
自動車ビジネスのドラスティックな変化
1987年の入社以来、自動車用ワイヤーハーネスの営業ひと筋です。2008年にはヨーロッパへ赴任し、2020年からは北米にあるワイヤーハーネスの事業拠点で経営を担うなど、自動車OEMビジネスで40年弱を過ごしてきました。そして今、かつてないほどドラスティックな変化を感じています。
まず市場ニーズの変化です。従来は、性能向上を突き詰めることが第一義で、私たち部品メーカーに求められるのは性能・機能のアップや、小型軽量化・コスト低減に貢献できる製品でした。しかし今は、基本性能はあって当たり前。室内でのエンターテインメントや外部とのインタラクティブなコミュニケーションといった付加価値が求められ、付加価値の振り幅は非常に大きいです。
私たちの主要製品であるワイヤーハーネスは、エネルギーと情報を伝達する役目を担っており、通信を使う機能が大幅に増えるなか、それらをコントロールする方法を大きく変えなくてはなりません。ソフトウェア的な考え方で自動車OEMが変われば、ハードをどう変えるか。私たちの製品の組成や設計、あらゆる面で今後も変化すると考えられます。
三位一体でグローバルビジネスに挑み続ける
変化が加速するなか、提案のスピードアップは必至です。そこで私たちは開発リソースの確保はもちろん、シミュレーション技術の活用をはじめDXによって企画から開発、量産までのプロセス短縮に注力しています。
それができるのは、企画・販売を担う住友電工、開発のオートネットワーク技術研究所、そして生産を担う住友電装の三位一体となった総合力があるからです。オートネットワーク技術研究所はもともと住友電工の研究開発部門の一部でしたが、一般的な研究開発のイメージとは異なります。私たち営業と共にお客様を訪問し、意見交換をしながら肌感をスピーディにつかんで、ニーズにお応えしていきます。このスタイルだからこそ、ショートサイクルの開発が可能です。
グローバルビジネスの展開に注力するなか、欧米、アセアン、インド、中国のお客様に対しても、現地の関係会社がお客様に対面して細やかなニーズをつかみ、変化に即応できるビジネスを行っています。日本と連携しながら住友電工グループの強みを生かし、世界のお客様への提案活動に挑んでいます。
「アラブの春」で工場が停止。どうするか
私は2008年から、ヨーロッパで事業展開をする日系企業様への営業マネージャーとしてベルギーに駐在しました。当社の製造拠点を東ヨーロッパから北アフリカへ移した時期で、エジプトでの量産を開始したタイミングでした。そこで「アラブの春」が起きました。アラブ諸国で民主化運動が連鎖的に発生し、エジプトも国のあらゆる機能がストップ。軍が出て外出禁止の事態となり、当然、私たちの工場もすべて操業停止となりました。
しかし、お客様への供給は止められません。他の部品サプライヤーのなかで、エジプトで生産しているのは住友電工グループだけ。他社は部品がすべてそろう状況だったのです。
緊急対応体制が敷かれ、日本側とも連携してヨーロッパとアジアの工場で代替生産をすることが決まりました。しかし、材料も専用設備もない工場ですぐに製造ラインを立ち上げるのは至難の業です。
お客様との窓口である私は、当社の方針を説明しながら生産調整をお願いし、毎日、朝と夕にお客様を訪問し、状況の報告を続けました。
ルーマニアとタイの工場の支援を受け、日本側からも製造の指導を得て、超特急でラインを立ち上げ、生産をスタートしました。本当にありがたかった。同時に私は、住友電工グループの凄まじい対応力を体感しました。「お客様の生産を止めない」という全員の意識の強さと、底力を感じました。これが私たちの強さなんだ、と。
信頼を得るアウトプットを出し続ける
折につけ、お客様が住友電工グループに厚い信頼を寄せてくださっていることを感じます。開発技術、品質、納期はもちろん、トラブル時の対応を含めて、私たちの先輩や長年、住友電工グループに関わってくださった皆様のお力があってこそ、です。「信頼が住友電工のブランドだ」と実感します。新しい技術に関する相談でも「住友電工さんだから、できるでしょ」とハードルが上がることもあり、信頼に対して期待で応えていくことを心がけています。
自動車の大変革期を迎えて、信頼の維持にはさらに一段ハードルが上がりますが、私たちはチャレンジを続けます。どんな環境でも、お客様をはじめ、社会との信頼関係を保てるようなアウトプットを出し続ける。それが大事だと考えています。すべてのステークホルダーを重視する「五方よし」を掲げ、推進する住友電工グループだからです。
自分に合う、自分らしいスタイルで進む
長く営業を担ってきましたが、私はカリスマタイプではありません。相手の言葉をじっくりと聞いて意図を汲み、全体を見ながらバランスを取っていくスタイルが向いています。相手の意図を完全につかみきれているかはわかりませんが、言葉を深く理解して、それを踏まえて自分の意見をわかりやすく伝えるよう努めています。
2020年からは4年間アメリカに駐在し、自動車事業において住友電工グループの主要拠点であるSEWS(SUMITOMO ELECTRIC WIRING SYSTEMS,INC.)で社長を務めました。コロナ禍での事業運営においては、経営者として苦い経験も積みました。
そこで私が感じたのは、経営は一人ではできない、ということ。経営チームにおいてメンバーの言葉をよく聞き、意見を交わしながら進めていくスタイルが良いという手応えでした。人によって経営手法はそれぞれあると思いますが、私にはチームで進めていく方法が合っていたし、それができる大変良いメンバーに恵まれました。
PROFILE
青山 時治 Tokiji Aoyama
1987年
住友電気工業株式会社 入社 自動車部
2013年
西部営業統轄部第一営業部長
2015年
西部営業統轄部長
2020年
SUMITOMO ELECTRIC WIRING SYSTEMS,INC.(米国)社長
執行役員
2024年
常務執行役員
現在に至る