住友電工の流儀~中井 一良~
“つなぐ”ビジネスでモビリティ社会に貢献 自動車メーカーのパートナーとして提案活動に注力

 

入社以来、自動車用ワイヤーハーネスの営業ひと筋

1990年に入社し、自動車企画部に配属された私は不思議に思いました。「住友電工に入社して、自動車販売を担当するのだろうか」と。実は、住友電工が自動車用ワイヤーハーネスの開発から製造・販売を手がけていることを知らず、どんな製品かもわかっていなかったのです。ちょうど当社が自動車用ワイヤーハーネス事業のシェアを伸ばし始めた時期であり、以来、自動車用ワイヤーハーネスの営業ひと筋です。

ワイヤーハーネスは電力供給や信号通信に使われる電線を束にした製品です。車内配線にも用いられ、エネルギーと情報を伝達する役目を担い、人の血管や神経に例えられます。多くの構成部品から成り立っており、自動車の生命線とも言える重要な製品です。
そのため開発・営業を担う住友電工や製造を担う住友電装を含め、住友電工グループの自動車事業に関わる人間には「お客様の生産ラインをつなぐ」という意志が貫かれています。

かつて高速道路が閉鎖されてトラック輸送が止まったとき、営業の私が結婚式の引出物を入れるマチの広い丈夫な袋に製品を入れ、電車で持ち運ぶこともありました。「自動車の生産ラインは絶対に止めない」という使命感は、先輩から私たちの世代、そして若い社員たちにも継承されています。コロナ禍でもそのパワーが発揮され、「住友電工グループは強い」と我が事ながら感心しました。

仕事への姿勢を見直した10年間の海外駐在経験

私の仕事に対する姿勢が少し変わったのが、欧州の合弁会社 Lucas-SEI(現 SEWS-E)での駐在経験です。ワイヤーハーネスの製造・販売を担う合弁会社で、社長と事業部長、スタッフふくめほとんどがイギリス人。30歳を過ぎたばかりの私は、英国の会社に入ったようなものでした。

当時の会社のスタンスは「できないなら、しかたがない」でした。ところが、それでは日系のお客様に通用しません。「上司が何と言おうと、お客様のご要望にお応えする」という体育会系の職場で育った私は、ボスやスタッフと徹底的に議論を交わしました。上司に意見する私の姿に、周囲があ然とするほどでした。結果的にボスは日本の仕事の進め方を理解してくれ、スタッフとも信頼関係を築くことができました。

私自身も変わりました。日本の進め方がすべてではなく、アレンジをして各国で受け入れられる方策を考え、実行する必要性に気づくことができたのです。それ以降はどの国でも柔軟に対応できるようになり、通算10年間の海外駐在を有意義に過ごしました。

一方、変わらないのは、「あるべき姿のもと、すべてに公平で、正しく行動したい」という姿勢です。一人の人間として何事に対しても誠心誠意を尽くす人であれ、と諭す住友事業精神の「萬事入精」に通じます。社会において、それを追求するのは難しい局面もありますが、あるべき姿をめざして行動する大切さは、若い人たちにも伝えています。

理路整然と数字を組み立てる。営業の醍醐味

営業職は一般的なイメージとして、人当たりが良く話が上手というイメージだと思いますが、私の性格からは苦手な分野でした。そんな中で私が感じる営業の醍醐味は、もちろん「受注」の達成感は非常に大きいですが、日々のお客様との対応で理路整然と矛盾がないように一歩先の質問も想定し数字や説明を組み立て、納得いただいたときです。

こうして自分なりの営業スタイルを見つけることができたのは、ひとえにお客様のおかげです。お客様が常に論理的で合理的な説明を求めていらっしゃるため、その対応や理論立てた説明は当然だと考え、準備をし、営業活動を続けてきました。お客様に育てていただいたおかげで、30年以上この仕事を続けることができています。

市場がどう振れても期待に応える提案を

クルマのこれからはどうなるのか。電気自動車だけが伸びていくのか、ハイブリッド、ガソリン、水素エンジンの可能性はどうか。市場がどういう振れ方をしても、お客様のご要望に即応できる、あらゆる可能性を想定した提案活動を行っています。

ワイヤーハーネスをコア事業としてきた私たちは、株式会社オートネットワーク技術研究所をはじめ研究開発部門とともに、部品メーカーではなく、お客さまのパートナーとして開発を進めるべく提案を続けています。将来あるべき姿から逆算した私たちの提案に対して、お客さまには大いに期待をしていただいており、おかげさまで寄せられる信頼も厚みを増しています。

ワイヤーハーネスをコアとして、電子部品など派生した製品までトータルでご提案できるのが私たちの強みです。この先もインフラともつながる提案に力を注ぎ、モビリティ社会に貢献していきます。

役に立ち続ける企業グループであるために

住友電工グループが今後も成長を続けるのはもちろん、世の中の役に立ち続ける企業グループであってほしいと思っています。トップテクノロジーを追求し、クリーンな地球と安心・快適な暮らしの実現に貢献できるよう、私たち自動車事業本部も努めています。

例えば、自動車の軽量化を実現して環境負荷低減に貢献するアルミ製のワイヤーハーネスの提案です。一方、従来の銅製に比べて、アルミ製のワイヤーハーネスはリサイクルが大変だとリサイクル事業者様から伺っています。
技術の発展により生まれるジレンマを認識し、多様な角度からサステナブルな社会にどう貢献できるかを追求しなければなりません。材料開発から担うことができる住友電工グループの総合力を加速し、環境保全や安全性の向上に力を注いでいきます。

一方、個人として「営業を長く続けている自分は、果たして世の中の役に立っているのだろうか」と、自問を続けた時期がありました。
40歳のころ受講した社内研修で、他部署の受講生にふとそんな本音をこぼしました。すると「若い人をきちんと育てることこそ、世の中の役に立つことじゃないか」と、ひとこと。
そうだ。先輩方に育てていただいたように、若い人の成長を支えていくことが私の使命であり、若い人がまた次の世代をしっかりと育ててくれる流れの中に自分はいるんだ。
気づきを与えてくれる仲間がいることに感謝し、住友電工グループの一員でよかったと実感しました。

中井 一良
中井 一良

PROFILE

中井 一良 Kazuyoshi Nakai

1990年
住友電気工業株式会社 入社

1990年7月
中部支社 自動車営業部

2017年
中部営業統轄部第二営業部長

2020年
西部営業統轄部長

2022年
執行役員
中部営業統轄部長、西部営業統轄部長

2023年
執行役員
中部営業統轄部長
※2024年5月時点の役職

SNSシェア