世界へと挑戦する住友電工グループのアスリートたち 多田修平×伊藤優希×小池裕貴
怪我やスランプ、さまざまな困難の壁を乗り越える 周囲のサポート、アドバイス、そして応援
―――ここに至るまで困難な壁がいくつもあったと思いますが、それをどのように乗り越えたのかをお聞かせください。
小池 私は大学2年まで、ミスやトラブルなく、順調な選手生活を送ってきました。しかし大学3~4年に怪我が重なり、4年生の時には負った怪我から復帰できず、選手生命の危機を感じたほど。やるだけやって結果を残すことができなかったら引退することも考えました。だから何が何でも結果を出したい。しかし、そのために一人で取り組むことは無理と判断。私はそれまですべて一人でやってきましたが、コーチをつけるのが最善と考えたのです。大学4年生の9月の全日本大学選手権まで3ヵ月。専属コーチの指導のもとでリハビリ、練習に取り組みました。その結果、優勝。人に頼ることを自分に許したことで、壁を乗り越えることができました。
多田 私も小池さんのように、コーチの存在は大きなものがあります。大きな怪我に苦しんだことはありませんが、スランプという壁に大学4年生の時に突き当たりました。学生時代、スランプの時は自分で何とかスランプからの脱出を試みようともがくわけですが、社会人となって今のコーチがついたことで、大きく変わりました。自分でいい走りをしていると思っても、客観的に見た場合、そうでないこともある。第三者のアドバイスを受けることで、調子が上向いていきました。陸上に正解というのはありませんが、コーチという第三者のアドバイスや意見を聞き、自分の考えとすり合わせていくことで、スランプから抜け出せたと感じています。
伊藤 2017年、15人制の女子ワールドカップを目前にして右膝の靭帯を断裂、完治・復帰まで約1 年を要した大怪我をしました。リハビリの間、チームメイトやコーチ、家族、応援してくれている人たちなど、自分がどれだけ多くの人に支えられているかを実感しました。その人たちのためにも絶対に復帰しようと思いました。周囲の支え、応援があったからこそ、怪我から復帰できたのだと思いますし、ラグビーができることの幸せを感じています。今でもめげる時や厳しい局面に突き当たる時もありますが、自分の活躍を周囲の人が喜んでくれることが頑張るきっかけにもなりますし、モチベーションを生む源の一つにもなっています。
究極のメンタルスポーツ、100m走 10秒の壁を破った時に感じた後悔
―――多田さんと小池さんは、同じ陸上競技のアスリートとしてお互いをどのように見ているのかお聞かせください。
多田 小池さんは、走りを考えて取り組むタイプだと思います。私は考えるのが嫌いで、感覚的に走るタイプ。アスリートであれば誰もが感じたことがある、上手く走ることができた時の「感覚が良かった」という実感を大事にしています。
小池 多田さんが指摘していることは、陸上のスタンダードだと思います。多田さんの言う「感覚」は非常に重要で、私はそれを言葉に起こそうとしますが、多田さんは言葉に起こさない、という違いがあるだけだと思いますね。これがいいという「感覚」をスピードという数字につなげていく作業が日々の練習です。あるスピードを出すために以前は80%の力が必要だったけれど、75%の力で出せた時の、あの「感覚」。とても大切です。
多田 余計な力を使わずに自分の体をコントロール下に置いた状態ですね。思った以上に体が動くのは「感覚」が良くないということ。アスリートの「感覚」は、ある意味超感覚の世界でもあると思います。小池さんは10秒の壁を破り、日本人で3人目となる9秒台をマークしましたが、あの時の「感覚」はどうでしたか。
小池 あの時は状態が良すぎて力を出しすぎてしまったのが悔やまれます。言ってみれば自分をコントロールできなかった。70mまで勝っていながら失速し、メダルに届かなかったのはそのせいです。100mは究極のメンタルスポーツですから、最後まで冷静に走ることが必要だと改めて痛感しました。また、メディアは10秒の壁を破ったことを騒ぎ立てますが、壁というのは壁と思うから壁であって、壁と思わなければ壁ではない。10秒はもう壁ではないと思いますね。
居場所がある、応援があるから頑張れる 住友電工グループにあるスポーツを楽しむという空気感
―――企業の一員としてスポーツを続ける良さ、また住友電工グループの魅力はどこにあると思いますか。
小池 結果を出すためには環境が大事です。住友電工グループは、自分が提案した練習環境を快く受け入れ、サポートすることを約束してくれました。その点、とても感謝しています。同時に社員として所属していることの良さも実感しています。激励会や壮行会といった特別なイベントがなくても自分の居場所があることや、海外遠征の際など、日本に帰る場所があることは、アスリートにとっては一つの安らぎでもあります。社員の方々から掛けられる言葉も励みになります。それは「頑張れ」や「期待している」といった言葉でなく、「楽しかった」「元気が出た」といった感想であり、スポーツを楽しんでもらっていることが嬉しいですし、それでもう少し頑張ろうという気持ちも生まれますね。
多田 新入社員として、2019年に入社しましたが、当初は不安が大きかったですね。でも試合が近づくと応援してくれますし、練習のことなど気にかけてくれます。社内からこんなに応援されていることに率直に感動しました。だからこそ、結果を残して恩返しをしたいという気持ちになります。
伊藤 同感です。多田さん同様、住友電装への入社は2019年。大怪我から復帰する直前で、まだ代表には入っていませんでした。代表復帰後は合宿が続き、出社する機会は限られましたが、出社した際には「試合見ていたよ」などの応援の言葉をいただき、四日市の本社に帰るたびに温かい気持ちになります。本社に近い鈴鹿で試合があった時は、住友電装の社員で会場がいっぱいになりました。社員の方々からの応援に対し、結果を残して恩返ししたいと思っています。
小池 私が住友電工グループのアスリートへの支援のスタイルで特徴的だと思うのが、純粋にスポーツが好きで楽しんでいるということです。スポーツは体育として教育の一つに位置づけられていますが、本来は余暇活動であり、楽しむことが本質にあると思います。その空気感が住友電工グループにはあり、それはアスリートにとって嬉しいことだと思いますね。
多田 私も元来、走ることが好きで、走りを楽しむことを大事にしてきました。もちろん結果を出さなければなりませんが、自分の「スポーツを楽しむ精神」と小池さんが言う「住友電工グループの空気感」がマッチしたと感じています。私たちアスリートを積極的に応援してくれている松本会長ご自身も、大いに楽しんでいらっしゃると思います。