住友電工グループ2030ビジョン 社長メッセージ

大変革の時代にあって、住友電工グループの成長の方向性を示すとともに、社会への一層の貢献を同時に果たしていくことを基本的な姿勢として、2030年に目指す姿「住友電工グループ2030ビジョン」を策定しました。
住友電工グループは、「グリーンな地球と安心・快適な暮らし」の実現に向けて、これからも技術で挑戦し続けていきます。

大変革の時代に住友電工グループの針路を示す

社長に就任して2022年で5年の節目を迎えました。この間、2019年に発生した新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大、直近ではロシアのウクライナ侵攻など、経営を取り巻く環境は、未曾有の逆風にさらされました。種々の困難な状況を打開すべく、グループ社員一丸となって事業にまい進してきた5年間でありました。

当社グループは、2018年に5か年の中期経営計画「22VISION」を発表。そのコンセプトは「総力を結集し、つなぐ、つたえる技術で、よりよい社会の実現に貢献する」であり、その実現のための戦略として、自動車、情報通信、エレクトロニクス、環境エネルギー、産業素材の5つの事業セグメントの強化・伸長、イノベーションによるさらなる成長を打ち出し、5つの事業セグメントのバランスのとれたポートフォリオを目指しました。2021年度の連結営業利益は、自動車以外の4分野合計が過去最高となり、全体を成長させながら「ありたいポートフォリオ」に近づきつつあります。特に、GX*1という追い風も受け、環境エネルギー事業は過去最高益を達成しました。蓄積してきた技術力、営業力により、顧客ひいては社会の要請にお応えできたものと思っています。

一方、あらゆる面でグローバリゼーションが進展した現代社会においては、地球温暖化、新型コロナウイルス等の感染症、自然災害、ウクライナ侵攻等の地政学的リスクの顕在化は、事業活動に直接的に大きな影響を及ぼすとともに、これらがトリガーとなり、個人のライフスタイルをはじめ、グローバルな社会や産業において様々な変革を加速させます。

こうした変革に的確、迅速かつ柔軟な対応が求められる中、当社グループのありたい将来像「Glorious ExcellentCompany」の実現に向けて、2030年を節目として、当社グループが目指す大きな方向性を示すべく策定したのが、「住友電工グループ2030ビジョン」です。

住友事業精神と住友電工グループ経営理念を堅持

「住友電工グループ2030ビジョン」は、■経営方針、■社会像と事業領域、■事業の方向性、■基盤と目標で構成しました。

経営方針では、大変革の時代においても、不易の基本精神である住友事業精神と住友電工グループ経営理念を堅持し、事業を通じて公益に資するという経営哲学のもと、常に公益を重視し、ステークホルダーの皆様との共栄を図っていくことを改めて明文化しました。そして、この基本思想のもと、「トップテクノロジーの追求」、「グローバルプレゼンスの向上」、「ダイバーシティ&インクルージョン」、「サステナビリティ」という重要な経営方針を総括して、存在価値(パーパス)を掲げました。

当社グループは、創業以来、「安心」「快適」な社会の実現に資する製品・サービスの提供に取り組んできました。2030年に向けては、持続可能な地球環境への取組みがますます重要になります。そこで、2030 年の実現したい社会像に、「グリーンな環境社会」を加えました。この目指す社会像の実現に向けて、これからも引き続きインフラや産業をささえる幅広い製品・サービスを提供していきます。特に、「エネルギー」「情報通信」「モビリティ」を3 つの注力分野と位置付け、これらが融合する分野も含めて、GX やDX*2、CASE*3などのニーズを捉え、グループの総合力をもって取り組む所存です。

具体的には、エネルギー分野では脱炭素社会に向けて、一層の導入が進展するであろう太陽光や風力などの再生可能エネルギーへの対応が鍵です。発電地と需要地間の効率的な長距離送電を可能にする直流送電網や、出力が自然条件に左右されるため、需給バランスを調整する蓄電池、さらに太陽光発電や蓄電池、EV 等の分散型電源の大量導入による制御などが必要になるとみています。そして、当社グループでは、電力ケーブルから受送電・蓄電設備やエンジニアリングまでの幅広い製品・サービスで、こうしたニーズに対応していきます。

2022年4月には、北海道電力ネットワーク(株)で大規模蓄電池「レドックスフロー電池」の運用も開始しています。大規模風力発電に必要な系統接続に対応するものであり、使用されるバナジウム電解液は半永久的に使用可能であることから、環境にも優しい蓄電設備です。今後、積極的な市場開拓を図っていきます。また、再生可能エネルギーの一層の導入進展、広域電力取引の拡大、電力供給の信頼性向上などニーズの増加を背景に、世界で導入が加速している超高圧直流ケーブル分野では、市場で高い優位性を誇っており、生産能力の増強も含めて、力を注いでいく考えです。

「トップテクノロジーを追求し、つなぐ・ささえる技術をイノベーションで進化させ、グループの総合力により、より良い社会の実現に貢献していく」

*1 GX:グリーントランスフォーメーションの略。温室効果ガスを発生させないグ リーンエネルギーに転換し、産業構造や社会経済を変革させること。

*2 DX:デジタルトランスフォーメーションの略。デジタル技術を活用し、ビジネ スや企業風土、あるいは人々の生活をより良いものへと変革すること。

*3 CASE:自動車業界の動向を示すキーワード。Connected(コネクティッド)、 Autonomous(自動運転)、Shared & Services(カーシェアリングとサービス)、 Electric(電気自動車)の頭文字を組み合わせた略称。

