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徹底して突き詰めてモノを考えた研究開発の頃

学生時代は物理を専攻、修士課程では「磁性体混晶の挙動研究」という基礎研究に取り組みました。研究室の教授の科学に向き合う姿勢に触れたことは、とても貴重な経験でした。それは、徹底的に突き詰めて考えるということであり、入社後に携わる光通信関連の研究においても、その姿勢を堅持できたと思います。就職に際して考えたことは、同じ学部の先輩がいない会社に入りたいということでした。比較される環境ではなく、自分の力を評価される場を考えたのです。企業説明会で出会った住友電工は、人を大切にする会社であり、多くのことに挑戦できる点が魅力的でした。それ以上に、就活を通じて出会った社員の人柄に惹かれたことが、入社を決めた大きな理由です。

入社後、オプトエレクトロニクス研究所に配属、光通信関連の研究開発業務を担当することに。大学での専攻とはまったく異なる世界で、「光」を一から勉強しつつ、研究を進めました。印象に残っているのは、光デバイスの伝送特性評価。事前のデータから結果を予測できる仕組みを活用し、それに定量化したパラメーターを導入することで、伝送不良を早期に明らかにするというもの。これによって製品の品質向上に寄与できた手応えを感じました。他にも、当時、黎明期だった光通信の送信モジュールの製品化に向け取り組むなど、非常に充実した研究者生活だったと思います。

子育ての世界と仕事社会をダブルで生きる

入社当時は、今に比べれば技術系女性社員は少ない時代で、女性社員のキャリアに関して、現在のように語られることも少なかったと思います。私自身も自分の将来を思い描いて仕事をするタイプではありませんでした。今、目の前に起こっていることが大事であり、それをいかに適切に、そして楽しく処理・対応するかが重要と考えていました。この先、女性特有のライフイベントがあっても長く仕事を続けていきたい、研究職で大きな成果を生み出したいなど、仕事や人生の将来ビジョンを考えて行動してきたわけではありません。今、やるべきことをポジティブに楽しくやる、それが行動規範だったと思います。そして入社3年目に結婚、2年後に第一子出産、さらに2年後第二子、その3年後には第三子出産と、5年間で3人の子の親となり、仕事と育児を両立するという新たな局面を迎えることになりました。仕事にやりがいを感じており、退職するという選択肢はまったくありませんでした。

第一子のときはまだなかった時短制度が、第二子のときには整備されました。しかし時短勤務とはいえ、仕事との両立は決して安易なものではありません。子どもの体調変化など、保育園からの呼び出しがいつあっても大丈夫なように、日常的に仕事の効率化を図り、メンバーと情報を共有することで、周囲に迷惑をかけないことを心がけました。子育て中は、思い通りに時間と体を使えないもどかしさもありましたが、子どもとともに自身も成長できたことが今の仕事にも活かされていると感じています。子どもは母親が絶対的味方であることを前提に、地域や他者など社会とのつながりの中で育つことが大切です。これはメンバーとの関係においても同じことがいえます。上司が見守り、要所ごとに話を聞くことで、メンバーは自立していくのだと思います。

製造される製品の数々
製造される製品の数々
製造される製品の数々

いかに手を挙げ、声を上げてもらうか

入社18年目の2010年、住友電工デバイス・イノベーション(株)への出向という、大きな転機を迎えました。品質管理業務を担当しましたが、印象深いのは「体質強化活動」の一環として、品質改善を目指す「品質異常低減ワーキンググループ」 のグループ長を任されたことです。これが、その後のマネジメント職、現在の工場長のミッションにも関わってくるターニングポイントともいえる経験でした。品質改善は、工場で生産する製品の品質を向上させる取り組みです。研究職とは大きく異なり、生産の現場である工場とダイレクトに向き合う必要がありました。品質改善のための大切な第一歩は、異常が発生した際、何かしらの不具合が起こった際、早急に事態を発信し共有することです。少なからずどこかで目詰まりは必ず起こります。必要なことは、工場のメンバーが手を挙げて発言すること、「話をする」環境・風土をつくることです。私は会話することから始めましたが、反発も少なからずあり、私自身の中にも壁がありました。「こう言ったらどう受け取られるか? 提案して大丈夫だろうか?」といった、一歩前に出ることを躊躇する気持ちでした。それをクリアしていくことが、私のやるべきことであり、その後課長職を経て、工場長に着任後も、課題の一つとなっています。 そのため、工場のメンバーとコミュニケーションを継続し、「話して、聴き、伝える」ことを大切にしてきました。そこで生まれるのが安心感(心理的安全)であり、それが前に進む原動力の重要な要素の一つと感じています。

私が工場長として目指しているのは、生産性や品質において高いレベルを維持する「強い工場」。その実現は、一人ひとりのメンバーの意識にかかっています。「何を話しても大丈夫、否定はしない」という心理的安全を確保すれば、みんなが自主的・自立的に声を上げ、意見を述べ、自分たちの場所を良くしたいと思い、行動するはずです。そのために日々のコミュニケーションを積み上げて、相手を理解し、背中を押してあげられる工場長になりたい。私自身まだまだ試行錯誤ですが、若い人たちに伝えたいのは、女性でも男性でも、自分はどうありたいのかを明確にし、ポジティブであれば、どのような局面でも答えは見つかり、乗り越えられるということ。それが、仕事を、そして人生を豊かで楽しいものにすると信じています。

PROFILE

岩井 圭子 Keiko Iwai

1993年
住友電気工業(株)入社
オプトエレクトロニクス研究所(現・伝送デバイス研究所) 光機能部品研究部

1995年
オプトエレクトロニクス研究所 半導体光デバイス研究部

2003年
伝送デバイス研究所 量子デバイス研究部 レーザ量産技術プロジェクト

2007年
伝送デバイス研究所 光通信デバイス研究部 デバイス解析・信頼性グループ
兼 光伝送デバイス事業部 光デバイス製造部 光プロセス生産技術グループ

2010年
住友電工デバイス・イノベーション(株)出向
光デバイス事業部 第一製造部 プロセス技術課

2013年
同社 光部品事業部 横浜製造部 第一品質管理課 課長

2020年
同社 光部品事業部 製造部 横浜工場 工場長

2021年
同社 光デバイス事業部 製造部 横浜工場 工場長

現在に至る

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