住友電工の流儀~高橋 覚~

情報技術も自社で開発・運用し、事業を支える AIやIoTを活用し、全社横断でDXを推進中

全社一丸となってのDX推進。思わぬ金賞受賞へ

関西のDX推進の機運醸成を目的に、「関西デジタル・マンス実行委員会*1」が2023年に創設した「KANSAI DX AWARD 2024」で、住友電工が「金賞(大企業部門)」をいただきました。当社では2021年4月に井上社長を委員長とする「DX推進委員会」を設立し、全社一丸となってDX推進に取り組んできました。活動の旗振り役である情報システム部の私にとっても、受賞は大きな喜びでした。

受賞理由として「社長自らがリーダーシップを発揮し、組織的なDX推進に取り組んでいる」点と、「業務効率化、生産向上性が図られており、製造業企業において参考となる取組みである」点を評価いただきました。

当社のように多様な事業を擁する企業グループでは、DXも部門ごとバラバラになりかねません。そこで情報システム部では、住友電工にとってのDXは何かを徹底的に考えて定義した結果、今まで大事にしてきた「SEQCDD*2」の改善をデジタルで加速することを全社活動に位置づけました。
活動の特徴は、部門固有の「部門DX計画」と、部門横断の「全社DX基盤」のハイブリッド型での取組みで、「モノづくり力強化」「サプライチェーン強化」「働き方改革」「データ活用によるプロセス改善の加速」「DX人材育成」の5つの全社共通の仕組みを整備。年間159件の取り組みを行い、AIによる目視検査自動化など改善例が生まれています。

*1 公益社団法人 関西経済連合会、関西広域連合、総務省 近畿総合通信局、経済産業省 近畿経済産業局、一般財団法人 関西情報センター、独立行政法人 情報処理推進機構、独立行政法人 中小企業基盤整備機構

*2  S(Safety:安全)、E(Environment:環境)、Q(Quality:品質)、C(Cost:価格)、D(Delivery:物流、納期)、D(Development:開発)をさします。

IT活用による事業貢献とディフェンスに注力

情報システム部では、社員が安心して安全に業務ができる環境を提供すべく、システムやソフトウェアの開発・運用を担っています。基本方針は、「ITは競争力の源泉、自社技術で自社開発・自社運用を基本に継続した成長を支える」です。

入社以来、私は情報システム部で仕事をしてきました。部の歴史を振り返ると、1960年代のソフト開発とオペレーション、ネットワーク構築、その後はデジタル化の進展に伴って情報セキュリティやDX推進と業務内容が変遷・拡張してきました。

ユーザーの観点からも、会社の発展に同調して、住友電工本体だけでなく国内関係会社、海外関係会社へと広がってきました。ITを効果的に使って事業に貢献する面と、サイバー攻撃のリスクが増すなかで事業を止めないための対策・対応に注力するなど、失点を防ぐディフェンスの範囲も広がってきました。また、DXの一環として、社内で生成AIを安全に使ってもらうための内部サービスを始めるなど、AI活用も加速しています。

ただし、私たちの基本方針は変わりません。モノづくり企業として生産技術を自社で持つのはもちろん、情報技術も事業を支える技術として自社で開発、運用する。産業界では、2000年ごろに景気の悪化にともなって情報システム分野をアウトソーシングする動きが目立ちましたが、住友電工グループは違います。住友事業精神の「信用確実」でもあり、持続的な成長のために基本方針は守るべきだ、と。信念を貫いてくださった先輩方の努力、経営幹部の理解のおかげです。

400社をつなぐインフラ構築。コロナ禍に間に合った

私は文系出身にも関わらず、入社後、情報システム部配属になり、全社経理システム開発の大規模プロジェクトを担当することになりました。その後、米国駐在となり、全米の関係会社のIT化支援と、当時は専門外だった米国域ネットワークの基盤整備も経験しました。

2017年に立ちあがったIoT研究開発センターでは、創立メンバーに加わりました。研究開発本部が母体となり、生産技術部、情報システム部の三位一体で住友電工グループにおけるAIやIoTの活用を進めるために作られた部門です。出身による考え方の相違をすり合わせながらの活動は非常におもしろく、勉強になりました。IoTやAIの技術に触れたことが、DXの仕事にもつながっています。

忘れがたいのは、全社ITインフラ基盤を見る立場になったときのことです。グローバルで事業展開する住友電工グループには400を超える関係会社・子会社があり、対面だけではなく、距離を超えた自由度の高いコミュニケーション活性化が欠かせません。そこで2020年1月からグローバルなコミュニケーションのためのインフラ構築に着手し、半年後の全社展開を想定して動いていました。

ところが、新型コロナ感染症が急拡大。「このインフラがなければ仕事が止まってしまう。アクセルを踏みこむぞ」とメンバーに声をかけ、4月末には全社導入が完了。Microsoft Teams ®を導入し、ルールも策定済みだったため、在宅勤務の社員が増えるなかでも業務を継続できました。タイミングが合ったのはまったくの偶然ですが、間に合ってよかった。現場のメンバーが本当によくがんばってくれました。

多様だからこそ、共通軸を追求し続ける企業グループ

住友電工グループの最大の強みは、事業・部門の多様性だと思います。ポートフォリオの強みであり、個々人にとっては能力を発揮する場の多様性とも言えます。私はこれまで各事業部のさまざまな人と関わってきましたが、「この人はすごい」と舌を巻く人との出会いから多くを学びました。人材の多様性のおかげです。

一方、多様性があるからこそ、企業グループとしてバラバラにならないよう、共通軸でまとまっていこうとする強さもあります。DX推進をはじめ、情報システム部が事務局を務める小集団活動の事務品質大会など、横断的な全社活動が活発です。
会社の歴史をたどると、ポートフォリオが拡がるなかで各事業が成長を目指すのはもちろん、企業グループとして同じベクトルで成長するために、経営幹部の先輩方が常に共通軸を考え、住友電工流の打ち手を打ってこられたことがわかります。

しなやかに人から学び、吸収していきたい

読書好きの私は本から学ぶことも多いのですが、それ以上に人から学ぶことを重視してきました。知識・情報だけでなく、その人の考え方を学び、自分のそれと照らし合わせて「なぜそう考えるのか」を俯瞰します。自分の方法論を持つことは大切ですが、そこに固執せず、自分のメンタルモデルを見るためでもあります。主張を押し通そうとする論破バイアスを持たず、しなやかに人から学び、吸収していきたい。

若いころは、そうではありませんでした。振り返ると、自分の方法論だけではうまく行かないとわかったから、変わったのでしょう。何より、多様な人との出会いを通じて、人に学ぶ豊かさを知ったからです。

PROFILE

高橋 覚 Satoru Takahashi

1990年
住友電気工業株式会社 入社 情報システム部

2017年
情報システム部情報技術部長

2020年
IoT研究開発センター長

2022年
情報システム部次長

2023年
執行役員 情報システム部長

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