次世代素材と独自の技術開発で省エネルギー社会に貢献!
〜高品質SiCエピタキシャル基板「EpiEra®」の量産開始〜
電気を使う機器に必ずと言っていいほど搭載されているパワーデバイス。電圧、周波数、交流と直流の変換など、電力変換をおこなう半導体のことです。世界のエネルギー消費量は、人口増加と新興国の経済成長により今後いっそう増加することが見込まれます。この中で、パワーデバイスの放熱によるエネルギーロスは、全世界で消費されるエネルギー量のおよそ5%と言われています。この損失の低減に必要なのは「大きな電力」を「効率よく変換する」ことで、この実現が、省エネルギー社会のための大きなカギを握っています。
通常パワーデバイスはウエハと呼ばれる基板の上にエピタキシャルと呼ばれる薄膜の層を積み(エピタキシャル基板)、その上に微細加工をおこない作られます。従来使われていた単素材「Si(シリコン)」に代わり、次世代素材として注目されているのが化合物「SiC(炭化ケイ素)」。ダイヤモンドとシリコンとの中間的な性質を持つSiCは、硬度、耐熱性、化学的安定性に優れ、高電圧に耐えられる特長があります。これによりエネルギーロスの低減、製品の小型化が可能になると見込まれます。一方で、SiCは、欠陥がないエピタキシャル基板をつくることが技術的に難しいとされていました。
しかし、住友電工は長年培ってきた化合物半導体の技術に加え、独自開発の高精度シミュレーションに基づく成長技術(MPZ®)を取り入れ、高品質で信頼性の高いSiCエピキシャル基板「EpiEra®」の量産化に成功。欠陥などが存在しない使用可能な面積率(DFA率)を指標に、業界最高レベルの99%以上を達成しました。住友電工では、さらに欠陥ゼロ(DFA率100%)の「無欠陥エピタキシャル基板」の実現を目指し、 省エネルギー社会の実現に貢献します。
SiCを使用したことによる効率の変化について
住友電工の「家庭用蓄電システムPOWER DEPO®Ⅱ」に実験的にSiCパワーデバイスを搭載。現行のSiパワーデバイス搭載時に比べ、全出力範囲にわたり、2ポイント強の効率が向上しました。SiCパワーデバイスは、EV化が進む自動車や、エネルギー効率と軽量化が求められる鉄道など交通分野、エネルギーロスの大きな発電所などのエネルギー分野、データセンターなど電力の安定性と省スペース化が求められる情報通信分野での活用が期待されています。日本で使われているすべてのモーターで同様の結果が得られると仮定すると、約110億kWhの節電となり、300万世帯分の電力に相当する量となります。