架空送電線とは

架空送電線は、遠方の発電所から電力需要のある都市や工業地帯の変電所に電気を運ぶため、いくつもの鉄塔間に空高く張られた電線です。
当社では、これまでの長年にわたる多数の製品納入の実績および豊富な製品開発を生かし、標準電線のみならず、幅広い用途に適した特長製品を提供しています。

特長

当社は、低騒音風洞設備、コロナ試験設備、着雪試験設備、腐食加速試験設備、微風振動試験設備など、さまざまな用途に応じた電線の特性が確認できる試験設備を保有しているため、お客さまのご要望に対応した信頼性の高い製品を開発・提供しています。

製品用途

当社では、以下に示す主な用途に応じ、幅広い製品を揃えております。

●大容量
●増容量
●低ロス
●海峡・河川横断
●環境対策
●着雪防止(難着雪)
●防食(耐食)
●雷害防止(耐雷)

耐熱系電線

ラインアップ

大容量

(超)耐熱系電線(TACSR/AC、ZTACSR/AC)
既存ACSRの約1.6倍から1.8倍の増容量が可能です。ただし、電線の弛み(弛度)が大きくなります。

インバー型増容量電線

弛度抑制型増容量

インバ電線(XTACIR/AC、ZT(UT)ACIR/AC)

アルミ導体部には、耐熱性が非常に優れた特別耐熱アルミ合金線または超耐熱アルミ合金線を用い、鋼心部には線膨張係数が小さいアルミ覆インバ線を用いた電線です。同サイズのACSRの弛度を維持したまま、送電容量を約1.8~2倍へ増加することができます。

ギャップ電線

ギャップ電線(GTACSR、GZTACSR)

アルミ導体部と鋼心部の間に間隙(ギャップ)を設けた電線です。同サイズのACSRから送電容量を約1.6~1.8倍に増加することができ、緊線時の追加施工により弛度抑制が可能です。近年では、主に海外のお客様に納入しています。

成形型低ロス電線

低ロス

成形型低ロス電線(SB型電線)

アルミ導体部に成形線(台形素線)を用いて、電気抵抗を20%近く低減したものです。これにより運用時の送電ロスが低減できます。

61TACSR

61TACSR/ACなど

従来の耐熱アルミ合金線(TAL)の導電率を1%向上した、61%導電率を持つ耐熱アルミ合金線(61TAL)を導体部に適用した電線です。従来よりも約2%の電気抵抗が低減でき、運用時の送電ロスが低減できます。なお、電線構造は従来電線(TACSR/AC)と同一であり、従来通りの線路設計、施工方法がそのまま適用できます。

アルミ覆高強度鋼心

海峡・河川横断

アルミ覆高強度鋼心ACSR、T(KT)ACSR(ACSR/XAC、T(KT)ACSR/XAC)など

従来の特強亜鉛めっき鋼線(EST)と同一の引張強さをもった高強度アルミ覆鋼線(XAC)をコア鋼心部に使用したものです。主に長径間向けとして耐食性を向上させた電線も提供しています。

低騒音電線

環境対策

低風音電線(NS-(T)ACSR)

架空送電線路はしばしば住宅地や病院などのそばを通過するため、生活環境に配慮し、騒音を低減した電線のニーズが高まっています。そこで風騒音低減対策として、電線の表面にスパイラル状の突起(段差)を設けることにより、カルマン渦を消失させ(右図参照)、風騒音を抑えた低風音電線(NS-(T)ACSR:NSはNoise Suppressedの略。1987年)を開発しました。現在でも国内で幅広く使用され、継続して提供しています。

低騒音電線_LN-ACSR

低騒音電線(LN-ACSR)

上記の低風音電線は、突起部分の電線の表面電位傾度が高くなる傾向にあります。降雨により雨滴が電線の下面に流れ、そのまま付着すると(右図参照)、電位傾度がさらに高くなり、とくに超高圧送電線路では雨滴先端からコロナ放電に伴うコロナ騒音が問題になる場合があります。これを解決するため、風音を抑制し、かつコロナ騒音を極力低減した低騒音電線が開発されました(LN-ACSR:LNはLow Noiseの略。1992年)。右図の中央図および右図に示すように突起部の中央に窪みを設けることで、水滴による電線表面からの突出を極力抑えることができます。LN電線は、日本初の1000kV UHV送電線路へも適用されています。

低風・低騒音電線

低風圧・低騒音電線(LPN-ACSR/AC410mm2)

電線にかかる風圧を軽減し,さらに風騒音やコロナ騒音の低減機能をもった低風圧・低騒音電線(LPN-ACSR/AC410mm2:LPNはLow Wind-Pressure Low Noiseの略)です。鉄塔に対する負荷を低減します。

難着雪電線

着雪防止

難着雪電線(スパイラル付き電線)

着雪防止対策のため、細径のスパイラル線を巻いた電線(スパイラル付き電線)です。より線のより目に沿って滑った雪がスパイラル線にあたることで落雪し、筒雪(重着雪)を防止します。これにより鉄塔への負荷を軽減します。(この対策手法は、「電気設備の技術基準」の難着雪対策に掲載されています)

合金耐食型電線

防食

合金耐食型電線

海岸地域に建設された古い送電線路では、ACSR系(鋼心アルミより線)の電線において海塩粒子による内部腐食(鋼心とアルミ間の腐食)が散見されています。この対策として従来、鋼心にアルミ覆鋼線(AC線)を使用したACSR/AC系の電線や防食グリスを使用した防食電線が適用されていました。当社では、更なる耐食性向上のため、耐食アルミ覆鋼線(マンガン入りアルミ合金被覆)を使用した合金耐食電線(ACSR/HRAC)を開発しました。ACSR/AC系電線よりも約1.6倍の長寿命をもち、また施工にも優しいグリースレスな電線です。

耐雷型架空地線

雷害防止

耐雷型架空地線 (LP-AC150mm2)

架空送電線路の最上部には、避雷針の役目をする架空地線が張られています。この架空地線は、雷撃による素線切れまたは断線により、電力の安定供給に支障をきたす場合があります。その対策として、最外層素線を太くし、素線切れが発生しにくい耐雷型架空地線(LP-AC150mm2)を提供しています。本製品は,電力用規格A-220「アルミ覆鋼より線」に採用されています。

注:上記記載の数値は目安であり、条件によって異なりますので、具体的な条件をご教示頂ければ、最適電線を選択し、新たに検討いたします。