のひとつとして位置付けた環境経営を推進する」ことを掲げるなど、地球環境課題への対応が当社グループの経営戦略上、非常に重要であることを明確化しています。
企業活動を進めるにあたって、原材料の調達や製品製造などの形で自然からの恵み(生態系サービス)を受けており、事業活動継続のためには、気候変動の緩和・適応、生態系の保全、地域の環境保全への貢献が必要と考えています。また、事業活動に伴って発生する環境負荷が生物多様性に影響を与えているとの基本的な考えのもと、環境負荷の全体を把握し削減していくとともに、各事業所での地域に根差した環境保全活動を推進しています。
これらの自然との関わりについては、2025年度よりTNFD提言に沿った自然関連課題の分析を開始し、事業活動における自然資本への依存と、事業活動に伴って発生する環境負荷(インパクト)を継続的に評価しています。さらに当社グループの財務への影響をリスク・機会として整理しながら、目標設定や取組みへの落とし込みを進めています。
当社グループでは、環境経営を推進するため、「住友電工グループ2030ビジョン」「中期経営計画2028」において、2050年カーボンニュートラル(スコープ1+2)などの定量目標を掲げ、温室効果ガス排出量削減、サーキュラーエコノミー推進、環境汚染防止、生物多様性保全などの事業活動における環境負荷低減と、環境に配慮した製品提供の拡大などの取組みを計画的に進めています。
また、豊かな自然環境を守り、地域社会の皆様と共存共栄していくために、これまで事業拠点毎に地球に優しい身近な取組み(生態系保護・緑化、地域清掃など)を通じて自然に恩返しをする「エコ活動2030」に取り組んできました。今後も当社グループ全体で、2030年までに20以上の国・地域で毎年300件以上の生物多様性保全や地域の環境保護など自然を取り戻す取組みを実施することを目標に活動を進めていきます。
①気候変動関連のリスクと機会
TCFD提言に基づき、世界的な平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑制するシナリオと、4℃上昇するシナリオを設定して、気候変動に伴うリスク及び機会が事業に及ぼす影響を分析し、今後の取組みについて検討を行っています。シナリオ分析の結果、当社グループにとっての重要なリスク・機会と主な取組みは以下に続く表のとおりです。なお、レジリエンスを評価する観点から、1.5℃シナリオにおいて移行リスク及び関連する機会を、4℃シナリオにおいて物理リスク及び関連する機会を、それぞれ分析・開示しています。
②自然関連課題の特定
a.分析対象範囲の決定(Scoping)
当社グループがグローバルに事業を展開している5つの事業セグメント「環境エネルギー」「情報通信」「自動車」「エレクトロニクス」「産業素材」について、TNFDが提唱するLEAPアプローチのScoping(分析対象範囲の決定)を実施しました。
Scopingを実施するにあたり、各事業分野の主要製品における上流から下流のバリューチェーンの整理を行った上で、TNFDが推奨する分析ツールであるENCOREを活用してバリューチェーン上の各プロセスにおける自然への依存とインパクトを分析しました。その結果は、下記ヒートマップの通りです。
ヒートマップから、当社グループの事業活動における自然への依存とインパクトは、特にバリューチェーン上流の原材料調達において大きいことが判明しました。また、当社グループの原材料購入量実績からは、右表のとおり銅が最も多いことが分かっています。そこで、銅購入量の多い「環境エネルギー」セグメントを、重要度の高い事業領域として特定し、主力事業である「電力ケーブル事業」を分析・開示対象としました。
b.要注意地域の特定(Locate)
TNFDが提唱する要注意地域(Sensitive Locations)の定義を用いて、「環境エネルギー」セグメントの「電力ケーブル事業」のバリューチェーン活動が行われている拠点(活動場所)での自然の状態を分析しました。
分析対象とした活動場所は、電力ケーブル事業における子会社を含む直接操業拠点18箇所(製造拠点、開発拠点、オフィス拠点など)、バリューチェーン上流25箇所(銅鉱山、精錬所など)、バリューチェーン下流14箇所(送電ケーブル敷設地)です。なお、上流の銅鉱山についてはお取引先の公開情報をもとに、当社製品の原材料を生産している可能性がある鉱山を含めて幅広く評価しています。