井上治社長

「利益至上主義に陥ることなく、社会が必要とする製品の供給を行ってきた。 社会の要請に応え、社会に貢献する会社としての在り方は、今後も変わることはない」

情報通信分野では、データ通信のさらなる高速・大容量化が進み、無線・光ネットワーク網が拡充、データセンタが増設される中、低消費電力化のニーズが高まると考えています。今、世界で5G基地局が設営されていますが、6Gを見据えた取組みも開始しています。低消費電力の大容量通信と広域カバレッジを可能とする基地局用GaN デバイス、大容量光通信を可能とするマルチコアファイバや超多心ケーブル、省電力化を実現する光電融合配線など、オリジナリティある材料・デバイスの開発に挑戦し続けます。

モビリティ分野については、2030年には、ハイブリッドやプラグインハイブリッドを含めた電動車が新車販売台数の過半を占め、自動運転はLevel3へと進化し、超小型モビリティや空飛ぶクルマなど多様なモビリティの出現が予想されています。また、クルマと外部サービスの連携がさらに拡大するものと予想されます。

こうした事業環境の変化に対して、まずはワイヤーハーネスをコアとして、同一製品同一品質を世界中で可能にするグローバルなモノづくり力と高度な技術・技能人材により、新たな価値を提供していきたいと思っています。さらには、エネルギー、情報通信など、住友電工グループの多彩な技術力を融合し、電動化・高速通信化に挑戦します。電動車向けの高電圧ハーネスや高速通信用のコネクタといった、いわゆる「CASE」関連の新製品を創出していきます。特にワイヤーハーネスに並ぶ中核事業の一つに育てたいと考えている車載用モーター平角巻線は、生産能力を大きく増強しました。

これら3つの分野を1兆円以上拡大し、連結売上高5兆円以上を目指します。また、3か年ごとに中期経営計画を見直すことで、不確実、非連続な状況に的確かつ迅速・柔軟に対応していく考えです。

また、「グリーンな環境社会」の実現という点では、水資源の循環、レアメタルの有効活用、Co2の削減といったテーマにも取り組んでいきます。

「住友電工グループ2030ビジョン」への思い

住友電工グループは創業120年を超え、5事業それぞれが堅実に成長して幹を太くし、社会に貢献してきました。利益至上主義に陥ることなく、社会が必要とする製品を供給し、社会に貢献するという会社の在り方は、2030年においても変わることはありません。一方で、「住友電工グループ2030ビジョン」を実践していく中で、次の事業の柱、稼げる製品を生み出したいとも考えています。これまで既存製品の改良・改善などによって、高い評価を獲得した製品も輩出してきましたが、事業の継続性につながる、まったく新しい製品を誕生させたいと思っています。

住友電工グループ2030ビジョン
住友電工グループ2030ビジョン
住友電工グループ2030ビジョン(抜粋)
事業領域―注力分野

当社グループは3つの研究開発センターを軸に、海外拠点も含めて広範な分野で研究開発を続けてきました。その中から、先程ご紹介した蓄電池「レドックスフロー電池」も生まれています。他にも、排水浄化・再利用など特殊なろ過膜であるポアフロンを使った水処理事業にも期待しています。現在から未来を見るだけでなく、2050年のカーボンニュートラルの実現からバックキャスティングした思考で、社会の要請に応えていきたいですね。

「住友電工グループ2030ビジョン」は、より良い社会の実現に貢献していく当社グループの意志を込めたものですが、その達成のために、何よりも大切なのが、社員一人ひとりの意識の持ち方です。「住友電工グループ2030ビジョン」という会社の目標と意味を理解し、同じ目的に向かって意識を合わせることが必要です。そのためにも、私自身も積極的に情報発信し、各グループ会社や各部署での「住友電工グループ2030ビジョン」に対する深い理解と浸透・拡大を図っていきたいです。自分たちは「より良い社会の実現のため」に仕事をしているという社員一人ひとりの自覚が、「Glorious Excellent Company」の道へとつながっていくと考えています。

変革という荒波に向かって

私は2008年のリーマンショック後、債務超過に陥ったドイツの現地法人の社長に就任、その後3年間、社員一丸となって再建に取り組みました。帰国後はグループ会社である住友電装(株)の社長としてワイヤーハーネスの新しいプロジェクトの立ち上げにも携わりました。そうした経験を踏まえ、現在、住友電工の社長として思うのは、変化にいかに対応するか、限られた時間の中で決断するための体制をきちんと整えるかがいかに大切かということです。そして変化に素早く対応するために私が心がけているのが、日頃からの正確な情報収集です。日々、周囲のメンバーから報告やレポートを受けていますが、それが本当に正確なことなのか、あるいは情報の一部を省いていないか、徹底して話を聞くことで情報の精度を高める。その上で対話をすることが、想定外や不測の事態、急激な変化が起こっても、経営トップとして適切に対処していくための、的確な決断につながっていくと思っています。

今後、世界の不確実性は増していくと思われます。その荒波の中で、企業価値の向上を目指して、大胆に、そして繊細に、経営の舵を取っていきます。

長期ビジョン
「住友電工グループ 2030ビジョン」

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