核融合実験炉ITER向け部品を開発・受注
~エネルギー問題と環境問題解決施策として注目の国際的なプロジェクト~

ITER 本体の外観図
ITER 本体の外観図。「地上の太陽」と呼ばれる核融合エネルギーが科学技術的に成立することを実証するための装置。装置の中核は、ドーナツ型の超高温プラズマとなっており、このプラズマの中で核融合反応が起こる。

世界中で脱炭素社会の実現に向けた活動が活発化している中、「核融合発電」が、エネルギー問題と環境問題を根本的に解決する施策として注目されています。核融合とは、軽い原子核同士が結合して重い原子核となる反応で、太陽が生み出すエネルギーの源となる現象のことです。このエネルギーを地上で生み出し、発電に使用することを目指し、核融合発電の研究開発が進められています。核分裂反応を利用する原子力発電に比べ、高レベル放射性廃棄物を出さず、反応を容易に停止できる優れた安全性を有するため、実現が期待されています。

こうした環境の下、我が国を含む 7極(日本、欧州、米国、ロシア、インド、中国、韓国)の国際協力により、フランスで核融合実験炉「ITER(イーター)」の建設が進められており、この度、住友電工グループ会社の(株)アライドマテリアルが開発・製造した製品「タングステンモノブロック」が、ITER のダイバータ * と呼ばれる機器の重要構成部品として、採用されました。

* ダイバータ:プラズマからの高い熱流や粒子の流れを受けとめ、プラズマを維持するうえで不要な不純物を排出、除去するための機器。ITER では日本が外側ターゲット、欧州が内側ターゲット、ロシアがドームを調達する。

タングステンモノブロック
タングステンモノブロック:30mm×30mm×10mm 程度の大きさで、核融合炉に適したタングステン材と無酸素銅を特殊接合した製品。これが銅合金の冷却配管で串刺しにされてユニットを構成する。

発電エネルギー源となる核融合反応は、磁場で閉じ込められた 1 億℃を超えるプラズマの中で起こり、ダイバータの表面温度は最高で2,300℃に達するため、核融合炉部材には高い耐熱性が求められます。(株)アライドマテリアルが開発・製造したタングステンモノブロックは、2,000℃を超える熱負荷に耐久し、ITER の設計要求運転サイクル数の 3 倍以上の期間でも割れないなど、核融合炉に適した素材であることが確認され、今回の採用に至りました。

環境に配慮したクリーンエネルギーの安定的な供給が求められる中、当社グループで開発した “割れないタングステン” が、核融合発電の実現に向けて貢献することが期待されます。

当社グループは今後も製品・技術を通じて社会課題の解決に寄与してまいります。

国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構による評価の結果

開発タングステン材は従来タングステン材と比較して、変形による顕著な表面隆起もなく、優れた熱的安定性を確認。

開発タングステン材
開発タングステン材
写真提供 : 国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構

ITER 機構によるプロトタイプ評価の結果

ITER が要求する設計運転サイクル数の 3 倍以上の評価期間でも割れが観察されず、優れた耐熱衝撃性を示した。

ITER 機構によるプロトタイプ評価の結果
ITER 機構によるプロトタイプ評価の結果
写真提供: 国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構

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