住友電工の流儀~雑賀 和彦~

鉄の事業に「ALL住友電工」で挑む 道路や建築物、自動車を支える製品に新たな価値を

「継承と変革」をグローバルに実践していく

住友電工グループの事業は、電線やケーブル製品など銅に関する技術を基盤に発展してきました。そのなかで唯一の鉄の事業である特殊線事業部には、3つの主要品種があります。1つは土木建築用PC鋼材です。プレストレスコンクリートに使われる高性能緊張材で、高速道路や橋梁、建築物などの幅広い分野で活用いただいています。2つめが自動車のエンジンの弁バネや駆動部品に使われる精密ワイヤー、3つめがタイヤの補強材に入るスチールコードです。
当事業の長として、私は「継承と変革」をキーワードに掲げています。お客様との信頼関係や技術など、大切にしてきたものを次世代に着実に継承すると同時に、時代に合わせて、新しい価値を創造し変革していくべき点が多々あります。

国内の土木建築市場では補修・補強需要が中心となるなか、高速道路ならば工期短縮などを目指して現地での工事ではなく、工場でPC鋼線を入れた床版を作り、それを現場でつなぐ工法に変わってきています。接続の新しいビジネスが生まれており、工事も含めた総合ソリューションビジネスへの変革に挑んでいます。また、ワイヤーの高強度化や高耐久化、鋼線に被覆加工を施すことによる高防食化など、すぐれた材料技術を持つ住友電工グループの総合力を生かし、インフラの維持管理、工事負荷低減への貢献を目指しています。
海外に目を向けると、インフラが未整備の国や地域もあり、アセアンや新興国を中心にODA案件を含め、私たちが持つ新設の橋を作る技術を展開中です。継承と変革により、グローバルなビジネスを推進していきます。

スチールコードも変革に注力している製品です。EVはバッテリーにより車体が重くなるため、耐荷重性や耐摩耗性を確保するためにタイヤを大きく太く、というニーズがあります。これに対し、細くても高強度なスチールコードを開発することで、従来のタイヤの大きさで車体を支えることが可能です。当社研究開発本部のアドバンストマテリアル研究所とエネルギー・電子材料研究所、そして住友ゴム工業との協業により、新しいタイヤビジネスの開発を加速しています。

防災・減災など社会貢献ができる事業を続ける

どんなビジネスも、社会貢献と事業が両立していなければ、持続的な成長は難しいと考えます。例えば橋や高速道路の補修・補強にインフラモニタリングの活用が期待されるなか、PC鋼材に光ファイバを撚り合わせて地盤変動をセンサーで知らせることで防災や減災に貢献できます。インフラのみならず、高層マンションやビルにも応用可能です。光ファイバをはじめ住友電工グループが持つ多様な技術を活用しながら、社会に必要とされ、信頼される事業を継続し、社員一人ひとりが自負を持てるビジネスを残していかなければならないと思います。

「橋が崩れて渡れない」阪神・淡路大震災での経験

社会に必要とされる事業を、と考え始めたのは、阪神・淡路大震災がきっかけです。入社後、住友電工の伊丹製作所に勤務していた私は東京転勤が決まり、1995年1月17日の朝に伊丹製作所にあいさつに行き、そのまま昼の飛行機で発つ予定でした。テレビ以外の荷物はすべてパッキングした状態でした。

早朝5時46分、兵庫県宝塚市の自宅も相当揺れました。幸い家族には怪我はなく、まずは伊丹製作所の近くに住む妻の実家の様子を確かめるため、車を走らせました。川を渡ろうとするのですが、橋がすべて崩落して進めません。ようやく5つ目ぐらいで恐る恐る橋を渡ることができ、妻の実家に到着。家はほぼ倒壊していましたが、傾いたタンスの間にいた義両親の無事を確認し伊丹製作所に向かいました。
到着してみると、建物のガラスは割れ、室内は机やキャビネットが倒れてスプリンクラーから水が出ている状態で手のつけようがありません。工場も相当の被害がありました。
翌日からは消息不明や連絡がつかない従業員のリストをもとに、避難所巡りをしました。朝から伊丹市周辺の避難所を回り、夕方会社に戻って情報共有をするのですが、日中、目に映るのは壊れた建造物だらけでした。当時できる限りの復興援助をし、震災から3週間後、東京に転勤しました。

皆さまに愛される製品・技術・サービスをこれからも

自然災害や事故が起きると、どうしても取引先で自社製品がどうなっているかが気になってしまいます。しかし、私が部下に伝えているのは「うちのラインは大丈夫ですか」の言葉はぐっと飲み込め、と。最初に連絡するならば、お見舞いだけ。「お怪我はされていませんか、何かお手伝いできることはありますか」それだけを伝えなさいと。
逆の立場なら、いきなり「うちのラインは大丈夫ですか」と電話を受けたらどう思うか。それどころじゃない人がいらっしゃることを想像して行動する。そうした初期対応や心構えをもって仕事をしていくことが、ステークホルダーから信頼をいただき、住友電工グループが掲げる「五方よし」につながると思います。

住友電工グループは、環境エネルギー、自動車、産業素材、情報通信、エレクトロニクスという幅広い事業分野と、これらが融合する領域にもビジネスを展開しています。
そのため「住友電工グループの製品はなんですか」と尋ねられると、即答は難しいです。しかし各業界のプロフェッショナルに対しては、業界で愛されている製品をご紹介でき、さらに事業部が融合して作る製品が多いこともわかっていただけると思います。これからも皆さまに愛され、信頼される製品・技術・サービスを提供すべく事業基盤を作っていきます。

いつ、どこへでも、大切な人たちに会いに行く

東京と大阪で営業を担当し、中国語ができないまま中国人従業員150人の孫会社に出向した経験があるからこそ思うのが、コミュニケーションの大切さです。「コミュニケーションが大事」と簡単に言いがちですが、決して容易ではありません。
部下にもよく言うのが、「職場でコミュニケーションをよくしようといっても、すぐには難しい。原点はたわいない話をいかにできるかだよ」と。仕事の話題だけでは息が詰まって話が進まないけれど、日常的な話題から始まれば、いろいろな話へと発展していきます。

「ラグビー観戦に行ってきました」、「こんな食事がおいしかったよ」。そんなたわいない話をするためには、自分の中の引き出しを増やすことが大事です。座学だけでなく、いろいろな人に会って、どんな場所へも行くことを楽しんでおります。仕事関係だけでなく、この年齢になると学生時代からの友人ともよく食事をしています。
中国駐在中にお世話になった方と旧交を温めるために1泊2日の上海行きや香港行きも平気です。これからもフットワーク軽く、たくさんの人に会いに行きたいです。

PROFILE

雑賀 和彦 Kazuhiko Saiga

1989年
住友電気工業株式会社 入社 特殊線事業部

2015年
特殊線事業部調達部長

2019年
特殊線事業部本部業務部長

2021年
特殊線事業部長

2023年
執行役員

2024年
常務執行役員
現在に至る

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