住友電工の流儀 白山 正樹 常務取締役 電線・エネルギー事業本部長

対話力と発信力、そしてくじけない情熱を お客様の課題を技術で解決するために

若くして体験したビッグプロジェクト

大学時代はバイクで日本中を走り回っていて、熱心に勉強したとは言い難いですが、専攻した経済学からは、ロジカルなものの考え方を学ぶことができたと感じています。就職に際しては、世の中に見えるかたちで社会に貢献できる仕事に就きたいと考え、メーカーを志望しました。住友電工は、OBとの交流のなかで、性格的なフィーリングが合うと感じ、この会社であれば自分の力を発揮できるのではないかと思ったこと、若手に仕事を任せる風土があると聞いたことが、入社の大きな理由です。

事実、若い時期から大きな仕事を任せてもらいました。分割民営化された西日本旅客鉄道(株)(JR西日本)の初代担当、本州四国連絡橋公団担当、関西電力(株)向けに電力ケーブルを販売する担当として、日本の重要な電力インフラ整備に携わりました。特に関西電力(株)の送電担当として、阿南紀北直流幹線敷設という一大プロジェクトを担当したことは、その後の私の礎を作ったと感じています。これは、関西と四国間の電力連系を目的に建設された幹線で、世界最大容量の直流500kV、約50㎞の海底ケーブルが適用されています。大容量直流ケーブル、高速布設同時埋設機をはじめ数々の新技術を導入したプロジェクトであり、当社は電線メーカー4社による共同企業体の幹事社として取り組みました。私の役割は、全体スキームをデザインし、実現するための方策を見出すことでした。しかしまだ20代という若さ。経験も知見も浅いなかで心がけたのが「対話」でした。一人で考えていても始まりません。お客様、社内の関係者と徹底して対話するなかで答えを探っていく、そして人と人をつなぐことで最適解を見出していく。その姿勢が、その後の営業担当としての基本スタンスになったと考えています。

チームの団結力で圧倒的シェアを確立

2001年、日立電線(株)(現・日立金属(株))と当社のジョイントベンチャーである(株)ジェイ・パワーシステムズ(JPS)発足に伴い、当社の電力事業が分社化、私が部長を務めていた大阪電力営業部も電力ケーブルの仕事がなくなり、メンバーが5名に縮小されました。売るものがない状況のなか、どうするか。私が着目したのは、普及し始めたFTTH(Fiber To The Home)。つまり、光ファイバーの敷設・開通事業です。当時、通信キャリアがその中心にいましたが、お客様である電力会社も事業の推進に意欲的でした。顧客獲得において、通信キャリアと電力会社は競合が始まっていたのです。私はメンバーと目標を設定・共有し、開通コストの削減や開通期間の短縮など、顧客が抱える課題解決のための提案活動をがむしゃらに進めました。その結果、圧倒的なトップシェアと顧客との強固なパートナーシップを構築することができました。この経験で、少人数でもチームが団結し目標に向かって邁進すれば、道は必ず開けることを確信しました。当時掲げたスローガンはPassion(情熱を持ってやり遂げる)、Aggressive(積極的にできる方法を考える)、Speed(相手が驚くほどのスピードで対応)、Specialty(日々自己研鑽)。この言葉に、全員が大切にしていたことが集約されています。特にSpeedは意識して取り組んでいました。それ自体が優れたサービスであり、顧客からの信頼のベースとなるのです。たとえば、FTTH開通期間短縮という顧客ニーズ解決のためにデザインセンターを発足させ、製品のスピーディな開発、提供を実現しました。

白山 正樹
白山 正樹

グローバル市場へのあくなき挑戦

その後、新規事業開発・社会システム営業を担当しましたが、取り組みの一つであるデータセンタービジネスは改めて自分の仕事スタイルを確認するものとなりました。データセンターのニーズをとらえた製品・サービス開発を進めたのです。つまり、お客様が何に困っているか、それを的確に把握し技術で解決するということ。データセンターでは情報量の増大に伴い、大量の光ファイバーケーブルが必要とされますが、顧客ニーズは限られたスペースに光ファイバーを高密度で収納したいということでした。その課題をキャッチしスピーディに製品開発を展開したことで、顧客との強いリレーションシップを築くことができました。

現在、私が担当する電力ケーブル事業は、蓄積された特徴ある技術、材料から機器、システムまでオールインワンで提供できる強みを有しています。この強みを発揮でき、伸びていく市場を狙って事業を進めていきます。電気を国家間で融通する海底ケーブル敷設の大型プロジェクトが増えています。その主戦場は欧州。直近では、イギリス―ベルギー国際連系線プロジェクト*を完工させましたが、ここでは送電ロスが少ない直流ケーブルで、世界最先端を走る当社の絶縁技術が評価されました。今後も自社の強みが活かせるプロジェクトへは、積極的にチャレンジしていきたいと考えています。また、ボリュームゾーンである陸上ケーブルのグローバル展開も目指しています。経済成長著しいインド・アジア圏を軸に、品質、コストにおける「モノづくり力」の強化を図り、マーケットを開拓していく考えです。

いずれの取り組みにおいても、お客様が抱えている困りごとを技術で解決することで、社会に貢献していくことが私たちの使命です。それを実践するためには、お客様との信頼関係を築かねばなりません。それは会社対会社、組織対組織、人対人、いずれのフェーズでも同様です。その核心にあるのが「対話」です。徹底して対話することで困りごとが把握でき、その解決のための提案も可能となります。対話力と発信力、そして、くじけない情熱を持った人が、次代の住友電工を担っていくと考えています。

PROFILE

白山 正樹 Masaki Shirayama

1985年
住友電気工業株式会社 入社

1986年
電線業務部

1987年
大阪電線営業部任

1996年
住電商事(株)出向

2001年
大阪営業部 電力グループ長

2004年
大阪営業部 大阪電力営業部長

2007年
大阪営業部 電力・産業営業部長

2008年
中部支社 電力・産業営業部長

2012年
新規事業開発部長

2013年
執行役員
ネットワーク営業本部副本部長
新規事業マーケティング部長

2014年
常務執行役員 社会システム営業本部長

2017年
常務取締役 社会システム営業本部長

2018年
現職

*「id」vol.1: 2017年創刊号 特集「国と国を結ぶ海底ケーブルプロジェクト」
白山 正樹

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