住友電工の流儀~長谷川 裕一~

独自技術で社会の難題解決に挑む 電子と光、両デバイスを開発する唯一のメーカーとして

5Gに不可欠な製品を世界に先駆けて開発

高速・大容量の情報通信網5Gを支える携帯電話基地局システム。この基地局システムの中で、電波を増幅するトランジスタとしてグローバルに採用されているのが、住友電工グループが世界に先駆けて開発した「GaN HEMT(ガン・ヘムト)」です。

私たちが持つ化合物半導体技術を駆使し、従来のシリコンではなくGaN=窒化ガリウムの優位性を生かした革新的な電子デバイスです。少ない消費電力で高出力を実現し、発熱が少ないことから、「GaN HEMT」の搭載で携帯電話基地局の空冷ファンなどの部材が不要となり、基地局の小型化・軽量化に貢献。世界の5G通信網を支え、さらには来る6G時代にも期待される電子デバイスです。

「GaN HEMT」をはじめとした電子デバイス、そして光デバイスと、これら応用製品を扱っているのが伝送デバイス事業部です。住友電工の100%子会社である住友電工デバイス・イノベーション(SEDI)が製品の開発・製造を担っています。
 

DXを支える製品群の開発・製造も担う

電子デバイスに対し、光デバイス事業の代表的な製品としてSEDIが開発・製造を担っているのが、光ファイバ通信に使われるレーザーダイオードと受光素子です。電気信号を光信号に変えるレーザーダイオードは、データトラフィックが爆発的に増え続ける今、データセンタの光通信用システムと、携帯電話の基地局間を結ぶ光ファイバ通信に搭載されています。

データ伝送容量・伝送速度が上がり続けるなか、私たちはそれに沿ったデバイスの開発に早い段階から取り組んできました。お客様と綿密にコミュニケーションをとり、お客様の開発と並行して私たちも製品開発を進め、開発期間の短縮化・効率化を図るコンカレント・エンジニアリングを導入しています。
 

新材料で新しい機能・性能をどれだけ出せるか

SEDIはエンジニアの割合が多い、技術開発型組織です。「どうすれば新しい材料を使い、新しい機能・性能を出せるか」を常に議論しています。住友電工グループの伝送デバイス研究所で先行技術開発を行い、そこで生まれてきた技術を使ってSEDIが製品開発を担うという両輪で、競争力をもった製品を世の中に送り出してきました。

「GaN HEMT」のベースであり、世界の情報通信技術の進化においてエポックとなった「HEMT」は日本発の技術です。以来40年以上この材料を扱ってきた私たちには豊富なノウハウがあり、他社に先駆けて安定量産化できる技術も持っています。

電子と光、両方の開発・製造を手がけるデバイスメーカーは、世界でもSEDIの1社だけです。この背景には、富士通カンタムデバイス株式会社(当時)と、住友電工の電子、光伝送デバイス事業の統合再編によりスタートした経緯があるからです。

ただし同じ化合物半導体材料を使うものの、電子デバイスと光デバイスでは製品特性も技術者の個性も違います。この違いを生かして社内における共通の製造技術や生産システムの開発に注力し、相乗的な力の発揮に努めています。
 

ウエハプロセスと設計、2つの仕事で見えたもの

相乗的な力の強さは、私自身の経験からも実感しています。私は入社後しばらく、ウエハプロセスのエンジニアとして、クリーンルームで仕事をする比較的閉じた世界にいました。

同じオフィスには設計部もあり、こちらは外の世界と接点を持つ部隊です。海外からのお客様と商談する設計部の仕事を見て、開かれた世界にあこがれました。「かっこいい。自分も外に出たい」と思い、上司に相談すると「まずは設計の仕事をしてからだ」と言われ、国内で設計を担当しました。

晴れて念願の北米駐在を命じられたのが入社9年目です。担当エンジニアとして、製品紹介やお客様の技術サポートを担いました。月に1回程度、1週間かけて現地のセールスマンと全米を回りました。業務の多くがトラブル対応で、大きなプレッシャーのもとひたすら解決策を考える日々。「海外での業務もかっこいいだけじゃない」と実感しました。

北米で4年を過ごし帰国した私は、設計ではなく、ウエハプロセスに戻ろうと考えていました。なぜなら4年間にさまざまな発想が浮かび、その中にプロセス技術のアイデアもあったからです。
結局、設計として製品開発に戻りましたが、駐在中に得たプロセスの発想と設計としての経験、それらが複合的な力となって、新しいアイデアを生み出す原動力となりました。
 

社会矛盾をどう埋めるか。解決に寄与したい

北米駐在中の4年間は、それまでの日本での自分の仕事を客観的に振り返るよい機会になりました。「あのときは、こうすればよかったんだ」「ここが問題だったんだ」「今後はこうなりそうだ」と、次につながる考察を得ることができました。物理的な距離を置くことによって、「鳥の目」と「虫の目」の両方を養えたのだと思います。以降、仕事の進め方も変わりました。

エンジニアはどうしても顕微鏡の世界に陥りがちですが、そこから少し引いて、社会・未来を見渡す広い視点を持つことが重要です。

今、私たちが見すえるのはカーボンニュートラルに向けた社会矛盾の解決です。多くの国と地域がカーボンニュートラルの実現を目指し、二酸化炭素排出量の抑制に取り組む一方、データトラフィックは今後も増大し、データセンタや携帯電話基地局での電気使用量は大変な勢いで増え続けます。

この矛盾をどう埋めるか。
高度情報化社会の難題解決に寄与できるのが、私たちの化合物半導体デバイスです。
どこよりも小さな消費電力で、どこよりも大きなデータ伝送を可能にする通信用半導体デバイスを提供する。私たちのミッションです。技術を突きつめる「虫の目」と、未来を望む「鳥の目」で挑んでいます。
 

長谷川 裕一
長谷川 裕一

PROFILE

長谷川 裕一  Yuichi Hasegawa

1985年  
富士通株式会社 入社

2009年
住友電工デバイス・イノベーション株式会社 発足

2017年  
伝送デバイス事業部長 兼 住友電工デバイス・イノベーション株式会社 社長

2020年
執行役員
伝送デバイス事業部長、 住友電工デバイス・イノベーション株式会社 社長(現在に至る)

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