分析には「WWF Biodiversity Risk Filter(以下、WWF BRF)」および「Landmark」を活用し、TNFDが定義する要注意地域*の基準に該当するかを評価しました**。
結果として、バリューチェーン上流の銅鉱山・精錬所(南米など)25箇所と、下流の送電ケーブル敷設地14箇所(欧州など)については、いずれも全て要注意地域と特定されました。一方で、直接操業拠点については要注意地域に該当する場所は確認されませんでした。
* 要注意地域:「生物多様性にとって重要な地域」、「生物多様性の完全性が高い地域」、「生態系の完全性が急速に低下している地域」、「物理的な水リスクが高い地域」、「先住民・地域コミュニティ・ステークホルダーの便益を含む生態系サービスの提供が重要な地域」の5つを指す。
** TNFDのガイダンスにのっとり、「要注意地域」のうち、少なくとも1つにおいてWWF BRFにて”Very High Risk”、あるいはLandmarkでIPLCsが管理する地域に隣接すると評価された活動場所を「要注意地域」として特定しています。また、自然の状態の変化は複数の要因が相乗的に影響することも考えられることから、追加的に2つ以上においてWWF BRFにて“High Risk”と評価された活動場所も「要注意地域」として判定しています。
c.重要な依存・インパクト(Evaluate)
Scopingでの依存・インパクトの初期分析結果をもとに、当社にとって重要と考えられる自然(生態系サービス)への依存・インパクトを分析しました。当社グループにとって特に重要と考えられる依存・インパクトは下表の通りです。
③自然関連の重要なリスクと機会(Assess)
特定した自然への依存・インパクトに基づき、当社にて想定される自然関連のリスク・機会について、TNFDのガイダンスに従って2つのシナリオを作成し、それぞれのシナリオが示す将来におけるリスク・機会について評価しました。
・シナリオI:
自然共生・気候変動への社会の関心が高く、各国でネイチャーポジティブ・脱炭素・資源循環に関する足並みが揃い、気温上昇は2100年に産業革命前比1.5℃ペースに抑えられ、自然の劣化が少ない将来像。移行リスクと関係が深い。
・シナリオⅡ:
自然共生・気候変動への社会の関心が低く、各国でネイチャーポジティブ・脱炭素・資源循環に関する足並みが揃わず、気温上昇は2100年に産業革命前比4℃ペースで進み、自然が大きく劣化している将来像。物理的リスクと関係が深い。
これらのシナリオは、TNFDが例示する移行リスク・物理的リスクの不確実性で表現される4象限のシナリオをベースに、TCFDのシナリオ分析で用いたシナリオと整合するように調整を行っています。
この2つのシナリオを用いて分析した、当社グループにとって重要と考えられるリスク・機会、想定しうる状況、財務影響、主な取組みは下表の通りです。
なお、リスク・機会の重要性評価については、発生可能性と、発生時における当社グループへの財務影響度の観点から重要度が「大」と判定されたものを開示しています。
④気候・自然関連課題への対応策(Prepare)
当社グループで取り組む対応策のうち、電力ケーブル事業に関連した対応策の例を下記に示します。
a.英国の「ネットゼロ目標」への貢献
当社は、2023年4月に英国のクリーンエネルギーのサプライチェーン構築を後押しする一環として、スコットランド・ハイランド ニッグ港において最先端の海底電力ケーブル工場の設立を発表し、2024年5月に建設工事を開始しました。本工場は、英国の電力送電網の強化と、洋上風力発電を英国本土の送電網へ接続するためのケーブルの製造・供給の役割を果たします。
本工場で製造された電力ケーブルは再生可能エネルギーを英国本土や周辺地域へ供給するための重要な送電インフラとして貢献し、英国の「ネットゼロ目標」の実現に寄与します。
b.サーキュラーエコノミー推進
生産現場における不良低減、発生した廃棄物の減量化・社内再利用・有価物化、原料リサイクル、水使用量低減や水循環の取組みを行っています。原料リサイクルの代表的な取組みとして、関係会社である住電資材加工(株)で使用済みの電力・通信ケーブルを解体し、回収した銅を通常の「連続溶融炉」でリサイクルするほか、国内電線メーカーで唯一の「傾転式反射炉」と呼ばれる銅精錬炉を活用してリサイクル率を上げる取組みを行っています。 今後も新規採掘を伴わない、すなわち環境へのインパクトが少ない銅原料の創出に取り組んでいきます。
