財務基盤

収益力強化と資本効率の向上で成長を支える

強固な財務体質のもと、収益力を伴う持続的な成長と資本効率の向上に努め、株主還元の強化に向けて取り組んでまいります。

財務目標・株主還元方針

事業で生み出すキャッシュフローを最大化し、持続的な成長投資や、株主の皆さまへの安定的な還元を実施するためには、資本効率を重視した経営が必要です。
住友電工グループは、2018年度に策定した中期経営計画「22VISION」において、売上、営業利益、営業利益率に加え、ROIC、ROEを数値目標として掲げ、収益力強化と資本効率の向上を経営として推進しております。

中期経営計画「22VISION」指標

  2022年度最終目標
売上 3兆6,000億円
営業利敵 2,300億円
営業利益率 6.4%
ROIC(投下資産営業利益率) 9%以上
ROE(自己資本当期純利益率) 8%以上

また、自己資本比率50%水準を目安として、強固な財務体質を維持しています。当社グループは、強固な財務体質のもと、収益力を伴う持続的な成長と資本効率の向上に努め、株主の皆さまへの配当につきましては、安定的な配当の維持を基本に、連結業績、配当性向、内部留保の水準等を総合的に判断し行っております。

自己資本比率

2016年度 2017年度 2018年度 2019年度 2020年度
48.7% 51.3% 50.8% 49.0% 48.2%

配当性向

2016年度 2017年度 2018年度 2019年度 2020年度
29.1% 29.8% 31.7% 42.9% 44.3%

2020年度業績について

2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響による自動車生産の減少や通信・電力関連工事の遅延のほか、光ファイバの価格低下もあり、上半期を中心に厳しいものとなりました。このような環境のもと、当期の連結決算は、売上高は、29186億円と前期比で減収となりました。
利益面では、不急費用の圧縮、設備投資の抑制などの徹底したコスト削減対策に取り組みましたが、売上減少の影響を吸収しきれず、営業利益は1,139億円、経常利益は1,141億円、親会社株主に帰属する当期純利益は563億円とそれぞれ前期を下回る結果となりました。
なお、下半期につきましては、売上高は1兆6,793億円、営業利益は1,253億円、経常利益は1,381億円、親会社株主に帰属する当期純利益は982億円となり、自動車生産の急回復により自動車向けの需要が高水準で推移したことに加え、全社を挙げたコスト削減対策の効果もあり、前年同期比で増収・増益、売上高と利益の各項目はいずれも下半期としては過去最高となりました。

2021年度業績見通しについて

2021年度につきましては、新型コロナウイルス感染症の変異株の感染拡大、半導体の供給不安、資材価格高騰、物流のコンテナ不足など、当社グループを取り巻く事業環境は予断を許さない状況が続くものと予想されますが、その一方で、自動車生産台数の回復、CASEの進展、データセンタや再生可能エネルギー関連投資の増加など、当社グループの事業機会は今後ますます拡大することが期待されます。
このような情勢のもと、当社グループは、製造業の基本であるSEQCDDのレベルアップに努めるとともに、今後増加する需要を確実に捕捉して、2021年度は過去最高の売上高、営業利益を達成するべく全社を挙げて取り組んで参ります。

資本効率改善への取り組み

ROIC改善活動の推進

当社グループは、資本効率改善への取り組みの一環として、ROIC改善活動を全社的に推進しています。各事業部では、ROICの目標値を決定するとともに、ROIC改善活動のツールとしてROICツリーを活用しており、要素別にカテゴリーA(売上拡大)、カテゴリーB(コスト削減)、カテゴリーC(資産効率改善)に分類し、事業部ごとにそれぞれの事業に応じたKPI 重要業績指標)を設定しています。
ROICツリーを用いて、ROICと現場レベルで運用するKPIを紐づけることにより、取り組みの効果や意義の理解を社員へ幅広く浸透させ、より効果的にPDCAサイクルを回しています。

ROICツリー

たとえば、多額の設備投資が必要な装置産業のある事業部においては、設備負荷率(設備実際稼働時間÷設備基準稼働時間)やロス率といった指標をROICツリー上の最優先KPIとして設定し、週次で品種別実績を把握しながら課題や対策につき議論をしています。
当事業部では、業績を最も左右する設備負荷率やロス率に焦点を当て、集中的に管理することにより、設備回転率が向上し、また、設備回転率が向上することにより、より少ない在庫保有で事業運営することができる正のスパイラルが生み出されるようになりました。
別の事業部では、工場ごとに簡易BSを作成し、C/FやROICを算出して月次単位で分析、工場単位で資産効率改善に取り組んでいます。このように、幅広い事業を営む当社グループでは、事業ごとに最適な手法、KPIを設定し取り組むことで効果的な活動が行えるようになっています。
また、全社的な業績管理においてもROICを重視したモニタリングと事業部へ改善を促す取り組みが実施されております。たとえば、投下資産回転率を構成するCCCについては、経営会議で、適宜、全社CCCの状況をモニタリングするとともに、改善が進まない事業部については、個別に状況と対策につき報告するように求めています。

CMS構築による資金の効率化

資金効率の改善のために、当社グループでは、キャッシュ・マネジメント・システム(CMS※)を構築し、グループ内での資金を有効活用し、外部有利子負債の圧縮を図っております。
CMSは、日本で導入したのをはじめに、事業の拡張とともに米州、欧州、アジアや中国にて展開しております。また国や地域に資金の偏在がある場合、国や地域を跨いだ資金融通も実施し、グループ全体での資金効率化を推進してきております。

※グループ企業の現預金、借入金を一元的に管理し、グループ企業各社で生じる資金の過不足をグループ内の資金貸付および預かりを通して調整し、効率的な資金利用を図るシステム。

設備投資マネジメント

設備投資マネジメント

当社グループでは、成長のための投資として、モノづくり⼒の強化、グローバル展開の加速のための設備投資を行っていますが、設備投資の適切な意思決定および課題の発見と共有を図るため、PDCAを意識した以下のマネジメントサイクルを回しています。

  • 1.設備予算管理

    事業部門は中期経営計画に沿った設備投資計画を立案。事業部門の計画積み上げ値に対し、全社キャッシュフローの観点を加味したうえで、年度ごとに全社設備投資予算を設定します。

  • 2.案件審議・投資意思決定

    個別の設備投資案件は設備投資予算の範囲内で仰裁され、原則として、事業別・投資カテゴリー別に設定されたRO(I 投資収益率)、IRR(内部収益率)のハードルレートを上回る場合にのみ承認します。

  • 3.実行

    承認された設備投資案件は、立案された計画に沿って実行します。

  • 4.設備投資成果トレース

    過去に実施した設備投資案件のROIの実績値を測定し、計画差異分析を実施。これにより設備投資の成否が明らかとなり、また、計画未達要因を分析し報告することで、成功要因や失敗事例を社内で共有し、将来の設備投資の検討に活かします。