社外取締役メッセージ
住友電工グループを取り巻く経営環境が大変速いスピードで変化する中、直面する経営課題を多様な観点から考察することが重要です。私たち社外取締役は、業務執行部門の幹部の方々と成長戦略や人材、研究開発とイノベーション、ガバナンスといった、重要な課題10項目について意見交換し、これらについて私たちの視点からの意見や課題についての提言を経営トップにお伝えしました。
ガバナンスについて
当社の取締役会、指名および報酬諮問委員会は、適切に運営されており、十分に機能しています。経営陣は皆、ガバナンスに対して真剣に取り組んでおり、他の企業と比べても適切に管理された、ガバナンスレベルの高い会社と言えます。私たち社外取締役は、取締役会の度に意思決定に必要な事項や関連事項について事前に情報提供されて説明を受けられるので、取締役会当日には毎回社内および、社外取締役を問わず活発な議論が行われています。ただ、欲を言えば、取締役会の時間をより有効に使って重要課題についての議論の時間をもっと確保できると尚良いと思います。また、外部環境の変化スピードが速まる中、当社取締役会として、当社事業を取り巻くリスクをより明確かつ体系的に議論することが求められると思います。
本年度は事業本部長ら実務責任者との対話機会が増えたことを大変喜ばしく思っています。ただ、コロナ禍の影響で、各拠点への訪問や、よりインフォーマルな場での議論が少なかったことは残念でした。
事業構造・技術の蓄積について
当社は、自動車関連事業、情報通信関連事業、エレクトロニクス関連事業、環境エネルギー関連事業、産業素材関連事業の5つの分野で事業を行う構造をとっています。祖業である銅電線・ケーブル事業に始まり、そこで磨き上げた要素技術を基礎として、長年に亘る研究開発の成果として事業を多角化させ、健全な財務基盤のもと、会社の基盤を強化してきました。それぞれの事業分野では、顧客との信頼関係の醸成に重きを置き、個々の製品レベルでは常に新陳代謝を行いながら、新製品の開発、新市場の開拓に取り組んできました。自社技術を基礎として事業を枝分かれさせてきた「Product Tree」に根差し、その観点では、いわゆる「コングロマリット※」とは異なります。今般の新型コロナウイルス感染症の拡大によるグローバルな経済活動の停滞という事態に直面しても、事業領域によって異なる景気インパクトに対して、一定のレジリエンス(復元力)が発揮されたと評価されます。
当社がこれからも長期的に成長発展するには、主力のワイヤーハーネス事業の品質、コスト、納期面での圧倒的な強みを確保するとともに、これに続く主力事業を育てることが課題です。過度な選択と集中に走らずとも、モビリティ、エネルギー、コミュニケーションの3領域を将来の事業の中心に置き、当社が培ってきた多様な技術、製品の基盤を活かし、グループ内外の連携はもとより、大学や異業種企業との共同研究、M&A等を通じて、社内外のリソースを積極的に活用してゆくことが求められます。
人材・企業文化について
当社は、住友事業精神を基本的な価値軸に据え、常に公益との調和を図る経営姿勢を貫いてきました。ありたい姿として、“Glorious Excellent Company”を目指すというカルチャーが根付いていると思います。当社で働く皆さんが、非常に真摯で献身的な人が多いことがこの会社の良い企業文化を形作っている要因です。
当社がこれからも長期に亘って持続的に成長発展していくには、持ち前の多様性と攻めの精神に基づいたイノベーションが不可欠です。そのカギとなるのが、多様な人材が活き活きと活躍できるような人材・組織基盤の整備です。当社は女性社員にとって働きやすい環境という観点では継続的に進歩していますが、まだまだ社員数が少ない状況です。特に、マネージメント層の女性比率が低いと思います。
また、日本国外の世界各国に約300社の子会社を持つグローバル企業グループとしての強みを活かし、外国人幹部の登用も増やすことが望まれます。女性、外国人、障がいを持つ方など、広く雇用機会を広げ、多様な価値観を取り込む企業として成長してもらいたいと願っています。
多様な事業を持つ当社の成長戦略は、外部からの多様な観点からの意見と交わることで、より強化され、実現性が高まって行くと考えます。これからも、社外取締役としての役割を果たすべく、中長期の経営課題の抽出に努め、執行部との意見交換に取り組んでいきます。