c.環境汚染防止
法令の遵守、従業員の健康や安全を守ること、環境保全に貢献すること、お客様や消費者の信頼を得ることを目的として、製品に含有する化学物質の管理とサプライチェーンを通じた化学物質の情報伝達、工場で生産に用いられる化学物質の管理と環境中へ排出される有害化学物質の量の低減に取り組んでいます。事業活動における環境負荷物質低減の取組みでは、PRTR制度対象物質排出削減を進めており、年1%削減に努めています。
d.生物多様性保全活動
英国とベルギー間を海底でつなぐ高圧直流送電ケーブルプロジェクトであるNemo Linkでは、2019年の送電開始以前に、専門家によってケーブルを敷設する湿地帯の生態系調査を実施し、貴重な野鳥が多数生息・繁殖していることが確認されました。そのため植物の伐採を最小限に留めるとともに、野鳥の営巣ピーク時期を避けて工事期間を規定し、日々の工事作業前点検で野鳥や巣が発見された場合には作業を延期するなど、野鳥に配慮した敷設をおこないました。また、敷設ルート上の自然保護区に生息するとされる貴重なヒキガエルについても専門家による現地調査を実施の上、冬眠時期を避けて採掘作業期間を規定する等、生態系への影響を緩和するように配慮しています。
(3)リスクとインパクトの管理
当社グループでは、気候・自然関連リスクを含めた各リスクについての評価及び対応を、重要性の判断基準を定める「リスクマネジメントの基本方針※8」に沿って、リスクの軽重を判断した上で実施しています。
気候・自然関連リスク等を含むグループ横断的リスクについては、各部門及びグループ会社において毎年度「リスクの棚卸し」を実施し、影響度や発生可能性等を総合的に評価した上で重要リスクを抽出しています。全社共通的に重要と考えられるリスクについては、コンプライアンス・リスク管理室よりリスク管理委員会へ報告し、認識の共有及び対応方針の検討を行っています。また、各リスクを所管するコーポレートスタッフ部門や当該部門の担当役員が主催する委員会が対応策をグループ内に展開し、各事業の遂行に伴う固有リスクについては各事業部門が主体で管理を行っています。
気候変動・自然災害等のリスクへの対応については、コンプライアンス・リスク管理室が中心となって事業継続計画(BCP)の策定を促すなど、安全の確保を最優先としながら、災害発生時の被害最小化、原材料の確保をはじめとする事業継続性の確保に取り組んでいます。
また、気候変動・自然関連を含む地球環境保全のような中長期的な重要課題については、サステナビリティ経営推進委員会の下に設置した社長を委員長とするGX推進委員会が主導のもと、安全環境部が中心となって、「地球環境推進責任者会議」での審議内容を踏まえ、関係するコーポレートスタッフ部門と連携しながら目標や取組み方針を策定しています。その内容を踏まえ、各事業部門は自部門の目標を設定の上、活動を推進しています。
なお、当社グループのリスクマネジメント体制及び活動の流れは下記のとおりです。
※8 https://sumitomoelectric.com/jp/sustainability/governance/risk
(4)指標と目標
①指標
TNFDが推奨するグローバル中核開示指標に沿って、当社グループが掲げる自然関連の指標を整理しました。指標一覧は下表のとおりです。
TNFDのグローバル中核開示指標と当社グループ開示内容の対応表
| 対応するTNFDの中核指標 | 自然の変化の要因 | 指標 | 当社グループの開示内容 | 開示箇所 |
|---|---|---|---|---|
| ー | 気候変動 | GHG排出量 | 温室効果ガス排出量(スコープ1、2、3) 温室効果ガス排出量削減率(スコープ1、2、3) エネルギー使用量、エネルギー売上高原単位低減率 再生可能エネルギー(太陽光発電設備)累計導入量 輸送におけるCO2排出量、国内輸送におけるCO2排出量 | CSRブック |
| C2.0 | 汚染/汚染除去 | 土壌に放出された汚染物質の種類別総量 | 地下水モニタリング | CSRブック |
| C2.1 | 汚染/汚染除去 | 廃水排出 | 排水量、排水先区分(下水道、河川、海、その他)別の割合 主要拠点での環境負荷データ: 水質(pH、BOD、SS、鉱物油、銅、亜鉛、鉄(溶解性)、マンガン(溶解性)、クロム、フッ素、ニッケル、ホウ素) | CSRブック 別紙 |
