住友電工の流儀~坂口 恭平~
保全を担う誇りと責任、それがやりがいの源泉。約400台にのぼる生産設備を支える使命感

 

髪の毛より細い「マイクロドリル」に覚えた衝撃

幼い頃からモノづくりが好きで、工業系の高校に進学しました。高校2年生のとき、授業の一環で訪問したのが、現在勤務する九州住電精密でした。ハードメタル=超硬合金と呼ばれる様々な切削工具の製造工程を見学。その中で、マイクロドリルという製品に出合いました。これは、微細で高精度な穴あけ加工を実現するドリル。精密加工の世界に驚き、率直に「すごい」と感じました。高精度な切削工具を作り出す技術力に強く惹かれ、また住友電工のグループ会社であることから、その安定性にも魅力を感じ、就職の時期を迎えたとき入社を志望しました。希望が叶い、入社後生産部に配属、その4年後に現在所属する技術部設備グループ機械チームに異動となりました。以来、現在に至るまで生産設備・ユーティリティー設備の保全作業及び管理業務に従事しています。

μ(ミクロン)単位の製品精度を実現するために

九州住電精密の主力製品スミボロン®(CBN)インサート CBN(立方晶窒化ホウ素)はダイヤモンドに次ぐ硬さを持つ
九州住電精密の主力製品スミボロン®(CBN)インサート CBN(立方晶窒化ホウ素)はダイヤモンドに次ぐ硬さを持つ

九州住電精密は、旋削用工具、フライス用工具、エンドミル、ドリルなど、モノづくりの根幹を支える高精度・高性能を実現する製品をお客様に供給しています。これらを生産するための設備は約400台。私の役割は、これら生産設備の安定稼働を実現・継続させることにほかなりません。日常の業務は、生産設備に不具合が生じた際、その原因を迅速かつ的確に究明・把握して、速やかに設備を復旧させること。また大きなイベントとして、設備の大小で異なりますが、3日間から1週間程度、稼働を止めて行うオーバーホールがあります。製品は極めて精密でありμ単位の精度が要求されます。したがって、それを実現する生産設備においても高いレベルで精度を保つ必要があり、そのために行われるのがオーバーホール。設備を分解して劣化した箇所や部品などを修繕・交換し、再度組み立てていきます。極めて緻密で正確さが求められる作業であり、このオーバーホールが工場の生産性を維持・向上させる要といっても過言ではありません。
これら保全の業務において心掛けているのは、生産部オペレーターとのコミュニケーションです。何かしらの異常を感知した際、すぐに声を掛けてもらえるような関係性を築くためにも、コミュニケーションは重要であると考えています。そして設備を復旧したとき、オペレーターからの「ありがとう」という感謝の言葉が、何事にも代えがたいやりがいを生んでいます。

停電復旧で感じた悔しさと指導者としてやり遂げた達成感

保全業務の知識やスキルは、設備グループに異動後、先輩の厳しくも温かい指導を受けて吸収していきました。約400台の生産設備の構造を覚え、オーバーホールの際にはそれを正確に組み立てる技術を習得するまで、2年の時間が必要でした。当時、一人で夜勤を担当したことがあります。通常は起こらない停電が発生。当然設備はすべて停止、早急の復旧が必要でした。しかしその手順がわからない。深夜3時に先輩に電話をして復旧方法を教えていただきました。特に難しいことではない復旧作業を自分でこなすことができず、とても悔しい思いをしました。このことを機に、今まで以上に知識・スキルの習得に励むようになったと思います。
その後、設備グループ機械チームの班長となり、部下を持つことに。ちょうどその頃に取り組んだオーバーホールは、それまでとは異なる姿勢で臨みました。リーダーとして後輩を指導して業務を完遂させる必要があったからです。今までのように先輩の指示があるわけでなく、自分が主体的に現場を仕切っていくことが求められました。指導の難しさを感じつつも、無事にオーバーホールを終え、生産設備の精度向上を実現。指導者として、それまでとは違う達成感を得ました。私にとって、キャリアの新たなフェーズに入った実感がありました。

後輩を育成し周囲から信頼される人材へ

2023年4月、「エキスパート」の認定を受けました。大変光栄に思っています。約400台の生産設備を熟知していること、設備不具合対応の際の的確な対応などの保全スキル等が評価されての認定だと感じています。加えて「機械チームに居なくてはならない存在」になったことも評価要素の一つだと思っています。私の先輩方は数年後には退職される時期を迎えます。そうなると、必要とされる知識と経験を有した保全技術者は自分しかいなくなります。保全の「エキスパート」として、工場を効率的に運営してもらうため、今まで以上に設備を安定稼働させなければとの責任感が強くなりました。
そして私の重要なミッションが後輩の育成です。育成において、最も重要なことは「安全第一」を徹底することです。たとえばオーバーホールなどの際に、設備の構造を理解しなければ安全は保たれません。日常の補修作業にしても同様です。手順を誤ると危険を伴います。設備ごと、不具合の内容ごとに対応も異なります。危険を避けるため、作業前に「スイッチOFF」「残エネルギーゼロ」の確認と危険予知活動を行っています。また、私は「失敗を怖れずに前向きに取り組む」ことを信条としてきましたが、その姿勢も後輩へ伝えていきたい。そして、何事にも好奇心を持って取り組むこと。好奇心を持てば仕事は楽しくなります。私自身も仕事を楽しみつつ、後輩・同僚、そして生産部のオペレーターからも、信頼される人材に成長していきたいと思っています。

ボールネジ交換後の芯出し
砥石軸の動作確認
大切なポイントは徹底的に指導する(左:ボールネジ交換後の芯出し、右:砥石軸の動作確認)

PROFILE

坂口 恭平 Kyouhei Sakaguchi

2006年4月
九州住電精密(株)入社

2006年10月
生産部 マイクロドリル掛配属

2009年10月
技術部 設備グループ 設備掛 機械チーム配属

2022年4月
技術部 設備グループ 設備掛 機械チーム 班長に昇格

2023年4月
エキスパート(※)認定(設備機械保全全般)

※エキスパート:住友電工では「モノづくり」の根幹を支える技能に焦点をあて、技能の維持・向上、継承を図るために、重要技能を有する社員を「エキスパート」として認定しています。

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