時代のニーズをキャッチして展開する製品開発 〜照射架橋の今と販売ネットワーク〜
社会要請から誕生する製品群 自動車から多様な分野へ展開
現在、照射架橋製品を担うのは、電子ワイヤーとファインポリマーの2つの事業部だ。電子ワイヤー事業では、いわゆる白物家電、そして情報家電に採用される電線に照射架橋技術を導入、ブラウン管時代のテレビ高圧線やノートパソコン、液晶テレビの柔軟高圧線などのヒット商品を生んだ。2000年代、エレクトロニクス業界に加え、自動車業界への製品供給を本格化させる。この自動車業界への取り組みは、今、さらに多様化しつつ加速している。
「主力分野は、エレクトロニクスから車載用にシフトしています。当社はコモディティ製品とは一線を画すハイグレード電線をメインに取り組んでいます。中でも急速に伸びているのが、電気自動車のリチウムイオン電池に採用されているタブリード(※ 最終章にて詳細説明)。今、自動車は電動化や情報武装化など新たなトレンドの中にあります。当社は独自の材料配合技術、導体合金技術など、高い技術力で他社と明確な差別化を図っていく考えです。ただ製品のポートフォリオも考えていく必要があり、自動車以外の伸長市場へも優先的に資源を投入していきます。その一つが航空機分野。電線には高耐熱性、高耐摩耗性が求められており、すでに制御系や動力系などのメインハーネスに多用されており、さらに拡大していく見込みです。また、医療、ロボット、データセンター用など、当社の優位技術が活用できる分野を積極的に開拓していきたい。そのためには早い時期に製品企画・開発の早い段階で、優良顧客と共同開発を進め、他社に先駆けて高機能照射電線製品を上市すること。それが我々の基本戦略です」(電子ワイヤー事業部長・横井清則)
圧倒的シェアを誇る「スミチューブ®」
材料開発、用途開発の取り組み
ファインポリマー事業の主力製品は、熱収縮チューブ「スミチューブ®」。耐熱性、形状記憶、耐油、耐薬品性といった特性を有し、電子機器、自動車、航空機などの分野で、電線・ハーネスの結束、耐熱・絶縁保護、防水・防食保護など幅広い分野で採用されており、熱収縮チューブでは約70%の国内シェアを誇る製品である。他に耐熱チューブや耐熱テープなど、照射架橋の利点を生かした多彩な製品を市場に送り出している。
「照射架橋製品の優れた耐熱・耐油性の特長を生かし、ケーブルやハーネスの識別・保護・防水を目的としたマーキング製品、半田入り熱収縮チューブ、圧延端子付き熱収縮チューブなど、様々な機能付加製品の取り組みを進めています。今後の市場としては、エレクトロニクス、自動車に加え、電子ワイヤー事業同様、航空機分野への導入を進めていきたい。航空機分野は極めて厳しい品質基準、規格がありますが、当社はそれらをクリアしている数少ないメーカーの一つ。独自の材料開発および用途開発技術と、日、米、欧、中の世界4大市場におけるグローバル生産体制を武器に、世界市場におけるシェア拡大を進めていく考えです」(ファインポリマー事業部長・西村佳哉)
照射架橋から生まれる製品群
国内外に構築された特約店網 求められる付加価値の提供
照射架橋製品の営業活動の中心に位置するのが、特約店による販売ネットワークである。1970年代から続く営業体制で、国内は東京、名古屋、大阪でそれぞれ特約店会が作られており、延べ33社が加盟している。ちなみに海外においても、中華圏、東南アジア、韓国で同様のネットワークが形成されている。顧客のニーズの変化もあり、今、特約店には、かつてのように住友電工製品オンリーで販売するスタンスではない、従来とは異なる要素が求められているという。
「お客様にとって、その代理店(特約店)と付き合うことに何のメリットがあるのか。その点が重要です。当社の製品のみを扱っていると当社の人脈しか作れませんし、当社の視点でしかお客様と付き合えないことになります。しかし代理店が他社商材も扱っていて、トータルでお客様と付き合っていれば、当社では把握できない情報も収集できます。他社商材を扱うことで、代理店はワンストップソリューションを実現できる。当社だけでは得られないような情報や人脈を得られる機能を有し、お客様に付加価値を提供できる代理店が求められています」(電子・情報機器営業部長 片山喜隆)
国内特約店の一社、東亜電気工業株式会社。同社は住友電工グループが特約店体制構築に着手した頃から続く有力特約店だ。多種多様な業界・分野における「世界中のMonodzukuriを実現する」というビジョンを掲げ事業を推進している。
「社会のニーズや市場にマッチした製品、時代の先を読んで常に新しい製品を開発してきたことが、住友電工の強みだと思います。その強みを最大限に生かすためにも、我々特約店が足を運んで情報をキャッチし、それを住友電工に伝えていくことが重要です。生きた情報を、より早く。我々の存在意義、役割はそこにあると考えています。今後も住友電工と共に歩み、住友電工のモノづくりに役に立つ特約店であり続けたいと思っています」(東亜電気工業(株) 名古屋支店長 楠本久悦氏)
一方で、市場軸で見ると売り上げの8 割近くが海外だ。今後、現地のお客様が増えることは確実であり、そのためにも特約店を含め、現地でいかに売れる体制を構築するかが、課題の一つである。
「重要なのは、現地のお客様に売るのであれば現地のスタッフが売るということ。そのために現地のナショナルスタッフを育成し、戦力化していくことが必要です。グローバルな視点で営業体制の最適化を図っていく考えです」(片山)
次章で、その具体的取り組みを中国の例で見てみたい。