| C2.2 | 汚染/汚染除去 | 廃棄物の発生と処理 | 廃棄物排出量原単位低減率 廃棄物排出量内訳(合計、単純焼却・埋立、リサイクル) 単純焼却・埋立量の内訳(一般廃棄物・廃液・汚泥・その他) リサイクル量の内訳(マテリアルリサイクル、熱回収)、有価物量、再生利用(マテリアルリサイクル+有価物)量の内訳(金属くず、紙くず、廃プラスチック、廃酸、汚泥、木くず、廃油、その他) 廃棄物リサイクル率、産業廃棄物量 | CSRブック |
| C2.3 | 汚染/汚染除去 | プラスチック汚染 | 原材料INPUTにおける樹脂量 再生利用(マテリアルリサイクル+有価物)における廃プラスチック量 | CSRブック |
| C2.4 | 汚染/汚染除去 | 温室効果ガス(GHG) 以外の大気汚染物質総量 | NOx量、SOx量、VOCの大気への排出量 主要拠点での環境負荷データ:NOxの濃度、ばいじんの濃度、NOx量 | CSRブック |
| C3.0 | 資源使用/資源補充 | 水不足の地域からの取水量と消費量 | Aqueduct水ストレスの「Extremely High地域」に該当する拠点(34拠点)の取水量と取水量割合 | CSRブック |
| C3.1 | 資源使用/資源補充 | 陸/海洋/淡水から調達する高リスク天然一次産品の量 | 銅・アルミ・鉄・樹脂の調達量(原料購入量) | CSRブック |
CSRブックはhttps://sumitomoelectric.com/jp/csr-reportsをご覧ください。
なお、特定したリスク・機会に関する指標・目標や、上記以外のTNFDグローバル中核開示指標については、引き続き検討を進めていきます。
②目標と実績
当社グループでは、22年5月に策定・公表した長期ビジョン「住友電工グループ2030ビジョン」において、「グリーンな地球と安心・快適な暮らしーその実現へ技術で挑戦し続けますー」とのスローガンを掲げ、「グリーンな環境社会」に貢献していくことを強調しています。
また、2030年のマイルストーンとして設定した第一ステップとしての「中期経営計画2025」に続き、第二ステップとして2028年までの「中期経営計画2028」を26年5月に策定・公表し、その中で、以下のように気候・自然関連の目標を掲げています。
a. 気候変動
| 項目 | 時間軸 | 目標 | 2025年度実績 |
|---|---|---|---|
| CO2排出量 | 2050年 | ●Scope1+2:カーボンニュートラル | Scope1+2:排出量 1,454千tCO2e |
| CO2排出量 削減率 | 2030年 | ●Scope1+2:50%削減(2018年度比) ●Scope3:30%削減(2018年度比) | Scope1+2:28.5%削減 Scope3:0.6%削減 |
| CO2排出量 削減率 | 2028年 | ●Scope1+2:30%削減(2018年度比) ●Scope3:22%削減(2018年度比) |
CO2排出量削減について、省エネと再生可能エネルギー導入を積極的に進め、スコープ1+2排出量を2018年度比で28.5%削減することができました。省エネでは、3大ムダエネルギー(エア漏れ・待機電力・放熱ロス)削減を進めることで、エネルギー原単位*を2021~2022年度平均比で28.5%低減しています。そして再生可能エネルギーはグループ全体で91.6MWの導入を完了しており、今後も太陽光発電導入を拡大していきます。スコープ3排出量は、生産量増加による影響があり0.6%削減に留まりましたが、購入品・サービス由来の排出量が多いお取引先に、毎年の排出量報告と継続的削減をお願いし、また物流における排出量削減にも力を入れています。なお、国内の物流CO2原単位*は2018年度対比で14.7%低減している状況です。今後も目標達成を目指し取組みを推進していきます。
b. サーキュラーエコノミー
| 項目 | 時間軸 | 目標 | 2025年度実績 |
|---|---|---|---|
| サーキュラーエコノミー推進 | 2028年 | ●リサイクル材料使用促進(銅・アルミ・レアメタル・樹脂など) ●リサイクルしやすい製品設計・材料開発 ●不良低減や分別に廃棄物削減、水資源循環 | 廃棄物リサイクル率*:92.5% 廃棄物排出量原単位低減率*:15.8%(2022年度比) 水使用量原単位低減*:21.4%低減(2022年度比) |
