世界の水処理問題の解決を目指して〜アジアから世界へ、新たな挑戦が始まる〜
省力化、効率化に向けた生産拠点の拡充と進化
生産拠点であるZSHは、中国の環境規制の強化を背景にした伸長著しい需要に対応するため、従来の1.5倍以上に生産能力を増強。新工場は2018年5月に稼働する予定だ。ポアフロン®モジュールの市場拡大に伴い、ZSH自体の運営も新たな局面を迎えている。「コストダウンの追求に終わりはない」と、さらなるコスト削減に臨む考えだ。
「一つは、より効率的な生産を実現する最新設備の導入です。中国では人手不足の状況が続いており、省力化、効率化を図っていく必要があります。もう一つは従業員の教育。技能レベルを向上させ、さらに多能工化を進めることで、少人数でも高品質で効率的な生産体制が実現できると考えています」(前出・趙)。
また拡販が進展する中、生産品種も増えつつある。
「品種が増えても従来と変わらず安定的な生産を実現する、チャレンジングな取り組みが始まっています。また、これからは我々製造に携わる者も顧客の元に出向き、営業サポートや顧客の技術支援を行うなど、工場の外に出る活動も積極的に進めていきたい」(前出・河邉)。
中国市場での着実なシェア拡大 中国に「住友の膜ありき」へ
森田とともに、ポアフロン®モジュールの開発、そして水処理事業を牽引してきた、水処理事業開発部営業部長の井田清志は、今後中国政府による環境規制強化を背景に、市場規模の拡大は確実なものと指摘する。競争が厳しくなる分、価格競争力を保つため一層のコストダウンの追求に加え、いかに「選ばれる製品」になるかが重要な課題だと言う。
「ポアフロン®モジュールの強みである処理の安定性、耐久性と、それがもたらす経済的優位性を認知させ、購買意欲を高めることがポイントになります。各企業・団体への個別対応、あるいは業種・分野単位でスペックインを図ることが、必要不可欠な要素。他社に先んずることが大切で、それによって得られる先行者優位は必ずあると考えています」
最終処分場の浸出水処理分野で、ポアフロン®モジュールは着実にシェアを拡大しつつある。他分野でも高シェアを獲得することで、中国の排水処理業界において「住友の膜ありき」というポジションを確保することが目標だ。
地球環境保全という志を胸に世界へ届ける「住友の膜」
住友電工グループの水処理事業は、中国市場戦略を核としつつも、その視線はすでに世界市場に注がれている。その際、住友電工グループが世界各国に拠点を有していることは、営業活動を始める足掛かりとする上で大きなアドバンテージの一つとなっている。
「各国の環境規制の強化、水資源の確保といった行政の環境対策方針に沿った流れに乗っていくことが重要であり、それが確実な市場参入になると考えています」(井田)。
東アジアに続き、北米とともに拡販を目指している市場が東南アジアだ。現在、タイ、ベトナム、インドネシアなど経済成長著しい東南アジア各国は、排水の放流水質規制値の厳格化を進めており、膜メーカーにとって大きなビジネスチャンスがある。求められる水処理ニーズの動向をタイムリーに感知し、かつ確実に受注できるパートナーシップ構築も取り込んだ戦略で、積極的な市場開拓を進めていく考えだ。
森田は、水処理事業の収益基盤を築くことと共に、「自分たちが手がける水処理事業が、ESG投資(Environment=環境、Social=社会、Governance=企業統治の3つの観点による持続的成長指標)を意識した事業活動の一つである」という認識をもって取り組むことも重要だと語る。「我々が提供する膜は地球の水資源の保全に極めて有効なものです。ポアフロン® モジュールが世界の水処理の現場に供給されること、それはすなわち世界の水不足という社会課題の解決への貢献にほかなりません。その志をベースにポアフロン®モジュールを世界へ届けていきたいと考えています」。
「住友の膜」は地球の水資源保全というミッションを携えて、アジアから北米そして中東、アフリカへ――長い旅が、これから始まる――。