『住友電工テクニカルレビュー』
200号発刊記念 トップ鼎談
技術成果を発信し88年、
そして未来へ
住友電工グループの研究開発活動について発信し続けてきた『住友電工テクニカルレビュー』、その200号発刊を記念して、同誌発刊に関わるトップ3人が一堂に会し、同誌の使命やWEBジャーナルとしての今後について語ります。
参加者
後藤 光宏
『住友電工テクニカルレビュー』編集委員会 委員長
常務執行役員
研究開発本部 副本部長
焼結事業本部 本部長
住友電工焼結合金株式会社 社長
柿井 俊昭
『住友電工テクニカルレビュー』編集委員会 前委員長
技師長
これまで常務執行役員 研究開発本部 副本部長、情報通信や自動車関連の研究所長などを歴任
國井 美和
『住友電工テクニカルレビュー』編集委員会 副委員長
(鼎談当時)
執行役員
広報部長(役職は鼎談当時)
当社グループの研究開発のあり方を示す技術論文誌
國井/『住友電工テクニカルレビュー』は、当社グループが開発した技術や製品を深く専門的に解説している技術論文誌です。価値創造によって社会の進化を支えることを目指す当社グループがその技術開発活動を社会に伝えるための重要なツールであり、200号発刊に際し、改めて役割の大きさを感じます。
柿井/創刊から88年という歴史は、それだけ多様な技術、製品を開発してきた証しです。研究開発活動を国内外に公開することで当社グループに対する理解を深めていただくとともに、当社グループの技術者、研究者のモチベーションにもなってきました。論文の執筆を通して、技術者、研究者の人材育成にも重要な役割を果たしています。
後藤/人材育成という点では、私自身も若いころは論文を書かされ(笑)、研究開発業務とは異なる気づきや学びを得ることができ、成長の糧になりました。開発部門に所属していたので、自分の開発した製品をお客さまにお届けしたいという強い想いがあり、論文が掲載された冊子を持って営業活動を行いました。
柿井/これほど長年にわたって技術論文誌を出し続けている企業は少ないと思います。しかし、大切なのは、時間の長さよりもどれだけ技術の進化と社会の課題解決に貢献してきたか、会社の成長とどれだけリンクしているかです。
後藤/『住友電工テクニカルレビュー』は、当社グループの5事業分野(自動車、情報通信、エレクトロニクス、環境エネルギー、産業素材)にわたる技術領域から研究開発の成果を発表しています。これほど幅広い分野の最新情報を結集した技術論文誌は珍しく、学会や図書などでも広く認知されています。革新的な技術や製品の開発を通して、さまざまな角度から社会課題の解決に挑む当社グループの研究開発のあり方が『住友電工テクニカルレビュー』には表れていますね。
柿井/そうですね。加えて、当社グループは、素材研究から加工技術、製品化に至るまで先進のコア技術を有しており、各過程での技術の躍進を支える高度な分析技術、解析能力についてもお伝えしています。
國井/世の中が刻々と変化し、社会の課題も変容する中で、当社グループがいかに課題を捉え、その解決に取り組んでいるのか、未来を見すえた当社グループの研究開発活動の姿をご覧いただけます。
200号発刊を支えた住友事業精神
柿井/『住友電工テクニカルレビュー』の重要な使命は、当社グループの技術力をお客様のニーズにつなげ、社会の発展に寄与することです。こうした考えは、400年前、住友の銅事業の源流を拓いた蘇我理右衛門が、苦心して開発した「南蛮吹き」の技術を独占することなく社会の発展のために大坂の同業者に公開した精神にも通じます。『住友電工テクニカルレビュー』発刊の根底にあるのは、まさに住友事業精神の「自利利他(じりりた)、公私一如(こうしいちにょ)」の考えです。
國井/住友事業精神にある萬事入精(ばんじにっせい)、信用確実(しんようかくじつ)、不趨浮利(ふすうふり)のもと、優れた技術や製品を世の中に伝え、役立てたいという愚直な姿勢を貫いてきたからこそ200号まで続けてこられたのでしょうね。
後藤/論文の投稿に際しては、特許を確認し、お客さまの情報を守りながら関係者との調整を重ねるなど、多方面への配慮や段取りが要求されます。人として誠心誠意を尽くす必要があり、若い技術者、研究者が1件の論文を投稿することで、ひと皮むけて大きく成長するというのがよくわかります。
國井/私は、かつて研究開発部門に所属していたのですが、技術論文は書いていません。論文執筆は負担もあるとは思いますが、技術者、研究者にとってどんな喜びがあるのでしょうか。
後藤/論文を投稿すると必ずリアクションがあり、それが励みになります。かつて私の書いた論文を海外の販売会社が展開してくれたことで新しいお客さまとつながったという嬉しい経験もあります。また、住友電工グループには自由に挑戦させてもらえる風土があり、さまざまなテーマで研究開発に打ち込めます。そうした環境は私の入社時から変わっていません。