*住友理工(株)グループを除く
サーキュラーエコノミー推進においては、生産現場における不良低減、発生した廃棄物の減量化・社内再利用・有価物化、原料リサイクル、水使用量削減や水資源循環の取組みを推進しており、廃棄物リサイクル率*は92.5%、廃棄物排出量原単位低減率*は2022年度対比で15.8%低減、水使用量原単位低減率*は2022年度対比で21.4%低減しています。今後は、製品に使用する原材料への再生材適用やリサイクル技術そのものの技術開発も進めて行きます。
c. 環境汚染防止
| 項目 | 時間軸 | 目標 | 2025年度実績 |
|---|---|---|---|
| 環境汚染防止 | 2028年 | ●環境事故ゼロ ●環境負荷物質削減 | 環境事故*:3件 PRTR制度対象化学物質排出量削減(国内)*:32.8%(2022年度比) |
*住友理工(株)グループを除く
環境汚染防止については、法令を遵守すること、従業員の健康や安全を守ること、環境保全に貢献すること、お客様や消費者の信頼を得ることを目的として、取組みを進めています。具体的には製品含有化学物質の管理、サプライチェーンを通じた化学物質の情報伝達、工場で生産に用いられる化学物質の管理と環境中へ排出される有害化学物質量の低減などを進めており、環境負荷物質低減では国内のPRTR制度対象物質排出*を2022年度比で32.8%削減しました。
一方で、2025年度の環境事故*として、海外関係会社にて、濁った排水の所外漏洩1件、排水の基準値超過2件の報告がありました。いずれも行政機関に報告しています。前者は警報の発報に気付くことができなかったため、対策として、警報発報箇所に係員が常設するエリアを追加するとともに携帯電話へのメール通知を実施しています。後者のうち1件は放流前の社内分析で基準値未満でしたが、その後の社外分析で基準値超過が確認されました。対策として、基準値未満であることを社内外両方の分析で確認した後に放流する運用に見直しています。もう1件においては、従業員教育を強化するとともに分析の実施頻度を高めるなど、排水水質の管理体制を強化しています。
d. 地球環境保全・生物多様性
| 項目 | 時間軸 | 目標 | 2025年度実績 |
|---|---|---|---|
| 自然関連情報開示 | 2028年 | ●TNFDフレームワークに基づく評価と情報開示 | LEAPアプローチのスコーピング(評価対象範囲の決定)の結果を開示 |
| 事業を通じた地球環境への貢献 | 2028年 | ●グリーン・デジタル関連製品売上高:年間3.5兆円 | ― |
| 生物多様性保全・地域清掃等の身近なエコ活動の拡充 | 2030年 | ●「エコ活動2030」の推進 2030年度に向けて年間に20以上の国/地域で300件以上の地球にイイこと (地域社会と連携した取組み強化) | エコ活動2030*:19の国/地域、356件/年 |
*住友理工(株)グループを除く
生物多様性保全、地域の環境保護など自然を取り戻す取組みを目的に推進している「エコ活動2030」において、2025年度は19の国/地域で計356件の活動を行いました。また、事業を通じた地球環境への貢献としてはこれまでもグリーン貢献製品やエコ製品の拡大を進めてきましたが、「中期経営計画2028」において、あらたに「グリーン・デジタル関連製品売上高」という指標をかかげ、3.5兆円の売上高に向けて取り組んでいます。
今後の展望
2025年度は、自然へのインパクトが大きい銅原料の調達量の多さという観点で、重要度が高い事業セグメントである「環境エネルギー」の電力ケーブル事業を優先して、LEAPアプローチに沿った分析を進めました。
本開示は、Prepare(判明した課題へ対応し報告するための準備)の一環として、分析により把握した自然関連の依存・インパクト及びリスク・機会等を整理し、ステークホルダーの皆様と共有を図るものです。
2026年度以降は、当社グループの中でも売上高比率の高い事業セグメントである「自動車」セグメントの関連製品について同様に分析を進めていく予定です。また、今後さらに気候および自然・生物多様性に関する情報開示の充実を図っていくとともに、判明した課題への対応を事業戦略やサステナビリティ関連方針等へも反映していく予定です。
「五方よし」を掲げる当社グループは、豊かな自然との共生を目指し、持続的な成長と企業価値向上に向けた取組みを今後も進めていきます。