水処理ビジネス拡大に向けた膜蒸留の技術開発促進
~新分野における市場開拓~
住友電工は、フッ素樹脂PTFE(四フッ化エチレン)の延伸加工による多孔質化技術を世界に先駆けて開発し、多孔質材料「ポアフロン®」として供給してきました。2000年代初頭には、中空糸状のポアフロン®を用いた水処理膜モジュールを開発し、日本国内のみならず、アジア、北米など様々な地域で、上下水処理用途や様々な産業排水処理用途に納入してきました。このたび、さらなる事業拡大を目指し、米国のKMXテクノロジーズ社と膜蒸留開発に関する基本合意書(Memorandum Of Understanding)を締結しました。今後両社は共同で技術開発を進め、新分野での市場開拓を目指していきます。
■ポアフロン®とは?
PTFEは、本来、水との親和性が低い性質(疎水性)の強い素材です。当社は、ポアフロン®に独自の親水化処理を施し、水との親和性を高めることによって、膜ろ過による水処理用途での使用を可能にしました。
右の画像で、黒く写っている部分(気孔)を水が通り、網目状の白いPTFEの繊維が固形分を高精度に除去することで、高い透水性と除濁性を持つ水処理ろ過膜として活用されています。
■膜蒸留とは?
膜蒸留とは、水処理技術の一部であり、原水中の分離対象物と水との沸点の差を利用し、膜に蒸気を透過させる技術です。使用する膜には、膜ろ過用途とは異なり、本来PTFE素材が持つ疎水性や耐熱性が求められます。当社が開発したポアフロン®中空糸膜は、疎水性、耐熱性、耐水性に優れ、膜蒸留システムにおいて、それらの特性を大いに発揮することができます。
■膜蒸留技術による今後の取り組みは?
ポアフロン®を用いた膜蒸留技術は、排水などからの高効率な水・有価物の回収、廃棄物の減量が可能になります。石炭鉱山排水からのレアアース回収や、海水淡水化やその副産物である濃縮海水(高濃度塩水)の減容など、幅広い用途に使用でき、水資源の確保と環境負荷の低減に貢献します。
また、膜蒸留システムに用いる電力には、発電プラントの廃熱や太陽光など再生可能エネルギーの利用を積極的に進め、持続可能な社会を目指します。
当社は、これまで培ってきた水処理技術を活かし、高品質な製品供給・技術開発を通して、世界各国の水処理問題の解決、地球の環境保全に努めます。