柿井/しかもその挑戦を『住友電工テクニカルレビュー』に掲載することに対して、だれもNoと言わないのも企業風土ですね。
お客さまの情報を守るための徹底した対策
後藤/編集委員会の委員長として最も気を遣うのが、お客さまの情報との線引きです。お客さまの情報が意図せず出てしまうことがないように徹底した対策を行っています。ここで執筆者を支える存在として重要な役割を果たしているのが『住友電工テクニカルレビュー』編集委員会です。編集委員会は、各事業部、研究部門、製造会社の代表者で構成されており、非常に層が厚く、強力なバックアップ体制が敷かれています。中には住友電工グループの幅広い事業領域を横軸で理解している研究企画業務部のメンバーもおり、第三者的な指摘や的確なアドバイスをくれます。
柿井/事務局のサポートも大きいですね。特許や著作権、情報の転載、引用、機密情報の開示などに対する注意喚起を丁寧に行っています。執筆者本人は気づかないことにも十分に注意する必要があるため、編集委員会と事務局は定期的な会合を開いて論文1件1件の内容を精査しています。
ウェブサイトに完全移行、新たな「共創」を生むツールへ
國井/2021年発行の199号からは冊子での配布を止め、ウェブサイトに完全移行しました。ウェブサイトでの公開を通じて感じ取られる変化はありますか。
後藤/業界の方やマスコミの方からのコンタクトが増えています。新聞社から研究所について問い合わせがあり、それをきっかけに私たちの研究開発活動が取材されたこともあります。国際的な科学ジャーナルの『Nature』からも調査協力の依頼がありました。
國井/多くの方にアクセスしていただけるようになったのですね。記事ごとにPDFデータを公開しているので、関心のあるテーマを見つけていただきやすいと思います。また、メールアドレスを登録いただくと、最新号が発行された際に通知でご連絡する「公開お知らせサービス」を設け、利便性も増しました。
後藤/『住友電工テクニカルレビュー』には、お客さまのお悩みやご要望と当社グループの技術の種とを結びつけるという使命もあり、同誌を通じて多くのお客さまからお問い合わせをいただいています。また、研究開発活動を積極的に公開することで、共創を目指す他社のエンジニアとのネットワークづくりにも役立っています。お互いに新たなイノベーションを起こしていきたいですからね。
國井/共創という意味では、スタートアップやコツコツと技術を積み上げているエンジニアの方がコンタクトをとってくれると、嬉しいですね。多様な立場の人との対話を生むプラットフォームになりつつあるのですね。
柿井/住友電工グループのタグライン「Connect with Innovation」には「たゆみないイノベーションとともに、互いの手をたずさえて社会の発展に貢献していきます」というメッセージが込められています。イノベーションを起こすには、異分野や違う考え方とのつながりが不可欠であり、そのきっかけとして『住友電工テクニカルレビュー』は最適なツールです。技術と人、人と人とをつなぐことができると思います。
さらに幅広いステークホルダーのみなさまにお届けするために
柿井/幅広いご関係者、例えば、調達部門の方にもご覧いただけるように、今後は技術者ではない方々にも伝わりやすい書き方を工夫する必要があります。また、販売代理店をはじめとするパートナー企業のみなさまは、住友電工グループのウェブサイトの製品ページをよくご覧になっていますので、製品ページから『住友電工テクニカルレビュー』へと進んでご覧いただけるようなしくみづくりが必要です。
後藤/技術革新が目覚ましいモビリティ、エネルギー、コミュニケーション分野を軸とした幅広い領域での技術内容が解説されていますので、学生のみなさんにも興味を持ってもらえるのではないかと思います。先進の技術を知ることで、将来自分がどんな分野に関わりたいか、どういった形で社会に貢献できるのかといったビジョンも見えてくるのではないでしょうか。
柿井/今後は論文に動画などをリンクさせて、関係する製品や技術背景の紹介などを学生のみなさんにも分かりやすく説明するダイナミックな活動につながっていくといいですね。
後藤/より多くの方に読んでいただくため、一層の工夫が必要です。イノベーションが起きるプラットフォームへと進化させ、今後もステークホルダーのみなさまに期待を寄せていただける『住友電工テクニカルレビュー』を目指します。
『住友電工テクニカルレビュー』
『住友電工テクニカルレビュー』最新号を紹介します