30 July 2025
当社開発の光スイッチ制御ソフトを活用した複数サーバへの動的GPU割り当ての実証実験に成功
住友電気工業株式会社(本社:大阪市中央区、社長:井上 治、以下「当社」)はエクストリームーD株式会社と共同で、当社開発の光スイッチ制御ソフトを活用した光経路切り替えによる複数サーバへの動的GPU割り当ての実証実験に成功しました。本成果は7月30日(水)から8月1日(金)に島根県松江市で開催されるJANOG56ミーティングで展示予定です。
近年、生成AIなどに使用されるGPU(Graphics processing unit:画像処理装置)*1は、高性能化が進む一方で、放熱量の増加が課題となっており、また運用効率を向上させることが求められています。これらに対処すべく、当社は、現在は一つの基板上に集約し、電気接続されることが主流となっているCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)とGPU、メモリ、記憶装置などの計算資源を物理的に離した状態で効率的に活用できるCDI(Composable Disaggregated Infrastructure)*2の実現を目指しています。今回、当社は光電変換カードを用い、CPUとGPUを接続する信号を光化しても、CDIの実現が可能であることを実証しました。

さらに、本実証実験では、商用データセンタ内において2台のサーバとGPU収容装置を光スイッチで接続し、各サーバのニーズに応じてGPUを動的に割り当てられることを確認しました。サーバとGPU収容装置の通信規格にはPCIe信号*3を用いており、動作確認は距離を2mおよび1km離した状態で行いました。
GPUには、液体冷却方式などの高い冷却性能を備えた設備の新設が必要になると見込まれます。光化によって計算資源との距離を1km程度離すことが可能となることで、GPUのみ新施設に収容することができるため、従来のサーバ全体を収容する場合と比較して新施設の必要面積が大幅に削減され、設備投資を抑制することが可能となります。
また、光スイッチは伝送する通信方式を限定しないため、将来のサーバとGPUの性能向上に伴って登場する新通信規格にも対応できます。
実証実験に使用した機器は、エクストリームーD株式会社提供のサーバ、国立研究開発法人 産業技術総合研究所が提供するシリコン光スイッチ、およびDolphin Interconnect Solutions社製のPCIe伝送カード*4で構成されています。なお、4レーンのPCIe光信号を波長多重器でまとめて1本の光ファイバで伝送することで、光スイッチの接続ポートを効率的に利用しています。これらの機器は、当社製の光スイッチ制御ソフトとエクストリームーD株式会社のマルチクラウド対応高速AIプラットフォームサービス「Raplase」によって統合管理されています。
当社はこれからも、引き続き、光スイッチを活用したCDIの実証に取り組み、光スイッチ制御ソフトの実用化を通じて、AI需要の高まりに応えるデータ処理環境の実現に貢献してまいります。
実証内容 | 光スイッチによる光経路切り替えを活用した、 複数サーバへの動的GPU割り当ての実証実験 |
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実施場所 | 商用データセンタ内 |
期間 | 2025年7月14日(月)~29日(火) |
会期 | 2025年7月30日(水)~8月1日(金) |
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会場 | 島根県立産業交流会館 くにびきメッセ(島根県松江市) |
当社展示場所 | 展示ブース番号:120 |
公式サイト | https://www.janog.gr.jp/meeting/janog56/ |
エクストリームーD 株式会社
柴田 直樹 創業者 代表取締役 兼 最高技術責任者 コメント
本PoCを通じてCDI技術の普及を目指す住友電気工業の技術に大変注目しております。当社もお客様にAI/HPCプラットフォームサービスを提供している立場として、本ソリューションがコストとパフォーマンス、動的なコンポーネント切り替えのメリット生かしたGPUaaSの提供に関して重要なコンポーネントとして、早期市場投入されることを期待しております。引き続き当社 AI/HPC向けプラットフォームサービス「Raplase」との組合せによるサービスの開発に向けて本技術の研究開発に貢献したいと考えております。
・7月30日 エクストリームーD株式会社 プレスリリース (Information)
住友電気工業株式会社が開発中の光スイッチ制御ソフトを活用した複数サーバへの動的GPU割り当ての実証実験において当社Raplaseの本番環境と研究開発部門共同実験環境を提供
https://xtreme-d.net/news/20250730/
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 光電融合研究センター
池田 和浩 副研究センター長 コメント
産総研は、保有する最先端の300mmシリコンフォトニクス試作ラインを活用し、省電力なデータセンタやAIクラスタの実現に向けてシリコン光スイッチの研究開発を進めています。通信規格無依存で集積性・高速性を有するシリコン光スイッチを活用した今回の実証実験を契機として、光スイッチによる高効率なAI処理システムの社会実装が加速することを期待します。産総研は今後も広く企業等と協力して関連技術の研究開発に取り組み、我が国の産業競争力強化を目指します。
Dolphin Interconnect Solutions AS CEO Hugo Kohmann氏 コメント
私たちのPCIe伝送カードが、住友電気工業が挑戦する新たなAI CDIの実現において重要な役割を果たすことができたことを誇らしく思います。我々の商用化済み製品と同社と同社パートナーの最新技術が新たなソリューションを形作り、AI処理を行う数多のエンドユーザの設備投資とランニングコストを下げるだけでなく、持続可能な発展に貢献できることを期待しています。当社は、今後も新しい技術の開発に取り組み、さらなるイノベーションを推進していきます。
【用語解説】
*1 GPU
画像処理を行う専用プロセッサとして開発され、昨今は高い並列計算処理能力を活かして機械学習やディープラーニングなどのAI処理に活用されている。
*2 CDI
CPUやGPU、メモリ、記憶装置など計算資源を分離し、必要に応じてこれらを組み合わせて計算を行うことができるようにする。
*3 PCIe
PCI Express (PCIe) は、高速データ通信を実現するインターフェース規格で、GPUや記憶装置などの接続に利用される。
*4 PCIe伝送カード
PCIe信号をサーバ外に転送するための拡張カード。PCIeスロットに装着する。